外国人大学と町並みを訪ねて

 今回は、ペルージャ外国人大学の学舎をペルージャの町並みの写真と共にご紹介します。世界各国から来た生徒たちがイタリア語を学ぼうと語学講座に通い、イタリア人を中心とする学生たちが、国際社会での活躍を目指して大学の課程に通う、この外国人大学の学び舎は、実は、芸術的・観光的な魅力も非常に高いのですが、このことはあまり知られていません。

 大学に通っていても、その魅力と恩恵に気づかない学生がいることや、わたし自身も、せわしなく過ごしていると、ついその美しさに感動する心を忘れてしまうことが残念です。
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 これが、Palazzo Gallenga(ガッレンガ校舎/ガッレンガ宮殿)。語学講座に通う学生が、最初に入学手続きをする事務室(segreteria)や主要な式典や行事が催される講堂(aula magna)があるのはこちらです。イタリア語のPalazzoは、「貴族などの住む館や宮殿」も意味すれば、「住居や公共施設などの大きな建築物」(たとえばマンションとかビル)も意味します。

Palazzo Gallengaの場合、このpalazzoという言葉は、本来は貴族の館であったことを考えると「宮殿」と訳せますが、現在は大学の建物として使われていることに着目すると「校舎」になります。

 かつて貴族の館であったために、語学講座や大学課程の授業が行われる教室(aula)も、壁に大きな絵画があったり、装飾模様を施した布が貼られていたりする場合があります。そうした教室では、
、机や椅子、そして扉が、木に美しい装飾絵画を施したものであり、照明は豪華なアンティークのシャンデリアです。廊下の絵画を注意深く見ると、秘密の扉や隠し階段への入り口が見つかったりもします。

 また、4階のテラスは、校舎の周囲360度を取り囲んでいます。このテラスからは、ペルージャの町並みや遠くの山々を見晴らすことができ、その眺めが本当にすばらしいのです。
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 そして、大学正面から、向かってすぐ右手に、道路を挟んで見えるのが、このエトルリア門(Arco Etrusco)。エトルリア人が紀元3世紀に建造したこの壮大な門は、今もペルージャの中心街へと登っていく坂道の入り口に、そびえ立っています。2千年以上も昔に、巨大な石の塊を見事な計算を尽くして積み重ねでできた荘重な門。エトルリア人がこうして積み重ねた石は、現在もこの門の右側に続く壁や住宅の下方に認めることができ、町を取り囲む城壁も、エトルリア壁(mura etrusche)と言える部分があちこちにあります。

 さて、このガッレンガ校舎とエトルリア門から、ペルージャの町の中心街(Centro)に行くには、三つの方法があります。最も距離が短く時間がかからないのは、エトルリア門の下をくぐって、なだらかな坂道を登って行く道です。けれども、見晴らしがすばらしいのは、門のすぐ右側を車道に沿って歩いて行く石畳の歩道(下の写真は、この道からのパノラマです)、あるいは、門のすぐ左側にある急な階段をひたすら歩いて登って行く道なのです。
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 写真の右側、上方にはペルージャの町の城壁とその上に建てられた家が見えるのですが、この城壁の下の方の白い部分もエトルリア人が石を積み上げて築いたものです。城壁の左側に見えるのは、もちろんガッレンガ校舎。ガッレンガ校舎とエトルリア門に挟まれた道路を、エトルリア門の右手に続く城壁に沿って登って行くと、見えるのがこの風景です。

 下方に見える細い道のようなものは送水路(acquedotto)。中世に、清水が湧き出る近隣の高い丘から、ペルージャの中心街に作られた大噴水(Fontana Maggiore)まで水を運び込むために、築かれたものです。この送水路の上は、整備されたすてきな遊歩道になっています。家々の間を、見晴らしを楽しんだり、近所の家の庭を上から覗き込んだりしながら、石畳の美しい道を通っていくこの送水路の散歩もおすすめです。
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 けれども、そもそもペルージャの町自体か非常に高い丘の上にあるために、噴水まで水を運ぶ事業は失敗を繰り返したとか。大噴水に施された彫刻も美しく、上方の女性像は若さ・成熟・老いを表す三つの顔を持ち、中央の十二角形にはそれぞれの頂点にカトリック教や町にとって重要な人物の彫像が配置され、下段の白い大理石の部分には、柱で仕切られた長方形の中に、十二の月をそれぞれ象徴する彫刻やさまざまな職業・学問を表す彫刻で飾られています。

