屋根崩れツタ満つ教会・蘭・マロニエ、イタリア月面登山1

 山中にあって、交通が不便であったためでしょう、長い間無人で、屋根が崩れ落ちてしまった石造りの建造物を、昨日の山歩き中に、いくつも見かけました。こちらの聖ビアージョ教会(Chiesa di San Biagio)も、そうした建築物の一つです。

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Chiesa di San Biagio, Rio Petroso
Bagno di Romagna (FC) 23/4/2017 11:52

 1960年代末以来、住む人がないというリオ・ペトローゾの集落の、屋根が崩れ落ちた教会には、まだわずかにかつての壁の装飾が残り、壁や屋根をツタが覆っていました。「崩落の危険あり、要注意」と案内があるにも関わらず、夫や友人たちがどんどん入って行って、長い間見入っているので、わたしも中に入ってみました。

 国破れて山河在り 城春にして草木深し
 夏草や兵どもが夢の跡

 戦のためではなく、戦後経済や交通網が発展してから、車が通れる道のないこうした山中では不便だという理由で、住民たちがよそに移り住んだと思われるので、かつて杜甫や芭蕉が詩や俳句に詠んだ状況とは異なりますが、それでも、人が築いた家や教会が無残に崩れ、緑のツタや木々だけが、力強く生きている様子を見ると、こうした詩を思い起こさずにはいられませんでした。

 昨日、わたしたちは、ロマーニャのアッペンニーニ山脈を一周するトレッキング・コースを歩いたのですが、登山ガイドでは、このコースのほぼ中間地点で、この教会を訪ねることになっています。

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11:14

 ところが、わたしたちは、この古い教会に近い村のバールで、友人たちと落ち合ったため、話し合って、この教会がある集落を起点として、一周することにしました。バールの主人が、その集落への道は溝や穴が多いひどい道なので、ジープででもないと行けないと警告してくれたのですが、夫もフランコも、アルプスでもウンブリアでも、かなりひどい山道を車で行くのに慣れているので、大丈夫だろうと言うので、皆で夫の車に乗り込み、どうしても進めなくなれば、そこに車を置いて、そこから歩こうということになりました。

 その夫たちでさえ青くなるようなとんでもない道を、それでも夫は突っ走ったのですが、やはり途中で車を置くことになり、まずはなだらかな道を、奥に見える緑の中を進んで、歩いて行きました。最初は皆、元気いっぱい、笑顔もいっぱいです。

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11:39

 車を置いた場所から、本来の周遊コースへと歩く途中で、スイカズラ(caprifoglio)の花が咲き始めているのを、夫が見つけて教えてくれました。

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 さらにしばらく歩くと、珍しい自生の蘭も咲いていました。一つひとつの小さい花から細い手足がひょろりと伸びるorchidea scimmia、おサルの蘭は、ウンブリアでもよく見かけるのですが、これまで見たのは、かぶった帽子が白く、若干赤紫の模様が入った花(詳しくはこちら)ばかりで、こんなふうに、深いピンク色の帽子に白い筋が入った花は、初めて見たように思います。

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 この白い蘭(orchidea)も、まれにしか見かけないのですが、昨日は2輪か3輪、出会うことができました。

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 一方、この赤紫の帽子から水玉模様の手足が伸びる自生の蘭は、一般の白い帽子のおサルの蘭同様、ウンブリアではよく見かける花で、昨日もあちこちで見かけました。

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11:41

 一周コース目指して、道を下っていきます。前方に、このときはまだ知らなかったのですが、後で尾根を歩くことになるはげ山が見えています。夕方コースを一周したあと、車を目指して戻るときは、疲れた足でこの坂道を上らなければならず、大変でした。

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Rio Petroso, Bagno di Romagna (FC) 11:46

 ようやく目指していた一周トレッキング・コースに到着したのは、歩き始めてから約30分後のことでした。一周コースなので、ここから鉄柵の前を通るCAIの203番トレッキング・コースを通って、時計回りに一周することもできるし、柵から入り、目前の集落の前を通るCAI217番トレッキング・コースを進んで、反時計回りに一周することもできます。目の前に見える古い家が気になって、わたしたちは、反時計周りに進むことにしました。

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 1枚前の写真で、右手の緑の木々の間に見えているマロニエ(ippocastano)の大きな木が、花に覆われていて、それはきれいです。

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 冒頭でご紹介した教会は、この集落にあり、崩れ落ちた屋根と、入り口を緑の木が覆っています。

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 テッツィオ山の森の木をはじめ、イタリアの森では、セイヨウキヅタ(edera)が木のまわりに巻きついて大きく育ち、木を弱らせたり、枯らせてしまったりする場合が多々あります。この古い教会では、壁やアーチにからみつくように育って大きくなったツタの生命力の強さと、人間が築き上げた建造物のもろさを、思わずにはいられませんでした。

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Chiesa di San Biagio, Rio Petroso
Bagno di Romagna (FC) 11:50

 聖ビアージョ・教会の前に咲くセイヨウサンザシ(biancospino)の花が満開で、きれいでした。この日、サンザシは、集落の近くだけではなく、森や野原でも見かけました。

