イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

自動車保険とブラックボックス

 昨年9月に、自動車保険を更新したとき、「走行距離が短いのですが、それでさらに割引になるということはありませんか」と尋ねたら、保険会社の人に勧められたのが、車にブラックボックスを搭載することで保険料が割引になるという保険でした。

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Col de l’Iseran, altitude 2770m 3/8/2015

 1年前の話なので、記憶に不確かなところもありますが、「前年までの契約を更新するだけなら、年間保険料が640ユーロとなるところ、ブラックボックスを搭載すれば、同じ補償内容で、560ユーロで済む」とのことです。そして、これまでと同じ保険なら、走行距離がどんなに短くても、1万キロ未満は割引率が変わらないのに対して、ブラックボックスを搭載すれば、走行距離が1万キロ未満の場合にも、3千キロ未満、3800キロ未満など、走行が少なければ少ないほど、割引率が高くなると言います。

 ふだんから制限速度にも気をつけて運転しているわたしは、後ろめたいところもなく、すぐにこのブラックボックスつきの保険に切り替えることに決めました。調べてみると、最近では日本でも導入されつつあり、「テレマティクス保険」と呼ばれているようです。

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 さて、その日仕事から帰った夫にその話をしたら、すでに契約は済ませていたものの、夫は反対でした。どこにどんな速度を出して行ったか、スピード違反が記録されていき、個人情報も漏れてしまうと言うのです。と言うのも、わたしの車は、特に遠出する場合には、夫と交代で運転することが多いからです。夫はむやみに車を飛ばす人では決してないのですが、見晴らしのいい直線道路なのに、どういうわけか制限速度が時速50キロという郊外の道が時々あって、そういう道路では、皆にならって、いけないのですが、夫もスピードを出して運転することがあるからです。確かに、そういう道路で、わたしが10キロ上乗せして時速60キロで走ると、どんどん後ろの車に追い抜かれ、対向車線に車があると、後ろに列ができてしまうのではありますが。

 問題は、このブラックボックスが、わたし自身では取りつけが難しく、業者に頼まなければいけなかったことです。これは幸い、修理後にまだ問題があったアイゴを、修理会社に再び運んだついでに取りつけを頼んだら、無料で設置してくれました。

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 そうして、1年が経ち、昨日再び保険料を納めに行きました。今度は夫が同行してくれたので、「家族割引の10%」も確実にしてくれ、やはりブラックボックスを搭載しての年間保険料は、519ユーロでした。今昨年の契約書を見ると、夫同伴でなかったためか、わたしが言い忘れたためか、家族割引が忘れられていたようです。ただ、もし昨年夫がいっしょにいたら、テレマティクス保険にはしていなかったかもしれません。今回の継続更新の際は、店の人から話を直接聞いて安心したからか、夫も特に反対はしませんでした。代理店の人が夫の質問に答えて、「事故が起こった場合にだけ、具体的情報の連絡がある上、ブラックボックスで分かるのは、速度ではなくて、走行距離と事故時に車が受けた衝撃です。」と言った上、ブラックボックスを搭載した方が、料金がずっと安くなることが、夫にも分かったからです。ちなみに、ブラックボックスでは、単に走行距離と受けた衝撃の強さ以外の情報が、本当は分かるのではないかと、さまざまなオンライン記事を読んで、わたしは感じました。

 ただし、わたしの場合は、ブラックボックスがはじき出した年間走行距離が5370キロと短いために、保険料が2割引になる上、最初の保険契約時に、同居している家族である夫の等級を利用できたものの、過去の自動車運転経歴が不詳ということで、比較的高い保険料を払っているために、ブラックボックス搭載による割引の恩恵が受けられるのかもしれません。

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Di nuovo al Colle dell’Iseran con l’Aygo 4/8/2015

 と言うのも、インターネット上で見かける新聞記事や読者・利用者のコメントを見る限り、テレマティクス保険に懐疑的な意見や、まったく安くならなかったというものが多いからです。事故に際しては、ブラックボックスを搭載している側だけの速度違反が明らかになり、ブラックボックスをつけたために不利になりかねないと書いた記事さえあります。

 イタリアでは今年に入って、「保険会社はブラックボックスを車に搭載する顧客には、保険料金を割引する義務があり、その義務を怠った場合には、業者に対して罰金が課されることになった」ようです。そうして、政府がそう定めた背景には、ヨーロッパの他国に比べてイタリアの自動車保険料金がひどく高いという事情があるようです。それで、わたしは何となくこうも勘ぐるのです。ひょっとして、こういうインターネット上のテレマティクス保険に対する反対意見は、「顧客が皆ブラックボックスを搭載し始めて、保険料金が下がること」を恐れる保険会社側が書かせたものではないかと。実際、わたしと夫が契約している代理店は、一昨年まで、そうして昨年も、わたしが走行距離が少ないことに触れなければ、「ブラックボックスをつければ保険料金が安くなる」ことは、まったく口にしなかったからです。果たして真実はどこにあるのか、そうして、わたしが搭載しているブラックボックスでは、実際にどんな情報が分かるのかは謎なのですが、今のところ、わたしとしては、保険料金が2年連続でずっと安くなったこともあり、搭載してよかったと思っています。

 写真は、アルプスで最も標高の高い峠、イズラン峠です。今年の8月、2日間だけフランス・アルプスに足を伸ばしたとき、行きと帰りに訪ねました。ピエモンテ側から山を登り始めたときは、ひどく暑かったのに、標高2770mのこの峠まで来ると、吹く風が冷たくて、寒いほどでした。行きは空が晴れわたり、見晴らしがすばらしかったです。帰りに撮影した最後の写真には、アイゴも写っています。

