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今日もまもなく

 通訳の仕事に出かけます。

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 中部イタリアでは、昨日からまた猛暑が勢いを取り戻し、一番暑い時間に移動するのはあまり賢くはないのですが、昨夜は久しぶりにうちに帰れてほっとしました。

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 仕事は明日の午後1時まで。

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 皆さん、温かいコメントをありがとうございます。慌しくしていて、お返事が遅れています。今しばらくお待ちください。

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- 緑と英語と演劇と

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by milletti_naoko | 2012-07-28 14:31 | Inteprete Traduzioni | Trackback | Comments(5)

緑と英語と演劇と

 緑に囲まれた、ウンブリアのとある町の郊外で、昨日から、日本からお越しの著名な劇作家・演出家である方の通訳を務めています。主にアメリカから訪れた、演劇関係者あるいは演劇界で働くことを夢見て学んでいる人々を相手としたワークショップで、この方がおっしゃることを英語に訳すのですが、ふだんイタリア語で物を考え、もっぱらイタリア語の通訳をし、最近はフランス語の勉強のために、英語から遠ざかっていたので、せっかくの貴重な教えが生徒さんたちに伝わるようにと、苦戦しています。

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 この町に生まれ育った友人からは、その依頼者である団体は、報酬が低い上に、約束していた報酬を受け取れなかった町の人を多く知っているから、引き受けたなら、せめて契約書を受け取ってからと、この仕事の話が決まりかけた頃に聞きました。報酬は確かに、拘束される時間も考えると、ふだんイタリア語の通訳をするときの半分かそれ以下なのですが、英語の通訳が専門ではないので、イタリア語ほど完成度の高い通訳は提供できないし、日本の劇作家の方から、あるいは仕事を通じて学ぶことも多いだろうからと引き受けた話でした。ただ、それで、イタリアにある悪い風潮を助長する、つまり、若者に仕事がないのを悪用して、低い賃金で働かせる企業を増やす、そういうことには加担したくないし、自分自身も、そのわずかな報酬でさえもらえずに働くのは不本意だということで、仕事前に契約書を送付するように頼みました。

 結局、いろんな意味で情にほだされて、契約書のないまま、つまり、本当に支払いがあるのかどうか、約束どおり受け取れるのかが分からぬまま、昨日の昼、現場に到着し、昨夕から通訳を務めています。日本の劇作家の方からも、他の講師やそうして生徒の皆からも学ぶことが多いし、そういう大切な、国際的な学びの場で大切なメッセージの橋渡しができること、これまではあまり縁のなかった世界に触れることができて、仕事自体はとても興味深く、いろんな意味で、すてきな人たちと知り合うことができることを、うれしく思うと共に、イタリア語ほどは、うまく伝えられず、言葉が出てこなくて、もどかしい思いをすることがあります。

 場所も、自然に囲まれた美しい場所で、写真は、わたしが滞在している部屋の他の女の生徒さんたちとの共同のトイレの窓から見える景色です。団体名を明記しないのは、結局は、この報酬がもらえるのかもらえないのか、まだ確信が持てないからで、受け取れなくても、すばらしい経験をすることができたとは、最終的に感じるだろうとは思うものの、どうか受け取れますように、悪いうわさは間違いでありますようにと思うのでありました。

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by milletti_naoko | 2012-07-26 12:02 | Inteprete Traduzioni | Trackback | Comments(7)

うれしい赤です

 贈り物に、こんなすてきな赤い革のジャケットをいただきました。

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 イタリアを訪問する日本からのお客さんと、応待するイタリアの企業・役所側が、互いにお土産を交換する際に、通訳のわたしにも、何かくださる場合が、時々あります。地方の銘菓、ウンブリア・ジャズのロゴ入りのTシャツなどなど、うれしくありがたい贈り物は、これまでにも多々あったのですが、こんなに高価で心のこもった、思いがけない贈り物は、初めてです。

 昨年、ウンブリア州の革製品を作る工場で、日本から研修に来た職人さんのために通訳を務め、職人さんが革製品の作り方を学ぶ傍らで、研修活動が円滑に行えるようにお手伝いをしました。工場の方たちが皆とても親切で、毎日、朝食休憩時間には(イタリアでは小学校でもこういう休憩時間があると、つい最近知りました)、わたしたちにもクロワッサンやコーヒーを用意していただき、いろんな機会に、人情の温かさに打たれたのですが、仕事の最終日に、こんなにすてきな贈り物をいただけるとは予想もしていなかったので、感動しました。この工場で働く皆さんが、自分たちの手で作ってくださった革のジャケットなのです。「わたしたちのことを忘れないように、思い出にね。わたしたち全員からよ。」と言って、代表者の方たちが手渡してくださいました。ただ、袖のたけが長すぎたので、短くつめてもらうために、そのときは、工場に置いて帰りました。

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 その後、雪の日が続いたり、長い間運転をしない日が続いて、車で遠出する自信がなくなったりして、ずいぶん時が経ってしまったのですが、昨日、4月2日月曜日に、ようやく久しぶりに、工場を訪ねて、優しい皆さんにあいさつをし、袖たけをつめたジャケットを受け取りました。

 皆さん手作りのジャケットのせめてものお礼にと、わたしの方も、手作りのイチゴのタルト(crostata di fragole)を持参しました。参考にしたのは、リカさんのベリ・ベリー・タルト(イチゴとフランボワーズ)のレシピです。一度見たときから、イチゴたっぷりのおいしそうなタルトの写真に目が釘づけになり、いつか作ってみたいなと思っていたのです。

