イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

夫婦でジュール・ヴェルヌ

 最近は、二人とも、フランスの作家、ジュール・ヴェルヌの冒険小説を読んでいます。

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 わたしが読んでいるのは、原書、フランス語版の『海底二万里』、夫が読むのは、イタリア語訳の『神秘の島』です。

 わたしが小学校高学年頃から、夢中になって読んだのは、アンシリーズやシャーロックホームズの物語でしたが、ちょうど同じ年頃に、夫が夢中で読んで、大好きだった作家がジュール・ヴェルヌであり、そうして、中でもお気に入りの作品が、『神秘の島』だったのです。

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 幼い頃に夫が読んだ『神秘の島』は、漫画や、子供向けに訳された100ページあまりの本でした。フランス語学習のためにと、わたしが取り寄せて読んでいた、完全版の『神秘の島』が、序や注を含めて900ページ以上あるのを見て、かつて自分が読んだのが、実は簡約本だったと知り、「いつか自分も完全版を読みたい」とずっと言っていました。それで、昨年のクリスマスの贈り物の一つとして、わたしが完訳のイタリア語版を探して、贈ったのです。フランス語の完全版と違って、初版に採用されていた絵が表紙にしかないのが残念なのですが、夫も昔をなつかしみながら、読書を楽しんでくれているようです。

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 ちなみに、わたしは、わたしにとっては2冊目のヴェルヌの作品であった『神秘の島』を、あと数十ページだけ残るところで読みさしたまま、3冊目の『海底二万里』を読んでいます。『神秘の島』の終わりに近いところで、今は年老いて死を目前にしている、『海底二万里』の登場人物が現れ、その人生が語られ始めたからです。

"Et le capitaine, en quelques phrases nettes et pressées, fit connaître sa vie tout entière.

 Son histoire fut brève, et, cependant, il dut concentrer en lui tout ce qui lui restait d’énergie pour la dire jusqu’au bout. Il était évident qu’il luttait contre une extrême faiblesse." ("L'île mystérieuse", p. 805)

「人生をすべて語った」とあっても、「短かった」とあるしと、しばらくは気にせず読み続けたのですが、実際には、船長の人生が、微に入り細にわたって語られていて、「これは、このまま読み続けていては、すでに買ってある約700ページの『海底二万里』を読むおもしろみも励みもなくなってしまう。」と考えて、そこで『神秘の島』を読むのをいったんやめ、前作である『海底二万里』を読み始めたのです。途中で、日本語の本を数冊読んだり、スペイン語の勉強に浮気したりしていたためもあるのですが、『海底二万海里』は、昨年の6月29日から読み始めたというのに、今ようやく305ページあたりを読んでいるところです。


 イタリアでクリスマス休暇中に、テレビで放映された名画の中に、この『ヒューゴの不思議な発明』もありました。かつて映画館でも見た映画でしたが、うろ覚えの部分も多く、夢中になって見て感動しました。映画の中で、「ジュール・ヴェルヌの作品や『ロビン・フッド』を、今は亡き父さんといっしょに読んだ。」と、主人公が言うのを聞いて、同じ作家の作品を読んでいるのだと、何だかうれしくなりました。映画の原語は英語であり、わたしはイタリア語吹き替えで見たのですが、映画の舞台はパリですし、フランス語学習中ということで、ここにはフランス語音声の予告編のリンクを貼ってみました。

 今のところ、わたしにとって一番おもしろいジュール・ヴェルヌ作品は、『八十日間世界一周』です。読みかけの2冊を早く読み終えて、今度は同じフランス語でも、別の作家の、違う分野の作品を読んでみたいなと考えています。本文だけでも、『海底二万里』があと337ページ、『神秘の島』が63ページ残っています。ちょうど合計400ページですから、1日10ページずつ毎日読み続ければ40日間かかる勘定になります。2月末までには、2冊とも読了して、別の本を読み始められるように、頑張ります。

