イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

ピザ屋 La Cambusa、ペルージャ

 うちの夫は、ピザが大好きです。1週間に1度はピザを食べないと、禁断症状に陥ったような状態になり、わたしの仕事が忙しかろうと自分の体調が悪かろうと、「とにかくピザが食べたくて仕方のない極限状況」に至ってしまうほどです。
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わたしとしては、「たまには他のおいしいものが食べられるところに行きたい」とは思うものの、恋人気分で外出して食事を楽しんだり、食事のしたくと後片づけから解放されるという特典もあったりするので、夫の誘いに応じることが多く、結局週に1回ほどの割合で、ピザ屋(pizzeria)で夕食を楽しむことになります。

 ペルージャの中心街(centro)やペルージャ近辺、あるいは少し遠出してトラジメーノ湖付近までピザを食べに出かけることもあり、友人たちとも様々な店で食べるのですが、その中で、「いつも決まっておいしいピザが食べられることが確実」なので、「行きつけ」になる店が最近ではほぼ二つにしぼられてきました。

 今日はその一つ、ペルージャ中心街では、「ここが一番!」と言えるLa Cambusa - pizzeria ristoranteをご紹介します。ちょうど昨夜、夫と友人のルーカと3人で夕食に出かけたので、これはとばかりカメラを片手に取材しました。

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 テーブルの並ぶ店内は、中世の石造りの壁も美しく、落ち着いたいい雰囲気です。La Cambusaは、ナポリ出身の一家が家族で経営するpizzeria(ピザ屋)兼ristorante(レストラン)で、ピザも格別においしいのですが、ピザ以外にも、特に魚介類を使った料理もおいしいと評判です。

 客を案内し、注文を取るのは大黒柱のお父さんか長男のパオロ。夕べは父君は不在で、注文(ordine)を取るのはパオロの役目でした。通い慣れた客には、tuを使って呼びかける店の主人が多い中で、パオロには、以前にわたしたちがtuで呼び合おうと提案したにも関わらず、「いや我が家ではお客様はやはり敬意を持ってLeiでお呼びします。」と言われてしまいました。
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 実は、彼の奥さんが時々わたしの夫の職場(ウンブリア州庁)で短期契約で働くことがあるため、パオロとは込み入った親密なおしゃべりをすることも多いし、それも彼の方から近づいて話しかけてくる場合が多いのですが、非常に礼儀を重んじる人で、わたしも「signora(奥さん)」と呼びかけられて、少し照れてしまったりします。

 親しみを持ってくれるのはうれしいのですが、このパオロ、注文を取りに来たまま、おしゃべりが長くなることも多く、こちらが内心、「早く注文をピザ職人(pizzaiolo)の弟さんに伝えてほしい。」と思うこともよくあります。おしゃべりが特に長くなったのは、彼の奥さんが夫の同僚になってからです。

 ただ、彼の話を聞くのは興味深く、ちょっとワインや食材の説明をするのを聞いていても、「常によりおいしいもの、新鮮なものを客に提供しよう」と、あちこちにアンテナを張っていて、何か品質のいい評価の高いものがあれば、ワインでも食後酒でも、すぐに自分の店にも導入しようという進取の精神の持ち主であることがよく分かります。
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 今回は、ビールを注文しようとしていた夫とルーカを説得して、ぜひこのワインをと、赤ワインを勧めてくれました。このNapolini の赤ワイン、Montefalco Rosso 2007は、本当においしくて、3人とも大満足でした。まだ歴史の浅いワイナリーのワインでありながら、商品名・業者名を伏せて行ったワインの品評会で二度も最良のワインとして選ばれたそうです。ちなみに、このワインはパオロのおごりでした。わたしの夫に「同じ職場で働く我が妻をどうかよろしく」という気持ちからだと思います。無理に高いものを注文させようとするような店ではなく、きちんと値段の記されたメニューがありますので、ご心配なく。
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 夫たちが、パオロが味見かつ前菜にと運んでくれたフォカッチャ(focaccia)を味わっている間に、わたしは、ピザ(pizza)を準備しているパオロの弟君の仕事ぶりを撮影に行きました。ちょうど、ピザの生地の上にトマトソースをかけ、モッツァレッラ・チーズ(mozzarella)を載せている最中です。彼の周囲には、キノコ(funghi、単数形はfungo)、ハム(prosciutto)などのピザの具が食品ごとに入ったボールがたくさん並んでいます。奥にあるのがかまど(forno)。ピザをかまどに出し入れする作業がしやすいように、ピザを焼く場所、炉床の高さが、ちょうどピザ職人の肩とひじの高さの中間ほどの位置にあります。炉床の下には薪(legna)が積まれていて、この薪を炉床に載せ、火にくべて、ピザを焼きます。

