違和感

 7月にアマゾン日本で注文した6冊のうち5冊は、日々の過ごし方や人との関わりなど、注目する点は少しずつ違っても、どれも生き方について語る本です。インターネットで、わたしがすてきだな、学ぶところが多いなと感じた方たちが、「ぜひに」と勧める本や、そうした本について、アマゾンの書評を見ている途中に、これもよさそうたと感じて選んだ本です。

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Lago Trasimeno al tramonto 11/9/2014

 生き方と言えば、日本で教壇に立っていたときにも、文学作品を初め、さまざまな宗教家や教育者、詩人などの作品を読んで、感動したのですが、今回購入した5冊の著者は、弁護士、経営者、学者、音楽家など、専門も分野も仕事の内容も、互いにかなり異なっています。どうして急に、生き方に関する本が何冊も読みたくなったかはさておいて、夏に入って、短期・長期の旅行に出かける際に、フランス語の分厚い小説を持っていくのもいかがなものかと、小説はさておいて、こうして届いた日本語の本を読み始め、今、その3冊目のちょうど半分あたりまで読み終えたところです。

 今、読んでいる本の内容は、まったく思いもかけなかったもので、びっくりしたのですが、こんなことがありうるのかという驚きを感じつつも、不思議と腑に落ちて、言葉や内容が心に響き、しみ込んできています。それが、初めに読んだ2冊の本は、日本ではベストセラーで、多大な人気を博しているということなのですが、なるほど、これは学びたいというところも多々あったものの、違和感を覚えるところも、いくつかありました。

 24時間仕事のことを考え、頭の片隅に置き、仕事に没頭しなさい。そうすれば、逆に余暇や家族との関係に割く時間も増え、有意義な人生が送れるようになる。

 そういう暗黙の、あるいは明白な著者の意図が、この2冊には見えたのです。仕事はもちろん大切だし、一生懸命に取り組む必要もあり、日頃から、よりよい仕事ができるように余暇も勉強に割く必要がある、ということには、わたしも同感です。実際、日本語教師や通訳といったわたしの仕事は、生徒やお客さんが目の前にいないときに、つまり、授業や通訳の仕事の前に、入念な準備をし、前後に緊密に連絡を取り合う必要があるのであって、そういう準備・連絡・見直しを誠実に、十分に行うことの大切さをつくづく感じて、実行しています。新しい外国語を学んだり、そのために学校に通ったりするのも、自分が好きだからであると同時に、自らを生徒と同じ立場に置いてみて、その難しさや、よりよい授業の在り方を模索する手立てでもあります。

 けれども、わたしは、家族や友人と過ごすときには、一緒にいてくれる人を大切にし、野山を歩くときには、自然を全身で感じ、自分の体力の限界に挑戦するというふうに、目の前にいる一人ひとりの人や、一つひとつのもの、そしてことに、真剣に向かい合うことこそ、大切なのではないかという気がします。24時間仕事のことを考えるのではなく、「いまここ」にいる人やあるもの、ことを大切にすることこそ、豊かに生きることにつながり、そうして、調和の取れた人間を目指すことができて、それがいい仕事をすることにつながるのではないか、と。

 こんなふうに考えて、2冊の著者の言葉に、違和感を覚えるのは、ひょっとしたら、わたしが日本ではなく、イタリアに暮らしているからかもしれません。イタリアでは確かに、業者に連絡してもすぐには電話がつながらず、業者に仕事を頼んでも、期日までに仕上がらない、バスや電車が遅れるなどという問題には、しばしば出会います。けれども、働く人が、平日遅くや土日に、無理して奉仕をする必要に迫られることが少ないそのおかげで、勤務時間がゆったりとしていて、家族と多くの時間を過ごすことができます。本当は、適度にサービスが行き届いて、働く人も適度に休養が取れれば一番いいので、わたしは、日本とイタリアを足して2で割ったくらいが、人々が真の意味で暮らしやすい社会なのではないかという気がしています。

