茜色はアカネの色

 「あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る」という額田王の歌は、『万葉集』の代表歌として、かつて日本の高校の授業でも教えましたし、ペルージャ外国人大学の日本語・日本文学の授業でも取り上げました。大好きなトラジメーノ湖の夕焼けを形容するのに、「茜色」という言葉もよく使っています。

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Tramonto sul Lago Trasimeno, San Feliciano 22/6/2014

 けれども、この「あかねさす」という枕詞や、「茜色」が、日本で昔から野山に見かけた多年草植物のアカネ(学名 Rubia akane、Rubia argyi )の、その乾燥して赤くなった根で染めた色に由来しているとは、恥ずかしながら、今回、robbiaの日本語名を調べていて、初めて知りました。「アカネ」という名前も、この「赤い根」から来ていると言われているようで、日本では、上代から、アカネの赤い根が染色に使われていたそうです。

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Florario d'Abruzzo2 22/6/2014

 わたしたちが花染めの講座で、赤く染めるために使ったのは、セイヨウアカネ(robbia tinctorum、学名 Rubia tinctorum)の根ですから、日本のアカネとは、同じアカネ属でも種が違い、色もまったく同じではないと思います。

 イタリアで草花染めの講座に通っただけなら、草の日本名にはこだわらず、robbiaとイタリア語で覚えるだけで満足していたことと思います。ブログの記事にしようとして、和名を調べたおかげで、わたしの頭の中に、それまでは離れて存在していた「robbia」、「あかねさす」と「茜色」が、根を染色に用いる「アカネ」を軸としてつながりました。

 失われたパズルのピースが見つかって、ばらばらだった断片が少しずつ集まり、描かれた像が見えてくるように、アカネを知ったおかげで、そうして染色を自分でも体験したおかげで、これからは、額田王の歌や、茜色の空の美しさを、より深く味わうことができるような気がします。

*Rosso di Robbia & Rosso di Akane (Rubia argyi)*

In giapponese la parola, ‘akane-iro’ indica un colore rosso scuro o un rosso arancione e la si usa spesso per indicare ‘rosso di sera’ (foto – tramonto sul Lago Trasimeno). Solo di recente ho scoperto che ‘akane-iro’ è il colore (‘iro’) ricavato dalla pianta, ‘akane’ (Rubia akane o Rubia argyi) con le radici della quale si tingevano tradizionalmente i tessuti in Giappone. Inoltre, dicono che il nome di ‘akane’ deriva dal colore rosso (‘aka’) della sua radice (‘ne’) essicata.

La parola ‘akane’ si trova anche nell’espressione ‘akane-sasu’ che veniva usata in diverse poesie del “Man’yoshu”, la più antica antologia poetica esistente in giapponese che contiene le poesie scritte dal 450 al 750.

Solo ora ho saputo tutto questo grazie all’esperienza della tintura con la robbia, la controparte occidentale di ‘akane’!

関連記事へのリンク
- 草花で赤く彩り染め上げる ~Florario d'Abruzzo2
- フランス語と記憶のパズル

参照リンク
- weblio.jp - 薬用植物一覧 - セイヨウアカネ
- ウィキペディア日本語版 - アカネ
- goo辞書 – あかね【茜】
- goo辞書 – あかねいろ【茜色】
- it.wikipedia – Rubia (Robbia)

