グラン・サッソ、高山の花とムッソリーニ脱出劇

 今年6月のアブルッツォ旅行でも、グラン・サッソの高峰に囲まれた広大な高原、カンポ・インペラトーレ(Campo Imperatore)を訪ねました。昨年、7月になっても色とりどりの花がいっぱいに咲く美しい風景に感動したからです。

f0234936_2091369.jpg
Orchidee selvatiche @ Campo Imperatore,
Gran Sasso, Abruzzo 14/6/2015

 標高約1800mと山の高みにあるため、高原に向けて山を登るうちに、真夏の暑さはどこへやら、肌寒いほどの気温になりました。けれどもそのおかげで、高原では今も、自生の蘭がきれいに咲いています。

f0234936_2093631.jpg

 高い山だからこそ出会えるめずらしい花も多く、

f0234936_20105698.jpg

グラン・サッソの雄大な尖峰を間近に眺め、

f0234936_20111362.jpg

思いがけず雪の上を歩いたりもしました。

 この美しい高原は、標高が高く、さらにアッペンニーニ山脈で最も高い山に取り囲まれているために、1943年のファシスト政権崩壊後に逮捕されたムッソリーニが幽閉された場所でもあります。この写真の奥に見えるレンガ色の建物が、ムッソリーニが幽閉されていたホテルであり、

f0234936_20113541.jpg
Papaveri alpini & Hotel Rifugio Campo Imperatore

 わたしたちが去年も今年も泊まった宿です。ムッソリーニがヒトラーの送ったドイツ軍によって、脱出不可能と思われていた高山から脱出したことは、ペルージャ外国人大学のイタリア史の授業で12年前に教わって、漠然と覚えていましたが、その舞台となった高原とホテルがここにあることは、昨年泊まったときに初めて知りました。

f0234936_20115967.jpg
Camera dove era imprigionato Mussolini

 今年は、泊まった初日が土曜日だったからか、夕食時にホテルから客に、「ムッソリーニが囚われていた部屋を見たければ、食後に案内しますのでどうぞ。」という呼びかけがあり、それで、他の宿泊客といっしょに、その部屋を見に行きました。亜麻布の毛布も家具も、ムッソリーニが当時利用したものだそうです。

 独裁者であったムッソリーニをいまだに敬愛する人がいることは知っていましたが、案内してくれた若い青年が、ムッソリーニをDuce(統帥)と呼ぶことや、ホテルの入り口にムッソリーニのカレンダーが置かれていることが気になりました。ベルルスコーニと懇意にしているRaiの番組の司会者、ブルーノ・ヴェスパが、ホテルに願い出てこの部屋に泊まったと聞いて、やれやれと思ったのですが、今インターネットで調べると、なんとブルーノ・ヴェスパは、本人は否定するものの、ムッソリーニの息子だという説があるのだそうです。

f0234936_20122389.jpg

 ドイツ軍は、音の静かなグライダー(aliante)を、ムッソリーニ救出に利用したのだと、ホテルの若者がその様子を詳しく説明してくれました。この救出作戦は、その名をOperazione Querciaと言います。この作戦を語る映像は、YouTube上にいくつかあるのですが、背景に流れるのがファシズムの歌だったり、ファシスト政権によって制作されたものだったりするため、リンクを直接貼るのは控えます。この作戦に際して命を落とした人やその家族にインタビューをする映像もあるのですが、そういう映像には、作戦実行の詳細はありません。

 今回のムッソリーニの部屋訪問で聞いたalianteという言葉は、若者の話からエンジンを搭載しないため音をほとんど立てない飛行機らしいと分かったものの、これまで聞いたことがない、未知の言葉だと思っていたら、

f0234936_20124326.jpg
Dai miei appunti della “Storia Medioevale e Moderna”, lezione del prof. Olivieri
@ Università per Stranieri di Perugia, 2002

2002年に、外国人大学の歴史の授業で、この脱出劇を学んだときにも聞いていたようで、ノートにきちんと書いてあります。ただ、このときも、先生の説明でどういう飛行機かが分かったので、辞書は引かず、今回このブログの記事を書くにあたって、初めて伊和辞典を調べて、日本語では「グライダー、滑空機」と言うのだと分かりました。

 昨日、この古いノートを引っ張り出して、先生の描いた絵が、うまく状況をとらえていたなと感心しました。この授業中にも、ムッソリーニ救出作戦の詳細を教わっていたようです。

f0234936_2013735.jpg

 戦争のない平和な暮らしが、戦禍に苦しむ国に訪れますように、そうして、現在平和を享受する国では、今後も保たれていきますように。

**************************************************
Campo Imperatore, Vette Maestose
ornate dai Fiori variopinti
, orchidee, genzianelle, papaveri...
Di giorno una passeggiata tra i fiori e panorami meravigliosi,
di notte la visita della camera
dove era imprigionato Mussolini!
**************************************************

