2010年 05月 12日
ミニメトロでペルージャ満喫
ミニメトロは、ペルージャの歴史的市街区(centro storico)の交通渋滞やスモッグを緩和する環境に優しい乗り物、通勤者や観光客の新たな足として、建造されました。1車両のみのミニ・モノレールで、遠隔操作によって運行されています。
膨大な建設費の住民へのしわ寄せ、沿線住民の騒音への苦情など、議論や問題もまだ尽きないミニメトロですが、観光や留学のためにペルージャにいらっしゃる方には、非常に便利で、これを利用しない手はありません。
美しい中世の町並み、エトルリア門、国立美術館など、観光名所が無数にあるペルージャ歴史的市街区。ミニメトロの始発駅は、この市街区のピンチェット駅(Pincetto)です。ピンチェット駅から、鉄道のペルージャ駅があるフォンティヴェッジェ駅(Fontivegge)まで、約10分。
そして、始発駅のピンチェット駅から、終着駅のピアン・ディ・マッシアーノ(Pian di Massiano)までは約15分。この終着駅には、無料の大駐車場があります。サッカーの試合が行われる競技場(stadio)や県警察本部(questura)は、この終着駅から歩いてすぐです。また、ピアン・ディ・マッシアーノ(Pian di Massiano)の大駐車場は、ペルージャ春の市や中世からの歴史ある死者の市などの大規模な市の会場となる上、毎週土曜日にも、終着駅から歩いてすぐの広場に土曜市が立ち、新鮮な野菜や生活用品、衣料品、ポルケッタやプシュット、チーズなどの食品の出店が数多く並んで、にぎわっています。
どの駅でも、約2分30秒ごとに新しい車両が来るので、バスのように時刻を気にする必要がなく、また、バスや車と違って、交通渋滞に巻き込まれる心配がないので非常に便利です。
そこで、今回は、このミニメトロの利用法をご紹介します。
上の写真で、大噴水とプリオーリ宮殿の左側を通っているのがペルージャの目抜き通り、ヴァンヌッチ通り(Corso Vannucci)です。このヴァンヌッチ通りを、大噴水からプリオーリ宮殿前へと歩いて行き、写真の左手に見える黄色い建物の手前にある通り、ファーニ通り(Via Fani)を左に曲がってください。
すると、すぐにマッテオッティ広場(Piazza Matteotti)に行き当たります。
尖頭アーチが二つ並んでいます。i のマークが見える、左側のアーチが、ペルージャ市観光案内所の入り口になっています。上記のミニメトロ路線図もある便利な市街区の地図や、美術館、催し物、ホテルやレストランの案内など、 便利な情報がたくさん入手できます。
一方、ミニメトロの始発駅へは、この右側のアーチの下をくぐって行くことになります。(入り口は他にもいくつかあります。)
これが始発駅のピンチェット駅です。手前に赤く見えるのが切符(biglietto)の自動販売機。すべてのミニメトロの駅に、この自動販売機があります。
これが切符です。ペルージャ市内を走るapmのバスなどにも利用できる共通切符となっています。
わたしは、郊外に住んでいて、バスやミニメトロをよく利用するため、上の写真にあるような10回利用できる切符(multiviaggio 10 corse)を使っています。ミニメトロ駅の自動販売機で買うと、上にあるような真っ白の切符、バス会社apmの切符販売所で買うと、下にあるような色つきの切符(利用できる回数によって色が違います)になります。
1回利用の切符は、現在1ユーロ。使用開始から、70分までの間なら、同じ切符でそのまま、バスからバスへ、パスからミニメトロへなどと、乗り換えることができます。切符なしでバスに乗車して、運転手から購入すると、1.5ユーロと高くなりますので気をつけてください。そういうときに、小銭がないと、ひどく迷惑をかけることにもなります。一方、10回利用できる切符は8.60ユーロで、有効期間は利用開始から365日間です。観光客が24時間利用できる切符(turistico 24 ore)もあり、こちらは3.60ユーロです。(値段はすべて、2010年5月12日現在のものです。*現在2012年2月には、すべての料金が値上がりしています。詳しくは記事の最後にある追記をご覧ください。)
切符を買ったら、自動改札機に切符を通します。(上の改札機は、コルトネーゼ駅のものです。)普段は閉じている透明な扉が開きますので、改札(刻印)されて出てきた切符を受け取ってから、扉を通り抜けて、駅の構内に入ります。
改札(刻印)機は、バスの中にもあります。載ったらすぐに、刻印機を見つけて、刻印してください。ミニメトロ駅でも、バス内でも、刻印機に切符を通すと、切符の裏側に、利用開始年月日とその時刻が印刷されます。上の切符の写真のうち、右側にあるのが、切符の裏面の刻印された部分です。10回利用の切符なので刻印がいくつもありますが、1回の利用での刻印記録は1行です。バスに切符なし、あるいは切符を刻印せずに乗車すると、時折ある検札の際に無賃乗車とみなされて、罰金(現在、30.99ユーロ)を課されてしまいますので、ご注意ください。
