人が住みよい世の中を

 今回のロンドン旅行中に驚いたことの一つは、駅のつくりが、あまりにも無機質で、その機械的構造がむきだしになっていることです。

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 日本では、駅の構内が白い壁に覆われ、違和感のない空間であることが多かったように覚えているし、ペルージャで駅や各地に設置されたエスカレータは、ガラス張りで外の風景が見えたり、両側が石やレンガの壁に覆われたりしています。

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 それに対して、ロンドンの地下鉄の駅では、表面を何かで覆ったり、外観を心地のよいものにしようという意図が感じられず、構造がそのままさらけ出されているような印象を受けました。

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 そのためか、大勢の人々が駅の構内を移動するのを見て、人間が、自分の用事のために、地下鉄や駅を利用しているというよりは、地下鉄網や駅という巨大な機械的組織体が、人間を、工場の部品のように、ベルトコンベアによって次々と運んでいるかのような、あるいは、自己内部にある消化組織に、うまくさばいて送り込んでいるかのような、そういう印象を受けました。人が移動のために、地下鉄をうまく利用しているのか。それとも、地下鉄があるがために、多くの人が仕事や余暇のために、あちらからこちらへと、絶え間なく移動することを、余儀なくされているのか。

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 人間が、暮らしをより便利に、豊かにするために作り出したはずの機械が、やがて主権を握り、人々に非人間的な選択や生活を強いるようになる。昔大好きで見ていたアニメ、『銀河鉄道999』で突きつけられていた問題を、かつて中学生だったわたしは、現実にはほど遠い問題だと思っていたのですが、最近は、ロンドンの地下鉄に限らず、この問題が、チャーリー・チャップリンが名画、『モダン・タイムズ』で訴えていたのと同じくらい現実的で、切実なものなのではないかと感じる機会が多くなりました。

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 原発や携帯電話にしても、本来生活を豊かにするために登場したはずなのに、それが健康に危害を与える可能性が高いと分かっても、社会の、経済のしくみによって、温存され、人の暮らしや命が脅かされ続けています。(記事はこちら

