イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

薔薇の名前に探る中世後期、イタリア明日土曜21:15 Rai 3 『ULISSE』

 ウンベルト・エーコの小説、『薔薇の名前』と映画を手がかりに、中世後期という興味深い時代について、重要な役割を担った修道士会の活動や当時の世相を知り、また、文化・風習などを読み解いていこうというのが、イタリア時間で明日、午後9時15分からRai 3で放映される教養番組、『Ulisse il piacere della scoperta』の内容であるようです。


 明日放映分の題名は、『Viaggio nel Nome della Rosa』、訳すと「薔薇の名前の旅」なのですが、番組を制作するRai 3のサイトにおける説明(下記リンク参照)と、上にご紹介したビデオ映像による予告から、冒頭に記したような内容であることが分かりました。

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Rocca Calascio, Calascio (AQ) 19/7/2014

 上の予告映像にしばしば登場する美しい古城と風景は、アブルッツォ州の古城、ロッカ・カラッショ(Rocca Calascio)と、周囲を取り囲むグラン・サッソの山々です。2014年7月に訪ねて、風景のすばらしさと要塞の美しさ、山を彩る野の花に感嘆しました。映画、『薔薇の名前』の撮影が、ここでも行われたために、明日の『Ulisse』でも、このロッカ・カラッショが撮影に利用されているようで、今から放映が楽しみです。

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 『薔薇の名前』に、修道士たちが書籍を書写する場面があるからでしょう、番組ではまた、そういう修道士たちの活動が後世に古代文化などを伝えるために、大いに貢献したことも、語られるようです。大学のイタリア文献学などの授業で、どうやって羊皮紙を作ったか、書写生の手になる写本に散見する間違いはどのようなものかなどを学んだことがあり、また、イタリア各地の修道院や教会で、そうして書き写された美しい写本や、書写が行われた作業場や作業台を見かける機会があったため、この修道士たちの書写についての説明にも、興味があります。

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Monastero di San Benedetto, Subiaco (RM) 7/12/2009

 明日はまた、ローマ県スビアーコにある聖ベネデット修道院と、その内部にある、ベネディクト修道会の創立者である聖ベネデット(San Benedetto)が最初の3年間祈りを捧げて過ごした岩間、Sacro Speco(聖なる洞窟)も紹介されるようです。この修道院は内部のフレスコ画やつくりがそれは美しく、写真撮影が禁止されていたので、わたしは写真は撮らなかったのですが、番組内では、この修道会内部の美しい壁画も見ることができるようです。と言うのも、上の番組予告では、この修道院内部でスタッフが撮影する様子も紹介されているからです。

 スビアーコの修道院を、わたしと夫はこの後再び、2013年に、聖ベネデットの足跡を追って、モンテカッシーノを目指す巡礼に参加したときに、巡礼の出発地として、巡礼仲間の友人たちと共に、訪ねたことがあります。

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Abbazia di Montecassino、Cassino (FR) 10/5/2013

 サイトの番組紹介には巡礼についての記述もあるので、わたしたちが歩いて訪ねた場所も出てくるかもしれないと、それも楽しみです。イタリア在住の方で、中世の歴史や美しい自然、修道院などに興味のある方は、ぜひ明日の晩、『Ulisse』をご覧ください。

 『薔薇の名前』については、わたしは上述の大学の授業やイタリア語の授業で、作品の一部を読み、紹介も聞き、以前から興味を持っていました。それが、数年前に、夫が本を持っているのを知って読もうと試みたものの、前書き・冒頭に、フランス語で書かれた部分が多く、まだフランス語の勉強を始める前だった上に、眠る前に読むものだから眠気に負けてしまって、読み進めぬままに終わっていました。昨年だったかテレビで放映されていた映画を初めて見て、感動したというよりは、ひどく衝撃を受けたのを覚えています。

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Favolosa Rocca Calascio & panorami (foto 19/7/2014),
bellissimo Monastero di San Benedetto a Subiaco,
attività dei monaci amanuensi,
tutto sarà domani su Rai 3 dalle 21,15 in Ulisse,
"Viaggio nel Nome della Rosa".
Inoltre, secondo il sito di Rai si ripercorreranno anche "le ultime tappe del pellegrinaggio degli innumerevoli fedeli che si spinsero fra queste valli per visitare i luoghi dove San Benedetto iniziò la sua predicazione", quindi forse potremmo rivedere anche i luoghi che abbiamo visto camminando da Subiaco a Montecassino.
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参照リンク / Riferimenti web
- Rai - Ulisse - Viaggio nel Nome della Rosa
- 『薔薇の名前〈上〉』 単行本 ウンベルト エーコ (著), 河島 英昭 (翻訳)
- 『薔薇の名前〈下〉』 単行本 – ウンベルト エーコ (著), 河島 英昭 (翻訳)
- 『「バラの名前」便覧』 単行本 – アデル・J. ハフト (著), ロバート・J. ホワイト (著), & 2 その他
- 『薔薇の名前 特別版』 [DVD] ショーン・コネリー (出演)
- Libro - "Il nome della rosa" Copertina flessibile – 17 nov 2014 di Umberto Eco
- Film - "Il Nome Della Rosa" (Special Edition) (2 Dvd)

