世界の中心、フォリンニョ?

 昨晩も、ペルージャの南東にあるフォリンニョ(Foligno)の町で、日本語の授業がありました。授業の最後に、「中」という漢字を教えたのですが、その使用例に、「中国」という国名がありました。

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 「どうして中国という名前なんですか。」という質問があったので、「自国が、世界の中心だと考えていたからです。」と説明すると、「ああ、フォリンニョと同じですね。」という答えが返ってきました。

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 フォリンニョが「世界の中心」(il centro del mondo, l’ombelico del mondo)と言われているという話は、一昨年、対馬市代表団の同行通訳として、フォリンニョ市役所を訪問したとき、フォリンニョ市長からも聞きました。日本の渋川市も同じく「世界の中心」とされているため、姉妹都市になっているんですよ、との言葉を訳しながら、そのときはぼんやりと、どういう理由で「世界の中心」と言われるのだろうと、考えていました。先週、友人たちと夕食を食べたときにも、この「フォリンニョが世界の中心」という話が出て、久しぶりに、市長の話を思い出したのですが、昨晩は、生徒の大半がフォリンニョ出身・在住なので、「いったいなぜか」を尋ねてみました。

 すると、先週、ペルージャの友人の口からも出たように、生徒たちからは、「かつてフォリンニョの中心街にあったバールの、ビリヤード台の中央の小柱が、世界の中心だったと言われているんですよ。」、「フォリンニョが世界の中心だというのは、フォリンニョだけではなく、ウンブリア、いえ、イタリア全体でも知られているし、そう言われているんですよ。」という返事がありました。ただ、なぜ世界の中心と言われているか、その理由と根拠については、皆が口をつぐむ中で、一人が自説を述べてくれました。

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Immagine presa da “Valle Umbra – hisory, art, culture and tradition”

 フォリンニョはイタリア半島の中心にあるので、イタリアが世界の中心という考えから、「フォリンニョは世界の中心」とされるようになったのではないかというのです。

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 それで、「イタリアの中心」(Centro d’Italia)だったら、ウンブリア州のナルニ(Narni)

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ラッツィオ州のリエーティ(Rieti)ではありませんか、そう書いた看板も、町で見かけましたよ。」と言うと、フォリンニョは、イタリア半島の中心であって、先の二つの町は、シチリア島も含めた場合の、イタリアの中心なのだと言うのです。確かに、シチリア島を除外すれば、イタリアの中心は、北方にずれます。

 この話がきっかけになって、リエーティでは、Ombelico d’Italia、Centro d’Italia(イタリアの中心)という言葉に、さまざまな言語の訳が添えてあるのだけれど、

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日本語では、こう書かれていたこと、左から右に向かって読む、他国語の訳が並ぶ中に、この言葉を見ると、「イタリヤの中心」ではなく、「心中のヤリタイ」(しんじゅうのやりたい)と読めてしまったので、

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 しばらく笑いが止まらなかったと、説明したら、思った以上に、皆がおもしろそうに聞いてくれました。

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 ついでに、「心中」(しんじゅう)や浄瑠璃作品についても、少し話しました。

 今日になって、生徒の一人が貼ってくれたリンクのおかげで、どうしてフォリンニョが世界の中心と言われるのか、それがイタリアじゅうに知られるようになったのかが分かりました。(下記リンク参照)説明によると、まさに昨日、生徒さんが言っていたとおりです。フォリンニョはイタリア半島の中心にあり、イタリア半島はヨーロッパと地中海の中央にあり、昔は、このヨーロッパと地中海が世界の中心と考えられていたために、古来、「フォリンニョは世界の中心だ」と語り継がれてきたそうです。それが、イタリアじゅうに知られるようになったのは、La Repubblica紙の元編集長、エウジェーニオ・スカルファリが、何年もにわたって、さまざまな記事に、繰り返しそれを書きつづったからだそうです。

 というわけで、日出づる処に生まれたわたしは、昨年から、世界の中心に、日本語を教えに出かけています。冒頭の写真は、片仮名学習やコミュニケーション練習のために、わたしが作った国名のカードです。贈り物が入っていた紙箱を、はさみで切り分けて作りました。クリスマス休暇明けには、このカードを使って、片仮名がどれだけ覚えられたかを確認しました。「はじめまして。(中略)わたしは~人です。」という、新たな出会いを模しての会話練習も、生徒全員がイタリア人なので、「イタリア人です」を繰り返さず、国名を覚え、片仮名を定着させるためにも、このカードを有効活用しています。会話をする際には、このカードを引き、引いた国が自分の出身地と仮定して、話をするわけです。

 だれしも自分の生まれ育った村や国が大切なわけで、日本の世界地図では、日本が地図の中心にありますが、ヨーロッパの世界地図では、ヨーロッパが中心になります。日本や中国・韓国は、イタリア語では、極東(Estremo Oriente)の国と呼ばれています。自国中心、自分中心ではなく、皆が互いのことを考え、尊重しあえる世の中に、少しでもなっていきますように。

Foligno è il Centro del Mondo ... lo sapevate?