 そうして、個人的には、社会がうまく機能しても、平日は早朝から夜遅くまで、そうして、週末さえ、夫が、あるいは自分自身が働かなければいけない日本ではなく、遅延や怠慢に困り、憤ることがあっても、定時を過ぎれば夫が家に戻れるイタリアに暮らせることを、うれしく思っています。

 読書というのは、賛同をしたり、学んだりするためだけのものではなく、自分とは違う考えを読んで、違和感を感じながら、「ああ、実は自分はこんなふうに感じていたのか」と、自分でも気づかなかった自分の思いを明らかにする、そういう発見をさせてくれるものでもあると考えています。ですから、この最初の2冊には、共感できた気づきや教えを与えてくれたことと同時に、自分が実はこんなふうに考えていたということを明らかにしてくれたという意味で、感謝しています。

 もちろん、この文章を読んで、違和感を覚える方もいらっしゃることでしょう。そんなふうに、人によって、生き方も考え方も感じ方もさまざまで、だから世界は、人間社会はおもしろいのだと、わたしは思います。もちろん、これは人間として、社会として、絶対に許せない、認められないということについては、断固として反対していかなければならないのでありますが。

 仕事と言えば、最近は、遠出を決めるたび、するたびに、なぜか仕事の依頼と重なってしまうので、今年はすでに4件、お断りをしなければいけない仕事がありました。せっかくお声をかけていただいたのに申しわけなくて、早めに依頼をいただけていたらと思う一方、逆に、数日前に頼まれて、都合が合って引き受ける仕事もあるわけですから、やはりご縁というものがあるのかなという気がしています。

Lago Trasimeno al tramonto 11/9/2014

- Colore arancione dove le folaghe lasciano le scie

Articolo scritto da Naoko Ishii

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by milletti_naoko | 2014-09-11 23:56 | Umbria | Trackback | Comments(10)
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Commented by ayayay0003 at 2014-09-12 13:43
こんにちは^^
なおこさんもイタリアで暮らして11年?少しイタリア人的な考え方が入ッても不思議ではないと思います。
かくいう日本でずっと暮らしている私でも、仕事仕事では人生余裕がないような気がしてやるときはやるけど、休むときは休むでいいのではないかと思うようになってきました。24時間仕事のことを考えていたら、他のことは考えられないような気がするのです。日本人はなかなか長期の休暇を取るということはありませんがそれでも以前と比べると休むようになってきているとは思います。
私は、たまたま自営業なので、サラリーマンの人に比べたら、休みは融通がききますが、やはり5日間以上の長期で休むことは年一の海外旅行以外にはなくてあとは2泊3日で出かけるのがせいぜいです。それでもいい方ではないかと思います。
ほんとに2で割ればちょうどいいかもしれませんね(*^_^*)
Commented by milletti_naoko at 2014-09-12 15:18
アリスさん、おはようございます。早いもので、イタリアに暮らし始めてからもう12年半の月日が経とうとしています。わたしも日本で働いていた頃は、病気でさえ、わたしが休めば、その分の授業などについて、ただでさえ忙しい他の先生方に教室に足を運んでいただかねばならず、まして有給休暇を取って休むことなどはばかられましたし、「私はこれまで1日も有給休暇を取ったことがない」と常々口にする上司もいて、結局、権利としては40日の有給休暇を取れても、実際には、最高でも年に3、4日取れればいい方でした。一方、イタリアでは毎年の有給休暇を最後の時間まできちんと使わないと、その分職場の方が支給をしなければいけないと法で定められていることもあって、職場の方から、計画をきちんと立て、同僚どうして話し合い、融通し合って、有給休暇を使い切るようにと指導があり、圧力さえかかるようです。本当にところ変われば慣習も考え方も違うものです。アリスさんも、自営業でも、やっぱりお客さんのためによりよい仕事を、よりよいサービスをと、お忙しくされているのですね。
Commented by suzu-clair at 2014-09-12 16:40
なおこさんのおっしゃる、
今このとき、目の前のことに真剣に向き合って過ごす、
という生き方、私は強く共感します。
日本でベストセラーとの本がどんなものかわからないのですが、
今の日本では、そうした考えのほうが、
(とくに女性の間では?)
よく聞かれるようになってきたように私は思うのですが、
私が目にとまるのがそういうものが多いだけなのかな?^^