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JULES VERNE

- sì sto ancora leggendo "Vignt mille lieues sous les mers".
- L'ho iniziato a leggerlo sei mesi fa, ma a volte mi sono allontanata dal romanzo
leggendo i libri giapponesi o studiando lo spagnolo e poi il libro di 700 pagine è
troppo pesante per portare nello zaino per il pellegrinaggio.
- Quanto ai libri di Jules Verne, ora mi rimangono 337 pagine di "Vignt mille lieues
sous les mers" e 63 pagine di "L'île mystérieuse". Ho abbandonato la lettura di
quest'ultimo perché solo alla pagina 805 ho scoperto che dopo aver letto l'intero
libro avrei perso la curiosità e la motivazione per leggere "Vignt mille lieues sous
les mers". Entro febbraio penso di finire questi due romanzi.
- Ero contenta quando il protagonista del film, "Hugo Cabret" ha detto che
anche lui amava (oppure leggeva) i libri di Jules Verne :-)))
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LINK
- Bibliothèque nationale de France – gallica – L'île mystérieuse / par Jules Verne ; ill. de 154 dessins par Férat ; gravés par Barbant -J. Hetzel (Paris)-1875

関連記事へのリンク / Link agli articoli correlati
- ジュール・ヴェルヌと映画『Hugo』、イタリア語版・英語版から / Jules Verne & film, “Hugo Cabret” (14/1/2015)
- フランス語で読む夏1、ジュール・ヴェルヌの『八十日間世界一周』を読んで (2/8/2013)
- フランス語で読む夏2 (6/8/2013)
- 7か月で464時間 ~『異邦人』を読書中 (13/8/2013)
- 『L’étranger』を読み終えて (16/8/2013)
- 離れ島でサバイバル、仏語で読む『神秘の島』 (7/3/2014)
- 806ページ目の悲喜劇 (30/6/2014)

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by ayayay0003 at 2015-01-11 11:50
なおこさん、こんにちは。
御夫婦揃って同じ作者の本を読むって素晴らしいですね~(^^♪
外国語の訳本だと、「かつて自分が読んだのが、実は簡約本だった」なんていうことがありうるのだと、なおこさんの記事を読んで初めて知りました^^;
やはり、その国の言語で読めればそれにこしたことはないのでしょうね~(^.^)
今の時代は、昔よりは便利になり完全版も出ているとのことなので、読み直した方がよい本もたくさんあるかも?なんて私も思いました。よい記事をありがとうございます♪
Commented by milletti_naoko at 2015-01-11 17:04
アリスさん、おはようございます。日本だとジュール・ヴェルヌは、書店では、少年向けの読み物や全集コーナーに並んでいる気がします。『八十日間世界一周』は、たぶん幼い頃に少女のわたしが読んでもおもしろかったと思うので、少年物だと思ってずっと読んでいなかったのが残念です。彼の作品は700ページとか900ページとかひどく長いので、前回本のご紹介をする記事を書く際、いい日本語訳はどれだろうとアマゾン日本で探したとき、大人向けでも完訳ではないものがあるようだということが、読んだ人の言葉やアマゾンのページ上に記された本のページ数でも分かりました。大人も対象であるけれども、児童向けにもいいという本の場合に、特にこうやって物語を短くする場合が多いのだと思います。小学校高学年の頃、テレビのアニメで『赤毛のアン』を見てすっかり魅かれたわたしは、村岡花子さん訳のハードカバーのシリーズがほしかったのに、父が書店で買いそろえてくれたのが角川文庫だったのでがっかりしたのですが、おかげで同じシリーズで大学生になってから読み終えることができました。やはり小学生の頃から好きだったホームズも、自分が買いそろえる前に、まずは学校の図書館の本をあれこれ読んだのですが、訳者によって、ホームズやワトソンが、ホオムズやワトスンになっていて、幼心にあれと感じたのをなつかしく覚えています。訳にも、訳す人の信条や文章力が現れるので、おもしろいです。
Commented by kazu at 2015-01-11 21:52 x
なおこさん、改めまして、今年もよろしくお願いいたします。やっと昨年の旅の疲れが癒えてきたこのこの頃です。

ジュールヴェルヌの小説は、過去にもなおこさんから何度か伺っていますので、重なるかも知れませんが、その昔、私も夢中になって読みました。本の挿絵にも随分ドキドキさせられた記憶があります。物語は多分、ご主人様と同じく、子供用に端折られたストーリーだったのでしょうけれど、ワクワクした気持ちは今でもしっかり覚えています。そして、もしかしたら、これらの本に、私の一人旅への冒険心が刺激されて、今に至っているのかも知れないと、なおこさんがジュールヴェルヌを取り上げて下さる度にそんな思いに駆られています。