 本当に大切なもの、守るべきものは何かを、まずはわたしたち自身が十分に意識して、目先の経済的損失にとらわれず、自らの進退に危険が生じても、市民や市民の安全な暮らしを大切にしてくれるような、そういう政治家に国政を委ねたい。ロンドンの地下鉄駅で、何度もエスカレータに運ばれながら、そんなことを思いました。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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by milletti_naoko | 2011-12-13 16:01 | Altro | Trackback | Comments(8)
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Commented by クロちゃん at 2011-12-14 07:36 x
なおこさん、おはようございます。♪
確かに機械の中で生活しているって感じます。
未来を想像した昔のアニメが現実になりつつあります。
それゆえ、機械から開放されて自然を求める時間が嬉しく感じます。
これでタイムマシンが発明されたら、アニメの夢の世界がほとんど現実となりましょう。(^^)/
Commented by yuzuko at 2011-12-14 07:39 x
「本当に大切なもの、守るべきものは何か」というなおこさんの問いを、今年は、深く考えざるを得ない年だったように思います。しかしその一方で、効率という名目のもとで、考えることを阻害されかねないとも思えます。そして日本人が大切にしてきた感情がますますバランスを崩していくのではないかとの危惧を持ちます。求めてやまない大切なものを、なくさないように、心して、着実な日々を、今日も、そして明日も過ごしていきたいと思います。
Commented by ムームー at 2011-12-14 12:35 x
なおこさんこんにちは~
いつも素晴らしい言葉をありがとうございます、ほっといたしますの。
お伽の国のような町並みなのに、ただ運ぶだけのものになってるのですね、私達は細かい所まで気遣いされてると嬉しくなり安心だと思います。
日本も今の政権にはがっかりしていますが、守られて安心した暮らしが出来ることを望みますね。
実際に体験されたお話は説得力がありますわぁ~
Commented by koba at 2011-12-14 15:48 x
こんにちわ。いつもながら考えられるのですね。人が住みよい社会?成長しながら住みよい方向へ。ふっと思い出したのですが、中学生の頃先生が「イギリスの道路は全部舗装がされている」嘘か誠か。私の周りで舗装道路は国道2号線だけだったように思います。半世紀以上前便利な機械はすくなかった。化学工業も。どちらが住みよいか正直解りません。でも、今の快適さを手放せません。毎朝炭をおこし鉄瓶で湯を沸かす。昔はそれしかなっかたですが、今はとんでもない贅沢です。
歴史は「為政者がつくるのではなく、民がつくる」と信じています。
Commented by milletti_naoko at 2011-12-14 16:40
クロちゃん、おはようございます♪ そうですよね。昔はテレビ電話なんて、遠い未来に可能かしらと思ったものですが、今はビデオ会議やスカイプの利用が多いようです。便利はいいけれど、機械や科学技術の論理ではなく、人の論理、人や環境が大切だという視点を失わずに持ち続けたいものです。そういう意味で、クロちゃんのように、自然の中に出かけて、自分の足で歩く人が日本にも多いというのは、うれしいです。ガンダムやヤマト、ナウシカなどに見られる荒廃や危機に、地球や生活が脅かされることのありませんように。
Commented by milletti_naoko at 2011-12-14 16:43
ムームーさん、こちらこそありがとうございます。大変な中で、頑張っていられるムームーさんのお言葉を読むと、わたしもつまらないことで泣き言を言っていられないなと叱咤激励されます。イギリスの地下鉄駅がこうつくられているのは、ひょっとしたら意図的なデザインかもしれないなとは思うのですが、糖衣に包まれない薬をたくさん飲んだような苦味を、むきだしの機械構造の中を移動しながら、感じました。
Commented by milletti_naoko at 2011-12-14 17:07
ゆんさん、航空料金が安くて、本当に助かりました。232ユーロ、日本から届いたクレジットカード利用明細を見ると、25370円に換算されています。

施錠が壊れたスーツケースを開けると、「何か疑わしいものが入っている可能性があると考えて、検査しました」という税関発行のカードが入っていて、確かイタリア語で書かれていたので、ペルージャ空港の税関が錠を壊したのだと思います。夫もわたしも、鍵をわざわざ壊さずとも、荷物を預ける際に言ってくれれば、こちらから鍵を開けたのに、と思いました。ペルージャ空港に着いたときは、鍵は壊されていなかったものの、数いる乗客の中、わたしだけ税関に呼び出されて、スーツケースを開けるように言われたりもしました。今度からは、短い旅行なら、行きだけでもすべて手荷物として機内に持ち込むようにしたいと考えています。

ちなみにローマやミラノの空港では、イタリア到着時に、税関に機内預け入れの荷物を開けるように言われたことはないのに、ペルージャ空港では以前にもそういう経験があるので、特に検閲が厳しい、あるいはアジア系外国人がその対象になりやすいのかもしれません。
Commented by milletti_naoko at 2011-12-14 17:15
kobaさん、おはようございます。そう言えば、日本にいた頃、年上の先輩が、「自分はちょうど、掃除機や洗濯機など、いろんな家電が登場し、日常生活に普及する過渡期に育った」と、よく言っていました。義母が若い頃は、水は町中の給水所や森の泉に汲みに行き、義父はかなり離れたところでも、徒歩や自転車で出かけていたそうです。5年ほど前、薪をくべる暖房しかないところで暮らしたことが、わたしもありますが、薪を夫が準備し、それを二人で2階まで運び、しばしば薪をくべ直して、と暖房だけでもとても大変でした。ただ命を脅かしてまで便利さを追い求めるのは間違っていると思います。歴史をよい方向に築いていける、賢い民でありたいものです。


日本語教師・通訳・翻訳家。元高校国語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより


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