- Spuntato furoi questo argomento ieri durante la lezione di giapponese.

- Da it. wikipedia: "Foligno si trova infatti, secondo la tradizione, al centro della penisola italiana, a sua volta al centro dell'Europa e del Mediterraneo, che anticamente era considerato il centro del mondo."

- L'argomento è saltato fuori perché ieri ho insegnato la parola giapponese (e anche cinese), 中国 che vuol dire 'Cina' e ho spiegato che i cinesi hanno chiamato così il loro Paese, ritenendolo il 'Centro del Mondo'.

- Molto probabilmente qualsiasi Paese del mondo mette il proprio Paese al centro del Mappamondo e noi essere umani tendono ad essere egocentrici. Le parole della pagina web seguente ci dà l'occasione per riflettere al proposito.
- Setterati.it - Il birillo rosso di Foligno. Io, Io, Io....

関連記事へのリンク
- 旅立ちの前に~「心中のヤリタイ」 / Rieti, Centro d’Italia (24/10/2010)

LINK
- it.wikipedia - Foligno
↑↑ Vedi ‘5.1. Folclore e tradizioni’
Dalla pagina web:
Foligno viene definita, per antica tradizione, (con una definizione amplificata da Eugenio Scalfari quando era direttore de La Repubblica, seppur male interpretava il senso storico della tradizione) il "centro del mondo" o, in fulginate, "lu centru de lu munnu". Foligno si trova infatti, secondo la tradizione, al centro della penisola italiana, a sua volta al centro dell'Europa e del Mediterraneo, che anticamente era considerato il centro del mondo.(…)
- LaMiaUmbria.it – Foligno “lu centru de lu munnu”

Articolo scritto da Naoko Ishii

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by milletti_naoko | 2013-01-29 15:31 | Insegnare Giapponese | Comments(13)
Commented by クロちゃん at 2013-01-30 06:20 x
なおこさん、おはようございます。♪
そういえば、日本の世界地図は日本が中心にあるように作られています。
世界の中心、日本の中心はどこだろう。
そんなことを考える時間も面白いです。
心中のヤリタイは思わず笑顔になりました。(^^)/
Commented by milletti_naoko at 2013-01-30 07:36
クロちゃん、こんばんは♪ そういう意味で、外国に出て、世界地図を見るとおもしろいし、海外では、いかに各国のニュース報道のニュース選びや姿勢まで、いろんなことが、自国の目線で語られているかが、よく分かります。

心中のヤリタイには、わたしも笑ってしまいました。右から左に書くように提案したのは、いったいどこの国のだれでしょうか???
Commented by kazu at 2013-01-30 17:39 x
なおこさん、こんにちは。素晴らしい授業をされているのですね。生徒さんはこんな授業なら楽しいでしょうね。会話もはずむだろな。世界の中心のお話も面白くて何度も読み返しました。心中の話もクスクスです。右から左に書くのは、元々日本語は縦書きで組んでいたからだと思いますが、右から左に書いている看板や本の題名やら古いものの中からよく見ますよね。日本も戦後になって、欧米風に左から右に変えたのでしょう。きっとこの「心中」を書いた方は、戦前の日本の何か文献でも見られたか、書いたご本人が第二次世界大戦前に生まれた人で、日本語を知っていた人だったかなって、いろいろと思いました。興味の尽きない楽しいお話ですね。
Commented by milletti_naoko at 2013-01-30 18:13
かずさん、こんにちは。大学の授業と違って、生徒さんが社会人で、出発時点のレベルにも差があったので、皆がついていけるように、かつ何か学べるようにと、工夫しながら、模索しながら授業をしています。わたしも、右から左に書いてあるのは、縦書きの名残だとは思うのですが、横書きの中に一つだけ混じっているから、読む方向は自然と左から右になってしまうんですよね。

