自然の芸術と思うことども

 日曜の薬草講座で山を登っていたら、ブナの木の洞に、落ち葉が積もり、苔がむした中に育った若木の葉の緑がきれいで、自然と時が生み出した芸術の美しさに感動しました。

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Valle del Rio (FR) 7/6/2015

洞の形も、次世代に命をつなごうとする落ち葉と、緑の苔と若木の命を、柔らかく包み込む手のように見えます。

 5月だったか、心温かな仕事の依頼がありました。日本の文化が大好きな若者に、友人たちで何時間か日本語の授業を贈りたいのだけれど、というメールが来たのです。返事では、まず、友達に大好きな国の言葉を学べる機会を贈ろうという気持ちの温かさをたたえ、そのお友達の若者はあなた方のようなお友達がいて幸せですねと書きました。そのあとで、もちろん喜んで授業は担当できるけれども、若い皆さんにはわたしの授業料は高すぎる可能性があるので、もしそう判断した場合には、日本語の教科書、たとえばこういう本を贈ってあげるのはどうでしょうと、書き添えました。

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 わたしは日本語でもイタリア語でも、個人授業の料金は、60分25ユーロとしています。ペルージャで、大学や学校で教えた経験がある外国語教師の、個人授業の相場でもあり、1時間の授業に対しても、数時間ときには10時間あまり準備をして臨むこともあり、その報酬に値するだけの勉強や経験を重ねてきたという自負、授業ができるという自負もあります。若い生徒さんに教えてあげたいという思いはありますが、それで金額を安くしてしまうと、これまでこの授業料で日本語を教えてきたイタリアの方、イタリア語の個人授業をしてきた日本の生徒さんに失礼でもあります。本を贈ってあげてはどうかと、候補となる本も挙げたのは、授業について質問のメールが10通あったとすると、これまでの経験では、授業料を知って、それでもお願いしますという方が5名、残念ながら、その授業料では自分には難しいので断念しますと返事をくださる方が2名、そのまま返事のない人が3名といった割合だからです。授業料を提示したあとに返事がなかったら、教科書の紹介をしてあげられないと思って、あらかじめ先手を打ったのですが、友達に優しい女学生は、仕事を依頼しようとしたわたしに対しても礼を尽くして、ていねいなお礼とおわびの返事をくれました。

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 今日は、本当は、年の初めにアッシジ観光の同行通訳の依頼があった日だったのですが、先方の都合で、かなり前にではありますが、キャンセルになりまし、5月の初めにあった依頼も、学校の授業があるために残念ながら、その日程ではできませんとお断りしています。そうして実は、学校で日本語の試験があった当日にも、通訳の仕事の打診があったのを、どうしても外せない仕事があるので残念ながらと、お断りしています。産業翻訳については、実は、先週の仕事に限らず、「日本のお客さんや、お客になってほしいと思っている業者が、突然ウンブリアの我が社を訪ねてくることになったので、通訳をしてほしい」と、1日前、3日前に突然メールや電話がかかってくるのだけれど、ペルージャを遠く離れて旅行中で、残念ながらお断りするということが、少なくありません。ウンブリアの業者を訪ねようという日本の業者の方は、おそらく日程に余裕があったから足を運ぶことにしようというくらいのおつもりなのだと思うのです。だから、ウンブリアの企業への連絡が間際になり、わたしへの通訳の依頼や打診も訪問直前になるのでしょう。確かに、両業者に、だれかは英語が話せる人がいるはずで、意図は通訳なしでも何とか通じるはずです。けれども、ウンブリアの企業側は、「せっかく大事な取引先が、遠い国から来てくれるのだから、できれば観光案内などもして、我が社の事情もしっかり聞いてもらいたい。そのためには通訳をだれか。」と考えるのでしょう。実際、一度イタリアの子会社を訪ねて巡業中の日本の企業の社長さん一行がウンブリアの子会社を訪ねたとき、わたしがイタリア語・日本語間の通訳をしたら、「他の企業では3時間かかった会合が半分で終わった」と喜んでいただきました。イタリア語→英語→日本語、日本語→英語→イタリア語と、いちいち英語を介していると、社長さんたちが社の方針を説明するのを訳すにも、子会社側からの質問を訳すにも、時間がかかるからです。

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 というわけで、ウンブリアに限らず、イタリアの企業と取引があって、この日にここを訪ねようという予定がある場合は、できるだけ早めに、取引先に連絡を入れておかれると、だれか日本語の通訳が入って、話や旅行がしやすくなる可能性が高くなると思います。今書いていて、ひょっとしたら、単にイタリアの企業が、日本のお客さんが来るのを前々から知っていながら、通訳を突然探し出すのではないかという疑惑が胸に浮かびました。そう言えば、数年前に、演劇セミナーの講師をする日本の方の通訳を依頼されたときは、あのときは、セミナーを主催し、わたしに通訳の依頼をした方はアメリカ人でしたが、講師の方がイタリア現地に来てはじめて、英語は話せないと知り、慌てて、「明日からなんですが」という依頼があったのです。

