ハートの行方

 バレンタインの1日は、きれいな湖を見て、おいしい食事を楽しんだ上に、思いがけず、銀世界を散歩することになり、

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聖フランチェスコのブナにあいさつしたあとは、夕日が染め上げる風景を楽しみながら、白から茜色に、そして空色へと、彩りの変わる雪の上を歩いて、山を下りました。

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小気味よい疲れとともに、車に戻ったのは、夕日が山の向こうへと姿を消した頃です。充実した1日と、見たばかりの美しい風景に、すっかり満足しながら、登山靴を履き替え、山登りの途中で暑くなったため、脱いで腰に巻きつけたセーターなどを、着直していたときに、ところが、とても悲しいことに気づきました。

 バレンタインだからと、この日の朝選んでつけていた、お気に入りのハートのペンダントがなくなっていたのです。夫が去年の夏、トラジメーノ湖畔の村、パッシンニャーノの夜市で買ってくれたもので、珊瑚の紅の色と肌理が、それはきれいなのです。さらに、ハートの形をしていることもあって、形のある夫からの贈り物の中では、わたしが一番うれしく思い、大切にしているものの、一つだったのです。

 値段はそれほど高いものではありませんが、バレンタインにはこれをと、選んだくらい大切な宝物だったので、それを、バレンタインの日になくすなんてと、青くなりました。

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Faggio di San Francesco, Rivodutri

 登山をするときには、どんなに寒いときでも、歩けば暑くなるのが分かっているので、寒暖に合わせて調節できるように、通気性があり、かつ防寒もしてくれる服を、何枚も重ね着しています。歩く途中で、暑いと感じて脱いだ服は、ご覧のように腰の周りに巻いたり、リュックサックに入れたりします。

 この日は、登山が予定になかったので、山歩きには適さない、ウールのとっくり首のセーターを着ていました。途中で、暑く感じて着替えようとしたとき、ペンダントのために、セーターが脱げなかったので、ペンダントを、とっくり首の内側に押し入れたところまでは、記憶にあります。

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 あのとき、無理がかかって、ペンダントが壊れてしまい、散歩の途中で、落ちてしまったのでしょう。せっかくのすてきな1日に、大切なハートのペンダントをなくしてしまうなんてと、わたしと同様、夫も残念がっていましたが、「聖フランチェスコのブナに捧げたということにしようか。」と言ってくれました。

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 真っ白の雪に覆われた長い散歩道を戻っても、見つけるのは難しいだろう。ひょっとしたら、脱いだ上着の中に、ペンダントが紛れ込んでいるかもしれない。その日の晩も、翌朝、明るくなってからも、ジャケットやセーターの間に紛れていないかと探しましたが見つかりません。

 ただ、この日の晩、部屋のホテルでサンレモ音楽祭を見ながら、そして、コーヒーを2杯飲んだためもあって、寝つかれぬ床の中で、ハートのペンダントはいったいどこにあるのだろうと考えていたとき、あそこで落としたに違いないという場所が頭に浮かびました。雪に覆われた道路を歩いていたとき、夫がトレッキング・コースの道しるべを見つけて、「ブナまで行く道かどうか調べてくるから、君はここで待つように」と言ったのです。長い坂道を上りながら、すっかり暑く感じていたわたしは、夫の後について行くのに必死で、それまでは、上着を脱ぐ暇がなかったので、このとき、脱いだ上着を置くのにちょうどいいエニシダの枝を見つけて、そこで着替えをして、そのとき、ペンダントをセーターの内側に押し込んだのです。偵察をしに行ったまま、夫がなかなか戻らないので、こんなふうに、真っ白な雪の上に、ストックでハートを描いたりもしていました。

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 考えれば考えるほど、ペンダントは、あのエニシダの下にあるにちがいないという確信に変わり、翌朝、ポッジョ・ブストーネの修道院と聖ジャーコモの庵を訪ねたあと、夫も賛同してくれて、再び、ペンダントを探しに、チェッパーロから聖フランチェスコのブナへと続く道を、歩きました。