私も新卒で入社した会社が、
社員の半分以上が外国籍の人たちという職場だったため、
彼らの、仕事は仕事、休暇は休暇として、
きちんとそれらを愉しみ、
人生を謳歌して生きていく考え方が、
子供のころになんとなく見てきた、
日本の大人たちが築いた社会の常識のイメージとはずいぶん違う点に、ときに驚きつつも、
見習いたい価値観もあることを感じて、
視野を広げてもらった気がしています。
双方のよさがありますよね。

いろんな考え方があり、
それらを知ることで、
見習いたいこと、共感することを感じたり、
違和感を感じることから、
自分というものを発見することって、素敵なことですね☆
Commented by milletti_naoko at 2014-09-12 17:12
すずさん、この2冊は、社会的にも重要な役割を担い、仕事をし、数々の成功を収めてきた年配の男性たちが書いたものであって、ビジネス界や男性的視点、旧来の日本における仕事観、そういうものが、著書にも色濃く反映されているのかなと、感じていました。女性の間でも、それもすずさんがおっしゃるくらいですから、おそらく比較的若い女性の間でも、そういう考えを持つ方が増えてきたんですね。びっくりしました。男性と肩を並べ、競わなければという意識があるためかもしれませんね。

すずさんが最初に働かれた会社は、そんなに外国籍の方が多かったんですね。なすべきことをこなしつつ、休暇を楽しもうという生き方に対するすずさんの新鮮な驚き、わたしもよく分かります。私も、まだ日本で働いていた頃、夏休みに2週間ダブリンの語学学校に通ったとき、毎日放課後にあちこちを訪ね、そうして、真夜中近くまでパブでおしゃべりをするという、イタリア人を中心とする留学生の余暇を満喫する在り方にとても驚き、そうして魅かれました。多くの方が、いろんな形で、そういういろんな働き方や生き方、考え方に触れられるようになれば、もっと豊かで暮らしやすい社会になっていくことでしょうね。
Commented by ぷー at 2014-09-13 02:13 x
なおこさん、こんばんは。
「イタリアと日本と足して2で割ってちょうどいい」って、大共感です!その理由もほぼ、なおこさんと同じです。
ところで読書についてですが、イタリア語作文でちょうどこういう課題があったのを思い出しました。その時に、「そういや読書好きだけど、なんでかな〜」と考えつつ、文章にしたら、「こんなこと思ってたのね〜」と、それを読みながらまたもや、我がことながらフンフン頷いてしまいました。一言日記みたいなのは以前から書いていたけど、この1年近く、イタリア語作文を徹底的に絞られた結果、それぞれのテーマ(大体CILSの過去問でしたが)について、文章にすることによって以前よりも自分の考えが明らかになり、興味の幅も少し広がったように思います。さて、読書は私も今、500ページを少し超える分厚い本を読んでいます。世界的に有名な作家の自伝です。日本ともイタリアとも違うその国の歴史や文化にも触れられて、想像の世界が広がって、読んでいてスゴくスゴく楽しいです。
Commented by とすかーな at 2014-09-13 02:57 x
日本で、自然と24時間仕事のことが頭から離れなかった人間です(笑)イタリアでも労働者と言われる立場の人は時間が終わればはい、終わりで、社長などの立場の人は、なんだかんだ言って会社のことを考える時間は長いのではないかと、実際イタリアのそういう立場の人と仕事をして思います。ただイタリア人は切り替えが上手いので、生活にまで持ち込まないというのはあるかもしれません。
なおこさんの今回の記事、とぉ~っても共感しました。まだイタリアに来て2年にも満たないですが、不便だけどゆったりと暮らせるイタリアに来てよかったと思っています。日本の場合は男性が会社に縛られすぎなので、そのせいもあって、女性が高いポジションにつけなかったり、家庭のことを一手に引き受ける必要があり、社会に出るチャンスがないのではないかと思います。
Commented by nagisamiyamoto at 2014-09-13 02:59