 ちなみに、通訳の方は、1時間31.25ユーロ(税込み)で、ペルージャ市内ではない場合は短くても最低3時間分の報酬、そして、移動費を実費でいただいています。

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 写真はすべて、日曜日の薬草講座で、草花を訪ねて山を歩いたときに撮影したものです。前回の野外演習は、天気が悪いためか、ほとんど歩かず、もっぱら薬草や野草について、見分け方などの説明を聞きました。薬草講座は興味深いけれど、せっかくの週末なのに、山を歩いて風景や野の花が楽しめないのが残念だと思っていたら、日曜は、美しい見晴らしも森の散歩も、花との出会いも楽しめてうれしかったです。葉に斑点があるのが特徴のこの自生の蘭(orchidea)にも、おかげで会うことができました。

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Cresce una pianta giovane tra le foglie cadute
insieme al muschio avvolto dall'albero di faggio
il quale sembra una mano che tiene qualcosa di prezioso.
Tante belle opere d'arte della natura e del tempo
le abbiamo trovate camminando verso la Cascata di Capo Rio
durante il Corso di erboristeria il 7 giugno.
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関連記事へのリンク / Link agli articoli correlati
- 薬草講座で山登り / Corso di erboristeria sul sentiero verso la Cascata di Capo Rio (7/6/2015)
- 薬草を見分け使い方を学ぶ講座 / Corso introduttivo al Riconoscimento ed Uso delle Piante Officinali @ Collepardo (24/5/2015)

Articolo scritto da Naoko Ishii

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by milletti_naoko | 2015-06-09 23:00 | Lazio | Comments(6)
Commented by クロちゃん at 2015-06-10 06:55 x
なおこさん、おはようございます。♪
そうそう、自然は芸術の宝庫でしょう。
滝と綺麗な緑の中で、色んな発見が待っていますね。(^^)/
Commented by milletti_naoko at 2015-06-10 07:08
クロちゃん、そうですよね。野の花も滝も空も。偉大な芸術たちを訪ねて歩けるので、やっぱり山はいいですよね。
Commented by nagisamiyamoto at 2015-06-10 09:49
なおこさん、こんばんは
授業料といい、通訳料といいとても良心的だと思います。
またお仕事をするときのなおこさんの姿勢が凛としていて誇りを持っているなと感じました。先方は代金を払っているわけですからプロとして接することはとても重要ですし、初心に帰るような記事でした。

私もお勉強して、若い芽が生えてくるといいなぁ。
Commented by suzu-clair at 2015-06-10 17:47
ブナの木の洞の中の若い芽、
私も、
まるで幼い命を大切に包み込んでいる母性のように見えます。
自然が作り出すものは、美しいですね☆

なおこさんの、
つねにご依頼主の方へ、誠実に、真摯に向き合っておられる姿勢、
本当に素晴らしいと思いました。

料金設定のこと、とても理解できます。
自分のことを書いて恐縮ですが、
私の仕事も、
教室のレッスン料金は人によってピンからキリまであり、
先日も、レッスン料無料なんて広告を打っているチラシが新聞に入っていました。
昔、教室を始めたばかりの頃も、
このような広告を目にして、
みんな安いほうに流れていくのかな・・・とひどく落ち込んだこともありました。

なおこさんの、
ご自身のお仕事に対する誇りと、
それを裏付けるだけの日ごろのたゆみない努力や誠実なお仕事ぶりをブログを通じて感じている私は、
それに相当する対価は当然のことと思いますし、
まじめにお仕事をなさっておられる他の先生や生徒さんへの敬意も大切になさっておられるところに、感銘を受けました。

お友達思いの女学生たちのお問い合わせ、
心温まりますね。
なにより、お断りの際にも、その方たちも礼をつくした率直なお気持ちを示されたこと、
温かいものを感じます。
なおこさんが誠実だから、そうした心の通い合うやりとりとなられたのでしょう。