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 ただ、タルトの生地は、ウンブリアの人が食べ慣れたものの方がいいかと考えて、義母のタルトのレシピで作りました。イタリアの人というのは、いい意味でも悪い意味でも、自分が育った国や町、家庭の味を愛し、深いこだわりを持っているからです。

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 カスタードクリームも、リカさんのレシピのおかげで、おいしくできて、工場の皆さんもとても喜んでくださいました。久しぶりに、働き者の優しい女性たちに会って話をすることができて、うれしかったです。

 今年の復活祭(Pasqua)は4月8日なのですが、姪たちの小学校は、早くも昨日、4月2日月曜日から復活祭休暇に入り、イタリアでは復活祭の翌日も国民の祝日なので、授業が再開するのは、来週の火曜日です。学校が休みでも、両親は仕事があるときは、しばしば祖父母(nonni)が、代わりに子供の世話を引き受けます。昨日は、義父母が当番の日で、朝から姪っ子旋風が吹き荒れて、なかなかにぎやかでした。日曜に「宿題がたくさんあるので、学校があった方がいい」と嘆いていた姪たちは、「今日は初日だからいいの!」と、1日中遊んでいたのですが、義父の畑仕事も手伝ったようで、おじいちゃん(nonno)から、ほめ言葉とおこづかいをもらっていました。

 最近は、わたしがアルプス一万尺を歌い、姪と手を合わせて遊ぶことが、しばしばあります。つい半年ほど前までは、途中までしか手を合わせられなかった年下のマッダレーナも、今はかなりきちんとできるようになりました。変化をつけるために、後半の「ランラララ…」の部分に入ってから、徐々に速さを上げていくのですが、二人ともそれをかなりおもしろがって、夢中になっています。

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 夕方は、皆で一緒に食べようと、残ったイチゴを使って、ミニショートケーキを作りました。大好きなイチゴの季節には、せっかくだからおいしく味わいたい、体重を気にしつつ、スーパーで生クリーム(panna)も購入しておいたのです。

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by milletti_naoko | 2012-04-03 17:06 | Gastronomia | Trackback | Comments(16)

電車でおしゃべり1

 ローマからペルージャに帰る途中、フォリンニョで、電車を乗り換えました。電車は、フォリンニョ駅に、少し遅れて到着したのですが、わたしは、無事、ペルージャ行きの電車に、乗り込むことができました。(記事はこちら
すぐに大勢の人が、次々に同じ車両に入ってきました。先ほどわたしに、「フォリンニョでは、問題なく乗り換えができますよ。」と言ってくれた男性も、同じ車両に乗り込みます。「この人たち、みんな、同じ電車で今ローマから着いたばかりなんでしょうか。」と尋ねるわたしに、通りかかる人々が、笑いながらうなずきました。

 わたしからは、通路を挟んだ向こうの席に座っていた金髪の女性が、不平をこぼします。
「まったく、ローマから来て、フォリンニョで乗り換えると、いつもこうなんだから。乗り換える時間はほとんどないし、乗り継ぎの電車がどこから出るかわからないから、毎回こうして、焦って慌てるはめになるんですよね。」
 わたしが、
「まあ、無事にみな乗り換えることができたから、よかったということで……。」
と言うと、少し外国人アクセントのあるその女性は、
「イタリアの鉄道って、いつも問題があるんだけど、このフォリンニョの駅では、決まってこんなふうに混乱していて、皆が心配しながら、急がなければいけないのよね。」
と答えます。
 女性の向かいに座っていた、イタリア人の老紳士が、それに対して、
「二人とも、十数年前のテルミニ駅が、どんなに混乱した状態だったかをご存じですか。当時に比べたら、駅の状況が格段に改善されて、電車を利用しやすくなったんですよ。」
と返事をし、それからペルージャに着くまでの30分あまり、ずっと3人で話し続けることになりました。

 まずは最初に自己紹介。金髪の女性はロシア人で、わたしは日本人。老紳士は、今は退職前は、大学で哲学を教えていたとのことです。わたしたちがなぜイタリアに来たのか、ロシアや日本では、電車はイタリアのような遅延やストライキは少ないこと、など、いろんなことについて話しました。

 3月以来、わたしが日本人だと知ると、面識がなくても、地震後の日本はどうかと、尋ねてくる人がよくいます。。このときもやはり、老紳士にそう問われ、今もまだ被災に苦しむ方がいる上に、放射能汚染の問題も深刻なのだと答えると、これもやはりいつものことですが、そうした困難を力を合わせて、乗り越えようとしている被災者の方や日本はすばらしいと、女性も老紳士も、日本を称え、応援してくれました。

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Giardino Shosei-in, Kyoto 29/3/2010

 実は、この日の午後、ローマではイタリア産業界の要人も交えた会談があり、その席でわたしは通訳を務めたのですが、そのときも、日本からのお客さんたちが、なぜイタリアに来たかを説明して、貴国から多くのことを学びたいと言ったとき、その要人の一人が、思いがけず、こんなふうに答えたのです。
「わたしたちは、今、日本に対して、できる限りの協力をしていきたいと考えています。先の地震で、被災者の方が、日本の皆さんが、想像を絶するような苦境に遭いながら、それでも、前に進もうとされている姿に、わたしたちは感銘を受け、また心から敬意を抱いておりますので。」

 心づくしの温かい言葉に感激し、目に涙を浮かべながら、すぐに言われた言葉を訳しました。これはほんの一例で、こんなふうに日本を応援してくださる方が、イタリアにもたくさんいるのです。(つづく)

Articolo scritto da Naoko Ishii

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by milletti_naoko | 2011-11-20 16:30 | Giappone - Italia | Trackback | Comments(6)