Articolo scritto da Naoko Ishii

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by milletti_naoko | 2014-08-26 23:59 | Fiori Piante Animali | Trackback | Comments(6)
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Commented by ayayay0003 at 2014-08-27 12:33
なおこさん、こんにちは^^
茜色っていうのは古文でよく出てきていたなあ・・・くらいの記憶しかなかったのですが素敵な和歌ですね~♬習ったでしょうに忘れてました^^;ちょっと興味があったのでネットでいろいろと調べてたら額田王の恋のエピソードが出て来てうっとりしてしまいました。
大海人王子の返歌が気に入りました~♡
「紫草(むらさき)の にほへる妹(いも)を 憎くあらば 人妻ゆゑに あれ恋ひめやも」=茜色の紫草のように色美しいあなたを憎く思うのであれば、もはや人妻であるあなたに、これほどまでに恋するはずはないではないか。そういう危ないことをするのも、あなたが可愛いからだ。
現代ではありえないくらいにロマンチックな不倫関係です(笑)
なんだか古の昔に思いを馳せる布の色ですね~♬
日本のアカネは堅牢性が高く、鎧の札(さね)をつづる糸の染料に用いられてきたというぐらいなので、なおこさんの言うように日本のものがセイヨウアカネに代わっているのは残念ですね!
今日はとってもお勉強になりありがとうございました(*^_^*)
Commented by suzu-clair at 2014-08-27 17:50
茜の色、大好きです!
私が以前お会いした染物師の方のことを毎回書いてしまいますが、
その方に茜を見せていただき、
なんて美しいのだろう…と感動したこと、
すごく心に残っているんです。

実は私の姪名も、
あかねといい(角数の都合で別の漢字をあてているますが)、
夕暮れ時に、
「茜色に染まる♪」という歌詞が出てくる日本の歌謡曲を、
一緒に歌ったりしているんですよ(笑)
茜は、私にとって思い入れのある色です。

トラメジーノ湖の夕陽のお写真、
なんて美しいのでしょう!!
素晴らしいです☆
こんな風景に出会えたら、
感激して泣いてしまいそうです。
Commented by milletti_naoko at 2014-08-27 18:44
アリスさん、若いときに恋人どうしだった二人が、やがて疎遠になり、額田王が中大兄の愛人となり、中大兄が天智帝として即位したあとに、この歌は、天智帝もいる公の遊猟の際に交わされたものなので、掛け合いはおそらくは座興と言われています。でもわたしは、田辺聖子さんが言うように、そして、アリスさんがおっしゃるように、「座興的にうたい交したらしくみえる歌に、(……)ふっと美しい、はにかんだ故意の記憶をさぐりあて」られるような気がします。

そうすると、あの鎧の美しい鮮やかな赤も、アカネで染めていたんですね! わたしこそ、アリスさんのおかげで、勉強になりました。
Commented by milletti_naoko at 2014-08-27 18:51
すずさん、茜色、きれいですよね。染物師の方が見せてくださったという茜色、すずさんがそうおっしゃるくらいですから、本当に美しい色だったのでしょうね。いつかわたしもぜひ見てみたいです。

すずさんのめいごさんも、あかねちゃんというんですね! 美しい夕焼けを思わせる茜色も、「あかね」という耳に優しい響きも、わたしも以前から好きでしたが、今回の花染め講座や発見を通して、より好きになりました。

写真はズームで夕陽を拡大して撮影したものではあるのですが、トラジメーノ湖の夕陽は、いつ見ても、それぞれの美しさがあって、大好きです♪
Commented by toto at 2014-08-28 05:42 x
こんばんは。
「赤」の「根」でアカネなんですね! びっくり! まるでダジャレを聞いたかのうような、、、(苦笑)。
和の色の名前は素敵な響きが多いですよね。色についてももっと勉強してみると本当に面白そうです。ワークショップも気をつけてチェックしますね!
Commented by milletti_naoko at 2014-08-28 06:56
Totoさん、わたしもびっくりしましたが、確かに「赤い色」が「あかね」なわけで、気づけなかったのは「茜」という漢字を使っているからかなとも思い至りました。大和言葉は、やっぱり耳に響きが美しいし、ひらがなを見てもきれいですよね。先生の一人がマルケ州では近々ワークショップを予定されているのですが、Totoさんのお宅からはまだ遠いかな。先生の一人はマルケ、一人はロマーニャの方で、どちらも地元を中心に時々開催しています。ポーランドに出かけて英語でのワークショップも予定しているとか!


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