私も以前、小学生が、母の日にお母様にお花をあげたいからと訪ねてこられたのですが、
子供たちのお小遣いからお花代もレッスン料もいただくわけにはとちょっと頭を悩ませたこともありました。
つねに前もっての材料の仕入れが必要なこの仕事は、
突然のご要望にはなかなかご対応しづらいことなど、
ご希望に添えないこともあるのが、私も悩ましいです。
それでも、
ご依頼くださった方も、こちらも、
お互いがご事情を理解し合って、
気持ちが通い合えるお仕事ができると、
仕事へのやりがいを感じますよね。
Commented by milletti_naoko at 2015-06-10 17:55
なぎささん、こんにちは。ペルージャは物価が安いということもあると思いますが、業者から、この金額でと依頼がある場合や、とりわけ事前の勉強が要りそうな場合以外は、この金額で見積もりを出しています。もう何年も据え置きではあり、授業料をもっと高くしてもいいよと言ってくださる生徒さんもいるのですが、最近は不況でもありますし、単価を上げるよりは、より多くの仕事、人に関われたらと考えています。

日本で高校の教員を退職したときは、教えるのも好きだけれども、特に言語や文学を勉強するのも好きなので、そちらで自分がどこまでできるか試してみたいという思いがありました。ただ、こちらでまだ学校や大学で学んでいる間に、日本の古典文学について講演をする機会を何度かいただいて、そのときに教壇、演壇に立って初めて、学ぶこともですが、教えることがどんなに自分が好きか、というより、教えている間、学ぶのを支援している間こそ自分が生きているのだという気が実感としてあって、ですから、そういう機会を、できるだけ多く持てるように、方法を模索しています。1時間25ユーロというのは、イタリアの若い人には高いので、たとえば、いろいろと聞いてきてくれる人をまとめて、いっしょに夏期講座ができないかとか、日本旅行直前の2、3時間のこれだけは知っておくといいでしょという日本語や日本、日本旅行についての知識も教える旅行前直前日本語授業を案内したり、イタリア語であれば、日本人の方向けに、イタリア語のいろんな過去(直説法だけでも、近過去・半過去・大過去・遠過去・先立未来と、いろいろありますよね)を3、4時間くらいで概観・練習してみたり、逆にイタリアに暮らし始めたばかりの方・旅行中の方に、4時間ほどで、ざっととりあえず必要な語彙や、すぐに使えそうな文法、大ざっぱなイタリア語の体系や勉強法などをお教えしたりなど、短期集中だと、お金も時間もあまりかからないので、とっつきやすいかもと、いろいろと考え中です。ペルージャのまずはうちで1、2時間授業をしたあとで、いっしょに市内に繰り出して、ミニメトロやバスの切符の買い方・乗り方、降りる場所が分からない場合の尋ね方、バールやレストランでの注文の仕方やメニューの読み方を学び、歩きながら、観光に必要な語彙を、視覚や聴覚・触覚を総動員して学ぶ半日のイタリア語講座もおもしろそうだなとか。いろいろ妄想というか計画が広がっています。
Commented by milletti_naoko at 2015-06-10 18:58
すずさん、森を歩いていると、時々小さな箱庭のように美しく、苔や落ち葉、花や若木が岩などを飾っていることに出会うことがあります。自然はすばらしいな、美しいなとしみじみ思います♪

いつもお優しく、お心のこもったコメントや励ましをありがとうございます。料金設定は本当に難しいですよね。この薬草講座を主催・代表をしているマルコ先生は、薬草を使ったリキュールや自然の成分だけを使った薬を製造・販売する店も持っているのですが、アルバニアの商品の単価が安いのは、多くの人がわずかな賃金しかもらえず薬草を集め、搾取されているからで、先生の店では、きちんと知識をつけた人に相当の対価を払って収穫した薬草を使っているために、どうしても値段は高くなるけれども、自然や労働環境、働く人の権利を守っていくためには、消費者も考えなければいけないという話をしていました。お花の世界でもいろいろあるのですね。安ければいいではなくて、少々高くてもこれを、この人にと思っていただけるような仕事ができればとは心がけているのですが、無料と呼びかけてまずは人を集め、自分や自分の授業を知ってもらおうという意図でもあるのでしょう。わたしもそう言えば、頼まれてですが、かつてイタリアで何度か日本の古典文学について、学校や大学で講演をしたことがあって、それは無料で、日本の文化をより知ってもらえるならばと喜んで引き受けたのですが、その講演を聴いてくださった先生方のおかげ、講演をする機会を与えていただいたおかげで、後に外国人大学で、日本語・日本文学の授業を担当することができたのかなと、今になってはそう思います。

すずさんの教室には、そんなふうに小学生のお子さんも、母の日にと訪ねてくる優しいお子さんがいるんですね。やっぱりお花の仕事でも、事前にいろいろと材料などを早めに準備しておくことが大切なのですね。すずさんがそうやって誠意を持って接されていることが分かるから、きっと多くの生徒さんがいらっしゃるのだし、すずさんが活けられるお花は美しいのでしょうね。
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