駅と電車でハプニング

 先週、11月10日木曜日の夕方、ローマでの通訳の仕事が終わったあと、お客さんの一人、Yさんと一緒に、テルミニ駅から、ウンブリア州に向かう電車に乗りました。

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Stazione di Roma Termini 2/8/2011

 仕事が終わる時間が分からなかったので、帰りの切符をまだ買っていなかったわたしは、翌日日本へと発つ他のお客さんたちにあいさつをするなり、荷物と共に走り出し、皆さんの前で、思いっきり転んでしまいました。あまり痛くはなかったけれど、少し恥ずかしかったです。

 自動販売機で、わたしはペルージャ行き、Yさんはフォリンニョ行きの切符を買いました。販売機を使っていると、移民らしき人が、わたしたちの反対を押し切って、切符を買うのを、かなり強引に手伝ってくれました。購入後は、何となく予想していたとおり、お駄賃の請求がありました。ただ、切符をよく見ると、わたしはエウロスター(Eurostar)でフォリンニョまで行って、乗り換える切符を買ったのに、Yさんの切符は、普通列車利用となっています。

 電車の出発まで、約20分。Yさんを送ることは、仕事には含まれていなかったのですが、日本に発つお客さんから、「石井さんと一緒なら、安心だから。」と、できたら同じ電車でフォリンニョまで行くように頼まれていました。そこで、電車に乗り遅れない範囲で、できるだけ同じ電車で帰れるように、自動販売機の横にあった、対人販売の窓口前の長い列の後ろに並びました。

 わたしの電車の出発が17時27分だったので、Yさんには、こう言いました。「追加料金を払って、同じエウロスターに乗れるように、切符を変えてもらいましょう。10分前までは、ご一緒しますが、もし間に合わなければ、今お持ちの切符で、17時43分発のフォリンニョ行きの普通列車には乗れますから。」

 それが、悪いときには悪いことが重なるもので、もう少しでわたしたちの番だというときになって、窓口に向かって歩いていた高齢の紳士が、突然床に倒れてしまいました。すぐに窓口の人たちが紳士に駆け寄り、呼び出しを受けた救急班も駆けつけたものの、幸い紳士はまもなく息を吹き返し、しばらくは人々が心配そうに見守る中、椅子に座って、息を整えていました。

 何事もなくすんだので、一同ほっとしたのですが、紳士が倒れてから5分ほどの間は、五つほどある窓口の係員が、全員立ち上がって、紳士の様子を不安げに見守っていて、窓口での作業は一旦停止の状態となりました。

 紳士の健康に問題がないと分かってから、再びすべての窓口で切符販売が始まり、Yさんの切符の変更が終わったのは、7分前。Yさんは、慌てるわたしを見て、「まだ、時間があるから、そんなに急ぐ必要はないんじゃありませんか。」と言うのですが、いえ、急ぐ必要があったのです。

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Stazione di Firenze S.M.N. 12/8/2011

 イタリアでは日本と違って、電車が予定よりかなり遅れて到着することもあり、そのため、到着・出発するホームが決まっていないのです。空港で、乗車予定の飛行機が出発するゲートを、モニターを見て確認するように、イタリアの駅では、構内にある電光掲示板を見て、乗車予定の電車が、どのホームから出るかを、確認する必要があるのです。ちなみに、上の写真は、8月にピサを訪ねたとき(下記リンク参照)、電車を乗り換えたフィレンツェS.M.N.駅で撮影したものです。横に長い大きな電光掲示板の左右の列の一番上には、それぞれ、Arrivi/Arrivals、Partenza/Departuresと書かれています。左側に、到着(arrivo/i)予定の電車、右側には、出発(partenza/e)の電車について、それぞれ情報が書かれています。

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 上の写真では、前の写真の掲示板のうち、出発電車の案内が並ぶ右側を、拡大しています。たとえば、8月12日、わたしはこのあと、ピサ行きの電車に乗り換えなければならなかったのですが、出発案内には、電車の種類と番号、終着駅と出発予定時刻、ホームだけが書かれています。わたしは、前日に、Trenitaliaのホームページ(リンクはこちら)で、電車の時刻を確認したとき、乗車予定の電車すべての番号や出発時刻を調べて、印刷していたので、リヴォルノC.L.E.行きのRV3123番の電車に乗り換えなければいけないことを知っていて、この電車が3番ホームから出発することを確認しました。

 電車に乗るときに、電光掲示板を確認する必要があるのは、ローマのテルミニ駅でも同様です。駅が大きいので、発着する電車も多く、自分が印刷しておいた乗車予定の電車の詳細情報と見比べて、出発ホームを確認するだけでも、かなり時間がかかります。この日は、仕事の終了時刻が分からなかったので、17時以降にペルージャ方面に向かう電車を、あらかじめすべて調べておきました。ちなみに、電車が出発する予定のホームは、一度すでに掲示されていても、あとから変更されることも、たまにありますから、乗り換えのために、駅の構内でしばらく待たれる場合には、出発の10分ほど前に、再度出発予定のホームを確認しておいた方が無難だと思います。

 さらに、テルミニ駅のように、大きい駅の場合には、目指すホームが遠いため、かなり歩かなければいけない場合があります。この日、電光掲示板で、乗るべき電車が2番ホームから出ると知ったわたしたちは、まず2番ホームへと急いだのですが、荷物を持って、かなり長いこと歩かなければいけませんでした。ホームへ着いたあと、切符で指定された座席を見ると、7号車なので、再び荷物を抱えたまま、今度は走りながら、ホームを長いこと走って、7号車へと向かいました。こうして、何とか発車予定時刻の1分ほど前に、ようやく電車へと乗り込むことができ、ほっとしました。

