優秀な外国語学習者とは

 どんな外国語にせよ、そして、好きで勉強するにせよ、必要に迫られて学習するにせよ、せっかく時間や手間をかけるなら、だれもが上達したいと思うことでしょう。では、どういう人が、どんなふうにすれば、それが可能なのか。優秀な外国語学習者について、その人柄や姿勢などを記した外国語教育・学習の研修者は多いのですが、リッツァルディ著の『外国語を教える 学習と研究』(リンクはこちら)では、次のように述べています。

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「優秀な外国語学習者は、
・不安になったり抑制したりせずに、学習状況における集団力学(グループダイナミックス)に応ずることができる。
・外国語を使うために、あらゆる機会を活用する。
・形よりも意味に集中して、第二言語での会話の機会を最大限に利用する。
・学習の動機づけ(道具的かもしれないし統合的でもありうる)が高く、課題に対する動機づけ(つまり、自分が選んだ、あるいは提示された課題に対して積極的に対応することができるだけの動機づけ)ができている。
・自分をこっけいだ、状況に対応できるだけの能力がないと感じる危険があっても、それを知りつつ、自分(の力)を試し、自分に試練を与える心の用意ができている。
・学習におけるさまざまな状況に、適応することができる。」(「  」内は石井訳)

 第二言語の教師を目指す人を対象に書かれた本なので、語学学校や中学・高校、大学などでの学習者に該当するものもありますが、日本で独学で、あるいはイタリア現地で生活しながら、イタリア語を学ばれている方の参考になる資質も多いと思います。ちなみに、ここでは著者は、エリス(Ellis)という研究者の1985年の論文に記された、優秀な外国語学習者の資質・態度の中から、特に大切と思われるものを選んで、要約して述べています。うれしいのは、どの在り方も、「生まれつきでどうにもならない」ものではなく、学習者の心がけ次第で、実践できるものばかりだということです。しかも、効果が上がる学習と言うと、ついつい「勤勉さ」を一番に考える方が多いと思うのですが、ここで挙げられているのはむしろ、「度胸とやる気と柔軟性」です。

 専門用語があって、意訳をしてもまだ分かりにくいのですが、一つ目は、集団で学習する中で、発言などの機会に、過度に不安になったり、失敗を恐れたり面子を守ったりするために、発言の機会を逃すことがないということです。

 日本では、学校生活の中で、積極的に発言や発表をする機会がないまま、大人になってしまい、海外に留学してから、あるいは社会人になってから、自分の意見をどう言っていいか分からない、そもそも、自分の意見を考えるのが難しい、発言したいのに、なかなか発言できないという方も多いのではないかと思います。英語教育では、正しい文法に重点が置かれがちなため、話ができるようになるためには、間違いながらでもまずは話す必要があるのに、つい間違いを恐れて、話せないという方もいるのではないでしょうか。けれども、外国語を話すのも、自転車に乗れるようになるための練習と同じです。ある程度、レベルの高いところまで到達して、仕事上の、あるいは大学での大切な機会というのであれば、文法の正しさや語彙の適切さも大切ですが、初級・中級のうちは、まだ自転車に乗れないうちは、転んでもいい、失敗をしてもいいから、何度も何度も、自分が乗る練習をしなければ、乗れるようにはなりません。他の人がまったく分からないような、でたらめを言っても皆の迷惑ですが、100パーセント完全な話をしたいとか、少しでも間違えたら恥ずかしいといって、口をつぐんでいたら、伸びる力もつきません。度胸を持って、発言しましょう。

 また、自分は間違いは恐れず、話したい気持ちはあるのに、南米やヨーロッパ圏、旧共産圏などの生徒たちが、自分たちばかり話を続け、せっかく口を挟んでも、すぐに腰を折られてしまうので、なかなか話せないという方もいるかと思います。これは、何も語学学校に限らず、イタリア人とせっかくおしゃべりの機会があっても、話したいことがあるのに、聞き役に回ってしまいやすいということもあるでしょう。誰が発言権を得られるかということは、国や文化によって違います。日本なら、それまで話していた人が話を終えたり、誰かが自分に話をふってくれたりして、初めて、自分が話せる機会が回ってくるのですが、イタリアでは、誰かが話していても、自分が言いたいことがあれば、その話の腰を折る人もいるし、文化によっては、話の腰を折ることで、話への興味や関心の高さを示すので、逆に口を挟まなければ失礼という国もあるようです。日本では、自分だけが話してしまわないように、注意もするところが、国によっては、人が中断することを期待してか、いつまでも自分ばかりが話し続けてしまう場合もあります。たいていは、語学講座の先生が、発言が偏らないように、うまく配分を考えて、発言が少なくなりがちなアジア圏の生徒にもふってくれるはずですが、ひょっとしたら、発言をしないのは、「したいのに、話すきっかけが見つからない」のではなく、「まだ心の準備ができていない」、「話したくない」からだと思われているかもしれません。授業中、話したいのに入り込めない、そんな場合は、先生にも相談してみましょう。そして、日本とは会話の規則が違うことを念頭に置いて、積極的に、自分が話す機会を作ってみましょう。