また、もちろんですが、刻印した切符を持っていないと、到着した駅から出ることができませんので、切符は最後まで所持してください。時々、いきなり車内アナウンスが入るので驚かれるかもしれませんが、たいていは、「切符は旅行中ずっと所持してください」、あるいは「手すりにきちんとつかまってください」と言っています。また、最初の刻印から70分以内に、ミニメトロで引き返す、あるいはapmのバスなどに乗り換える場合には、同じ切符を再度使うことができますので、念のために切符は大事に取っておくことをおすすめします。
ピンチェット駅から、大駐車場のあるクーパ駅(Cupa)までは、ずっとトンネルの中を通ります。ペルージャの町は高い丘の頂にあり、ミニメトロはその丘の中腹を突き抜ける形で、丘手前の中腹にあるピンチェット駅から、丘を反対側に突き抜ける直前にあるクーパ駅まで進むからです。
クーパ駅を出てしばらくすると、ミニメトロはようやくトンネルから外に出ます(上の写真)。写真で、トンネルの上に見えるのは、ペルージャ中心部の町並みです。
次の駅の名は、「カーセ・ブルチャーテ」(Case Bruciate)。これは地区名で、和訳すると「焼けた家々」で、少し物騒なのですが、高層マンションが立ち並ぶ住宅街です。
始発駅から約10分で、フォンティヴェッジェ駅(Fontivegge)に到着。
鉄道のペルージャ駅は、ミニメトロ駅から歩いてすぐ。上の写真では、右手に小さく、駅に停車している電車も見えます。
ミニメトロがフォンティヴェッジェ駅を発ってすぐに、車内から鉄道駅がかなりよく見える瞬間があります。上の写真で、前に電車が停車している黄色い建物がペルージャ駅です。駅のすぐ近くには、スーパーCOOPがあり、この店は同じCOOPでも中心街の店に比べて規模がかなり大きく品数が揃っている上に、値段も安いという印象があります。
フォンティヴェッジェ(Fontivegge)は、実は地区名で、これがミニメトロや鉄道の駅名にもなっています。この地名は、駅の近くにある17世紀に築かれた噴水、ヴェッジョの噴水(Fonti di Veggio)に由来するものです。
この噴水(fonte)は、当時この地域の所有者であったヴェッジョ(Veggio)の名を取って、ヴェッジョの噴水(Fonti di Veggio)と呼ばれ、その呼称がやがて地域一帯にまで押し広げられて、地域全体がフォンティヴェッジェ(Fontivegge)と呼ばれるようになったと、ペルージャ市発行の観光案内、『Camminanare per Fonti e Fontane』(噴水をたずね歩く)にあります。
(噴水と地名の説明および「ヴェッジョの噴水」の写真は、この案内パンフレットから引用しました。数年前に夫とヴェッジョの噴水付近を散歩したときに、初めて噴水を見、地名の由来を教えてもらったのですが、そのとき噴水の写真を撮ったかどうか覚えていません。)
ミニメトロがさらにフォンティヴェッジェ駅から離れると、背景に広がるペルージャ中心街の町並みが見渡せます。
役所や店の多い鉄道駅付近を通り過ぎると、レールはさらに下方へと下り、やがて大きく右に曲がります。それからは、高層マンションに遮られて、ペルージャの中心街が見えなくなってしまいます。
この右カーブのあと、すぐに現れるのが次の駅、マドンナ・アルタ駅(Madonna Alta)。高層マンションに囲まれた住宅街のただ中にあります。
この後、ミニメトロは再び短いトンネルに突入し、このトンネルを抜けてしばらく行くと、次のコルトネーゼ駅(Cortonese)が見えてきます。
駅名は、この付近を走る大通り、コルトネーゼ通り(Via Cortonese)に由来しています。ペルージャから、北北西の方向にあるコルトーナ(Cortona)の町へと向かっていく道筋にあるので、この名を持つそうです。コルトーナはトスカーナ州にある町で、ウンブリア州との州境にあります。レスキオに住んでいた頃は、ペルージャよりコルトーナの方が近かったので、わたしたちもよく訪れました。アメリカ映画、「トスカーナの休日」の舞台にもなっていて、この映画の中では、コルトーナの美しい中世の町並みや郊外の緑を十分に見て楽しむことができます。失恋したヒロインが心機一転のために渡伊し、さまざまな出来事や人々との交流を通して、少しずつ自分の人生を新しく切り開いていくというすてきな映画です。イタリア人男性が少しステレオタイプで描かれているのと、言語が英語なのが残念ですが、イタリアの雰囲気を味わうのにはうってつけだと思いますので、機会があれば、ぜひご覧ください。
「コルトネーゼ通り」と聞いて、すぐわたしの脳裏をよぎるのは、この通りにあるペルージャ県警察本部(Questura di Perugia)です。現在は、ほとんどの滞在許可証の申請を郵便局を通じてするようになったようですが、受領は昔も今も、この県警察本部です。