 ほっとしたのも束の間、電車が出発してしばらくしてから、わたしは急に青くなりました。慌てていて、切符に刻印を押す(下記リンク参照)のを、すっかり忘れてしまったのです。切符の刻印など、日本では必要なかったので、ぎりぎりに駅に駆け込むと、うっかり忘れてしまうことがたまにあります。実は、この前日も、フォリンニョ(Foligno)から電車で帰宅したとき、あらかじめ仕事の終了時刻が分からなかったため、出発間際の電車の切符を慌てて買うことになり、刻印するのを忘れて、電車に乗ってしまったのです。電車に入って一息ついてから、車内の掲示に、「切符を購入しないで、あるいは切符に刻印をしないで乗車したことが、発覚した場合は、最低50ユーロの罰金を払うこと」とあるのを見て、刻印していなかったことに気づいて、長い長い電車の中を、第一車両まで歩き、車掌さんに事情を説明して、刻印代わりに、署名と検札をしてもらいました。「あ~あ、これでは罰金を払わないとね。」と、からかわれながら…… 

 ただ、このローマ発の電車の場合は、わたしが近くに座っていた女性に、「切符の刻印を忘れたんですけれど、車内にも刻印機があるでしょうか。」と尋ねたら、「フォリンニョに着くまでは、エウロスターで、切符は座席指定だから、刻印の必要はありませんよ。」と、返事が返ってきて、安心しました。

 電車がローマを出発する間際に、大柄の老紳士が乗り込んできて、わたしの隣の席に腰を下ろしました。車内では、Yさんや、先の女性などと、時々おしゃべりをしながら、過ごしました。途中、Yさんが、「イタリアの電車では、日本と違って、これから着く駅の案内がないんですね。」と言ったので、イタリアでは、次に着く駅を案内する車内放送がないことが多く、逆に、日本を旅行する外国人旅行者の多くが、頻繁にありすぎる車内放送(次に到着する駅、乗り換え情報、忘れ物・足元に注意、電車利用への感謝など)に、言葉が分からないこともあって、不安になることも多いのだと、お話ししました。わたしの隣の老紳士は、席についてすぐ、ずっと眠りについていたのですが、この会話を聞いて目を覚まし、興味深そうだったので、イタリア語で説明をしました。「ああ、でも、この電車はフレッチャロッサ(Frecciarossa)だから、次に着く駅の案内はあるよ。それにしても、もう次の駅か。もうフィレンツェ? 何だか早すぎるような……」

 まもなく電車が駅に入ってスピードを落とし、駅の名が読めるようになりました。結局、車内放送はないままです。着いたのがテルニ駅だと知った老紳士は、フィレンツェ行きのフレッチャロッサに乗る予定だったのに、電車を間違えたことに気づき、慌てて下車しました。残ったわたしが、きょとんとしている他の乗客に事情を説明すると、「ひょっとしたら、このままフォリンニョまで行って、フォリンニョからフィレンツェ行きに乗り換えた方がよかったかもしれない。」、「いや、やっぱりここで降りてよかったのでは……」と、しばらくおしゃべりが続きました。イタリア人で、電車に乗り慣れている人でも、電車に乗り間違えることは、あるのです。慣れないうちも、慣れてからも、やはり注意が必要だなと思いました。

 電車は18時54分に、フォリンニョに到着予定で、Yさんはフォリンニョで下車するのですが、わたしは、ペルージャ行きの電車に乗り換えなければいけません。乗り換えの電車が出発するのは、19時3分で、乗り換え時間が10分もなく、フォリンニョ到着が予定より遅れる可能性もあります。幸い、先の女性の向かいに座った男性が、「よくこの電車を利用するけれど、時刻には正確で、フォリンニョ駅での乗り換えには、支障はありませんよ。」と教えてくれました。ただ、話を聞くと、この電車が着くホームから次の電車が出るホームまでは、階段を下りて上らないと行くことができない上、出発ホームについての車内放送はなく、駅のホームで案内表示を見て確認しなければいけないということです。

 そこで、電車がフォリンニョに着く15分ほど前に、Yさんにあいさつして、すぐに電車を降りられるよう、ドアの前に待機しました。電車が駅に着くときには、降りる乗客が、自分でドアを開けなければいけません。電車によって開け方が違うので、通りかかった車掌さんに、開け方を尋ねると、「わたしがここにいて、ドアを開けますから大丈夫。」と親切に言ってくれました。

 おかげで、愛想のいい車掌さんとしばらくおしゃべりをしたあと、問題なく電車を降りて、フォリンニョ駅で、無事に乗り換えを済ませることができました。このあとの電車の中でも、興味深い出会いが待っていたのですが、またの機会にお話しするつもりです。

 こういうわけですから、皆さん、イタリアで電車に乗るときは、できるだけあらかじめ、切符を購入しておくように、そして、駅には余裕を持って到着するようにしておきましょう。

関連記事へのリンク
- 「電車でお出かけ」(イタリアで電車に乗る際の注意とペルージャ・スポレート間の車窓風景)
- 「ピサの斜塔に挑戦」
- 「ペルージャ・ローマ間はバスが便利」

Articolo scritto da Naoko Ishii

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by milletti_naoko | 2011-11-19 16:17 | Viaggi | Trackback | Comments(8)

彩なすブドウ畑

 車窓から、赤や黄色に丘を彩るブドウ畑の紅葉を見て、その美しさに、思わず目をみはりました。

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 我が家の前のブドウの木も、今は鮮やかな黄色をしているのですが、この辺りでは、紅葉したブドウの木が一面に並び、平安時代の和歌ではありませんが、紅と金の錦を、丘の上に織り上げているようです。

