愛はずっこけ

「コーヒーを沸かそうとすれば、粉末コーヒーの4分の1は、キッチンマットの上、半分はガスコンロの上にまき散らすし、コーヒー沸かし器を、これでもかというくらい回してしめすぎるので、消防士でも呼ばなければ開きやしない。

そういうときでも、あなたたちを愛しているわ。」

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Foglie rosse del sagrantino, Giano dell’Umbria (PG) 7/12/2014

 ルチャーナ・リッティッツェットが、2013年にサンレモ音楽祭の司会をしていたとき、語った言葉を書き写したものを、最近目にして、ああ、うちでもそういうことがあると、一人笑ってしまいました。夫が食後にコーヒーを入れてくれるのはうれしいけれど、どういうわけかコーヒーの粉が台所の作業台に散らばってしまうことも、翌日わたし一人のときにmokaを使ってコーヒーを入れようと思うのに、夫が強くしめすぎて、なかなか開かないことも、よくあるからです。

 「あなたたちが……するとき、わたしたちはあなたたちを愛してる」(Vi amiamo quando…)と、畳みかけるように繰り返すルチャーナ。ただ、この「……」の部分で描かれる男性の行動は、どこかひとりよがりで、ずっこけていて、女性の立場からすると、困ったなというものばかりで、ですから、「……ときでさえ、愛してる」と訳した方が、意図はより通じるかと思います。

 足の匂いに、家中に散らかす衣類…… 列挙された、男性たちのずっこけた、けれど愛すべき行動の中には、皆さんのお相手と同じというものもあれば、少しは当てはまるというものもあり、ああ、うちはこれはないというものもあるでしょう。

 そうした言葉の畳みかけによって伝わってくるのは、「そんなあなただけれど、いえ、そんな姿をわたしには見せてくれるあなただから、愛している」という、時を経て、お互いの情けない姿や習慣も知って、それでも、それだから今なお愛しいという気持ちであって、それこそ本当の愛ではないかと、そんな気がします。

 愛にも恋にも、いろんな形がありますし、好みというものもあるでしょう。そう言えば、わたしは昔から、こんな一節もある黒田三郎の詩が大好きでした。

  「ああ
   そのとき
   この世がしんとしずかになったのだった
   その白いビルディングの二階で
   僕は見たのである
   馬鹿さ加減が
   丁度僕と同じ位で
   貧乏でお天気屋で
   強情で
   胸のボタンにはヤコブセンのバラ
   ふたつの眼には不信心な悲しみ
   ブドウの種を吐き出すように
   毒舌を吐き散らす
   唇の両側に深いえくぼ
   僕は見たのである
   ひとりの少女を」(黒田三郎『賭け』から引用)

 すばらしいところしか目に入らず、ひたすら崇める恋よりも、いろんな欠点や困ったところを知りつつ、それでも大切に思う気持ちこそ、本当の愛だと感じ、また、そんなふうに思われたいと願っていたのでしょう。

 そうして昔から、妙にかっこいいだけの主人公よりも、好きな女性に好きと言えず近づけない、そういう無器用な役を演ずる人の方に、魅かれたりしていました。わたし自身が無器用で、改善の余地が多いのを自覚していたためでもあるでしょう。

 もちろん身内だからと甘えるのではなく、いつまでも男であり女であること、相手に魅力的だと思ってもらえるよう努力することも大切だとは考えているのですが、その一方で、こういうずっこけた姿も愛する思い、それが大切なのではないかと、わたしは感じています。

 興味のある方は、こちらの映像から、ルチャーナの言葉をご自身で聴いてみてください。Raiのホームページ上の映像なので、イタリア国外からは、残念ながら視聴できないと思いますが、言葉を書き写したものは、下記の参照リンクの一つ目で読むことができます。

***********************************************************************
L'amore è...

Dal monologo di Luciana Littizzetto durante Sanremo 2013:
"Vi amiamo quando avvitate la caffettiera fino allo spasimo che per aprirla dobbiamo chiamare i pompieri, ..."
L'amore è forse questo "ti amo anche quando...", "ti amo come sei". Siamo tutti umani, imperfetti. Anche i principi e le principesse di favole, nella vita quotidiana matrimoniale, si comporteranno in modo buffo o irritante. Sentire l'affetto anche nei momenti così e continuare ad amare, questo mi sembra amore vero.
***********************************************************************

参照リンク
- Buona vita principessa – Monologo di Luciana Littizzetto (16/2/2013)
- 家庭のカフェ、伝統の味のゆくえ ~老舗工場、東欧へ移転か~ (12/4/2010)
- 赤く燃ゆ~ワイナリー写真講座 (7/12/2014)
- 『愛の詩』を読む ~ 賭け 黒田三郎(1919-1980)
- amazon.co.jp - 『黒田三郎詩集 (現代詩文庫 第 1期6)』

Articolo scritto da Naoko Ishii

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by milletti_naoko | 2015-03-09 23:59 | Altro | Trackback | Comments(8)
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Commented by nagisamiyamoto at 2015-03-10 13:11
なおこさん、おはようございます。
私の周りでよく使われる言葉、誰かの悪口を言う時に、
『・・なんだよねー、嫌になっちゃう!』
といいつつ、最後に
『悪い奴じゃないんだけどねー』
と必ずその相手をフォローします。
その心は、嫌なところがあっても全てが嫌いなわけじゃないし、いいところだってある、と。よくわかります。
私はかんしゃくもちだから、頭にすぐ血がのぼります。でもぐっとこらえてよくよく考えると自分が完全な人間でもないのに他人の非をどうこう言うべきではないと気づくんです。
・・・ここまでくるのに随分時間を費やしました。
Commented by suzu-clair at 2015-03-10 14:27
人は誰しも、完璧でないもの。
いろいろな欠点もあって、
それも含めて、
ありのままのお互いを受けとめ、
認め合える関係って素敵ですね。
私もできるだけ、
自分の周りの人たちにも自分にも、
そんな自然体であるがままに見る姿勢をもっていきたいと
いつも思っています。
・・・が、そうでないときも多いのが現実で・・・(苦笑)
それでも、
そういう気持ちをもって生きることが、
人生をよりよいものにするのでしょうね☆

