真の日本語・外国語の力をつけるには

 大学入試の国語の問題でいくら高得点が取れるように勉強しても、それでは日本語の力はつかないということを、おもしろおかしく短編小説の形で書いた清水義範の『国語入試問題必勝法』を、先輩の先生に借りて読んだのは、ちょうど初任の高校で、国語を教え始めた年だったように覚えています。

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 日本語能力試験もまた、センター試験同様に、選択肢の中から正解を選んで、日本語の力を知ろうとするのですが、そのためわたしが日本語を教える生徒さんも、どうしても語彙・漢字・聴解・文法など、日本語という言語のさまざまな側面を文脈なしに取り出して、さらに選択肢の中から選んで答えるような問題集を購入して、次々に解いて、今年12月の試験に向かって学習しています。

 けれども、サッカーで強くなるのに、速く走れるために走る練習や、筋力を鍛えるための訓練をするだけではだめで、サッカーの練習試合が必要であるように、言語も、ばらばらにした部分だけを勉強しても、実際に生きるためにその言語を話したり、読んだり、書いたり、聴いて理解したりする力が育ちません。理想的な形で、日本語の力をつけていくには、まずは読解を重ねて、長い文章を自分で書いてみることだと、宿題をずいぶん前から出しているのですが、つい楽な方、すぐ手がつく問題集の方に、生徒さんが走ってしまい、作文を書かぬまま2か月経ってしまったので、わたし自身も反省しつつ、今日は少々お説教をしました。

 ただ忙しい中時間を見つけ、お金がかかっても個人授業で学ぼうという熱心な生徒さんに、見習わなければいけないなとは、つくづく感じています。本当はわたしも、フランス語の再勉強をしたいし、わたし独特の弱点に気づいて、効果的な方法で指導をしてくれるいい先生につく必要があると感じて、同僚のフランス語の先生に、もうずいぶん前から個人授業をお願いしているのですが、忙しくて時間が取れないとのことなのですが、それも言いわけに、すっかりフランス語の勉強をさぼってしまっています。

 レストランでも、食べたいものや払ってよしとする金額が人によって違い、また、何か特別なお祝いのためか、それともただ空腹がしのげればいいのかなど、目的によっても選ぶ店が違ってきます。語学学校の授業をグループで受けるのは、確かに割安なのですが、ちょうどレストランで、観光客が食べたいものを適度な値段でさっと食べられるように用意した観光客メニューを頼むようなもので、そこそこに学ぶことはあり、そこそこに満足はできるけれども、どこかレベルが合わなかったり、自分には分かっていることや興味がないこと、簡単すぎることを、他のクラスメートが興味があったり必要としているがために、長い間聞かなければいけなかったり、あるいは逆に、難しすぎてついていけなかったりということもあるでしょう。

 一度、ペルージャの語学学校で英語の授業に通い、上級というにはあまりのレベルにあきれて、1か月ほどでやめたことがあるのですが、そういう経験があるために、フランス語の授業は、たとえお金がかかっても、自分が信頼できる先生に、個人的に教えてもらおうと考えていますし、自分が日本語や英語、イタリア語を個人授業で教えるときも、個人授業だからこその長所を生かして、生徒さんの苦手なこと、興味があることや、好きな勉強法などをうまくつかみ、それぞれの生徒さんの学習目標が達成できるように、工夫しています。

 「今日は、今日までに卒業論文を35ページ書いてくるように担当教官に言われていて、日本語で書く時間がなかったんです。」と言う生徒さんは、また、昨晩はそのために、午前2時半まで起きていたそうです。それに、つい最近までは、次々に大学の試験の勉強をし、試験を受けていたので、そのための勉強で大変でした。そうなのですが、せっかくやる気はあるのだし、漢字の練習や問題集は、時間を取って少しずつ解いていっているのだから、文章もきちんと少しずつ書く習慣をつけるように、宿題の出し方を工夫するつもりでいます。読解については、わたしがすでに入手した問題集がよさそうなので、生徒さんもそれを購入して、勉強するつもりだと言い、また、好きだという村上春樹の短編小説集を渡して、うちで少しずつ読んでみるように勧め、今日の授業中に最初の1ページをいっしょに読んでみました。漢字を読むには苦労するものの、字面を追って内容はだいたいつかめるのですから、たいしたものです。

 おととしは日本語能力試験のN4、昨年はN3を受験して、いずれも着々と合格した生徒さんは、今年はN2を目指して勉強しています。試験に合格できることはもちろん、それだけではなく、総合的な確たる日本語の運用能力がつくように、授業をしていけたらと考えています。

 写真は2009年3月に京都の渉成園で見かけた馬酔木の花です。日本庭園にあるイタリアの国旗の三色が美しい木ということで、この記事に使ってみました。

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Albero di pieris japonica in tricolore della bandiera italiana
nel giardino Shosei-en, Kyoto, Giappone 29/3/2009
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Articolo scritto da Naoko Ishii