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 写真は、今日、ウンブリア州のおいしいワインの産地として知られるモンテファルコ(Montefalco)を訪ねたときのものです。と言っても、いつものように楽しみの観光や散歩に足を伸ばしたのではなく、今回は仕事の最中に、撮影したものです。今週月曜日から2週間は、通訳の仕事で、慌ただしい毎日を過ごすことになりそうです。写真は、移動中に、イタリア人スタッフが、日本からお越しのお客様に、写真をお撮りになりたければ停車しますよ、と言った際に、わたしもちゃっかりせっかくだからと、撮影したものです。逆光なのが残念ですが、曲がりくねった坂道を登るうち、下るうちに見えてくる紅や黄のブドウ畑の美しさが、それはみごとで、道を曲がって、新しい景色が見えるたびに、皆で嘆声を上げました。モンテファルコには、何度か行ったことがあるのですが、こんなにブドウの葉が美しい時期に訪れたのは初めてです。予想もしなかった美しさに、感動しました。

 今日は外泊で、明日ペルージャに戻るのはかなり遅くなります。宿泊費は自己負担だからと(遠いし交通費は出せないので、無理なら構いませんよと言われたのですが、最後まで責任を持って、と思い、お客様と共に、長旅をしました。)、安い宿を選んだら、お客さんたちの宿や翌日の待ち合わせ場所からひどく遠くて、使うべきところには、お金を惜しんではいけないなと思いました。今晩はゆっくり休んで、明日の仕事と旅に備えるつもりです。まあ、安くても無料でWi-Fi接続ができる宿を選んだおかげで、長く移動をすることにもなり、こうして記事を投稿することもできるわけですから、一長一短です。

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by milletti_naoko | 2011-11-09 22:57 | Inteprete Traduzioni | Trackback | Comments(8)

授業の打ち上げ

 軍語学学校で4月から始まった3か月の日本語特訓講座、いえ基礎日本語講座も、他の希少言語の基礎講座と共に、試験と試験結果の発表を待って、7月1日に終了。

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 7月1日は、日本語とヘブライ語クラスの皆と共に、我が家で授業の打ち上げをしました。

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 写真手前に見えるアラビア風パンは、ヘブライ語の先生の手作り。焼き立てでおいしかったです。アラビア風パンというのは、この先生はイスラエル人ですが、バイリンガルで、母語はアラビア語、そして、イスラム教徒だからです。アラビア風パンは、左手に見えるヒヨコマメのクリームに、オリーブと酢漬けのキュウリを添えたお皿の具を、間に挟んでいただきました。巻き寿司と押し寿司は、わたしが作ったものです。

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 セコンドには、まずは、りえさん手料理の南蛮漬け。しょうがの風味がきいていて、けれどもさっぱりしていて、とてもおいしかったです。わたしも、ミンモさんの好物と知っていた焼き鳥を、作ってみました。

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 ワインやリキュールは、ミンモさんとヘブライ語の生徒さん、そして、たけしさんが考えてくれました。テーブルに写っているワインは、ミンモさんのお里、サバウディアの白ワイン。水の後ろに見える器には、りえさんの南蛮漬けがあります。左手のサラダボウルの中には、我が家の野菜畑で採れたてのサニーレタスとプチトマト(正確には、雨が降りそうだったので、午後2時頃に収穫したのですが)。

 生徒さんたちは、わたしたち教師陣にと、贈り物を用意してくださっていて、上の写真では、ミンモさんが、贈呈の辞を述べているところです。ナポリの特産品とかわいい小瓶に入ったオリーブオイルとバルサミコ酢のセットを、それぞれいただきました。思いがけなくて、とてもうれしかったです。

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 デザートはまず、りえさん手作りのおいしい抹茶風味のティラミス。ヘブライ語の生徒さんのおばさんの焼いたビスケットも、パンテッレリーア島のパッシートに浸して、おいしくいただきました。ルイージの作ったパンナコッタも好評でした。ブルーベリーなど、三つの果物からそれぞれパンナコッタに合わせるソースも、時間をかけてじっくり準備していました。

 すてきな先生方や生徒さんと、充実した3か月の講座を締めくくるすてきな夕食会になりました。最初の乾杯のときに、夫が言った、「世界から来た人々と、世界に向けて旅立つ人々に乾杯」という言葉も、我が夫ながらいいことを言うなあと思いました。

 みんな、本当にありがとう。

Link・関連記事
- 日本を愛する心 (2011/04/02 )
- 書けたよ、「日本人」! (2011/04/11)
- お城で夕食 / Cena al Castello dell'Oscano (2011/06/01)
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- ブスは禁句 (2011/06/13)
- 思い出と未来に乾杯 / Brindisi al futuro e ai ricordi - festa di fine corso (2011/07/07)

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by milletti_naoko | 2011-07-29 15:47 | Gastronomia | Trackback | Comments(16)

思い出と未来に乾杯

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かつて修道院だった美しい軍外国語学校で
世界中から来たさまざまな国の先生方と
任務のために世界各国に赴く軍人さんたちと過ごした3か月間。

Tre mesi trascorsi nella scuola bellissima con persone fantastiche
provenienti dal tutto il mondo,
pronte a vivere nei Paesi lontani per missione,
e/o responsabili e orgogliosi di lavorare a scuola.

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漠然と抽象的にとらえがちだった軍隊という組織が
今はわたしの中で、
自分の仕事に誇りと責任を持って取り組む
勇敢で、けれど謙虚で優しい軍人さんたち一人ひとりからなる
より血の通ったものとなり、

L’Esercito era prima per me un ente un po’ astratto,
ma ora mi è chiaro che è costituito da
molte persone coraggiose, responsabili e simpaticissime,
mi è più vicino al cuore.