 おいしいピザが食べられる店は、ピザをこのforno a legna(薪のかまど)で焼いているところです。知らない町で、おいしいピザ屋を探すときは、この言葉が店頭にあるかどうかも確認しましょう。

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 さて、いよいよ熱々のピザがテーブルに運ばれてきました。夫が頼んだのは、salame piccante(辛口のサラミソーセージ)の載ったピザなのですが、ゴルゴンゾーラ・チーズ(gorgonzaola)に目のない彼は、メニューにはなかったこのチーズも加えてピザを焼くように頼みました。たいていのピザ屋では、わずかな追加料金を払えば、本来は具になっていないものも、注文するピザに加えてもらうことができ、その旨や追加料金がメニューに書かれています。
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 一方、こちらがわたしの頼んだcapricciosa(カプリッチョーザ)。イタリア語の意味は、「気まぐれな、思いつきの(ピザ)」で、店によって具は違いますが、野菜やハムなどたくさんの具があるのが特徴です。この店では、トマトソースとモッツァレッラに加えて、ハム、オリーブ、キノコ、アーティチョーク(carciofo)などが載っていました。ピザだけでおなかが一杯になってしまいがちのわたしは、野菜もしっかり取るために、できるだけ野菜の多く載っているピザを注文するように心がけています。ピザの上のゴルゴン・ゾーラチーズは何とも言えずおいしいのでわたしも大好きなのですが、vegetariana「菜食主義者の(ピザ)」やカプリッチョーザで我慢しています。でも、わたしのカプリッチョーザを始め、頼んで運ばれて来たピザがどれも皆おいしかったので、3人とも大満足でした。特に、今回初めてこの店で食べたルーカは、「これはうまい!」と感激していました。

 ちなみに、ルーカが食べたピザは、冒頭の写真のもので、その名もCambusa(カンブーサ)。この店名、La Cambusaを冠したピザは、さまざまな魚介類の載った豪華なものです。ちなみにcambusaは、船や飛行機などの食糧貯蔵室を意味します。店の中心が、階段を1階分下りた、「地階」にあたる場所にあり、さらに、レストランのメニューの売りが魚介類だからでしょうか。この店のメニューのピザ以外のところを見ると、プリモ(primo)もセコンド(semondo)も、それぞれに海(mare)と大地(terra)に分かれて、メニューの品々が並んでいます。ちなみに、店名のLa Cambusaの「la」は、女性名詞単数形につく定冠詞です。

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 最後にデザート(dolci)。2片のケーキにはいずれも洋梨が入っているのですが、左はチョコレート・ケーキで、右はリコッタ・チーズのケーキでした。それぞれの甘さと洋梨の味がほどよく調和していて、見た目が美しいばかりでなく、味も抜群においしかったです。

 リキュールやグラッパも、ワイン1杯ですでにほろ酔いのわたしと夫は辞退しましたが、イタリア各地のおいしいものがたくさんそろっています。ルーカはグラッパ(grappa)をちびりと1杯。

 これだけおいしいものをたくさん味わえるのに、特に、ピザの値段はとてもお手軽なものです。ルーカの頼んだカンブーサこそ、魚介類満載なので8.80ユーロしましたが、他のピザは具にもよりますが、6~7ユーロが平均です。プリモやセコンドはやや値段が高くなりますが、これも他のペルージャ中心街の店と比べ、おいしさとサービスや食材の質を考えると、かなりお得な感じがします。

 最近、イタリア各地のレストランやピザ屋では、しばしば値上げが行わています。そんな中で、このLa Cambusaが、サービスの質と従来の価格を共に保ち続けることができるのは、家族経営であることや新鮮ないい食材を安く入手できるルートを開拓してあること、そして、中心街の目抜き通りからは少し離れたところにあるため、地価や賃貸料の高騰を料理の大幅な値上げで解決する必要がないためだと思います。
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 夏には、屋外のテーブルで、美しい町並みや涼風を楽しみながら食べることもできます


 離れているとは言っても、ペルージャの目抜き通りCorso Vannucci沿いにある観光名所プリオーリ宮殿(Palazzo dei Priori)の正面左横にある通り、Via dei Prioriを歩いて5分ほど下に下っていったところにあり、また、La Cambusaのすぐ近くには、歴史のある美しい教会がいくつかあります。