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 そうして、30分あまり歩き、問題の場所に着いたとき、夫が、わたしの足跡の中、薄く白い層の下に、隠れて見えるハートのペンダントを見つけてくれました。まさか首から落ちたとは思いもよらず、ペンダントの上から足で踏みつけてしまったようで、ペンダントを取ろうにも、固い雪の層が邪魔になって、なかなか取れません。息をかけて温めたり、周囲の雪から掘り起こしたりして、ようやくペンダントを再び手に取ることができました。

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 あるだろうという確信はあったものの、見つからない可能性も大きかったので、ペンダントを見つけたときは、本当にうれしかったです。

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 この日も、前日同様、雪の上には、獣を除けば、わたしたち二人の足跡があるばかりで、雪は相変わらず、白く深いままでした。ペンダントが見つかったのは、雪のおかげで、足跡を手がかりに、夫が偵察しに行った場所やわたしが着替えた場所が、すぐに分かったからでもあります。

 帰りは、心も軽く、雪と風景を楽しみながら、雪の道を下りました。こうして、ハートのペンダントは、トラジメーノ湖の夜景と共に、聖なる渓谷の銀世界の散歩の思い出も重なり、いっそう大切な宝物になりました。

Chi cerca trova
- 14/2/2013 Passeggiata bellissima nella neve fino al Faggio di San Francesco, ma quando siamo arrivati alla macchina, mi sono accorta di aver perso la mia catenina preferita!
- Il giorno dopo la ricerca della catenina. Sulla neve sempre solo i passi di noi due e di qualche animale. Poi... sotto la ginestra dove mi sono tolta la maglia perché sentivo caldo, è rimasta la catenina! Ora la catenina è ancora più preziosa di prima con i ricordi del viaggio nella Valle Santa reatina.

関連記事へのリンク / Link agli articoli correlati
- 聖なる渓谷を訪ねて/ Valle Santa Reatina
↑↑ リエーティの聖なる渓谷、Valle Santa小旅行と訪ねた修道院の数々。
- 湖と泉と巨木 / Piediluco, Sorgente & Faggio di San Francesco nella neve
↑↑ 旅行1日目、ピエディルーコ湖訪問と、聖フランチェスコのブナへと雪道の散歩。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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by milletti_naoko | 2013-02-21 14:12 | Lazio | Trackback | Comments(12)
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Commented by oliva16 at 2013-02-22 01:20
おお、なんて素敵なお話でしょう。それに、本当にきれいなペンダントですね。絶対に見つかる、と信じて探したから良かったのですね。
Commented by milletti_naoko at 2013-02-22 04:17
Olivaさん、ありがとうございます。せっかくいい思い出ができたのに、一点の曇りがと心配していたら、ちゃんと見つかってうれしかったです。形がハートということもあって、なおさらに。
Commented by クロちゃん at 2013-02-22 06:40 x
なおこさん、おはようございます。♪
大切な宝物のペンダント、見つかって良かったですね。o(*^▽^*)o~♪
茜色の自然の贈り物も素敵な風景です。
またひとつ嬉しい思い出の時間となりましたね。
私も山でなくしたものがありますが、今まで見つかったことがありません。
願えば叶う、その気持ちが宝物を探し当てたのでしょう。(^^)/
Commented by Yumi at 2013-02-22 07:19 x
こんにちは。いつの頃からか、時々拝見させていただいています。大事なペンダントが見つかってよかったですね。ほんとにきれいなペンダント.....。聖フランチェスコが届けてくれたんですね。
Commented by milletti_naoko at 2013-02-22 07:57
クロちゃん、こんばんは♪ よりによってバレンタインの日になくすなんて、縁起も悪いし、どうしようと思っていたので、見つかって本当にうれしかったです。山がわたしたちを呼び寄せたのかもしれませんね。