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2770m slm! Sul passo più alto d'Europa, sul Colle dell'Iseran
con l'Aygo. Panorami stupendi! Alpi francesi agosto 2015
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Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by Kei at 2015-09-24 01:18 x
なおこさん、こんばんは♪
高原の青空と山の見える風景が綺麗ですね。
テレマティクス保険?って初耳です。確かにブラックボックスがどうたらこうたらという話は聞いたことがある気がしますが、日本でもまだ広くは知られていないかも。不利になる場合もあるのでは、慎重に決めなければいけませんね。

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Commented by toto at 2015-09-24 04:05 x
なおこさん、こんばんは!
なおこさんの投稿を読んで、そういやうちも更新の時期だ!と思い出しました。私が運転し出したのは昨年の秋ごろ、更新の直後だったと記憶しているので、それまでは「運転してない私が出すもんかいっ!」と車両保険は更新日を気にするだけで旦那任せでしたが、自分も運転するようになったので気になります。ブラックボックス、そんなのがあるんですね! 今はV社のニュースが飛び交っているので、わが相方は「ブラックボックス」と聞いただけで拒否反応を起こしそうです(笑)。
でも、実際は1年半前に義母の車を譲り受けてから、車は義母名義のまま、、、。もちろん、保険も義母名義(運転者が誰であっても保険が効くというものだと聞いています)。前の車の廃車、車の名義変更、保険と立て続けの出費を出せなかったので、そのままなのですが、そろそろきちんとせねばと思ってます。あぁ、出費が痛い。
Commented by milletti_naoko at 2015-09-24 04:44
Keiさん、こんばんは。イタリアではもう3年前から、こういう保険が出回っていたようなのに、わたしも昨年9月の更新時、ひょんなことから初めて知りました。わたし自身が日本に住んでいたときのことを考えても、ディーラーを通じて契約した保険を毎年継続する方が多いので、新しい保険があるからと言って、仲介のディーラーが特に説明をすることはなく、単に更新手続きをするだけで、一般の人には新しい情報が伝わりにくいのかもしれないと、今思いました。搭載することで安全運転を心がけるようになる傾向があるそうで、皆が使ってくれればと願うのでしょうが、難しいでしょうね。
Commented by milletti_naoko at 2015-09-24 04:52
Totoさん、こんばんは♪ あら、もう運転デビューから1年になったんですね。そうそう、確かに保険は車にかけるものですし、そう言えば、もともとイタリアの法律で、初めて自動車保険を契約する際に、すでに保険をかけている同居する家族の等級を利用できるようになったのも、子供が初めて車を持った際に自分の名義で保険をかけては高いので、親名義ではあるけれど実際には子供が乗るということが慣習としてあったからだと、どこかで読んだような気がします。お二人で話し合って、どうかいい解決策が見つかりますように。保険も毎年、出費としては大きいですよね。自動車税も考えると、車の維持費は年間かなりなものです。ため息……
Commented by ayayay0003 at 2015-09-24 15:31
こんにちは^^
テレマティクス保険?というのは、私もお初です。
ブラックボックスと搭載してというのもお初に聞きました!
多分、私が入る保険にはそういうのがないので、紹介がないのだとは思いますが・・・
2割も安くなるというのは魅力ですね!
しかし、519ユーロという車の保険料は、日本のソレと比べるとなんだかお高いなあ・・・というのが感想です^^;
諸条件、車の大きさなどにもよるのですが・・・。

アルプスで最も標高の高い峠、イズラン峠を自家用車で走るなんて気持ちよさそうです♪私は、ツアーのバスでしか(アルプスと言っても別の場所ですが)走ったことないのでそう思いました!
Commented by milletti_naoko at 2015-09-24 16:14
アリスさん、こんにちは。なるほど、日本ではまだ出始めで、あまり一般には知られていないんですね。そうして、519ユーロは、日本の保険に比べても高いんですね! アイゴは小さい車で走行距離もそれほどないのですが、やはり日本での運転歴があって、日本では安全運転をしていても、こちらでは車に乗り始め、保険をかけ始めたのが2011年で、まだまだ4年目だということもあるでしょう。夫の等級を利用できはするのですが、わたし自身の運転歴が浅いということも保険業者側で考慮するので高くなるようです。初年の2012年には704ユーロ払っていますから、それでも等級の変更のおかげもあって、かなり安くはなりました。初年度は、ディーラーが扱っていたダイレクトライン保険で契約し、新車だったこともあって、この年だけは盗難・火災についての車両保険もつけたのに、471ユーロでした。ですから、ダイレクトラインの方が料金はずっと安いのですが、翌年インターネットで調べて、イタリアではダイレクトライン保険で、事故のあとにまったく業者が動かず、自分に非がないのにすべての責任を負わされたなどという利用者の体験談があまりにも多いので、高くてもいざというときに安心して任せられる保険をと考えて、夫が契約していたミラノ保険(当時)に決めたのです。自動車税は日本に比べるとかなり安いように感じているのですが、それにしても、給料水準がずっと低いイタリアで、イタリアの方が自動車保険が高いなんて、困ったものです。

行きは空が晴れていたので、アルプスの美しい白雪を頂く高峰や緑の眺めがそれはきれいでした♪
by milletti_naoko | 2015-09-23 17:33 | Francia & francese | Comments(6)