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距離的に、心理的に遠かった場所や国々さえも、
同僚の先生方の故郷、あるいは
軍人さんたちがこれから赴く任地であるために、
近しく、親しみのわく土地となりました。

Anche i luoghi e Paesi prima lontani
sia geologicamente che psicologicamente
ora mi sono familiari e vicini,
perché sono i posti dove sono cresciuti carissimi colleghi docenti
e dove vanno a vivere carissimi allievi militari.

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6月29日水曜日は、生徒さんたちの企画で、午後1時から
希少言語講座修了を祝う打ち上げの会がありました。
生徒陣を代表してのあいさつが、とてもすてきでした。
何も分からない赤ん坊のようだったぼくらが、忍耐強い先生方のおかげで
まずは初めの「ママ」ならぬ「せんせい」という言葉から、
難しい言語を少しずつ身につけていくことができました。

Mercoledì 29 giuno, al rinfresco di fine corso organizzati gentilmente dagli allievi,
erano bellissime e commoventi le parole del loro rappresentante.
Come bambini abbiamo iniziato a imparare da zero
sotto la guida dei docenti -
come la prima parola, abbiamo imparato ‘maestra’ anziché ‘mamma’.

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この日あたりと眺めのいい日本語の教室での
ミンモの最初の一歩と、瞳に浮かぶ誇りと喜びをわたしがよく覚えているように
他の先生方も、生徒さんたちも、教え学ぶ過程の一つひとつを
大切に覚えているはず。

Ricordo bene i primi passi del nostro allievo,
la gioia e l’orgoglio nei suoi occhi
in questa aula di giapponese luminosa con vista.
Sarà così anche per altri docenti e allievi.

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わたしも、生徒さんから、他の先生方から、たくさんのことを教えてもらいました。
今は、世界各国のいろんな言葉であいさつを交わした廊下も思い出のひとこま。
みんな、すてきな思い出をどうもありがとう。

これからも、どうかそれぞれの土地で、頑張ってくださいね。どうかお元気で、実りのある歳月を過ごしてください。さようなら。いつかまたどこかで会えることを楽しみにしています。

Anch’io ho imparato e ricevuto molto da voi, allievi militari e colleghi docenti. Ora fa parte dei ricordi anche il corridoio dove ci salutavamo in diverse lingue. Vi ringrazio di cuore per le vostre gentilezze e i bellissimi ricordi.

Tante belle cose per il vostro futuro – Sayonara, mi farà sempre un grande piacere rivedervi un giorno in qualche parte del mondo.

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- SLEE - Scuola Lingue Estere dell’Esercito 

Articolo scritto da Naoko Ishii

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by milletti_naoko | 2011-07-07 16:11 | Insegnare Giapponese | Trackback | Comments(6)

ブスは禁句

 イタリア語というのは、英語やフランス語と違って、表記と発音のずれが比較的少ない言語です。だからと言って、「イタリア語はローマ字読みでいい」と思う方は、気をつけましょう。

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 外国語を習うときは、ただでさえ、母語の影響がいろいろな面で出てきます。たとえば、日本語を母語とする人の場合、文法面では、母語である日本語に冠詞がないため、イタリア語や英語の冠詞の習得で、いつまで経っても、定冠詞と不定冠詞を正しく使い分けることが、難しかったりします。発音でも、母語では「r」と「l」、「b」と「v」などの子音を識別する必要が存在しないため、こうした子音の違いが存在する言語を学ぶときに、なかなか子音の識別ができず、従って記憶も不正確になり、イタリア語や英語が上達してからでも、間違って書いたり、発音したりすることがありがちです。

 こんなふうに、外国語の学習は、ただでさえ母語の影響を受けやすいのに、片仮名表記ばかりに頼って、外国語の発音を覚えようとすると、この母語の悪影響がさらに大きくなってしまいます。

 イタリア語を学習する場合、一番問題となるのは、たとえば、libro(意味は「本」)という単語の中心にある「b」は、イタリア語では単なる子音の「b」を発音するのに対し、これを片仮名で表記すると「ブ」となり、本来の単語にはない、「u」という母音が入ってしまうため、間違った発音を身につけてしまうということです。これは、日本語の音節構造は、大半が、1子音+1母音であるのに対して、イタリア語では、str- pr-などと、子音が連続する場合も、よくあるからです。

 音楽でご存じの単語、allegroにしても、片仮名読みでは、できるだけ原音に忠実に表記しようとしても、「アッレーグロ」となり、「l」と「r」の発音の違いを表すことができません。ですから、こうした単語の発音を、片仮名表記に頼って覚えようとすると、ただでさえ、覚えにくく難しい「r」と「l」の区別が、ますますつきにくくなってしまいます。そうして、外国語学習・教育の研究結果から、「最初に一度間違って覚えてしまったことを、あとから修正するには非常に時間と労力がかかる」ことが分かっています。どの位置に舌をおいて、どう発音するかということを図だけ見て理解したり、発音記号だけで学んだりすることは難しいと思いますから、最初のうちだけは、片仮名の助けも必要でしょうが、できるだけ早いうちに、イタリア語のどういうつづりが、実際にどういう発音に該当するかを習得して、片仮名表記に頼らず、イタリア語の表記やCDの音声を頼りに、発音を身につけていく必要があります。