ちなみに、この記事の最初の写真は、このコルトネーゼ通りから一直線に、終着駅、ピアン・ディ・マッシアーノ(Pian di Massiano)に向かって伸びるレールを撮影したもので、写真で、レールの右側に生えている大きなポプラの木2本の間に垣間見える建物が、県警察本部です。
上の写真でもお分かりのように、このミニメトロの最後の2駅は至近距離にあり、県警察本部はそのほぼ中間付近に位置しています。
終着駅の、ピアン・ディ・マッシアーノ(Pian di Massiano)が近づいてきました。駅の周囲には広大な駐車場が見えます。この駐車場は、現在は無料で使用できます。また、観光バスはここに駐車し、観光バスで訪れる観光客はここからミニメトロを使って、ペルージャ中心街を訪れることになっています。年に二度大きな市(冒頭参照)が立つときは、この駐車場が会場となりますし、毎週の土曜市もこのすぐ近くで開かれます。写真では見えませんが、この写真を撮ったとき、ミニメトロの車内からは右手に県警察本部が、そして左手にはサッカー競技場(stadio)が見えていました。どちらも終着駅から、歩いてすぐです。
終着駅付近には、バールや美容室、眼鏡屋におもちゃ屋と、さまざまな店が並び、駅から少し歩くと、市民の健康のための散歩・ジョギングコースである緑のコース(Percorso verde)があります。「緑の」(verde)の名のとおり、緑の木々が生い茂る中を、大勢の老若男女が、楽しくおしゃべりしながら、あるいはストイックにひたすら速足で歩いたり、ジョギングしたりしています。
ミニメトロに乗るのだけが目的でも、終着駅では一旦車内から降り駅の構内から出て、再び反対側にある入り口で改札をして乗り直すことが義務づけられていますので、ご注意ください。
イタリア国内を車で旅行され、ペルージャに数時間滞在するという場合には、終着駅、ピアン・ディ・マッシアーノ駅の無料駐車場に車を置いて、ミニメトロで中心街を訪れた方が、渋滞に巻き込まれたり有料の駐車場の空室探しに難航したりしない上に、かえって安くつく場合があるかもしれません。原則として夜間は運行していませんので、乗車前に、駅入り口の案内やミニメトロのホームページで、運行時間をよく確認してください。
皆さんも、ペルージャ訪問の際には、ぜひ一度このミニメトロを利用してみてください。
最近は、観光客や修学旅行生が多く、車両がいっぱいになってしまうこともたまにあります。わたしはコルトネーゼ駅で一時間おきにしか出ないバスに乗り換えなければいけないので、満員でも仕方なく乗りますが、皆さんの場合は、旅行中などで時間があれば、こういう集団の旅行客がすべて乗車してしまうまで10分ほど待って、それから空いた車両に乗り込んで、ゆっくりとミニメトロ乗車を楽しむことが可能かと思います。普段はあまり利用客がいないので、通学ラッシュの朝8時および午後1時前後を除けば、満員になることはめったにありません。
*追記(27/2/2012)
現在では、ペルージャ市内のバス・ミニメトロの利用料金が値上がりし、1回利用の切符は1.50ユーロ、バスの車内で購入すると2ユーロ、10回利用できる切符が12.90ユーロとなっています。また、24時間乗り放題の観光客用切符も、5.40ユーロで販売されています。
*追記(20/5/2018)
記事を書いて以来、ウンブリアの地方バスやミニメトロ、トラジメーノ湖のフェリーを運行する会社がしばしば変わり、今は、Busitalia - Sita Nord S.r.l.となっていますが、ミニメトロの利用方法も、バスやミニメトロの乗車券の料金も、上記2012年の追記以来変わっていません。切符なし、あるいは刻印なしでの乗車に対する罰金は、現在、切符料金に30、99ユーロを加えたもので、60日以内に払わないと、切符料金に加え、さらに92、96ユーロとなっています。料金については、今後変更の可能性があります。
LINK
- Busitalia - Sita Nord - Il servizio in Umbria
ガイドブックやWEBにほとんどのっていないので旧市街にいくまでに苦労しました。このブログを読んでおけばよかったです。
沿線住民の皆さんの生活の足として理想的な乗り物と思いましたが、反面、2.5分間隔だとモノレールとは言え騒音は気になるかも?
観光客にも24時間パスがありますし、大きな駐車場も無料!!この地方を周るなら使わないのはもったいないかも?
モノレールの高い視点から俯瞰で沿線を眺めるのも楽しそうです。
最近はウンブリア州ほぼ全域で、トラジメーノ湖の周遊観光船も含めて、1日15ユーロ乗り放題の切符が出ているので、この切符、Umbria Goが便利で、昨年、夫との湖周遊1日旅行や、通訳のお客さんとの移動にも利用しました。