それにしても、長い小説を読破されるなおこさんの力には感服します。ほんとに素晴らしいですね。
Commented by Kei at 2015-01-11 23:26 x
なおこさん、こんばんは♪
ジュール・ヴェルヌ!
「海底二万里」と「神秘の島」は、日本でひと昔前に放送されたテレビアニメ「ふしぎの海のナディア」の原案になった作品ですね。なつかしいです。どちらも原作は読んだことないんですけど・・・・。
凸ぽち!
Commented by milletti_naoko at 2015-01-11 23:29
かずさん、こちらこそ今年もよろしくお願い申し上げます。年末年始はただでさえ何かと慌しい時期ですから、お帰りになってからお忙しかったこととお察しします。

かずさんも、ジュール・ヴェルヌファンだったんですね! すみません、わたしもひょっとしたらすでにかずさんからコメントをいただいているのに、忘れているかもしれません。ジュール・ヴェルヌの作品を通して、かずさんが旅心や冒険心を触発されたということはあるかもしれませんね。夫やフランコは違うと言いますが、わたしは、夫が自然の草花や動物に興味を持ち、フランコが何かと作ったり発明したりするのや歩くのが好きなのは、どこかで二人が少年の頃に読んだ『神秘の島』に影響されているからだと思います。世界各地の文化や風俗、海底の生物たちの様子を、テレビや映画の映像で見ることができる今の時代ならともかく、ちょうど日本が明治維新を迎えた頃に、ジュール・ヴェルヌがこうやって想像力を大いに働かせて、見てきたように(アメリカへの旅行などは実際にしたようですが)生き生きと物語の展開と重ね合わせて語ってくれるのは、おもしろいですよね。当時の人にとっては、さらに、予想もしなかったような未知の国や海底の様子を小説を読みながら知ることができる、数少ない手段だったのではないかと思います。幼い頃に読んでおかなかったのは残念ですが、おかげで、いったいどうなるのかと先を気にしながら小説を楽しむことができます。『風と共に去りぬ』や『項羽と劉邦』など、日本でも世界でも、思わず先を読み続けて夢中になれる長編小説は多いですよね。かつては『風と共に去りぬ』の続編、確か約千ページほどあった『Scarlett』の原書を、あまりおもしろいので夢中になって、年末年始にほとんど眠らずに3日間で読破したことがあり、そもそもあの本がわたしがダブリンを訪ねてイタリア人に出会い、イタリアとイタリア語に興味を持つきっかけになりました。半年かけてまだ300ページとはカタツムリの歩みですが、亀の歩みでも、読み続ければ、いつかは読み通せるということで……
Commented by milletti_naoko at 2015-01-11 23:40
Keiさん、そう言えば、わたしは見ていないのですが、『ふしぎの海のナディア』というアニメ、ありましたよね。今さっとその内容を見ていて、確かにヴェルヌのこの2作から借りている部分もいろいろあるようで、びっくりしました。船の名前もわたしはフランス語読みしているので、違う音声をあてていたのですが、このアニメのフランス語版の解説にはNautilusとあるので、船の名も船長の名も、『海底二万里』と同じですし、フランス語版wikipediaの解説には、「hommage à Jules Verne L'idée initiale étant d'adapter librement le roman Vingt mille lieues sous les mers, le film s'inspire par divers aspects de l’œuvre de Jules Verne, notamment la rencontre des héros ou le personnage de Nemo.」とあります。Keiさんのコメントのおかげで、初めて、この日本のアニメとヴェルヌの作品を結ぶ深い絆を知りました。日本でも、こんなふうにジュール・ヴェルヌの作品を翻案したアニメがあったのだと知り、とても興味深いです。貴重な情報をありがとうございます。ううん。ブログの記事って書いてみるものですね。
Commented by licklick at 2015-01-12 00:27 x
なおこさん、
新年おめでとうございます。
大部なフランス語小説も読み進めておられ、着々とフランス語を継続されていますね。
私のブログに御挨拶をいただいておりましたのに、返信が遅れてしまい、大変失礼いたしました。昨年12月は海外からの来客が毎週のようにあり、会議、アテンド、行事、会食などがあり、フランス語は休止状態になってしまいました。新年に入っても、その状態が続いてしまいました。ご存じのとおり、英語のオンラインレッスンを受講しているのですが、12月から最近は、何とかそれだけは継続しているという状態でした。
英語の方ももっと力を入れないといけないという状況の中で、再び長期休止にならないように、フランス語はここが踏ん張りどころかなという感じです。欲張らず、少しずつでもいいので継続していこうと考えているところです。
今年もよろしくお願い申し上げます。
Commented by milletti_naoko at 2015-01-12 07:08
Licklickさん、新年おめでとうございます。いえいえ、ご多忙の中、コメントをありがとうございます。フランス語の勉強を頑張らなければと思い直すたびに(「思い直す」だけで行動が伴わないのですが)、勉強仲間のLicklickさんやlucien518のブログを拝読して、「ああ、わたしも頑張らなければ」と、自分にはっぱをかけているわたしです。フランス語学習は読書に費やす時間が多いこともあって(と言っても寝しなに読むだけ)、わたしのフランス語力は話すのも聴くのも書くのもへなちょこなのに、読む力だけは他の能力に比べて高いのではないかという気がします。文法や精聴などで、細かくつめることも並行して行い、かつ、フランス語で書く機会も増やしていって、フランス語で、もっといろんなことが話せて、コミュニケーションが取れるようにしたいというのが、当面の課題です。わたし自身、かつて英語の学習に膨大な時間を割いたおかげで、今フランス語学習で助けられている部分もあるので、Licklickさんも、そうやって英語に接されながら、間接的に、フランス語の力も水面下で着実に培われていることと思いますよ。英語をみっちり勉強したおかげで、フランス語で初めて接するのに分かる言葉があったり、外国語は違っても、やっぱり別の言語で考えたり発信したりする習慣をつけていたおかげで、イタリア語やフランス語学習に役立っているところが多いなと感じるからです。