 今回の町や美術の説明は、ほとんどがElvio Lunghi先生の説明の受け売りです。ペルージャ外国人大学で、まだ語学講座に通っていた頃(もう7年前になります)、中世イタリア美術の授業を担当するルンギ先生は、しばしば学生たちをペルージャの町の中心街や美術館、送水路、教会やアッシジまで連れ出して、町や教会の中にある美術作品について、冗談も交えながら、詳しく説明してくださいました。

 たとえば、この大噴水についても、歴史や芸術的意義について真面目に説明したあとで、「ペルージャの大噴水は高い柵に囲まれているから、人間には近づけず、水を飲めるのは鳩だけです。柵の先端が尖っているのは、鳩を食べようというペルージャ人のたくらみかもしれませんね。」などと冗談を言っていました。

 そうです。ペルージャの人は鳩(piccione)を食べるのです。食用の鳩はそのために飼育されたものであり、町で見かける鳩とは種が異なり、大きさもかなり小さいものです。小さい鳥が丸ごとお皿の上に載っているのを見るのはいたたまれなくて、わたしはまだ鳩は食べる気になれません。ウサギ(coniglio)は時々義母が料理したものをいただくので食べ慣れましたが、それでも、料理をする気にはなれません。残酷と言えば、どの動物も同じことで、鶏だってウサギだって、基本的に義母が料理するのは我が家で飼育しているものでもあるのですが……
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 話を変えて、今度はガッレンガ校舎から、エトルリア門のすぐ左手にある急な階段を登って行く道についてお話したいと思います。上の写真で、ガッレンガ校舎の前から手前に向けて伸びている茶色の部分が、歩行者用の階段になっています。上から撮影したので分かりにくいのですが、この階段は急傾斜で、歩くのにはかなり厳しい心臓破りの階段です。
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 けれども、少し上に登ると、緑の山々の上に連なる城壁や四方に伸びるペルージャの町並みが見えて、眺めが本当に美しいのです。高い位置にいるために、真下に目をやると、家々の壁の間に木や花に覆われた緑の庭が広がっているのも見ることができます。階段の壁に心ない落書きがあるのが残念。
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 まだまだ登り道が続きます。上の写真で、建物がある場所、木の下に学校遠足の児童たちが集っている場所まで、歩いて登らなければいけません。(写真には見えませんが)この建物の正面に、市立図書館があり、学生生活を送っていた頃は、本を借りたり勉強したり、インターネットを利用したりするために、ガッレンガ校舎と図書館の間を往復することがよくありました。距離が最短であるために、この階段を登ることが多かったのですが、暑い夏は図書館にたどり着く前にすっかり汗だくになってしまい、遠回りでもなだらかな道(エトルリア門の下を通る道)を選べばよかったとよく後悔したものです。
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 あと少しで、階段も終わり。ここまで来ると、再び下方にガッレンガ校舎が見えます。美しい町並みの向こうには緑のなだらかな丘が見えるのですが、その丘のさらに後方にうっすらと見える山、フタコブラクダのこぶのような形をした山が、これまでも何度かお話したテッツィオ山(Monte Tezio)です。

 観光にペルージャにいらっしゃる方には、中心街からエトルリア門まで降りるときには、この階段を下り、再び中心街に戻るときには、エトルリア門の右手にあるなだらかな坂道を登って、美しいパノラマや町並み(上から3枚目の写真)を楽しみながら歩かれることをおすすめします。