明治時代の数学の教科書は、数式の関係もあって、すでに左から右に向かって書いてあったので、明治維新以後、横書きが普及するに従って、横書きでは左から書くようになったかと考えていたのですが、おっしゃるように、看板など一行だけの場合は、もっとあとになってから、左から書くのが普及したのかもしれませんね。機会があれば、また調べてみたいと思います。
Commented by oliva16 at 2013-01-30 21:51
本当に、自分の足で行ける範囲が世界の全てだった頃のことはさすがに昔過ぎて想像もつかないにせよ、ちょっと前まではインターネットで即時に海外の人とやりとりができるなんて思いもよりませんでした。こんなに情報の溢れている時代だからこそ、自分の住んでいる社会のことは自分の目で確かめて、自分の言葉で語れるようでないと、大人として恥ずかしい……と反省します。
Commented by KEIKO at 2013-01-30 23:08 x
なおこさん、こんばんは!

日出づる処に生まれたわたしは、昨年から、世界の中心に、日本語を教えに出かけています。

この文章に出会ったとき、思わず笑ってしまいました。そして、なおこさんの何とも言えないユーモアのセンス、また、聡明さに改めて感じ入りました。素晴らしいです!!拍手!!
Commented by KEIKO at 2013-01-30 23:16 x
なおこさん、こんばんは。

毎回、毎回、興味の尽きないお話、ありがとうございます。本当にこんなお話が直接聞ける授業、受けたいです。私も、なおこさんの生徒になりたいです。但し、日本語ですよ~

各国の地図が自分の国を中心に描かれているのなら、南半球のオーストラリア、ニュージーランドの地図はどうなんでしょうね?
Commented by milletti_naoko at 2013-01-31 01:34
Olivaさん、こんにちは。今も日本ではそうなのでしょうか? 学校の英語教育で、文法・単語・作文・和訳など、とかく読み書きに重点が置かれるのも、昔むかし、外国語を勉強するのは、ラテン語や古典ギリシア語の文献を読むためであり、一般人が他国に行って、その国の言葉を話す必要に刈られることなどほとんどなかった時代の名残だそうです。日本もどんどん変わっているようですし、これは信じられるというニュースを見つけるのも、最近は難しそうです。
Commented by milletti_naoko at 2013-01-31 01:39
けいこさん、こんばんは。基本的に、横軸で考えた際に、中心辺りに自国が来ることが多いと思いますが、確かに南極や北極、フィンランドあたりを描いた地図では、地図の中央に南極点・北極点があったりしますよね。世界地図はどうなるのでしょう? 南半球でも、そこまで両極に近くなければ、縦軸の上下は変わらないと予想するのですが、さて?

ありがとうございます。日出づるのも中心なのも、自国への誇りからで、本当は、どの地域でも日は昇るし、地表すべてが中心と言えるような気がしますが、そこで、こう気負いたくなるところが、愛すべき、時に困った人間のさがなのでしょうね。
Commented by kishie at 2013-01-31 22:12 x
なるほど、勉強になりました。義母はフォリンニョの生まれで祖母も親戚もいるので、私も今度聞いてみます!なかなかお目にかかれませんね(泣)私も1年半ぶりにようやっと日本へ里帰り、土曜日に発ちます。出発前のドタバタですでに電池切れの状態ですが、熱燗とかすき焼きとか愛猫の顔とか(笑)を思い浮かべて頑張ってます!帰って来たら速攻女子会しましょうね!
Commented by milletti_naoko at 2013-02-01 00:33
きしえさん、お義母さんは、フォリンニョの方なんですね! この仕事の際に市役所でもらった、写真にも載せているミニ旅行ガイドを参考に、この1年ほどは、よくフォリンニョ近郊の山や渓谷を散歩しました。魅力的なのに、夫も知らない場所がたくさんあって、驚いています。

久しぶりの里帰り楽しみですね。日本に帰るとなると、準備することはたくさんあるでしょうから、お忙しいことでしょう。りえさんの旅疲れが取れた頃にと思っていたのですが、今度はきしえさんが! お帰りを楽しみに待っています。Buon viaggio!
Commented by kishie at 2013-02-01 23:51 x
ありがとうございます!2月の末には戻りますので、ぜひお雛様の頃に女子会をしましょうね!
Commented by milletti_naoko at 2013-02-02 00:22
きしえさん、楽しみです♬ どうか日本滞在を十分に楽しんでくださいね。
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