イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

アドリア海は俺の海 ~沿岸ミニクルーズ

 友人のスピーディは、アドリア海岸の沿岸ミニクルーズを行う小型観光船アンドレーア・ドーリア号の船長です。
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 6月19日土曜日の午後、親しい友人を招いて、ミニクルーズをプレゼントしてくれました。

 アンドレーア・ドーリア号(ANDREA DORIA)は、わたしたちの今回の旅とほぼ同内容のクルーズを始め、リミニのイルカ水族館(Delfinario)を訪ねるクルーズや沿岸を長く旅して帰りの船中で魚介類とワインを楽しめるクルーズなど、興味深い旅を、一般の観光客にも提供しています。

 というわけで、今回は観光案内も兼ねて、このミニクルーズ体験について、お話します。

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 出発地点の、リミニ県、イジェア・マリーナ(Igea Marina)の港で、午前中の航海を終えて戻ってきたスピーディたちに、皆であいさつ。 カウボーイ・ハットをかぶり、両手を高く掲げているのは、スピーディの父君、前船長です。

 イジェア・マリーナは海岸沿いの小さな町で、海岸の他の町に比べて、安い値段で、海水浴や海辺のホテルの宿泊ができるため、以前からドイツ人観光客が多かったのですが、最近はロシア人観光客も増えてきているそうです。夫の両親が、夫が小さい頃から、子供たちを連れて毎年海辺での休暇に訪れていたのが、このイジェア・マリーナです。

 夫は、その縁で知り合った幼なじみのフランコを始めとする友人が大勢いる上に、イジェア・マリーナが、アドリア海岸の他の町に比べて、混雑せず静かなのが気に入って、アドリア海岸で休暇と言えば、この町を訪れているのですが、アンドレーア・ドーリア号が発着するのは、このイジェア・マリーナの港です。

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 皆で持ちよった料理や果物で、昼食。写真で皆が食べているのは、フランコが作った魚介類のトマトソースであえたパスタです。

 窓ガラスの外は、どしゃぶりの大雨です。

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 午後2時15分に、予定通り、イジェア・マリーナの港を出発します。空が雲に覆われていて、時々小雨も降りましたが、遠くリミニまで、海岸線をずっと見渡すことができます。ビーチ・パラソルの並ぶ砂浜がだんだん遠ざかっていきます。

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 スピーディと奥さんのブルーナです。実は、スピーディは、若くから船に乗り込み、かつて船長であった父君と働いていた海の男であるだけではなく、大地の男でもあります。スペインのサンティアーゴ・デ・コンポステーラへの巡礼を、ある年はフランスから、ある年はポルトガルからと出発地点を変えて、もう何度か達成しており、一度は、ブルーナも同行しています。

 フランコやマヌエーラもすでに何度かこの巡礼に参加したことがあるのですが、今年フランコは、なんとイジェア・マリーナの自宅からスペインのサンティアーゴ・デ・コンポステーラまでの2600km近くの距離を、8月から3か月かけて歩き通そうと計画しています。フランコは足が達者で速いし、わたしたちが昨年ラ・ヴェルナまでの巡礼をした際には、62歳のオランダの方で、オランダの自宅からヴァチカン市国までの2500kmを3か月で歩こうとしていたグスターヴォにも会っていますから、フランコになら確実にできるとは思うのですが、この行程の一部には、スピーディも参加するつもりのようです。ちなみに、「スピーディ」はニックネームですが、だれもかれも、彼をこう呼んでいます。

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 船が、到着したチェゼナーティコ(Cesenatico)の港に入っていきます。

 このチェゼナーティコの港と運河は、あのレオナルド・ダ・ヴィンチが、チェーザレ・ボルジアの依頼を受けて、16世紀初頭に設計した見事なものです。

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 こちらは、下船前に、夫と二人でチェゼナーティコ港で撮ってもらった写真です。

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 お金を払って観光する場合には、チェゼナーティコの町で過ごせる時間が2時間で、航海術博物館(Museo della Marineria)の入館料やフライド・フィッシュの値段も、観光料金に含まれています。

 この日は、魚介類は昼食に食べたし、すでに博物館を訪れた友人も多いので、3時半から4時半まで、1時間、中心街を散歩することになりました。わたしは、今回初めてチェゼナーティコの町を訪れました。運河に並ぶ船や、川沿いの町並みが美しいすてきな町です。

 興味深いのが、町の中央にある貯蔵所広場(Piazze delle Conserve)です。

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 14世紀から19世紀にかけて、魚を貯蔵するために、高い砂丘に大きな穴を掘り、雪や氷を使って、魚を貯蔵していた貯蔵所(conserva)が、この広場のあちこちにあり、作りや大きさ、素材や深さがそれぞれ違っています。上の写真のように、深く掘った穴の周囲をレンガで覆ったものもあれば、下の写真のように、木の蓋で覆いをしてあるものもあります。

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 再び運河の見える通りに出ると、歴史あるデザインの美しい船が、幾艘か並んでいます。

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 冬には、この船の上に、人や動物の模型を並べて、キリスト生誕の場面を再現するプレゼーペ(presepe)が飾られ、夜間には照明もあって、とても美しいということです。

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 友人たちと楽しい散歩を終えて、約束の4時半の少し前に、港に停泊中のアンドレーア・ドーリア号に戻りました。

 うちの夫もそうですが、船長のスピーディも時間を正確に守る人です。船は予定通り、4時半にチェゼナーティコの港を出発します。

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 この写真に見えるチェゼナーティコの高層ビルは、1958年に建てられ、高さは115メートルで、35階あります。かつて、長年の間、ヨーロッパで最も高い建築物であったとのことです。

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 チェゼナーティコから船が遠ざかっていくのが、高層ビルがどんどん小さく見えていくことから、実感できます。

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 幸い帰りの航海では、暗雲が姿を消し、青空が広がり始めました。

 海岸の向こうには、青く連なる山並みも見えます。天気がいいと、潮風もほほに心地よく、船旅を一層楽しむことができます。帰りは、行きには見かけなかった帆船(barca a vela)をいくつも見かけました。

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 30分の航海の後、船はイジェーア・マリーナの港へと戻りつつあります。

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 やはり予定通り、午後5時に港に到着し、下船。こちらが、わたしたちに、すてきな船の旅を贈ってくれたアンドレーア・ドーリア号です。

 皆さんも、アドリア海岸にお越しの際は、ぜひミニクルーズを経験してみてください。陸と違って、渋滞を経験せずに、美しい海岸の風景を楽しみながら、他の町を訪れることが可能です。 

*追記(2014年3月20日)
 不況のため、残念ながら船は売却され、これからはベネチアの海を行くことになりました。週末に、船長スピーディが、アンドレーア・ドーリア号での最後の船旅を、ベネチアで贈ってくれて、すばらしい風景を楽しみ、アンドレーア・ドーリアに別れを告げることができました。興味のある方は、以下の記事をご覧ください。
- ベネチア船で島めぐり1 / Giro delle lagune & visita delle isole a Venezia (16/3/2014)
- ベネチア船で島めぐり2 / Giro delle lagune & visita delle isole a Venezia 2 (16/3/2014)

Articolo scritto da Naoko Ishii

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by milletti_naoko | 2010-06-22 20:00 | Emilia-Romagna | Comments(0)