イタリア写真草子 ペルージャ在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

ありがとう、ドン・アンキーセ

 5月7日金曜日の朝、夫の伯父、ドン・アンキーセが安らかに天に召されました。享年、86歳。

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 その人柄を偲んで、「熱心な聖職者の鑑、よき司牧者であり、人々からたいへん敬愛されていた」と、ぺルージャの大司教が語っています。
(この言葉が掲載された記事はこちらです。地名や年など、間違った記述がところどころにあるのが残念。)

 9年前に交通事故で重症を負って以来、後遺症のため、徐々に教区司祭の職から退いたドン・アンキーセでしたが、亡くなった当日、そして翌朝も、かつての教区民がひっきりなしに故人宅を訪れ、家族・親戚と共に別れを惜しんでいました。葬儀は、翌5月8日土曜日の午後3時から、ドン・アンキーセが最後に教区司祭を務めたプルンニェートの教会(下の写真、撮影は昨年7月)で行われました。

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 カトリック教徒が大半を占めるイタリアでは、神父は単に冠婚葬祭やミサに際して儀式を挙げるだけではなく、日頃から教区民を啓蒙し、家族や住民の間のきずなを深め、青少年の健全育成を図るなど、確かにその骨子は宗教なのですが、一般に日本で思いつく宗教の枠を広く超えたさまざまな活動を行っています。

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 ドン・アンキーセが、教区司祭として、子供や老人、あらゆる世代の人々に深い愛情を持って接した様子は、司祭職就任50周年を祝って、教区民たちが贈った祝辞(上の写真)からも、うかがえます。

 夫の家族は、「かつてドン・アンキーセが関わった若者たちが、今はもうミサに来ない人も含めてほぼ全員葬儀に参列していた」ことを、うれしく、心強く感じたようです。

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ミジャーナ遠景。右手に見える鐘楼のある建物が教会です。

 夫の両親が結ばれたのも、そもそも義母が、兄のドン・アンキーセと母と共に、兄の新しい教区となったミジャーナに赴き、その地で義父に出会ったからです。ドン・アンキーセはミジャーナでも、住民たちの交流が深まる機会をしばしば設けていたようです。

 重い病気にも関わらず、いつも笑顔を絶やさなかったドン・アンキーセ。その教えや温かさ、愛情は、これからも夫の家族の中に、そして、かつての教区民や、彼が接したすべての人々の中に大切に育まれていくことでしょう。

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椅子に座ったのがドン・アンキーセ、手を握るのは、わたしの夫、その左に義父母

 葬儀があった8日の晩から3日間、今晩まで、毎晩身近な親族が集まって、ロザリオを唱えました。祈りのあとで、義母の従姉妹にあたる伯母が中心になって昔の回想が始まり、「小さい頃、レスキオの家の暖炉の前に集まって、毎晩おじさんやおばさん(つまり、義母の両親)やいとこたちとロザリオを唱えたのだけれども、わたし、おばさんの唱えるロザリオが大好きで……」など、興味深い話もたくさん聞くことができました。

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義母が生まれ育ったレスキオの家。わたしと夫もこの家で1年あまり暮らしました

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by Gina at 2010-05-12 13:19
もうだいぶ昔のことですが、カトリックの高校で3年間学びました。
校内に大きなお御堂もありましたし、毎週2時間宗教の授業も受けました。
20名以上のシスターが、校内の宿舎で生活していましたから、
毎朝聖歌を歌ったり、シスター方とおしゃべりをしたり、
今ではとても良い思い出です。
父と子と聖霊とのみなによりて、アーメン。
お祈りをするときは、必ずのこフレーズでした。
イタリアではどうですか?

ジーナ
Commented by milletti_naoko at 2010-05-12 15:58
祈りにはいろいろありますが、一番身近なのは、Padre Nostro「主の祈り」と Ave Maria「アヴェ・マリア」ではないかと思います。前者は教会のミサの場合に毎回言いますし、アヴェ・マリアの方は、夫の家族は亡き伯父と食事を共にしていた頃は、食事の前に必ず唱えていたそうです。現在でも、日曜日や祝祭日で大家族で食卓を共に囲むときには、我が家ではアヴェ・マリアの後で食事が始まります。ロザリオの中では、この二つの祈り、特にアヴェ・マリアを何度も繰り返します。

うちの夫は、毎晩就寝する前に、床の中で、自分自身の思いを、心の中で、言葉にして祈りを捧げてから眠っています。
by milletti_naoko | 2010-05-11 07:17 | Famiglia | Comments(2)