 イタリア人が日本語や英語を学習する場合にも、やはり母語であるイタリア語の発音の影響がいろいろと出てきます。イタリア語というのは、英語やフランス語と違って、文字表記と発音の一致が多い言語です。ですから、ついつい英語のjuiceの発音が「ジューイス」だと信じ込んでいたりする場合があります。また、イタリア語では、子音の「s」のあとに、mやlが続くと「s」を[z]と発音するので、英語のslipやsmallを発音するときでも、発音がイタリア語化して、「ズリップ」、「ズモル」となりがちで、伊伊辞典で、こうした外来語の発音として真っ先に掲げてあるのは、本来の英語の発音ではなく、こちらのイタリア語化した発音の方だったりします。

 イタリア語では、「バス」のことをautobusと言いますが、発音は片仮名表記だと「アウトブス」になります。日本語では「バス」というところの発音が「ブス」になるため、日本語の授業中には、最初のうち、「バス」も「ブス」と発音してしまう生徒が、必ず何人か出てきます。

 ミンモさんも例に漏れず、初めは「ブス」と何度か口にしてしまっていましたが、「ブスは日本語ではこういう意味で、間違って使って、相手に誤解されたら大変だから、気をつけるように。」と注意したあとは、「それは大変。しっかり覚えなければ。」と言って、真剣にメモを取り、以後はいっさい間違えなくなりました。あとで、ツイッターでこの話を披露したら、「あ、その間違い、ぼくもしましたよ。」という返事が、何人かのイタリア人学生から来ました。

 イタリア人が日本語を学習し始めるときも、最初はどうしても、平仮名や片仮名をローマ字書きしたものを足がかりにして、発音を覚えます。ただ、これもいつまでも続けていると、母語の発音の悪影響が大きくなってしまいます。かつて教えた学生の中に、授業開始から3か月経って、試験を受ける段階になっても、問題用紙に書かれた日本語をすべてローマ字に書き直してから、問題に答える学生が何人かいました。そうすると、たとえば「は」を「ha」と覚え、「ひ」を「hi」と覚えるため、イタリア語では書かれていても発音されない「h」の音を、日本語でも発音しない傾向がでてきます。それで、出欠の点呼に答えて、「アイ」と言ったり、「コーヒーください」のつもりで、「コイください」と言ったりすることになったのですが、この間違いについて、詳しいことは、 こちらの記事をご覧ください。

 「バス」を「ブス」と言ってしまうユニークな間違いにだけついて書こうと思ったのに、今回はずいぶん硬い話になってしまいました。仕事などが忙しくて最近サボっているメルマガ向けの記事だったかもしれません。退屈された方には申しわけありません。

*写真は、5月30日に撮影した、我が家のジャスミンの花です。

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by milletti_naoko | 2011-06-13 22:57 | Insegnare Giapponese | Trackback | Comments(13)

日伊の架け橋、アニメと漫画

 わたしたちが日本語を教える教室の右横では、アラビア語の授業が行われていて、レバノンやイラクなど、政治的にも軍事的にも、難しい地域に赴任することになっている軍人さんたち3人が、アラビア語を学んでいます。

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 この3人もやはり、とても気のいい人たちで、「先生が授業をおてやわらかにしてくれるように」と言って、飴やチョコレートを持ってきては、時々、隣の教室で教えるわたしにも、一つ二つと分けてくれます。ちなみに、この「甘いもの作戦」を最初に考え出したのはミンモさんで、お隣さんたちは、横を通るたびに、「この飴、一ついただきますね。」と手を出したりしていたこともあり、自分たちも持参することになったようです。授業中にこういうものが机の上にあるのはいただけない、とわたしは授業の間は、机の下の目に見えない場所に置いて、そのまま忘れてしまうので、時々、「ああ、またこうやって隠すから、食べるのを忘れちゃうんだよね。」と言われます。

 ある日、このアラビア語の生徒さんの一人が、わたしの名前を「なおと」と呼び間違えました。「なおこですよ。」と言うと、「あ、すみません。実は、幼い頃から、アニメの『タイガーマスク』(L’Uomo Tigre)が大好きで、その主人公の名前、『なおと』と混同してしまって…」と言うではありませんか。『タイガーマスク』は、わたしも幼い頃に見ていましたが、主人公の名前など記憶になかったので、まずは、彼が今もその名を覚えていることに驚きました。ちなみに、あとでインターネット上で調べて、本当に主人公の名が「なおと」だということが分かりました。

 この話が発端になって、いろいろなアニメの話になり、3人とも、『UFOロボ グレンダイザー』を見て育ったということが分かりました。『荒野の少年イサム』まで知っている人がいて、実はわたしも幼い頃に見ていながら、結局イサムが父親とめぐり会えたかどうかが分からなかったのに、バグダッドに赴任することになっている軍人さんが、「最後には、父親と会えたんだよ。」と教えてくれました。30年以上も前に見て、結末が分からずにいた日本のアニメがどう終わったかを、イタリアで軍人さんに教わるなんて、世の中おもしろいなあ、とつくづく思いました。3人ともひどくまじめな人たちなのですが、『愛してナイト』も、よく見ていたようです。「父親が鉄板の上で何かを焼く店を開いていて」、「男性の主人公が髪を染めていて」、「猫の名前がジュリアーノとイタリア語名」だと聞いて、3人が何のアニメの話をしているのかが、ようやく分かりました。

 グレンダイザーは、イタリアでは、Goldrakeとう名前で放映されていました。40代の軍人さんたちにとっては、心に一番残るアニメの筆頭であるようで、このことは、すでに授業中にミンモさんから聞いていました。イタリアで各家庭にカラーテレビが導入されたのと、グレンダイザーが放映されたのが、ちょうど同じ時期で、そのため、ミンモさんは、「カラーテレビの色彩の美しさを、グレンダイザーを通して実感し、楽しんでいた」そうです。ミンモさんのお母さんもやはり、その色彩の美しさに感嘆し、いつも一緒にグレンダイザーを見ていたそうです。わたしもやはり、小学生の頃、グレンダイザーを見ていましたが、カラーとグレンダイザーを特に結びつけて意識した記憶がなかったので、驚きました。

