電車でおしゃべり2

 一方、電車の乗り換えが不便だと嘆いていたロシア人女性(記事はこちら)が、興味を持っていたのは、なぜ日本人のわたしが、イタリアに来ることになったのかでした。

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Duomo & Fontana Maggiore, Perugia 7/11/2011

 日本で、そして、イタリアで教える給料が、それぞれどのくらいかを聞かれて、わたしが大ざっぱに答えると、女性はさらに質問を重ねました。
「ほらね、だから疑問に思っていたの。イタリアの方が仕事を探すのも難しいし、給料も低いのに、どうしてイタリアに暮らすようになったの?」

 電車に乗り込んだときには、彼女も老紳士も、わたしからは廊下を挟んだ向こうの席に腰を下ろしていたのですが、わたしが震災後の日本の様子について話していたとき、「わたしは耳が遠いから……」と、老紳士がわたしの向かいの席に座り、ロシア人女性も、紳士の隣に席を移していました。

 そこで、わたしがイタリア語を勉強し、イタリアに暮らし始めるようになったのは、ひょんなきっかけからだということを、語り始めました。かつて、日本の高校で国語を教える傍ら、英語の再勉強にも熱を注いでいたこと。『風と共に去りぬ』を原書で読んで、かつて高校生の頃に日本語で読んだときよりも、深い感動を覚え、他者の作ではあるものの、続いて続編の『Scarlett』を手に取ったこと。物語に夢中になると同時に(ただ、当時出ていた日本語訳は、本屋の店先で斜め読みしただけですが、原書に忠実ではなく、むしろ翻案だという印象を受けました。)、舞台となったアイルランドの人々の人間らしさ、強さが心に残り、文化と風景のすばらしさに魅かれ、いつか行って見たいなと思ったこと。それがきっかけで、その夏、2週間語学留学したダブリンの英語学校では、学校でもクラスでも、生徒の過半数がイタリア人で、それで、朝は一緒に授業を受け、午後は学校のツアーに参加し、夜は一緒に、パブで遅くまでおしゃべりという毎日を繰り返すうちに、イタリア人とイタリア文化にとても興味を持つようになったこと。アイルランドを訪ねたのに、結局は、イタリアに魅かれて帰り、仲よくなったサルデーニャの女性たち二人を、翌夏島に訪ねる約束もしたので、帰国後すぐに、イタリア語を勉強し始め、勉強や旅を通して、イタリアにますます魅力を感じるようになったこと。留学が終われば、日本に帰って仕事を探すつもりだったところ、夫と出会って、イタリアに残ることにしたこと……

 この長い話に、女性も老紳士も、興味を持って、耳を傾けてくれました。そのあと、実は、ロシア人女性も、本当はアイルランドに仕事を見つけるつもりだったのに、なかなか見つからずに、イタリアに来ることになった事情を語ってくれました。こんなふうに、直接イタリアではなく、最初は他の国を考えていた人が多いのよ、という女性の言葉にうなずくわたしと老紳士。

 そして、なんと老紳士の息子さんが、日本人女性と結婚して、フィレンツェに暮らしているということが、分かりました。結婚後、お嫁さんのご両親を訪ねて、大阪に行ったとき、日本のタクシーにひどく感動したとのことです。自動でドアが開くこと、座席が白く美しいレースで飾られていること…… いろいろな店で、まったく出会ったことのない人々が、旧知の友人であるかのように、親切に歓迎してくれたことにも、いたく感激された様子でした。それを聞いたわたしは、ちょうどそれと同じことを、今回イタリアを訪問された日本からのお客さんが、イタリアについて語っていたことを思い出して、おもしろいなと思いました。

 3人ともペルージャに住んでいることが分かったので、老紳士が、プリオーリ通りで開かれる哲学カフェに、わたしたちを招待してくれました。小さい町なので、いつかまたどこかで会えるでしょうと、互いに、出会いと楽しいおしゃべりに感謝しながら、あいさつをして、電車を降りました。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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by milletti_naoko | 2011-11-25 12:06 | Altro | Trackback | Comments(12)
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Commented by oliva16 at 2011-11-25 21:35
なおこさん、電車内の心温まるエピソードもさることながら、なおこさんがイタリアに住むことになったいきさつを興味深く拝読しました。何かにひとたび関心を持つと、一途でいらっしゃるんですねぇ。。。私は最初から一歩引いてしまうタチなので、見習いたいです。
Commented by milletti_naoko at 2011-11-25 22:14
olivaさん、こんにちは。長い間電車に揺られて帰るのは大変だなと思っていたのですが、すてきな道連れのおかげで、あっという間に時間が過ぎてしまいました。昔から、これと決めたことには、ひたむきに頑張るのですが、何かにかまけて、他のことがお留守になりすぎるのが、わたしのいけないところです。必死で努力すれば必ず実現できる、そういう確信があるから、努力できたような気がします。それってきっと、勉強に限らず、他のことにも言えるはずと、今お返事のコメントを書きながら、思いました。いつもきちんと整理整頓ができるように、これも心がけと努力一つで、できるはずなんですよね。わたしも頑張ります。
Commented by かや at 2011-11-26 01:34 x
こんばんは☆
電車でのおしゃべりの続きですね。
なおこさんがイタリアへ行かれるまでにはそのようないきさつがあったのですね。
やっぱり、ヨーロッパに行くとイタリアに興味をひかれるものなんでしょうか。
同じペルージャの方だったのですね。また会えるといいですね。