 ペルージャの町はただでさえ坂や階段、歩くところが多いので、この心臓破りの階段で疲れてしまうと、あとが大変だと思うからです。

 さて、ガッレンガ校舎とペルージャの中心街を結ぶ道が、いかに眺めの美しいものであるかを述べてきたのですが、ここで、話を元に戻して、ペルージャ外国人大学の他の校舎も見てみましょう。
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 こちらはPalazzina Valitutti。「授業風景」の記事には、雨の日に正面から撮影した写真を載せましたが、今日は斜め横から撮ってみました。写真の奥の方に見える修復中の塔は、聖ドメニコ教会のものです。歴史ある教会で、修道院もあり、今なお修道士たち(monaci、単数形はmonaco)が祈りに捧げる日々を送っています。写真の右側手前の部分に、今日もわたしが授業をした教室があります。この教室内で、先週の授業中に学生たちをとった写真も、やはり「授業風景」の記事にあります。写真でお分かりのように、朝の授業では教室に日が当たらないので、わたしのほうから学生たちに、日本語で、「電気をつけましょうか。」、「電気をつけてください。」と言って、「~ましょうか」、「~てください」という表現の復習をするのにも役立ちます。
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 左手に見えるのはPalazzina Valitutti。この1階に、いつもお世話になっている語学助手の先生方の研究室(Sala del Lettorato)があります。日本語だけではなく、スペイン語や英語、アラビア語の先生方も皆利用するため、落ち着いた雰囲気ではないときもたまにあります。そして、この校舎の2階に、大学や語学講座に通う学生たちがコンピュータやインターネットを利用できる情報処理室(Sala informatica)があり、何十台ものコンピュータが学生に無料で開放されています。教室もいくつかあり、つい最近になってPalazzina Valituttiが完成するまでは、わたしの授業はここ、あるいはPalazzo Gallengaで行っていました。

 写真の右手に見えるのが食堂(mensa)です。学生たちが手軽にバランスのとれた食事をとれる場所で、セルフサービスで、いくつかあるメニューや組み合わせの中から、自分の食べたいものを選んでいきます。値段は安いし、栄養のバランスも取れ、何より便利ではやいのですが、味はまずまず、といったところです。

 校舎の右手で、赤紫色の鮮やかな花を咲かせている木は、セイヨウハナズオウ。イタリア語では、albero di Giudaと呼ばれ、これは「ユダの木」という意味です。弟子でありながらイエス・キリストを裏切ったユダ(イタリア語で「Giuda」)がキリストの死後に悔恨の情に襲われて、この木の下で自ら首をくくって死んだという俗信から来る名前のようです。
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 最後になりましたが、これがPalazzina Prosciutti。イタリア語の入門・初級の授業はほとんどがこの校舎で行われるようです。教育実習のために、わたしもここで授業観察をさせていただきました。世界各国からさまざまな年齢層の学生がイタリア語を学習しに来ています。

 この近年は、伊中両政府が協力して実施中のマルコ・ポーロプログラムのために、中国人学生が毎年イタリアの大学に多数留学しています。ペルージャ外国人大学は、そうした中国人学生たちが、まずイタリア語の力を十分につけるための語学講座も開設しています。このプログラムを利用して他の大学に入学する前に当学に来る中国人学生の数があまりにも多い上、イタリア語学習は中国人学生にとってはとりわけ難しく、他言語を母国語とする人以上の困難があるために、現在こうした学生に対しては、彼ら専用の授業を、レベルによってクラス分けをした上で実施しています。

 校舎の奥の方、手前に見える1階建ての小さい建物はバール(bar)です。コーヒーなどの飲み物を頼んだり、菓子パンやサンドイッチなどを買って食べたりできるので便利です。

 今日はとても天気がよかったので、授業が終わってから、うれしそうにあちこちで写真を撮影していたら、帰りのバスに乗り遅れてしまい、昼食の支度が遅くなってしまったのでありました。