わたしも、いろんな仕事や用事が入ると、ついついフランス語学習を脇に置いてしまいがちなのですが、細々とでも何らかの形で継続することの大切さをつくづくと感じています。こちらこそ、今年もよろしくお願い申し上げます。
Commented by oliva16 at 2015-01-13 00:14
偶然ですが、私も昨年末にひょんなことからジュール・ヴェルヌの『海底二万里』新訳を手に入れました。会社の大掃除と整理で、別の部署でリサーチか何かの資料用に買っていた本が段ボールに何箱も「ご自由にお持ちください」と出ていたので、嬉しくなって色々持ち帰った中にあります。まだ読んでいないのですが、楽しみです。
Commented by milletti_naoko at 2015-01-13 00:39
Oliva16さん、あら、そうなんですね! 本との出会いや、人生に与える影響って不思議ですよね。わたしは、もし『Scarlett』を読んでいなければ、ひょっとしたらダブリンに行くことも、それを通じてイタリアに興味を持つこともなかったかもしれないし、そもそも『Scarlett』を読んだのも英語学習の延長で、社会人になって英語を再勉強しようと思ったきっかけが、赤毛のアンの故郷を訪ねるカナダ旅行でしたから、本に導かれて歩んだ軌跡がかなりあると言えるかもしれません。そもそも国語の教員になり、古文を教えたのだって、読書の影響大だと思います。

わき道にそれてすみません。Oliva16さんも『海底二万里』を手にされているなんて、そうして、手に入れられたきっかけも興味深いです。そういうご自由にお持ちください、いいですね♪
Commented by oliva16 at 2015-01-15 23:34
「赤毛のアン」お好きだったのですね!ご存知と思いますが、日本では昨年NHKの朝の連続テレビ小説「花子とアン」が翻訳家村岡花子を取り上げて、大人気を博しました。私もテレビを持っていないので放映期間だけオンデマンドに登録して、毎日観ていたんですよ。
Commented by milletti_naoko at 2015-01-16 00:10
oliva16さん、そうだったんですか! それは見られなくて残念でした。それだけ、まだまだ『赤毛のアン』の人気も根強いということでしょうね。あの頃、わたしといっしょにプリンス・エドワード島に行った先輩のだんなさんが、「ああ、それはファンにとってはちょうど聖地巡礼と同じようなものでしょう。」と言っていたのをなつかしく思い出します。今考えていると、何か妙を得た発言だったなと、20年前に聞いた言葉に、今さら感心したりしています。
by milletti_naoko | 2015-01-10 20:52 | Film, Libri & Musica | Comments(12)