関連記事へのリンク / Link agli articoli correlati
- アブルッツォ、グラン・サッソを訪ねて / Viaggio in Abruzzo 2014 (7/2014)
- 美しい高原、カンポ・インペラトーレ / Alba & tramonto a Campo Imperatore (7/2014)

参照リンク / Riferimenti web
- Campo Imperatore – Escursionismo, Ciclismo, Storia
- L’Huffington Post – Bruno Vespa dorme nell’hotel prigione di Benito Mussolini. Il tweet da Campo Imperatore (12/7/2013)
- 世界史の窓 – ムッソリーニ
- 世界史の目 - 我が胸を撃て!!・その3~二つのイタリアと独裁者の最期~
- GKZ植物辞典 – チャボリンドウ、学名 Gentiana acaulis L
- it.wikipedia – Gentiana acaulils L., Genzianella o Genziana di Koch

Articolo scritto da Naoko Ishii

↓ 応援クリックを二ついただけると、うれしいです。
↓ Cliccate sulle icone dei 2 Blog Ranking, grazie :-)
にほんブログ村 海外生活ブログ イタリア情報へ   
 
by milletti_naoko | 2015-07-10 23:59 | Abruzzo | Trackback | Comments(4)
トラックバックURL : http://cuoreverde.exblog.jp/tb/24233997
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by ayayay0003 at 2015-07-11 09:28
おはようございます^^
グラン・サッソの高峰に囲まれた広大な高原、カンポ・インペラトーレ(Campo Imperatore)、昨年も紹介していただいた記憶はありますが、お花はまた違う気がします(^^♪
1800m級を歩いて上るというのが素晴らしいですね♪
私は、北イタリア旅行の時に、登山列車で上って、ほんの少しくらいしか歩いたことがないので、普段から鍛えておくというのは素敵なこと!と思います。
ツアーだとバスでも1800mくらいまで登れる場所だと連れて行ってくれるので、ほんと場所によりますが、きれいな高山植物を見た時には感動したのを思い出しました(^。^)
リンドウのお写真を見て思い出し、とても嬉しい気持ちになりました、ありがとうございます(^-^)

そして、「ムッソリーニが囚われていた部屋」のお写真まで見ることができて大変興味深く拝見しました!
やはり歴史の舞台になった場所は、こうして保存しておいてくれるといいですね。
独裁者であったから、少複雑ではありますが、こうして保存することにより、間違いを繰り返さない教訓にするという考えもあるとは思うのであります。
興味深い記事をありがとうございました。
Commented by suzu-clair at 2015-07-12 00:05
高原の美しい花々や、
雄大な山の景色に癒されました。

青いお花、
なんの花なのでしょう。
とても鮮やかな色ですね。
朝顔のつぼみのような形にも見えますが、
このような花が広がる風景は素敵でしょうね☆

ムッソリーニが囚われていたというお部屋は、
快適そうですね!
やはり、
日本で教科書で習うのとは違う、
国民感情というか、
一部の人の中で根付く思想が、
今でもそちらにはあるのでしょうか。
本当に、私も、
世界の平和を願ってやみません。
Commented by milletti_naoko at 2015-07-13 00:05
アリスさん、今回は約1か月早く訪ねたので、夫には「まだ花はないだろう。」と言われていたのですが、前回もあった独特のスミレのほかに、季節が早いおかげで、蘭やクロッカスなど、千メートル級の山では初夏や早春に咲いていた花が見られてうれしかったです。残念ながら天気は今一つで、ひどく寒かったのですが、標高が高いおかげで、ちょっと山に登ってもすばらしい眺めや花たちとの出会いを楽しむことができました♪

ツアーでもピレネーやアルプスなど高い山を国境を超えて移動するときは、そんな高さまで、バスで走るときがあるんですね。わたしも南仏へドライブした時、こんなに標高の高いところにまで車で来られるとはとびっくりした覚えがあります。アリスさんもリンドウをご覧になったんですね! こちらこそ、アリスさんが喜んでくださったと分かってうれしいです。ありがとうございます。

歴史の授業で遠い昔に学んだ脱出劇の舞台を、まさか登山のために訪ねることになるとは思わず驚きました。歴史を振り返り、二度と過ちを繰り返さないことは大切ですよね。説明してくれた若者が、ムッソリーニに好意的な印象を持っていたようであるのが気になったのですが、思いがけず部屋を見られて、興味深かったです。
Commented by milletti_naoko at 2015-07-13 00:24
すずさん、この青い花は、標高が高い山で出会えるめずらしい花です。イタリア語では俗にgenzianellaと呼ぶのですが、こう呼ぶ花は多いようだし、伊和辞典も植物名についてはいいかげんなことがあるので、あとで調べてからと思っていました。この花については、辞書にある「チャボリンドウ」という名が正しい名であるようです。というのも、学名を確認したらGentiana acaulis Lだからです。ちょうどこの花がきれいに咲く時期にめぐり合わせたからか、きれいなこのチャボリンドウがあちこちに咲いていて、うれしかったです。日本語とイタリア語のこの花の説明へのリンクを追加しました。

