大学卒業 ~イタリアの場合~

 4月6日(火)は、わたしが卒業論文の制作を担当していた学生が、無事卒業を迎えました。

 今回、イタリアの大学と比較する日本の大学をわたしが卒業したのは、もう20年も昔の話です。もし「今は様子が違う」ということでしたら、ぜひお教えください。 

 日本の大学では、桜の花が咲き始める頃に、その年の卒業生一同が厳粛に卒業式に臨みます。そして、桜が満開を迎えた頃に、新しい入学生が一斉に入学式に参列します。
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(写真は、奈良の氷室神社の枝垂れ桜です。昨年4月に、夫と日本を旅行したときに、撮影しました。日本の桜の見事さにイタリア人の夫も感嘆していました。わたしも、生まれて初めて、桜が咲く頃に京都・奈良周辺を訪れ、自分が知っていた愛媛県や東京近辺の桜とはまた違う、さまざまに美しい桜の花を見て感動しました。日本に暮らしていた頃は、高校で教えていたため、春休みは慌しくて他の地方に出かけて花見を楽しむ余裕がなかったのです。日本の各地には、それぞれに趣の異なるすばらしい桜があります。皆さんも、ぜひ少し遠出をして、いつもとは異なる風情の美しい桜も眺めてみてください。)

 一方、イタリアの大学では、その年の卒業生全員が卒業式のために一堂に会するということがありません。また、入学については、大部分の学生が9月から10月にかけて入学の手続きをしますが、諸事情で数か月遅れて入学手続きをし、授業に通い始める学生も時々います。

 卒業するためには、まず自分の通う課程で定められた授業の試験にすべて合格し、単位を修得する必要があります。これは日本でも同じですね。違うのは、「卒業論文」(tesi di laurea)が、イタリアの大学では非常に重要な位置づけにあるということです。

 イタリアの大学で学生が卒業するのは、esame di laurea(卒業試験)に合格したときです。卒業試験の機会は年に数回、たとえばペルージャ外国人大学では年に4回あります。試験のとき学生は、居並ぶ教官たちの前で、自分の卒業論文の研究内容を10分ほど論じ上げなければいけません。試験にあたっては、まず学生の卒論指導にあたった教官が、研究主題・内容を簡潔に紹介してから、学生が卒業研究の発表を行います。その後、副指導教官や他の審査委員から質問があり、学生は的確にそうした質問に答えることを要求されます。
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 評価の際には、学生と聴衆(家族、友人、恋人など)は会場から退場し、卒論の審査委員の教官だけが残って、卒論制作の指導にあたった教官の意見をもとに、卒業論文を評価します。評価は、当日の発表の在り方も考慮した総合的なものとなります。

 そうして卒論を評価したあと、その卒論の点数を、すべての授業科目の平均点から算出した基準点に加算し、「大学の総合成績評価」となる点数をはじき出します。大学の課程では、この卒業時の総合成績評価は110点満点で、さらにすばらしい学業成績をおさめ、かつ見事な卒論を発表した学生には「110 e lode」(賛辞つきの110点満点)が与えられます。

 評価が決定すると、学生とその家族・友人たちは再び試験会場に入場します。その後、審査委員の教官たちが壇上に学生を一人ずつ呼び寄せ、卒業評価の点数を公衆の前で言い渡し、「おめでとう」と祝いの言葉を贈ることによって、学生が卒業を迎えたこととなります。

 会場を出ると、卒業した学生は、友人や家族から花束・月桂冠を贈られ、祝辞を浴びます。そして、そのままどこかに赴いて一緒に飲食しながら卒業を祝ったり、あるいは当日の夜あるいは近日中に改めて卒業祝いのパーティーを開いたりします。4月6日も会場を出たとたんに、あちこちで祝いの紙ふぶきが宙を舞い、歓声が上がっていました。

 大学を卒業後、学生が就職活動をするときや修士・博士課程の公募に応募するときに、企業や大学が考慮に入れるのはまず、この卒業時の総合成績評価です。全教科の評価入りの成績証明書ももちろん必要とされますが、イタリアで大学の成績と言うと、すぐに引き合いに出されるのが、この卒業時の評価ですから、卒業論文がどれほど重要であるかがお分かりかと思います。

 卒業論文は、パソコンのワープロソフトを使って書き上げた数十ページにわたるものを印刷し、立派な表紙をつけて製本します。
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写真の右と中央はわたし自身の卒業論文で、中央がペルージャ外国人大学の学士取得課程、右がシエナ外国人大学の大学院課程の卒業にあたってのものです。左は今回わたしが担当して、めでたく卒業した学生の論文です。学生が製本を依頼する印刷所には、卒業論文の表紙用に、さまざま色、素材(布・紙・皮)、デザインの見本が並べてあり、学生はその中から、予算が許す範囲内で、自分の好きなものを選ぶことになります。

 最後に、卒業論文の担当教官や研究主題についても、どんなふうに決めるかをご説明します。必要なすべての授業の単位を修得したら、あるいはそれ以前に、大学生は自分の卒業論文の研究主題を決めて、その分野の授業を担当する教官にrelatore(卒業論文の指導教官)となることをお願いします。だれにcorrelatore(副指導教官)を依頼するかについては、relatoreが決める場合もあれば、学生自身が決める場合もあるようです。また、研究主題についても、学生が自身が決める場合もあれば、指導教官に、研究主題を与えてもらう場合もあるようです。

 近年、イタリアでは、大学教育が4年制から「3年+2年」制に変わりました。ペルージャ外国人大学は、外国人に対するイタリア語教育の歴史と伝統が長いため、語学講座と併設する形で始まった大学の課程を見ても、「国際コミュニケーション」(Comunicazione Internazionale)、「外国人へのイタリア語・イタリア文化教育」(Insegnamento della Lingua e della Cultura Italiana a Stranieri)など、伝統と経験を生かした国際色の豊かなものとなっています。最近の大学改革のため、こうした課程はコースの名前を変え、現在新しい教育課程に移行しているところですが、「イタリア語教育・イタリア文化発信および国際交流の先駆者」としてのペルージャ外国人大学の位置づけは変わっていません。

 地球規模化(globalizzazione)が進み、企業や国家単位での国際交流を支える人材が必要とされる中で、イタリアの他の国立大学で最初の3年の課程を終え、後の2年の大学の課程をペルージャ外国人大学で学んでいる学生も大勢います。「他の大学に比べて、卒業がしやすい」、「評価が低い」という心ない、また実情を知りもしない日本の方の中傷も見かけましたが、ペルージャ外国人大学の教育が目指すものは、たとえば医学部や法学部を持つ大学とは違うわけです。また、「外国人大学は、日本人でも卒業しやすい」という発言にしても、浅薄な知識や偏見に満ちたものであり、あえてイタリアまで来て学ぶのであれば、日本の大学では学べないイタリア語やイタリア文化に重点を置き、国際的な視野を育てる教育課程で学ぶことにかえって意義があるとわたしは思うのです。

(上の卒業試験の写真は、わたしが2009年2月にシエナ外国人大学の大学院課程を卒業したときのものです。この大学院課程の卒業評価は、満点が70点。4月6日は、わたし自身も卒論の審査委員会の一員であったため、写真撮影はできませんでした。)

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by milletti_naoko | 2010-04-07 22:00 | Sistemi & procedure | Trackback | Comments(0)
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