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by milletti_naoko | 2010-04-30 19:30 | Umbria | Trackback | Comments(5)
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Commented by いづみ at 2012-10-20 21:09 x
初めまして、この10月8日からペルージャに3泊して帰国したばかりのリタイア前夫婦です。ペルージャといえばサッカーの中田さんで初めて知った都市名でしたが、こちらのページを訪問して情報収集し、歴史的な街並みに興味が湧き始めていました。
死ぬまでに一度外国で暮らしてみたいという私の想いに協力してくれたか、今年末にリタイアする夫が今後失業保険を貰う半年間にイタリア語を勉強して、外国人語学大学に留学したいと言い出し、今回の旅にはペルージャとシエナの2カ所が含まれたのでした。
FS駅からミニメトロで中心地のホテルまでスーツケースを引きながら楽にアクセス出来たのがまずは好印象、街も綺麗で高低差があることが山歩きが趣味の我々には嬉しく、市内やアッシジまで歩き回って楽しみました。
ペルージャの外国人語学大学の事務室では親切で丁寧な説明を受け、大都会ではなく素朴で小振りな古都は勉学には相応しいなと思えました。レストランも美味しいところばかりに当り秋のウンブリアの味を堪能しましたし。
今後もしっかりこちらのページを訪問して情報収集をさせて頂きたく、よろしくお願い致します。
Commented by milletti_naoko at 2012-10-21 01:56
いづみさん、はじめまして。10月初めにペルージャにいらしたんですね! うれしくお優しいコメントをありがとうございます。ウンブリアやペルージャは、町並みや自然、食に芸術・歴史と、魅力の多い場所なのに、日本ではあまり観光地としては知られていないのをつねづね残念に思っていて、そういうウンブリアの魅力を伝えたいということも、わたしがこのブログを続けている理由の一つです。お優しいだんなさまですね。ご自分もイタリア語を、まずは日本で、それからイタリアで学ぼうというのが頼もしいですね。お二人で一緒に勉強されると、お互いにいい刺激になるかもしれません。メルマガの読者で、時々コメントやメールをくださる方には、すでに退職されたという男性も多く、その中には、ペルージャ外国人大学の語学講座に、すでに二度通われた方もいらっしゃるんですよ。(つづく)
Commented by milletti_naoko at 2012-10-21 01:59
いづみさんへ(上からの続きです)

わたしはシエナ外国人大学は、通ったのが大学院課程だけだったのですが、ペルージャもシエナも、外国人大学では、係りの人が親切な場合はあっても、実際に手続きとなると、「イタリア暮らしの洗礼」となる情報不足や不親切、長い列で大変なことも出てくるかと思います。それは、大学だけではなく、郵便局や警察、役所でも同じことなので、日本とは違うのだという覚悟と忍耐が必要になります。シエナも美しい町ですが、物価がとにかく高かったことを覚えています。シエナもペルージャも近郊には山歩きを楽しめるところがたくさんあります。今は狩猟のシーズンで、散歩中に身の危険を感じるときもありますが、ペルージャの周辺には、アッシジ、テッツィオ山、トラジメーノ湖などなど、バスや電車で行けるところに、魅力的な散歩コースがたくさんあります。そういう散歩コースも記事にしていますので、興味があれば、参考にしてください。こちらこそ、これからもよろしくお願いします。
Commented by いづみ at 2012-10-21 10:05 x
早速のお返事をありがとうございます。
確かに異文化での手続きには難儀するだろうと思います。
大学事務室でも、まずは大使館等で情報収集をして下さいと言われました。頑張ってみます。
イタリアは過去何回かの旅行で、北はアオスタ、ボルツァーノから南はシチリアまで主にレンタカーで訪問し、アグリツーリズモにも滞在して、人の温かさが大好きになりました。
その中でペルージャは暑さ寒さは厳しいものの好ましい街の様に思えました。永年熱帯で単身赴任していた夫は、そこでの一番のご馳走がイタリアンだったそうで、これがイタリア好きの根源かも知れませんが。
Commented by milletti_naoko at 2012-10-22 03:29
いづみさん、どういたしまして。外国人大学は、老若男女を問わず(と言っても、やっぱり若い人が多いでしょうか)、日本からも多くの方が訪れるので、ご存じかもしれませんが、ウェブにも、日本語版の語学講座案内があります。参考までに、リンクを貼っておきますね。
https://www.unistrapg.it/sites/www.unistrapg.it/files/didattica/clic/120801-giapponese.pdf

大使館か領事館で就学ビザを申請するところから、あるいは留学先に申請書を送るところから、手続きは始まっていくと思います。イタリアをあちこち訪ねていらっしゃるんですね! ペルージャは意外と、南イタリアから来ている学生や社会人の多い町なんですよ。


日本語教師・通訳・翻訳家。元高校国語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより


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