凸d(^ー^)pochi
Commented by クロちゃん at 2011-11-26 05:04 x
なおこさん、おはようございます。♪
初対面の人でもお話するとお互いに共感することがあって親しみがわきますね。
電車でのおしゃべりも良き時間と思います。
日本の電車内は…。
それぞれ携帯やスマートフォンを見つめる光景が多いですが…。(^^ゞ
機械が話し相手はちと寂しいです。(^^)/
Commented by milletti_naoko at 2011-11-26 06:16
こんばんは。ロンドンやダブリンなど、もともと他のヨーロッパの国に出かけて、なぜかイタリアに関心を持ったため、イタリアに来ることにしたという人は、意外と多いようですよ。
Commented by milletti_naoko at 2011-11-26 06:18
クロちゃん、おはようございます♪ イタリアでも、ふだんは電車の中で、一人で窓からの景色を眺めることが多いのですが、今回は思いがけず、楽しくおしゃべりをして過ごすことができてうれしかったです。
Commented by koba at 2011-11-26 10:39 x
引き込まれそうな会話なのでしょうね。仕事を求めて国外に出るのは日本では珍しいことでしょうが、ロシアとかEUではあたりまえなんでしょうか?いつもながら、なおこさんの人柄が生み出す機会なんでしょうね。うちのあたりの田舎でも交換留学生の高校生を電車内で見かけます。ぼーと待ち時間所在なく空とか山とか見て居そうなとき、なにを思われているのでしょうか。話しかける人も居なくて。話しかけると溢れんばかりにしゃべりだします。母国語でない英語でも会話したい思いが伝わりました。
老婆心ながら、完璧を目指さなくてもいいのですよ。相田みつおさんの世界もあるんです。
Commented by ムームー at 2011-11-26 13:16 x
なおこさんこんにちは。
イタリアに暮らすようになったお話、みなさん聞き入っておられたのですね。
そこに惹かれ出会い暮らすようになるのには、やはり
格別なつながりがきっとあるんでしょうね。
なおこさん、温かくて優しい言葉をありがとうございます。
夕方から病院へ行ってきます~
Commented by milletti_naoko at 2011-11-26 17:44
kobaさん、おはようございます。旧ソ連圏や南米から、仕事を求めてイタリアやヨーロッパに来る人は大勢います。ロシア人女性の一言に、わたしが答え、さらに老紳士が口を挟んだのがきっかけで、ずっとおしゃべりが続いたのですが、たまたま近い座席に腰を下ろしたためというのもあって、めぐりあいの不思議を思います。留学生もきっと、英語でも日本語でも、地元の方と話ができるとうれしいと思いますよ。日本の高校で教えていた頃、よくJET program(外国語青年招致事業)で、日本に英語を教えに来た外国人の先生と話す機会があったのですが、愛媛県のような地方の方が、住民にお年寄りが多いためもあって、顔を合わせると話しかけてくれることが多いし、しかも、英語ではなく、自分たちの勉強したいと思っている日本語で話しかけてくれるのが何よりうれしいと言っていました。ペルージャ外国人大学からも、日本文化や日本人が大好きで、日本に留学するという若者が、毎年大勢います。お優しい言葉をありがとうございます。相田みつをさんのすてきな言葉の数々、わたしも大好きです。
Commented by milletti_naoko at 2011-11-26 17:48
ムームーさん、おはようございます。電車の中でも、ブログを通じても、星の数ほど人がいる中で、こうしてふとしたきっかけで、出会ったり、お話しするようになったり、というのは、やはり特別なつながりや縁があるのだと、わたしも思います。
どういたしまして。何かと大変だと思いますが、できることは他の方にもお願いして、ご自身のお体も大切に。早く快方に向かわれますように、わたしも遠くからですが、お祈りしています。
Commented by ゆん at 2011-11-26 18:23 x
最初はアイルランドだったのですね~
そこからイタリア語を学ばれて、今ではペラペラで通訳や学校の先生をされてるだなんて、スゴ過ぎます。何でも楽な方に流されがちで、漫然と過ごしている私とは大違いで、なおこさん素晴らしいです。
Commented by milletti_naoko at 2011-11-27 06:50
ゆんさん、そうなんです。人生って、本当に不思議だなと思います。ありがとうございます。でも、ゆんさんはしっかりされているけれど、逆にわたしがおろそかにしていることというのも、かなりあると思いますよ。通訳も日本語教師も、仕事があるときはあるけれど、ないときはないのに、だからと言って、掃除や畑・庭仕事に力が入るわけではないので、夫にはいつも眉をしかめられています。


日本語教師・通訳・翻訳家。元高校国語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより


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