ムッソリーニは歴史の授業では悪人として教えられているのですが、一部には残念ながらムッソリーニを慕う人がまだいるようです。部屋は寝室は素朴ですが、書斎には高原が見晴らせる小さい窓もあり、特にトイレが浴槽もあって、造りがりっぱでした。


日本語教師・通訳・翻訳家。元高校国語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより


by なおこ

プロフィールを見る
画像一覧

Chi scrive

Naoko Ishii
Insegnante di
Giapponese & Italiano
Interprete Traduttrice
IT-JP-EN Fotoblogger
Pellegrina @ Perugia
Umbria, Italy

Per Lezioni, Servizi di
Interpretariato,
Traduzioni, contattate
via email.

- CV e contatti
- Twitter
- Facebook
- Instagram

I miei articoli su Japan-Italy Travel On-line↓↓
Perugia Lago Trasimeno Assisi Montefalco Oli d’Oliva & Trevi Gubbio Piediluco Terremoto Centro Italia

Mio articolo su
Huffingtonpost.jp
- Tre settimane dal Terremoto Centro Italia   

*Giù in basso
Categorie in italiano


Copyright©2010-16
Fotoblog da Perugia
All rights reserved

イタリア、ペルージャ在住。
日本語・イタリア語教師、
通訳、翻訳、ライター。

イタリア語・日本語の授業、
産業・会議通訳、観光の
同行通訳、翻訳、イタリア
旅行・文化・イタリア語に
ついての記事執筆など
承ります。メール
お問い合わせください。

- 履歴・連絡先
- ツイッター
- フェイスブック
- インスタグラム
- イタリア語・イタリア文化情報サイト
- イタリア語学習メルマガ
- 多言語オンライン辞典
- イタリア天気予報
JAPAN-ITALY Travel On-lineメルマガに執筆↓↓
- 連載魅力のウンブリア



画像一覧

最新の記事

二日月白くきらめく夕焼けの空..
at 2017-11-20 23:28
どんよりペルージャ とほほな..
at 2017-11-19 23:47
紅葉・白雪のラヴェルナ修道院..
at 2017-11-18 23:58
紅葉美しテッツィオ山、イタリ..
at 2017-11-17 23:58
バスで仕事 黄葉きれい、ペル..
at 2017-11-16 22:08

記事ランキング

タグ

(614)
(527)
(336)
(287)
(219)
(189)
(166)
(158)
(147)
(137)
(136)
(120)
(114)
(100)
(92)
(91)
(88)
(68)
(52)
(33)

検索

以前の記事

2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
more...

カテゴリ

Famiglia
Feste & eventi
Film, Libri & Musica
Fiori Piante Animali
Francia & francese
Giappone
Gastronomia
Giappone - Italia
ImparareL2
Insegnare Giapponese
Inteprete Traduzioni
Lingua Italiana
Notizie & Curiosita
Poesia, Letteratura
Regno Unito - UK
Ricordi
Sistemi & procedure
Viaggi
Abruzzo
Emilia-Romagna
Lazio
Liguria
Marche
Piemonte
Puglia
Toscana
Trentino-Alto Adige
Umbria
Valle d'Aosta
Veneto
Via di Roma (RI-RM)
Cammino S.Benedetto
Via degli Dei(BO-FI)
Cammino di Santiago
Vivere
Altro

ブログジャンル

日々の出来事
語学

ブログパーツ

  • このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することを禁じます。

最新のコメント

アリスさん、ミニメトロの..
by milletti_naoko at 00:27
まさみさん、ペンナ山は標..
by milletti_naoko at 00:21
アリスさん、先週の月曜は..
by milletti_naoko at 00:18
鍵コメントの方へ ..
by milletti_naoko at 00:09
なおこさん、ペルージャの..
by ayayay0003 at 15:50

お気に入りブログ

A piece of P...
フィレンツェ田舎生活便り2
彩風便り 
花が教えてくれたこと
イタリア・絵に描ける珠玉...
Facciamo una...
VINO! VINO! ...
SOL LUCET OM...
文殊の綴り絵
カッラーラ日記 大理石の...
黒い森の白いくまさん
イタリアの風:Chigu...
dezire_photo...
梨の木日記
PASQUARELLIの...
フィレンツェのガイド な...
ローマより愛をこめて
日々是呼吸
田園都市生活
英国発!美は一日にしてならず
Mrs.Piggle-W...
ひっそりと生きる
Osteria TiaL...
リカのPARIS日記♪
イタリアちゅうねん
トンボロレースと日々のこと
コントリ!(コントラバス...
IL PARADISO ...
アリスのトリップ
毎日の楽しいを集めてハッ...
ボローニャとシチリアのあ...
カマクラ ときどき イタリア
Can of Good ...
トスカーナの海より リボルノ編
ととやふくろう
40代の悪あがき日記
ミセス サファイア 静け...
小さな窓から
斗々屋ふくろう

外部リンク