なおこさん、こんばんは
今回はかなりシリアスな話題に挑戦されたのですね。
私は全ての環境にありがたいと思って生きています。なおこさんに比べて私は仕事に人生の重点を置いていますが、これは私に『向いている』人生だからです。これは一人ひとりによって違うものの考え方であり、誰が合っているとか間違っているとか思えません。重要なのは、自分が納得して生きていることだと思います。
いっぱい働いて、いっぱい休むというスタンスを今までも、これからも続けるつもりですが、傍目から見るととても窮屈に見えるようで、私のことを可哀想と言う方もいます。
ものの考え方は千差万別。これを一つの見方で言うところがあるとすればこれは間違えのような気がします。
私は今のなおこさんがとてもなおこさんらしくて良いと思います。
Commented by milletti_naoko at 2014-09-14 06:23
ぷーさん、たくさん作文をしていくと、書くことを通して、はじめて明確にできる思いってありますよね。書いて書く授業は大変だったと思うのですが(そう言えばわたしも、上級講座では外国人大学でも語学学校でも、かなりいろんな作文や要約文や論文を書く訓練をしました!)、いろんな意味で、いい経験になりましたね。わたしは、かつては高校生の作文や小論文を添削指導し、同僚の文書・文章の校正を任され、今はイタリアの人が書く日本語の文章を添削しています。学習者が文章を書くことは、本人がきちんと適切に表現する力を身につけるために大切であると共に、教員が、生徒が何を苦手とし、何はきちんと習得できているかを把握するための手がかりになります。わたしはそれで、よく作文を書かせるのですが、初級の日本語の添削指導でも大変なので、C2を受講する世界各国の人々の長いであろう作文を見て、ちゃんと指導してくれる先生というのは、本当に生徒思いで、熱心な方だと思います。いい先生に恵まれてよかったですね。読書も楽しまれているようで、何よりです♪
Commented by milletti_naoko at 2014-09-14 06:34
とすかーなさん、イタリアにも、社長さんや農家の方をはじめ、仕事に情熱を持って、取り組んでいる方も多いですよね。ただ、原則としては、日本に比べて、イタリアでは働く人が仕事に拘束される時間が格段に少ないという気がしています。夜遅くまで学校に残って仕事をしていたとき、家庭があるのにやはり遅くまで残っている同僚が多かったのを覚えています。生徒のために、学校のために、社会のために、一生懸命に仕事をしたことに悔いはありませんが、自分自身や家族との時間を大切にしてこそ、よりよい教育ができるであろうに、そういう余裕がなかったし、今もないところが多いのではないかと心配です。女性の家事分担が多くなり、仕事でいい地位を得るのが難しいのも、わたしも、とすかーなさんがおっしゃるように、それが理由の一つではないかと思います。
Commented by milletti_naoko at 2014-09-14 06:58
なぎささん、ご自分でこんなふうに仕事をしようと、やり方や時間を選べる中で、仕事に重点を置こうという姿勢はすばらしいと思います。今は、わたしとしては、もっと仕事があればと思うのですが、いつでも始められるのに、もう長い間、手をつけていなかったり、方法を模索していたりする仕事もあります。イタリア人向けの日本語の学習教材、日本文学の紹介、日本人向けのイタリア語の学習教材、イタリア文学の紹介など、これは、作ってみたいもの、書いてみたいことが多すぎて、逆になかなか進まないので、自分で優先順位や順序を決めて、少しずつ着手していかなくては。いつもお優しい言葉をありがとうございます♪


日本語教師・通訳・翻訳家。元高校国語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより


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