2010年 06月 24日
修道院に響く歌声 ~コラーレ・テティウム、マルケ小旅行1
そこで、6月20日日曜日に、25周年記念旅行として、マルケ州の美しい修道院、キアラヴァッレ・ディ・フィアストラ修道院(Abbazia di Chiaravalle di Fiastra)に赴きました。
参加者は、合唱団員、家族および合唱団のファンなど、約50名。朝7時過ぎに、大型バスでペルージャを出発し、コルフィオリートのバールで朝食・トイレ休憩。
7時出発のはずが、遅れてくるメンバーがいたり、バールにトイレが一つしかなかったりで、合唱団が聖歌を歌うことになっていた10時からのミサ(messa)の開始間際に、ようやく修道院に到着しました。
写真は、ミサの最中のキアラヴァッレ・ディ・フィアストラ修道院の教会(chiesa)の様子です。修道院は、1142年にシトー派の修道僧(monaci cistercensi)によって建立されました。写真の正面、日の光の差し込むバラ窓(rosone)の下には、十字架に架けられたキリスト像(Crocifissione)があり、その両脇には、聖ベネデットと聖ベルナルドが描かれています。
コラーレ・テティウムが、聖歌を歌った場所は、この教会の左身廊(navata sinistra)の奥。2枚目の写真で、左手奥に見える二つの柱の、その左側にあたる部分です。
ハーモニーあふれる歌声に、ミサの参列者や修道僧も感嘆し、ミサの後に、団員に温かい言葉をかけてくれました。そして、美しい合唱のお礼にと、修道院の方が、歴史ある興味深い建物を、案内してくださいました。
こちらは、修道院総会の会議室(sala del capitolo)。かつて、修道僧たちは毎朝ここに集い、殉教禄と聖ベネデットの定めた規則を読み上げ、それから、すべての修道僧が、自らと他の僧の過ちを、皆の前で告発することになっていたようです。
修道院長を選出し、修道院長が説教をしたのも、ここ、修道院総会会議室です。
とりわけ興味深いのが、会議室入り口から、向かって右側の壁に書かれたこの碑文です。
"Parla poco, odi assai et guarda al fine di ciò che fai."
「口を慎んで、話すことを控え、耳を傾けて、よく聞くこと。そして、自分の手がけていることを最後まで、きちんと見届けること。」(「 」内は、石井訳)
修道院の案内には、この碑文が「沈黙の大切さ」を思い起こさせるとありますが、わたしは、この言葉を読んで、むしろ、古今洋の東西を問わず、話してばかりで人の言うことに耳を傾けず、していることの仕上げが疎かになってしまいがちな人間の習性を思って、一人微笑んだのでありました。
こちらの広間は、助修士の食堂(refertorio dei conversi)。助修士 (converso)は、誓約を立てた在家の修道士ですが、礼拝(liturugia)よりも、むしろ修道院生活で必要とされる、牛や羊の飼育、田畑の耕作などの仕事に従事していたと、修道院の案内にあります。
この食堂の特徴は、近隣の古代ローマの都市、ウルブス・サルヴィア(Urbs Salvia)の遺跡で見つかった建材をふんだんに使い、工夫を凝らして、食堂の建築に取り入れている点です。
たとえば、広間の中央にある7本の支柱(sostegno)は、古代ローマ時代の円柱の柱頭(capitello)、柱身(fusto)、台座(basamento)を使ってできたものですが、すべての支柱がそれぞれ異なっています。
この写真の方が、人がいないので、一つひとつの支柱の違いが、分かりやすいかもしれません。
キアラヴァッレ・ディ・フィアストラ修道院のワイン製造・貯蔵所(cantina)は、17世紀に建築されたということです。
写真は、地下にあるワイン貯蔵所で、この貯蔵所の特色は、広い空間に大樽がいくつも並ぶというよくある貯蔵所と違って、地下に細長いトンネルが、迷路のように張り巡らされていて、そのトンネルの脇に、時折大きな壺が配置されている点です。
ワイン製造所では、修道院が所有するブドウ畑のブドウからワインを作っていたとのことで、現在でも、17世紀以来使用されていたワイン製造のための道具が、各所に展示されています。
ワイン製造・貯蔵所を見た後は、修道院の南側にある庭を訪れました。
こちらは、19世紀初めに建立されたジュスティニアーニ・バンディーニ宮殿(Palazzo Giustiniani Bandini)です。ジュスティニアーニ・バンディーニ家は、1773年から長い間、修道院を所有物していた貴族です。実は、シトー派の修道僧たちが、修道院に戻ったのは、ようやく1985年で、奇しくも、コラーレ・テティウム創立と同じ、25年前なのです。
宮殿前にある庭園(giardino)は、マチェラータ(Macerata)では珍しい英国式庭園で、幾百年をも経たトキワガシ(leccio)の大木に覆われており、貴重なコルクガシ(quercia da sughero)の大木(上の写真、左端)も1本あります。
美しく興味深いキアラヴァッレ・ディ・フィアストラ修道院を、詳しい説明を聞きながら、訪問することができ、一行は、名残惜しく思いながら、修道院を後にしました。
というのは、この修道院が自然保護地区(Riserva Naturale)にあり、美しい森林に囲まれていることや、レストランもあることが分かって、ここに残って昼食を取りたい人が多かったのに、昼食には、かなり離れた場所にあるアグリトゥリズモを予約していたからです。ぜひ再びゆっくり訪れてみたいと、皆が思うような、それはすてきな場所でした。
その後、移動のためにバスに乗り始めた頃から、雨が降り始めて、やがてどしゃ降りとなったので、結局は、森林や公園を散歩するには不向きな悪天候となったのではありますが。
この日、昼食にと訪れたアグリトゥリズモについては、 こちらの記事をご覧ください。
最後に、この修道院や自然保護地区に興味を持たれた方のために、いくつか観光に役立つリンクを貼っておきます。
参照リンク / Riferimenti web
- Riserva Naturale Abbadia di Fiastra – Abbazia di Fiastra (フィアストラ修道院)
- Riserva Naturale Abbadia di Fiastra - HOME (フィアストラ修道院自然保護区)
我が家のブログに足を運んで下さりありがとうございます!
私もお邪魔させていただきます!
とても優しい文章で、スランプ気味の私ですが
すっかりコメントと合わせて癒されてしまいました!
また遊びに来ますね!!
これからもお願い致します!
わたしは英語を再勉強し始めたとき、2か国語放送のNHKの番組を録画しては、こうやってヒアリングの練習をしていました。映画はテレビドラマと違って長いので、10分ずつ、15分ずつなど、毎日少しずつ挑戦するといいかと思います。
こちらこそよろしくお願いします。彩風さんのブログだと他のコメントに埋もれてしまうので、こちらに書かせていただきました。
マレンマには何度か夫と訪れたことがあります。今週は週末に夫の同僚からウッチェッリーナに誘われているのですが、ただいま検討中です。いつかどこかでお会いすることがあるかもしれませんね。