イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

奇跡の救いに感謝、フランコ訪ねて2

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 勢いよく走る馬に振り落とされて落馬し、あるいは、戦争中に正面から銃撃を受け、あるいは、重い病に床に伏す、そういった死に直面した場面を描いた絵が、壁にいくつも飾られています。

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 こちらは、司祭が教会正面の階段を落ちていく瞬間をとらえた絵です。

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 ここには、馬車にもろにひかれてしまう人や、高いところから落下中の人が描かれています。

 これらは、災難にあった人々が、こうした死と隣り合わせの状況から救ってくれたこと、祈りをかなえてくれたことに感謝して、神や聖人に捧げる奉納物(ex voto)です。PGRは、 Per grazia ricevuta、「受けた恩寵に感謝して」という言葉の頭文字を取ったもので、祈願成就に感謝しての奉納物である旨を表しています。

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 どの絵にも、幼子イエスを抱いた聖母マリアが描かれているのは、これらの奉納物が、聖母マリアに受けた恩寵に感謝して、捧げられたものだからです。

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 というのも、ここは、ボッカディリーオの恩寵の聖処女マリア教会(Santuario della Beata Vergine delle Grazie di Boccadirio)、名前のとおり聖母マリアへの崇拝から建てられた教会だからです。

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 1480年に、この地、ボッカディリーオに、二人の幼い少年少女が羊を連れてやって来ました。その眼前に聖母マリアが現われ、少年には神父に、少女には尼僧になるように言い、また、「この地にわたしのために教会が建つことを望んでいます。ここに祈りに来る人々にはすべて恩寵と庇護を約束します。」と語ったそうです。

 聖母の言葉どおり、二人は神父、尼僧となって、神に捧げる生涯を送り、まずは、この地に小さな教会が建てられ、その後、16世紀初めから、現在の教会の建立が始まりました。

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 こうした教会の歴史は、教会の柱廊の壁に書かれていました。(上の写真)

 無数の奉納物は、教会の祭壇奥の部屋にあります。

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 危機に陥った身を描いた絵だけではなく、さまざまな奉納物が飾られています。

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 車のハンドルや車輪は、事故から救ってくれたことへの感謝、杖の数々は、杖なしでも歩けるようになったことへの感謝を込めて、奉納されたものなのでしょう。

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 この、フィレンツェとボローニャのほぼ中間に位置するボッカディリーオの教会を、わたしたちが初めて訪れたのは、7月20日火曜日で、チンクエ・テッレや百の湖自然公園での旅行を終えて、ペルージャへと帰る途中のことでした。

 高速道路を避け、山中を進んでいたところを道に迷い、店の人に道を尋ねたときに、「美しい教会が近くにあるので、ぜひ訪れるといい」と教えてもらったのが、こちらの教会でした。その日は残念ながら、ちょうど閉まっている時間帯に到着したため、周囲だけを回ったのですが、今回は、友人のマヌエーラたちと落ち合わせて、皆でこの教会を訪ねました。

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 こうして教会を訪れたのは、8月16日月曜日の正午頃でした。前日の8月15日は、イタリアでは「夏を謳歌しに海へ山へと行くフェッラゴストの祝祭」と捉えている人が多いような気がしますが、この日は、聖母マリア被昇天(Assunzione della Beata Vergine Maria)の祝祭日でもありました。ミサで、「苦しみも迷いも、聖母マリアに祈りを捧げ、身を委ねるように」という説教があったその翌日に、聖母マリアが出現した地に、聖母を敬って建てられた教会を訪れることの不思議を思いました。

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 実は、マヌエーラたちは、リミニの自宅からスペインのサンティアーゴ・デ・コンポステーラを目指して巡礼中のフランコを週末に訪れて、この月曜日は、自宅へと戻る途中でした。一方、わたしたちも巡礼中のフランコを追いかけようと、ペルージャを発ったのですが、フェッラゴストの渋滞を避けようと、出発は月曜日。そこで、マヌエーラたちと、以前見られなかったこの教会で落ち合って、一緒に訪れようということになったわけです。

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 こちらは、Locanda Pellegrino Trattoria Bar Albergo、(巡礼者の宿、トラットリーア・バール・ホテル)のテラスです。この建物は、ボッカディリーオの教会のすぐ脇に建っています。一つ前の写真の壁に貼ってある、ポルチーニ茸の写真満載のポスターでもお分かりのように、キノコや獣の肉などの山の幸を非常においしく味わえる店でした。

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 昼食の後は、皆で教会近くの山をしばらく散歩しました。上の写真で手前に見える黄色い建物が、Locanda Pellegrinoです。

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 散歩の後で別れを告げ、マヌエーラたちは家路を目指し、わたしとルイージはフランコと合流するべく、スカッファイオーロ湖近くの山小屋を目指しました。ところが、この教会に長居しすぎたため、そして、道に迷ったために、フランコと実際に会うのは、翌日の8月17日火曜日となりました。

 そして、フランコと合流できなかったことを残念に思いつつ、最も近い場所に宿泊したのですが、なんとその宿と土地も、聖母マリアに非常に縁の深いところだったのです。

                 「フランコ訪ねて3」(リンクはこちら)につづく

Articolo scritto da Naoko Ishii

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by milletti_naoko | 2010-09-26 23:54 | Emilia-Romagna | Comments(0)