関連記事へのリンク / Link agli articoli correlati
- 美しい古城は映画の舞台、グラン・サッソの古城 Rocca Calascio
- イタリア語学習メルマガ第32号「スビアーコの美しい修道院とクリスマス」
Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by coimbra2017 at 2017-04-22 22:15
なおこさんBuonasera。
ちょうど、ブログにポルトガルの修道士とお菓子のことを書こうと思っていたのです。
キリスト教徒ではない日本人には教会や修道院とは、やはり縁遠いものだと思います。今回、大規模な修道院を見て来ましたがその生活がどのようなものだったのか?わかりません。歴史や詳しいことがわかって見学していたらもっと素晴らしいことだったのではないかと思います。
もっと色々知りたい。。そんな風に思います。
ここは美しいお城ですね。。薔薇の名前も読んでみたいです。
今日、wowowでジュードロー、ダイアンキートン主演の
The young pope ピウス13世 美しき異端児 というドラマが始まりました。舞台はバチカン、ジュードローが演じるのは今までにない若さでローマ法王になったアメリカ人
ピウス13世。。ということで、今日は第一話が無料で見られたのです。何よりバチカン、ローマがでてくるのでその場所が興味深いです。イタリアではもう放送されたそうですがご覧になりましたか?私はジュードローが好きなので、wowowとちょっとだけ契約してみようと思っています。
Commented by coimbra2017 at 2017-04-22 23:04
なおこさん、続きです。
「薔薇の名前」という題名は素敵ですが、アマゾンで書評を読んだら随分と難しそうな本なのですね。
映画を見たほうがわかりやすいでしょうか?
歴史背景や宗教について、よくわかるようになるには大変ですから、私は昔さぼった世界史を、最近色々わかりやすく書かれた本がたくさんでているので読んでみるのが先かしら?と思いました。。(;_;)
Commented by milletti_naoko at 2017-04-24 17:58
combraさん、こんにちは。一休さんのアニメや良寛の話を始め、日本で僧になるための修行はいろいろ見聞きしますが、ヨーロッパの修道院でのかつての暮らしやその歴史的意義は、イタリアでも一般の人が知っているようで知らないことが多いほどで、日本ではさらに縁遠いということになるのでしょうね。土曜のUlisseでは、特に、中世のベネディクト修道会の修道士の生活がどのようなものであったかも、かなり詳しく取り上げて説明していました。イタリアで各地のさまざまな修道院を訪ねると、修道士の方やガイドさんの説明がある場合には、どんなふうに日々を送っていたか、どんな規則があったかも、いろいろと教えてくれるのですが、宗派や、また同じ宗派でも修道院や地域によって、いろいろと違いや特色があって、興味深いです。そう言えば、昨年日本のお友達へのおみやげにと購入した絵・解説つき修道院・薬草手帳(日記?)に、修道士の1日の生活が、分かりやすく絵入りで紹介されていました。土曜の放送は、イタリアではおそらくRaiのアーカイブ、Rai Playに入るので、今後もイタリアではオンラインで視聴可能だと思うのですが、わたしもまた機会があれば、ブログやメルマガでそういったことも、お話できればと思います。

薔薇の名前、わたしはずっと読書を再開しなければと思いつつ、映画を見て、読みたい気持ちをそがれてしまいました。まあ、おどろおどろしい場面などに重点が置かれ、わたしはそういう場面が苦手ですし、本と映画は別物ということも多いので、またいつか機会を見つけてもう数年ほど先に読んでみようかなと、思わないでもありません。自分が映画をよいと思えなかったので、本や映画へのリンクを貼らなかったのですが、そうすると不親切でしたね。(つづく)
Commented by milletti_naoko at 2017-04-24 18:53
coimbraさんへ(上からの続きです)

映画でも修道士の生活は分からないではありませんが、歴史的にかなり状況が緊迫し、殺人事件が次々に起こるという尋常ではない修道院の様子が描かれているので、修道院生活を知ろうとして見るには、参考になるところもあるけれども、ならないというかフィクション独特の要素もあるということを、念頭に置いておく必要があると思います。

そんなドラマが日本で放映されているんですね。架空の教皇を扱った外国ドラマは、カトリック教会の総本山が、他国とは言え、ローマ内にあるイタリアでは、放映されるかどうか難しいところだと思います。言ってみれば、将来の架空の新天皇を主人公にした欧米のテレビドラマがあったとして、日本で放映される可能性が、あるかないかに似た要素があります。教皇は家系ではなくコンクラーベで選ぶという大きな違いがありはしますけれど。
by milletti_naoko | 2017-04-21 23:59 | Viaggi | Comments(4)