せる・させる、れる・られる~日本語教育と人生

 イタリアでは年に一度開催される日本能力試験(JLPT)の受験日は、今年は12月4日です。わたしが個人授業で教えている若者の一人は、昨年初級認定とも言えるN4に合格し、今年は中級の第一歩、N3合格を目指して勉強しています。

 昨年から、N3対策のために、わたしの授業に通うようになったのですが、もっぱら日本の友人とのおしゃべりやメール交換、アニメや漫画を通して、日本語力を培った上で、日本語能力試験対策の問題集・参考書を使って、主に独学で勉強してきたために、読み・書きにそれは強く、漢字や語彙も驚くほどよく知っているのですが、話し言葉・書き言葉ともに口語表現・俗語表現に偏り、文法的に困った間違いが多く、文を書けば、かつて初級レベルまで教えた大学や語学学校・講座の生徒たちが到底及ばないほどの長さ・構成・内容の作文ができるものの、そういう生徒たちさえ犯さないような句読点の使い方や仮名の書き方、て・に・を・はなどの助詞の使い方に関する間違いがたくさんありました。

 言語の力は、母語・外国語に関わらず、どうやって学習・吸収したか(聞くだけ、書き言葉だけ、交流しながらなど)、どんな場面で身につけたか(親しい間柄での会話・改まった場での話・読書など)、接した言語の特徴(俗語・方言・学術語など)などによって、異なってくるからです。わたしたちの健康が、わたしたちが口にするものや運動量とその内容によって決まってくるように、わたしたちの言語の力も、わたしたちがどんな言語をどんなふうに口にし、耳にし、使ってきたかによって決まるのです。

 大ざっぱにはいろいろなことを知っていて、理解もでき、意思疎通も図れるものの、間違いがてんこもりなので、昨年から、意識的に、全体的にバランスが取れ、できるだけ間違いのない、場に応じた日本語が使えるようにと、作文指導をしばしば取り入れて、教えてきました。おかげで以前は、ぼんやりとこんな感じではないかと理解して、話したり書いたりしていたのが、文法的な面にも意識しながら、読んで書き、聞いて話すことができるようになってきました。

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 N3対策になって新たに登場した文法項目のうち、「せる・させる」、「れる・られる」の使用法をしっかり勉強したいという本人からの希望があって、この1、2か月は、中級の教科書と並行して、『みんなの日本語 初級II』を使って、使役と受け身も勉強してきました。昨日の授業で、このいずれもがきちんと把握できるようになったという手応えがあったので、これからは試験対策を中心に、中級の勉強を進めていくつもりです。

 今教えている生徒には、大学の日本語の成績が振るわずに、親に言われて、大学の試験対策に授業に通うようになった若者もいます。できるだけ、楽しみながら勉強できるようにと、絵を描いたり、トランプの札を使ったり工夫してきました。今週は他の科目の試験がたくさんあるということで、月曜に一度だけ授業をしたのですが、思いがけず、日本や日本語に興味を持ち始めたので、今京都に留学している友人を訪ねて、早く日本に行きたいと言うのを聞いて、とてもうれしかったです。

 「馬を水辺に連れて行っても、水を飲ませることはできない」(You can lead a horse to water, but you can't make him drink )という英語のことわざがありますが、何事も、「させられる」という意識ではなく、相手が「してみたい」と思ってくれるように取り計らいたいと思うと同様に、どうせ何かをしなければいけないのであれば、「させられる」ではなく、「よしやってみよう」という気持ちで取り組んでみたいものだと感じました。

 実は、モンブランが間近に見える展望台へは、友人が行きたいと言い、夫が賛同したので、わたしは「緑の山を歩きたいのに」と思いながら同行したのですが、その結果、あんなにもすばらしい風景が見られたのです。犬も歩けば棒に当たる。今週末は、マルケ州の海辺の町、セニガッリアで、以前にもご紹介したパン祭り、Pane Nostrumがあります。出店や講演が興味深く、海も近いので、行ってもいいよとは言っていたのですが、なんと夫は、二つもの小麦粉を使った実演料理講座に、自分だけではなく、わたしの名前でも受講希望を出して、了承をもらってしまっていました。最近は左肩の可動域がせばまって、ひどく痛むので、ちゃんと教わるとおりのことができるかどうかが心配なのですが、せっかく参加するのですから、「作らされる」ではなく、「喜んで作る」心意気で、臨むつもりでいます。

関連記事へのリンク
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- イタリアアルプスとモンブラン展望台
- パンの祭典、セニガッリア1 / Pane Nostrum, Festa internazionale del Pane a Senigallia 1
- パンの祭典、セニガッリア / Pane Nostrum, Festa internazionale del Pane a Senigallia 2

参照リンク / Riferimenti web
- 日本語能力試験 JLPT - 海外の実施都市・実施期間一覧
- 日本語能力試験 JLPT – N1~N5:認定の目安

Articolo scritto da Naoko Ishii

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by milletti_naoko | 2016-09-23 18:34 | Insegnare Giapponese | Trackback | Comments(2)
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Commented by fukusukesan at 2016-09-24 21:41 x
こんばんは、なおこさん。興味深く読みました。日本語を頑張って勉強している方々が、沢山いらっしゃるのですね。私も、少し涼しくなって来ましたので、本を開ける様にしています。読み書きが出来ても、話せる聞くとは、また違う。。その触れた勉強の仕方で、身につく言葉が、違う。なるほどな。。。と。今より少しでも上達する自分を想像して頑張ります^^旦那さん、アクティブですね^^楽しそうなパンのお祭り^^あちこち、仲良く、楽しそうに、色んな事に挑戦しているお二人が、微笑ましいです。楽しんで来てください。
Commented by milletti_naoko at 2016-09-26 06:01
Fukusukesanさん、学問の秋ですね。お互いに頑張りましょう。どう勉強するのがいいかは、人によって、それまでの学習習慣や記憶の仕方、傾向によって違うのですが、やっぱり話したり聞いたりするのが目標であれば音声のインプットが必要になるし、きちんと正しく表現したければ、文法の勉強が必要になります。お互いに頑張りましょう。
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