サンレモ音楽祭って、
やはり質の高い素晴らしい音楽祭なのですね。
南仏にいたころ、
滞在先からも気軽に行けるイタリアの町だったので、
何度か訪れた思い出の町です♪
音楽祭の開催時期に行ったことはないのですが、
きっと音楽祭の時はもりあがるのだろうなと思っていました。
Raiのホームページ、
こちらでも映像を視聴できましたよ♪
Commented by ayayay0003 at 2015-03-10 16:37
なおこさん、こんにちは♪
相手のいいところだけを見ていたら、長い間一緒に暮らすとがっかりすることが多いでしょう(笑)
でも相手の欠点が愛すべきところだと、幸せに暮らしていけるだろうと思います~(*^ー^)ノ♪
「何でもものは思いよう!」とはよく言ったものですよね!
そういうことは、全世界共通だなあ…と思います~(*^^*)
Commented by milletti_naoko at 2015-03-10 18:25
なぎささん、こんにちは。弱みも欠点もある人間のわたしたち、つい悪口が言いたくなっても、「でもね」と、そんなふうに相手を温かく認め、受け容れる言葉が出てくる、そういう環境ってすてきですね。うちの夫もかんしゃくもちです。わたしも穏やかなつもりですが、お互いさまですが相手が夫だとつい寛容度が低くなって、つまらないことで腹を立てたりもしてしまいます。いらいらさせてしまうような、困ったところがあるのはわたしたちの方も同じなんですよね。数年前教会で、結婚50周年を迎えた夫婦の仲よくずっと過ごす秘訣、助言が「Sopportatevi」で、つい笑ってしまいながら、大切だよなと思ったことを思い出します。
Commented by milletti_naoko at 2015-03-10 18:32
すずさん、お互いの欠点を受け容れて優しくといきたいところですが、実際にはなかなか難しいですよね。それがもっと自分に対しても、人に、友人や家族、配偶者に対してもできれば、もっと愛ある、ぎすぎすしない円滑な人間関係が築けるような気がするのですが、修行の必要をまだまだ感じることが多い未熟なわたしです。

サンレモ音楽祭は開催期間も数日にわたるので、毎回司会者によって意向も変わりますが、これはいいなという話が聴けたり、心に響く歌に感動できたりするそういうときもあります。サンレモ、すずさんは何度も訪ねられたんですね! わたしたちは、南仏からの帰りに一度立ち寄ったことがあり、迷路のような町中の散歩を楽しんだのを覚えています。Raiの映像、日本からでも見られたんですね! 生放送は国外では見られないけれど、過去の映像は見られるのかもしれませんね。教えてくださって、ありがとうございます。
Commented by milletti_naoko at 2015-03-10 18:41
アリスさん、こんにちは。「われなべにとじぶた」とは、よく言ったものですね。教会での結婚式で誓う「健やかなるときも病めるときも」という言葉には、こういう日常のささやかないろんなずっこけがあってもということも含んでいると思います。長年いっしょに寄り添ったであろう夫婦の絵に、「わたしたちは物が壊れたら捨てるのではなく、修理して使い続ける時代に育ったから」という言葉が添えられたのを見かけたことがあります。困ったところも慈しむこと、問題があっても対処して、二人で荒波を乗り越えていく気持ちが大切かな、と。ただし、今回は割愛しましたが、リッッティッツェットがこのときサンレモで言っているように、「愛している」と言いながら暴力をふるい続けるような輩が口にする「愛」は愛ではないので、「自分が悪い」、「いつか変わってくれるはず」などと思わずに、早く自らの安全を図り、別れる勇気を持つことが大切なのではありますが。
Commented by ムームー at 2015-03-10 19:04 x
なおこさん
こんばんは。
そうそう、年月経つと色々な思いに変わりますけど
お互いに必要なんですよね。
私は別れてみて最近いいところが思い浮かびますもの。
看病してて相手もわがままになり、こちらも
つんけんしたくなることもありました。
今はもう少し優しくすればよかったなんて思うことも。
でもお互い様~って開き直っています。
書かれてることから離れた言葉になりました。
ごめんなさい~
Commented by milletti_naoko at 2015-03-10 19:12
ムームーさん、こんにちは。いえいえ、心のこもった、奥の深いコメントをありがとうございます。健やかなるときも病めるときも長いながい間寄り添われて、時には間を取り、でも必要なときにはいつもいつもだんなさまの傍らで笑顔で励まし続けられた、そういうムームーさんにも、そういうときはあったのだなと思うと、いっそうすてきだなと感嘆すると同時に、わたしでも、わたしたちでも大丈夫と、とても励まされます。親しい間だからこそ、かえって甘えも出て、優しくなれないときもあるけれど、そういうときでも、その奥にある思いや在り方を大切に、大切に思い続ける、わたしたちも、そんなふうであれますように。本当に、いろんな意味で、「お互いさま」なのですよね。ある意味自分たちを映す鏡であるところさえあるかもしれません。


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