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by milletti_naoko | 2017-02-23 23:59 | Insegnare Giapponese | Trackback | Comments(4)
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Commented by ayayay0003 at 2017-02-24 09:42
なおこさん、馬酔木のお花が美しい写真、確かにイタリア国旗のお色でこころにくい演出です(^^♪
語学学習とは、なおこさんの仰るように、受験勉強とはひんとは全然違う学習ではないかしら?と私も感じています。
TOEFULの勉強をしている子が、同じようなことを感じているという話をちょっと聞きました!
受験としての語学、ほんとうに使おうとする語学というのはどうも別物のように感じますが、試験はクリアーしなくてはいけないし、となると試験向きにも勉強しながら使える語学をとなると限られた時間の中で良い教師についてするのが理想ですね!
なおこさんの生徒さんは、良い先生に恵まれて幸せだと思いました(^-^)
Commented by りえ at 2017-02-24 18:26 x
どの言語の試験も、それぞれに合わせた解き方のコツがどうしても必要になって、そればかりフォーカスされちゃう事、ありますよね。とはいえ、試験が勉強のモチベーションを上げるための目標になったり、客観的評価の基準になるのも事実ですし。バランスが難しい!ですねぇ。
清水義範、私も好きでしたー。よく覚えてるのは、英語の本を訳す、という夏休みの宿題に、英語訳された『雪国』を選んだ生徒の話。もう、著者名を「クワーバッタ・ヤッシーナリ」というアラブ系の作家と思い込むあたりから笑っぱなし。
Commented by milletti_naoko at 2017-02-24 22:15
アリスさん、ありがとうございます。夜の照明の下では問題集の写真がきれいに撮れないこともあって、この写真を選びました♪

受験勉強もけれど、本当はせっかくその試験を目指して勉強しなければならないのであれば、試験勉強を通じて、バランスよく総合的な力がつくような問題であってほしいものです。そういう意味で、CILSを実施するシエナ外国人大学の学長や試験の統括にあたる先生は、「言語の最小単位はtesto」、つまり単語や短文ではなく、何らかの状況のもとで発された、ある程度の長さがあり、内容的にまとまりのある文章や発話だと考え、日本の実用英検や日本語能力試験にあるような前後の文脈のない一文や会話で、言葉の意味や聴解力を問うような問題は出そうとも考えなかった、その姿勢が正しいと思います。

入試の場合は試験を受ける大勢の力を振り分ける側面も持っていて、人数の多さからやむを得ない場面もありますが、日本で行われるイタリア語や英語、日本語の検定試験については、部分だけを取り出すのではなく、文脈の中に置いて理解力や文法の力を問い、また、文章を実際に書かせて、力を見る、そういう問題が望ましく、受験勉強を通して、もっと偏りのない言語の円滑な運用能力がつくようなものであってほしいと切に願っています。ありがとうございます♪
Commented by milletti_naoko at 2017-02-24 22:26
りえさん、昨年のN3の聴解問題は、どういう状況の中で行われる会話かという説明がいっさいないまま、いきなり会話が始まり、選択肢も引っかけ問題的な傾向があるため、出題者の意図まで推測しながら聴かねばならず、そういうおかしな意味で難しかったと言っていました。漢字や語彙の知識はすでにかなりあるものの、きちんと話したり書いたり、読んだりが難しいので、その点を克服しないと、試験には受かっても、間違いが多く、ため口と改まった場での話し方が混在したおかしな日本語しか書いたり話したりできないままになると、今後も訴えていかなければと思います。

清水義範、この本はちょうどわたしが高校教員になったばかりの頃に書かれたのではないかと思います。それでよけいに印象に残っているのですが、その『雪国』の話は読んだことがないか、読んだのに忘れています。なんておもしろい! 愛媛県立高校には県模試や県模試出題委員会というのがあって、初任校には幸いそのかなり大変だけれど学ぶことが多いという委員会で鍛えられたベテランの国語の先生が多く、いろいろ厳しく教えていただきました。現代文の問題は、漢字の読み書き、言葉の意味から接続詞、内容読解と、問題を解きながら、文章の内容や筆者の言わんとすることがうまく理解できるような構成でなければいけないのだと、そういう問題の哲学を持つ多くのすばらしい先生方に教えていただけたことに感謝しています。県新採用教員のうち、2名だけ新採研修に加えて、ばっちり初任者研修の整った学校および県全体の研修プログラムで鍛えていただいたのに、12年で退職してすみません、けれど、だからこそ、そうして教わったことを今はイタリアや世界という舞台で役立てられたらと思うのであります。


日本語教師・通訳・翻訳家。元高校国語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより


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