 皆さんも、ペルージャにお越しの際は、ぜひLa Cambusaで食事を楽しんでみてください。

 店自身のホームページへのリンクもご紹介しておきます。イタリア語の勉強にも使えますよ。

*追記
 数年後に、店の場所が変わり(詳しくはこちら)、さらに数年後、残念ながら閉店になってしまいました。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by ジーナ at 2010-04-16 13:33 x
はじめてコメントします。
ステキなブログですね。

salame piccante、私の一番好きなピザです♪
思わずコメントしたくなってしまいました。
おいしそう~

ジーナ
Commented by milletti_naoko at 2010-04-16 15:48
夫も大好きで、彼の注文するピザの3分の2はgorgonzola e salame piccanteです。若い頃インド旅行に出かけてから「辛いもの」の魅力に目覚め、同じ辛口サラミソーセージでも、店によって大きさや辛さがまちまちなので、その違いを楽しんでいます。「あまり辛くない」とがっかりして、粉末状の唐辛子か唐辛子入り辛口オリーブ・オイルをテーブルに運んでもらうこともよくあります。わたしは辛いものが苦手で、peperonciniは使ってもごく少量なので、我が家の食卓では、彼がこの辛口オリーブ・オイルを加えてから食べることも時々あります。
Commented by カブレーノ at 2010-09-09 21:27 x
こんにちは!
イタリア旅行好きが講じて8月から2ヵ月間、ペルージャ外国人大学でイタリア語を勉強中です。
8月は毎日この店の前を通って気になっていました。
今月中に必ず行ってみたいと思っています。
それにしてもイタリア語、難しいですねぇ~。
Commented by milletti_naoko at 2010-09-09 22:57
初めまして。ピザについては厚いのが好きとか薄いのが好きとか、人によって好みの違いがありますが、よそから来る友人を連れて行っても、おいしいと人気のある店です。中心街から外れているために、他の店に比べて人も少ないのですが、ぜひ一度行ってみて下さい。実は、この記事を書いたあとで、若干の値上がりがありました。

外国人大学に限らず、イタリアでのイタリア語の授業は、すべてイタリア語で行われます。おととしだったか、教育実習で入門者クラスの授業を参加したときに、日本の大学で1年間イタリア語を学んだ学生さんも、クラスにいました。大学で近過去まではすでに習っていて、作文も多少できるけれども、内容が分からないので、入門クラスに通っていて、それでも先生の言うことを理解するのが難しいと言っていました。
Commented by milletti_naoko at 2010-09-09 22:57
語彙や文法が似ているので、初めてでも大体理解できるヨーロッパや南アメリカの学生と違い、日本人の場合は、語彙も文法も違う上、とにかくそれまでにイタリア語のまとまった会話や文を聞くことに慣れていないために、授業を聞いて理解することが、とても難しいのです。

ブログを読ませていただきました。本当は1か月入門クラスで耳を慣らしてから、今のクラスに移られた方がよかったかもしれませんね。

今はとにかくテレビを見たり、外国人大学や屋外で上映される映画を見たり、買い物の際に店の人と話したり、クラスメートと話したりして、とにかくどんどんイタリア語で話す機会を作ってください。間違えることを恐れずに。

スーパーのチラシを眺めることも、棚に並ぶ食品名を見ることも、すべてがイタリア語の勉強になります。最初は大変だと思いますが、頑張ってくださいね。
Commented by カブレーノ at 2010-09-10 04:30 x
あたたかいコメントありがとうございます!
ペルージャでの生活も残りあと3週間になりました。
いろいろな機会をみつけて勉強して帰りたいと思っています。
買い物と外食が一番実践の場ですね。
頑張ります。
この店と、サン・ピエトロ教会へ行く途中のNapoliPizza、そしてチェントロのAntichaLatteriaにも行きたいと思っています。
Commented by milletti_naoko at 2010-09-10 15:12
スーパーだと店員さんとのやりとりは少なくなるのですが、市場(ペルージャ中心街のmercato coperto)や小さい八百屋さんで買い物をすると、イタリア語で話す機会は多くなるかと思います。

サン・ピエートロ教会の近くとは、ピザ屋、Pompeiのことでしょうか。クラスメートと誘い合わせて行っても、何だかんだいいつつイタリア語の勉強になりますよ。たとえ学習者どうしでも、複数いると、文法的、語法的により正しい方向へ会話が自然に修正されていく傾向があるという外国教育の研究結果があります。たとえ英語とちゃんぽんでもとにかくイタリア語を話す機会が、一人でいるよりも増えます。

Antica Latteriaは、いろいろメニューがありますので、店のメニューを家で研究されてから行ってください。わたしのお気に入りは寒い冬に飲む、生クリーム入りホット・チョコレートです。
by milletti_naoko | 2010-04-15 20:44 | Gastronomia | Comments(7)