 外国語を使える機会は、聞いたり読んだりして受動的に使う機会にしても、話をしたり書いたりしたりして能動的に使う機会にしても、たとえ日本に暮らしていても、経済のグローバル化が進み、インターネットで気軽に世界中の人や情報に接することができる今は、数多くあります。テレビや映画館で、イタリア映画が情報されるとチェックしたら、まずはそれを見てみたり、NHKのラジオ・テレビ講座を受講したり、イタリア語でメールや手紙が交換できる、スカイプで日本語との交換授業ができる、あるいは単におしゃべりができるイタリア人の友人を見つけたり、買ったイタリア商品のイタリア語の解説を見たり、はたまた、イタリア語のレシピサイトで、おいしそうなレシピを見つけて、作ってみたり…… 入門書や学習書で勉強することも、もちろん大切ですが、それ以外にも、さまざまな学習の手段や機会が、たくさんあることを知り、そういう手段や機会をできるだけ活用すること、それが大切になります。メルマガのバックナンバーにも、わたし自身がいいなと思ったイタリア語の歌や映画、本などをいろいろ紹介して、学習教材として使っていますので、皆さんの学習にぜひお役立てください。

 三つ目に、「形式・表現よりも意味・伝えたいことに集中して」とあります。入門・初級の段階では、特に会話や授業では、まずは伝えたいことに重点を置くことが大切です。(宿題や文法学習では、もちろん形式にも注意しましょう。)ただ、中級以上、上級へと進むにつれて、文法的に言っていることが正しくなるように、語彙や表現は不適切ではないかという、形式への注意も少しずつ払っていくことが重要です。

 外国語を勉強する動機は、人によってさまざまです。動機づけの中で、たとえば、「大学の受講科目の中にあるので、試験に合格するため」、あるいは、「職場でイタリア語を使わなければいけなくなったので、必要に迫られて」など、何か実用的な目的のために学習するのを、道具的動機づけ、一方、イタリアの音楽や美術に魅かれて、あるいはイタリア料理が大好きで、イタリアに憧れて、ぜひイタリア語を身につけたいとか、イタリア人と交流したいという理由で学習する場合は、統合的動機づけと言います。四つ目では、どちらの動機づけにせよ、「学ぼうという動機づけの強さ」と、自ら課題を選び、あるいは与えられた課題があれば、どんどん取り組んでいくだけのやる気が大切だと語っています。

 五つ目は、恥をかく危険があっても、自分には難しすぎるかもしれない状況でも、とにかく自分を試す度胸が大切だと言っています。六つ目については、たとえ語学学校に通っても、イタリア人と会話をする機会に恵まれても、何もかも自分の理想どおりの状況という可能性はまず少ないので、さまざまな状況に柔軟に対応していけることが大切だということではないかと思います。

 皆さんが、今後学習を続けていく上で、何か役に立つ発見があるようであれば、幸いです。とにかく間違いを恐れず、自分のやる気を持続し、盛り上げて、いろんな学習の機会を、積極的に活用していきましょう!

 今日の記事は、昨日発行したイタリア語学習メールマガジン第92号の記事と重複する部分が多くあります。。記事中、「  」で示している部分のイタリア語原文を、メルマガでは学習教材として取り上げていますので、興味のある方はご覧ください。

Da "Insegnare La Lingua Straniera. Apprendimento e ricerca" di Cecilia Rizzardi

"Il bravo discente di una lingua straniera:
- sa rispondere alle dinamiche di gruppo della situazione di apprendimento in maniera tale da non sviluppare ansietà... o inibizioni;
- approffitta di tutte le occasioni per utilizzare la lingua straniera;
- sfrutta al massimo le opportunità di conversazione in L2, concentrandosi più sul significato che sulla forma;
- ha una profonda motivazione ad imparare (che può essere strumentale o integrativa) e sviluppa anche una "motivazione al compito" (cioè risponde positivament al compito scelto o proposto);
- è disposto a sperimentare e a mettersi alla prova, accettando anche il rischio di sentirsi ridicolo o non all'altezza della situazione;
- sa adattarsi alle diverse condizioni d'apprendimento."

