2010年 07月 01日
古き良き時代のコモ ~遠来の友人からの贈り物

わたしの夫、ルイージが友人のルーカたちと、22年前の夏に、アドリア海岸の町、イジェア・マリーナの海辺を訪れたときに、まだ独身であったシルヴァーナたちと出会って、一緒に休暇を過ごしたのがきっかけで、今でも家族ぐるみのつきあいがこうして続いているとのことです。

上の写真に写っているのが、この遠来の友人たちで、右から、シルヴァーナ、その夫のエンツォ、そして、エレオノーラとダニエーレ、二人の子供たちです。シルヴァーナとエンツォは、人手が足りず多忙な職場で、何とか金曜日・月曜日に休暇を取って、4日間のウンブリア旅行をすることに成功しました。
客をもてなそうと、義母がテーブルに運んだのは、まずは、こちらのビスケットです。

トスカーナ州のビスケット、カントゥッチ(cantucci、複数形)のウンブリア版で、ウンブリア州では、これをトッツェッティ(tozzetti、複数形)と呼びます。このトッツェッティは、義母の手作りの一品です。

おいしいので、ぜひレシピが知りたいとシルヴァーナが言うので、義母が長年いろいろなおいしい料理のレシピを集め続けてきたノートを、テーブルまで持って来ました。
シルヴァーナは、時々義母に質問をしながら、手帳にレシピを書き写していきます。

今回、シルヴァーナは、最近亡くなった父君の著作を1冊、わたしたちに、思い出にと贈ってくれました。題名は、訳すと『昔のコモの思い出』です。
彼が生きた古き良き時代、1930年代から1950年代の初めにかけてのコモの町の様子や生活を、詳細に描いていて、現在、この本を読書中の義父母によると、「ペルージャでも、昔はこうだった。懐かしい。本当によく書かれている。」ということです。
いずれメルマガでも一部ご紹介するつもりですが、たとえば、洗濯機(lavatrice)が家庭に普及する前には、洗濯は主婦の仕事だったけれども、シーツやテーブルクロスなど、特に洗濯の大変なものについては、洗濯女(lavandaia、コモ方言では lavandéra)が有料で請け負い、公共の洗濯場(lavatoio)や川、湖のほとりで洗濯をしていたとあります。本の第1章は、こうした今はなき、あるいは廃れつつある昔の職業(le professioni ormai estinte)にあてられています。
参考までに、6月にマルケを訪れたときに見かけたこの昔の洗濯場(lavandaia)の写真をいくつかご紹介します。


こちらは、セーフロの村はずれにある洗濯場で、洗い桶もあります。

一方、この大きな洗濯場は、セーフロの近隣にあるピオーラコ(Pioraco)村の中心にあります。今は、川の水を使って洗濯する人もいないので、川では白鳥たちがのんびりと泳いでいます。

今度は、お義母さんの方から、本についてシルヴァーナに質問し、シルヴァーナはレシピを書き写す手をいったん止めて、質問に答えます。
この本、『昔のコモの思い出』で、特におもしろいのは、コモのことわざ(proverbi comaschi)を当地の方言で記し、解説してある第3章です。
次のコモ方言のことわざが、どういう意味がお分かりですか。
I du ròpp impussibil: fà stà fermi i fiöö e fà cuur i vècc.
イタリアに住まれている方、イタリア語を学習中の方は、少し頭をひねって考えてみてください。お分かりになりましたか。
答えは以下の通り。本には、方言で書かれたことわざの下に、著者がそのイタリア語訳と解説を付しています。
Due cose impossibili: far rimanere fermi i bambini e far correre i vecchi.
(絶対に不可能な二つの事業:子供をじっとさせておくことと老人を走らせること‐石井訳)
解説には、「元気な盛りの子供は一瞬もじっとしていることができない一方、老人は歳を重ねるにつれて、若いときの体力を失っていき、あまり体を動かさずに過ごすことを好むようになる」とあります。執筆したときすでに80歳が近かったシルヴァーナの父君の解説には、自身の人生の述懐もこもっているのでしょう。奥深いものがあります。
ダニエーレは、ルイージやわたしがコモ方言のことわざの意味を理解できるかどうか試し、シルヴァーナはルイージに、コモ方言の発音を教授していました。

やがて、仕事を終えて駆けつけたルイージの弟マルコも会話に加わり、皆で久しぶりの再会とおしゃべりを楽しんだあと、シルヴァーナたちは、高速道路を車で約5時間という長い帰途についたのでありました。


綺麗な写真満載の素敵なブログですね!
私の場合、何度かイタリアへ行ったことがある・・・と言ってもありがちな世界遺産的な観光旅行ばかりですが、もっとずっと沢山の美しい名所があるのでしょうね。なかなか行くことは叶わないでしょうが、これから楽しく拝見させて頂きます。
イタリア語にも精通されているご様子、素晴らしいです。
わたしの方も、ゆんさんの細やかな感性でとらえたすてきな日本だより(?)を楽しみながら読ませていただきたいと思います。
また機会のあるときに、どちらにお住まいか教えていただけると幸いです。