なくして出て来ないものも、いろいろありますよね。今回は、見つかって、そうして、あきらめずにもう一度足を運んで、本当によかったと思いました♪
Commented by milletti_naoko at 2013-02-22 07:59
ゆみさん、ありがとうございます。赤い珊瑚の色や模様がきれいな上に、赤いハート型のペンダントを夫が贈ってくれたのがうれしくて、そういう意味で、大切な宝物です。本当に、聖フランチェスコが届けてくれて、あきらめずにもう一度おいでと呼びかけてくれたのかもしれませんね。
Commented by くみこ at 2013-02-22 17:42 x
それはよかった!
私は新婚旅行でダンナが、長男出産後に私がそれぞれ結婚指輪をなくしたことがあります。前者は海に飛び込んだ時に抜けて、白い砂だったし無理だと思いましたが、ビーチのスタッフが見つけてくれました。私にもゆるかったのでいつの間にか抜けていて、いつなくしたかも分からないので予想もできずあきらめて2個目を作ったのですが、なんと5カ月後に隣の家の庭から出てきました(なぜ!?)この記事を読んで、なくしたことに気づいて青くなった、まさに同じだったので思いだしてしまいました。
でもご主人もなおこさんもロマンチックですね~♪
Commented by milletti_naoko at 2013-02-22 18:47
くみこさん、ありがとうございます! それにしても、結婚指輪がなくなるなんて、それは大変でしたね。無事に見つかって何よりです。しかし隣の庭とは…… gazza ladraのしわざでしょうか? 見つかったときのお喜び、よく分かります。

うちの夫も、結婚式の数か月後、サルデーニャ旅行の前夜に、車のマットなどを掃除しているうちに結婚指輪をなくし、うちの場合は、駐車場は小石が敷きつめてあって広いし、すぐ下は急な斜面に野菜や草が生えていて、この晩、さんざん探しても見つからなくてあきらめていたら、サルデーニャでの宿泊の何日目かに、車内の後ろの方にあったのを発見しました。

雪があって、だれも行かないうちは、人目にも触れないし、雪の上に残った足跡で、ありそうな場所が分かりやすいと思って、出かけたのですが、夫が賛同してくれて助かりました。このあと夫は、さらに再び聖フランチェスコのブナまで歩こうかとも言ったのですが、日程はつまっていたし、この日の朝も急坂を登って、Sacro Specoを訪ねたばかりだったので、引き返しました。
Commented by kazu at 2013-02-22 21:18 x
なおこさん、こんばんは。ペンダントの行方、ドキドキしながら読みました。私も一昨日、手袋を落として諦めかけていたのですが、自分の行動を辿って思い付いた場所に戻ってみると、誰かが拾ってくれていて、近くの木の枝に掛けてくれていました。ほんとに嬉しかったです。物を無くして探しても出てこなければ、もう縁がなかったのだと諦めることにしているのですが、こうして探し出せると、よく戻ってきたと、殊の外愛着がわきます。なおこさんの大切なペンダントも見つかってほんとに良かった。自分のことのように嬉しいです。
Commented by milletti_naoko at 2013-02-22 21:22
かずさん、こんにちは。手袋が見つかって、本当によかったですね♪ 優しい方がいるものです。恥ずかしながら、実は、夫の贈り物で、なくしてしまって見つからなかったものは、他にも毛糸の帽子複数など、いろいろあります。このペンダントはハートの形だったこともあって、見つからなかっらどうしようと本当に不安だったので、本当にうれしかったです。ありがとうございます♪
Commented by ムームー at 2013-02-23 12:15 x
なおこさん
良かったですねぇ~
美しいハート型のペンダントとっても素敵です~
綺麗な夕陽~
山と夕陽~
何と素晴らしいのでしょうかぁ~
ああ、見つかってほっといたしました。

Commented by milletti_naoko at 2013-02-23 19:24
ムームーさん、ありがとうございます。わたしも見つけて、心底ほっとしました。夕日に染まる雪山もとてもきれいでした。
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