Forse vale per l'apprendimento di qualsiasi tipo, non solo per quello della lingua straniera.

関連記事へのリンク
- 第92号 「優秀な外国語学習者とは ~ 成果を出すには、まず度胸」
- 外国語上達の極意その1
- 英伊仏ヒアリングマラソンと注意点
- おすすめ小論&語学検定対策
- 重要3000語で95%
- イタリア語の化石化
- 第60号 「外国語学習成功の要因」
- イタリア語学習におすすめの教材(入門者編)
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- 円高でお得なアマゾンイタリア ~ おすすめの教材と購入方法

Articolo scritto da Naoko Ishii

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by milletti_naoko | 2014-03-02 23:09 | ImparareL2 | Trackback | Comments(10)
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Commented by ayayay0003 at 2014-03-03 09:06
なおこさん、おはようございます♪
私事ですが、昨日は楽しかったのですが、今朝になって心配事が出来てしまって滅入りそうになったんですが、なおこさんの記事を拝見して、なおこさんの言われているのは語学の学習のことなのですが、「度胸とやる気と柔軟性」という言葉に力を頂きました(^-^)
なんとか乗り切れそうです!ありがとうございました♪
Commented by suzu-clair at 2014-03-03 13:48
とても共感する部分が多く、なるほどと思いながら拝読しました。

「度胸とやる気と柔軟性」というところ、
すごくわかります!ここがとても大事ですよね☆
子どもが、片言からだんだんと表現力豊かな会話が可能になっていくのも、
日常の中で、大人の話がよくわからない部分があっても、
間違ったり笑われたりしても言葉を使っていくことを繰り返すからなんですよね。
大人になってから外国語を習得するのは、
子どものそれとは少し違う部分もありますが、失敗を恐れず話そうとしているかどうかは、とても重要な鍵だと思います。

とはいえ、とくに日本人は、
積極的なディスカッションや会話に割ってはいるのは苦手という人は多いですよね。
私も、話の腰を折るのが苦手です・・・(笑)
そのために損をする人、
異文化の方々の中でのグループ討議にストレスを感じてしまう人が出てくることがあるのは、すごくわかるんですよね~^^
ある意味、外国語での交流の必要性のある方は、
文化の違いを理解し、
そこでの上手なコミュニケーションスキルを身につけることも、
外国語習得に必要なことなのかもしれませんね。
Commented by milletti_naoko at 2014-03-03 16:06
アリスさん、おはようございます♪ 特殊な記事なので、ブログ記事としてはどうかなと思ったのですが、アリスさんのお役に立てたようでうれしいです。おっしゃるように、記事を書いたあとで、これはなにも語学の学習だけではなく、学習全般、そうして、人間関係にも通じるところがあるのではないかと思いました。人間関係の場合は、「形式よりも意味」というのは、「言葉そのものや言い方にとらわれず、その奥にあるもの」を見るだとして……

「度胸とやる気と柔軟性」、いろんな意味で、わたしにも必要です。どうかアリスさんが乗り越えていくことができますように。どういたしまして。
Commented by milletti_naoko at 2014-03-03 16:12
すずさん、異文化の人とのグループ討議は、日本とは会話のルールが違うので、ストレスがたまってしまいますよね。車の運転にたとえると、日本なら相手側が一時停止、徐行してこちらが優先のはずなのに、相手のルールでは、相手にも優先権があるというか。すずさんはお優しくて、相手の気持ちを考えられるから、なおさらのことでしょう。異文化による違いが頭では分かっていても、なかなか思うように発言の機会が得られずに、ストレスがたまることは、わたしも今でもあります。まあ、イタリア人の方が、概して「聞くより話す」、「自分が口を挟みたいと思ったら遠慮せず挟む」傾向があると言えど、相手の話をきちんと聞く人もいれば、すぐに自分ばかり話すので、こちらが話す気力をなくす人もいて、いろいろなのですが。
Commented by leslangues at 2014-03-03 22:23
こんにちは。少し前からリンクさせていただいているアンヌと申します。