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12:12

 さらにしばらく歩くと、いつの間にか足元にも前方にも、月面のように、草も生えない灰色の地面が広がっていました。

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Crinale presso Rio Petroso
Bagno di Romagna (FC) 12:20

 尾根を歩いている途中に、今朝フランスへと車で出発した友人から、国境を越えて無事フランスに到着したという電話があり、これを幸いと、一休みしました。

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 下方をのぞき込むとこんな感じで、すぐ近くの山々が緑の木々に囲まれているのに、この辺りだけは、草も生えない灰色の地面が続いているので、不思議な気がしました。

*****************************************************
Chiesa di San Biagio e molte case con il tetto crollato
sparse in montagna.
Erano abbandonate alla fine degli anni sessanta,
ora sono coperte dall'edera fitta e vigorosa.
I sentieri dove passavano gli abitanti in passato
ora sono ornati dai fiori di orchidea, biancospino e ippocastano.
*Trek 17 - Anello Rio Petroso - Ca' di Veroli, Romagna parte 1
23/4/2017 11:14-12:20
*****************************************************

LINK
- 月面みたいな尾根歩き、イタリア / Camminare sul crinale presso Rio Petroso, Bagno di Romagna
- Parks.it - Parco Nazionale delle Foreste Casentinesi, Monte Falterona, Campigna - Trek 17 - Rio Petroso: non solo foreste - Ca' di Veroli - Quadalto - Rio Petroso - Ca' Morelli - Ca' di Veroli

Articolo scritto da Naoko Ishii

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by milletti_naoko | 2017-04-24 23:59 | Emilia-Romagna | Trackback | Comments(4)
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Commented by ayayay0003 at 2017-04-25 09:17
なおこさん、凄い道を車で走られてのハイキングコースだったのですね!
普段から山歩きをされるなおこさんのご主人さまたちですから、少々の道はいとはないでしょうと想像出来ますが、その方たちも車を置いて歩かれたのですね(@_@;)
ちょっとした冒険でしたネ!
かつては小さい集落であったところだからこそ、教会も存在していたのですね!
家の父がよくヨ―ロッパの景色を車窓で見てて、どんな小さな村にも必ず教会がある!と言っています☆
廃墟となってしまったのは時代の波とも言えますが、なおこさんが仰るように国破れて・・・の状況とは違うもののという感想がよく解ります。
お花たち、ほんとに美しいですね~
自生の蘭もいろいろな種類があるのですね☆
マロニエのお花はあまり見たことないので嬉しいです♡
西洋サンザシもお初かもしれないです~
やはり少しずつ咲いてるお花が違うので見せていただきとても嬉しいです(^^♪
Commented by milletti_naoko at 2017-04-26 07:43
アリスさん、夫の車は車高が高い上、夫もフランコも、向こう見ずというか変な度胸があるので、わたしはひやひやすることがあるのですが、今回ばかりはその夫や友人たちもこれは進むのが無理と、途中で判断せざるを得ないとんでもない道で、はらはらしました。

教会は必ずあって、かつては教会を中心に集落がまとまっているようなところがあったのではないかと、少なくともイタリアについてはそう思います。

よく考えたら、ピンクのめずらしいおサルの蘭には、夫が危険を顧みずに山道に車で突進しなければ、出会えなかったので、そういう意味では、おかげでこの美しい花に出会えたのだとも言えます。サンザシやマロニエは、イタリアではよく見かけるんですよ。特にサンザシは、今の時期ウンブリアでも野山できれいに咲いています。関心を持ってくださっていると知って、わたしの方こそうれしいです。ありがとうございます。
Commented by paradiso-norina at 2017-04-26 11:40
なおこさん達の体力に脱帽ですm(--)m
日頃お忙しく働いているのに時間があればドライブに、登山に、パーティーにと精力的に楽しいことをこなしているのですごい若い!と思っています。
膝のケガや体調崩して少し自信がなくなってきているので多少うらやましい気持ちからのコメントです^^;
それにしてもたくさんのきれいな野生のランの種類ですね。
山野草の知識はほとんどないのでこうして見ていると本当に一つ一つが美しくて楽しいです。
サルメンエビネというランを見たことがありますがそちらのサル・・とは少し違うようです。
私も早くトレッキングできるようになりたいわ~
きたえよう!
Commented by milletti_naoko at 2017-04-26 23:44
norinaさん、ありがとうございます。久しぶりに思いがけずたくさん歩いたので、足が棒になりましたが、おかげで美しい花や景色にたくさん出会えてうれしかったです♪

まずはケガを治されることに専念して、それからまた、お元気になったら、あちこち行かれてくださいね。わたしも肩が治るまではと、巡礼や重いリュックサックを背負うことは控えています。

自生の蘭はテッツィオ山だけでも、さらにもっとさまざまな種類のきれいな蘭が咲くんですよ。今回出会った蘭のうち、2輪はめったに見かけない花でした。とってもきれいですよね。美しいお庭を手がけるnorinaさんに興味を持っていただけて、光栄です。orchis simiaという学名で画像を検索すると、おサルさんはおサルさんでも、いろんな形の花が写真で見られて興味深かったです。


日本語教師・通訳・翻訳家。元高校国語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより


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