 以前にも書いたように、外国語というのは、歌を通して覚えると、聴覚も動員し、リズムもあるので、記憶に残りやすいし、正しいイントネーションや発音が身につきやすいので、外国人大学の授業では、よく学生たちといっしょに、『春が来た』などの歌を歌っていました。(記事はこちら)ミンモさんにも、最初から、「時々歌をうたって、勉強しましょうね。」と言っていたのですが、「ぼくは、歌はへただし、隣の教室に迷惑をかけるから、歌だけは絶対うたわない。」と、言われていました。というわけで、結局、日本語の歌は歌わずじまいだったのに、グレンダイザーの話をしたとたん、ミンモさんは、自分から、グレンダイザーのイタリア語のオープニング(リンクはこちら)を、すべて歌って披露してくれました。きちんと歌えるし、歌もじょうずじゃない、と言うと、「Goldrakeだけは特別で、何度も何度も聞いたから。」とのことでした。グレンダイザーは夫も好きで、よく見ていたようですが、オスカノ城での夕食(記事はこちら)のあと、別れ際に、何がきっかけでか、ミンモさんがGoldrakeをすべてすらすら歌ったとき、夫もいっしょに歌おうとしたものの、忘れていたところがあったので、ミンモさんは、本当にグレンダイザーが好きなんだなあと、つくづく思いました。

 そんなことがあったので、この日は、廊下で他の外国語を学ぶ軍人さんに会うたび、その人にとっての懐かしの日本のアニメを尋ねていたら、やはり中東の難しい地域に赴任することになり、ダリー語(だったと思いますが、あとで確認します)を学ぶ軍人さんが、ガンダムの大変なファンだということが分かりました。ガンダムは、わたしも中学・高校時代に大好きだったので、妙に話が盛り上がりました。イタリア語に訳された、ガンダムの漫画まで持っているそうで、今度学校に持ってきてくれるそうなので、楽しみです。「他のアニメとは一味違うすばらしい作品だ」と語るのを聞いて、「そうですよね。ひょっとして、ガンダムの世界にあこがれて、軍人になったんですか。」と尋ねると、「それは考えたことがなかったけれど、ひょっとしたら、そうかもしれない。」ということでした。

 こうやって話をしていると、皆、子供のように生き生きと瞳が輝いてきて、「ああ、いいなあ。こんな話をしていたら、自分も日本に行きたくなってきた。」と、ミンモさんをうらやましがるのでした。ただ、この隣のクラスのアラビア語の生徒さんたちや、少し離れた教室で、ロシア語を学ぶ生徒さんは、自分たちの学ぶ言語が難しくて、めげそうになると、わたしたちの教室にやって来て、ミンモさんがノートに書いている日本語を眺め、黒板に書かれた言葉を見て、「ああ、自分より難しいことを勉強している人がいる」と、自分たちを慰めています。そう言えば、最近はミンモさん、「また(授業中に)たたきのめされた」とは、言わなくなりました。(記事はこちら

 3か月の語学研修を終えると、やがて、それぞれの赴任先へと向かっていく軍人さんたち。情勢の非常に厳しい地域に行かれる方も多く、それでも、まじめに、かつユーモアと笑顔を忘れずに、決して易しくはない言語の習得に、励んでいます。わたしたちの教える希少言語の教室の並ぶ教棟には、将校クラスの人が多いのですが、優しくきさくな軍人さんがほとんどです。授業はあと1か月で終わる人が、ミンモさんも含めて大勢います。生徒さんだけでなく、先生方も、世界中のさまざまな国、文化を背景にした方ばかりで、話していて、とても興味深いものがあります。

 外国人大学では、外国人がイタリア語・イタリア文学を学ぶ場合が圧倒的に多いのに対して、この軍語学学校の中では、イタリアの中で、イタリアの軍人さんたちが、自分たちが赴任する先の国の言語や文化を学ぶため、わたしたち外国人が教員で、イタリア人側が、生徒ということになり、そういう関係もなんだかおもしろいなと思います。そう言ったら、「試験前や試験中に、将校たちを苦しめるのもなかなか楽しいものよ。」などと、本気か冗談か、答えていたある外国語の女の先生もいました。いずれにせよ、軍人さんたちが赴任する前に、勤務先の言語・文化を学ばせようという姿勢は、すばらしいと思います。世界中から来た人々が集まり、それぞれの国の言語や文化を教える場所。イタリアのために、世界のために、命を賭して働く使命を自分に課した軍人さんたちが学ぶ場所。とてもすてきな環境で、働くことができることを、うれしく思います。

 昔、日本の高校で教えていた頃には、担当するクラスや学年がかわったり、教えていた生徒たちが卒業したり、異動で学校がかわったりすると、ひどく悲しくて、よく泣いたものです。この学校で授業が終わり、ここで知り合った軍人さんたちに、さよならを言うときも、きっとひどく寂しいだろうなという気が今からしています。あと1か月、悔いのないように、精いっぱいいい授業をしていけたらと思っています。

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by milletti_naoko | 2011-06-02 23:10 | Giappone - Italia | Trackback | Comments(12)


日本語教師・通訳・翻訳家。元高校国語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより


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Naoko Ishii
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Giapponese & Italiano
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IT-JP-EN Fotoblogger
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日本語・イタリア語教師、
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