なおこさんの語学関係の記事はとても勉強になることが多く、ときどき(自分のやり方を見直すために)参考にさせていただいています。今日の記事もふむふむと読みました。

わたしの場合はアウトプットの機会はあるので恵まれていると言えるのですが、最近どうもインプットが足りない(自分のできることに限界がある)と感じることが多くなったので、今は猛烈にインプットに励んでいるところです。これがどのくらい身になるのか自分でもよくわからないのですが。。。。
Commented by milletti_naoko at 2014-03-03 23:12
アンヌさん、こんにちは。一度わたしの方がコメントをさし上げたことがあって、リンクはわたしもいただいていて、相互リンクになっています♪ ありがとうございます。人によって、勉強する教材や仕方が違うので、あ、そうなんだ、こんなこともできるんだと、わたしもアンヌさんの記事を読んで、もっと頑張らなければと思うことしきりです。

インプットは、文法や単語は押さえていらっしゃるようなので、映画やフランス語講座、簡単なフランス語の記事など、単文や単語ではなく、まとまりがある内容のものを利用されるといいのではないかなと思います。こういうインプットをある程度増やすと、右脳を働かせて、表現にとらわれすぎず内容を理解しよう、概要を把握しようとする習慣がつくし、語彙やイントネーション、こんなふうに発音する、表現するのだという記憶の蓄積が、たとえ表面的にはすぐには分からないようでも、少しずつついていくので、大切だと思います。わたしは逆に小説を読んだり、CDをながら聞きしたりで、大ざっぱなインプットばかりなのを反省しています。お互いに頑張りましょう!!
Commented by Navia at 2014-03-04 07:03 x
なおこさん、こんにちは。
改めて語学と向きあわないといけないなという気分になりました。年末から少し語学のことが「勉強しないと」と気になっていたのですが日々の生活の中で流して年明けから2月までが終わった感じがします。
このタイミングでこの記事を読むなんてにカツをいれられたような気がしました。ありがとうございます。
語学に苦手意識もあるし、学ぶぞ!!というきらきらした気持ちが一過性で反省、そしてまた学びたくなる→また途中で苦手意識が出てくる。を繰り返している気がします。。
Commented by milletti_naoko at 2014-03-04 16:47
Naviaさん、おはようございます。記事がお役に立てたと知って、わたしこそうれしいです。ありがとうございます。特に新年や何かきっかけになるできごとがあると、「やるぞ!」という気になるのに、それをいいペースに持ち込み、時々やる気を再爆発させないと、とりわけ「差し迫っての必要性がない場合」には、勉強が滞ったり、だらだらしたりしてしまいがちですよね。わたしは、外国語の勉強で難しいのは、やっぱり続けていくことだと思います。

わたしの場合は、フランスに旅行に行くたび、いいなと思う映画を見るたび、「もっと勉強しなければ」と思うのですが、すぐにだらけモードに入ってしまうので、2か月が過ぎて、これではいけないと思ったところです。リンクを貼った過去の記事を自分で読み返して反省したのですが、いろんなことが、「まあ、これでもいいや」と心の奥で妥協していて「化石化」している気がするので、この反省を気に頑張りたいと思います。お互いに頑張りましょう!
Commented by ユッキッキ at 2014-03-05 07:27 x
なおこさん、こんにちは。

自分に喝を入れ直すためにも、記事を保存させていただきました。

勤勉さも度胸も柔軟性もなく、やる気もとぎれとぎれですが、生活するうえであまりに不自由かつつまらないので、また勉強熱が燃え上がってきているところです。
今度は細くても長く続けていきたいな。

イラスト、とっても好きです!
Commented by milletti_naoko at 2014-03-05 17:41
ユッキッキさん、おはようございます。慌しい日々の暮らしの中で、やる気を持続させるのは、難しいですよね。わたしは極端な近視で、眼鏡なしではよく見えないのですが、片言のフランス語でフランスを旅して、言いたいことが伝わらず、相手の言うことが分からないもどかしさも感じ、フランス語をもっと勉強すれば、ちょうど眼鏡で物がくっきりと見えるように、相手の言うことも分かるし、自分の言葉を相手に分かってもらえるのにと、思いました。物が見えなくても、日常生活では何とかなるけれど、車を運転するのは危険なのと同じで、言葉がある程度まで身についていないと、行動範囲や会話が限られてしまって、残念ですよね。だんなさまが日本語が達者でも、それでも、フランス語をさらに勉強して、もっと理解や意思疎通をはかりたいというユッキッキさんは、すばらしいと思います。フランス語は、音と文字との乖離が激しいし、単語が短く、同音の言葉も多くて、わたしもイタリア語に助けられつつ、これまで習ったどの外国語よりも、音を聴き取り理解するのに苦労しています。お互いに頑張りましょう!

イラスト、気に入ってくださったようで、うれしいです♪ ありがとうございます。
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