2010年 07月 28日
チンクエ・テッレを歩く2
上の地図で、赤色で囲んであるのがチンクエ・テッレの五村です。左(西)から順に、モンテロッソ・アル・マーレ(Monterosso al Mare)、ヴェルナッツァ(Vernazza)、コルニッリャ(Corniglia)、マナローラ(Manarola)、そして、リオマッジョーレ(Riomaggiore)。地図は、ヴェルナッツァの鉄道駅で見つけた地図の一部を借用して、わたしが書き込んだものです。割愛した部分には、チンクエ・テッレがユネスコ世界遺産に登録されていることも明記されていました。
この日の朝、わたしたちは、モンテロッソよりもさらに西側にあるレヴァント(Levanto)駅から、始発の午前6時15分の電車に乗って、一駅あとのモンテロッソ駅に到着しました。当初の予定は、最西のモンテロッソから最東のリオマッジョーレまで、すべてを歩き通し、帰りは、リオマッジョーレからレヴァンテまで、電車で戻ろうというものでした。
こちらは、モンテロッソ・アル・マーレ(Monterosso al Mare)駅前に広がる砂浜・海岸で、奥の方にかすんで見えるのが、これからわたしたちが歩いて行く五村のある岩壁です。駅前のバールでコーヒーを飲み、午前6時40分頃に、このチンクエ・テッレ横断の旅を始めました。朝早く起きたのは、猛暑が続いていたために、午後になって暑くなる前に、散歩を終えたいと考えたからです。
岸壁沿いに設けられたトレッキング・コースを、美しい海や岸壁、砂浜を眺めながら、歩いて行きます。途中、二つ目の砂浜を通り過ぎた頃から、道がいつまでも続く上り坂となり、早朝で涼しいはずなのに、汗が流れてきます。
散歩道は、下の細道ではなく、上方に見える手すりのある小道です。
やがて、小道は急斜面に作られたブドウ畑のただ中を進むようになりました。
このブドウ畑が、昔はチンクエ・テッレの丘陵すべてを覆っていたようですが、今では、だれも世話をする人もない雑木林になってしまっているところも、ところどころにあります。この厳しい条件下で育てられたブドウから作るチンクエ・テッレのDOCワインの中でも、特に、チンクエ・テッレ・シャッケトラ(il Cinque Terre Sciacchetrà)は、その味わい深い甘さで知られる貴重なものです。
時には花に囲まれた道を行き、ある時は片側が急な斜面である細い小道を、こわごわと進み、そして、しばしば、急な坂道を苦労して登りながら、海沿いの道を歩いて行きます。
ようやく岸壁に挟まれたヴェルナッツァの村が、まだ遠方ではあるものの、霞の中に見下ろせる場所まで来ました。前方に見えるのが下り坂だったので、「あとは下るだけ」と思って喜んでいたら、この後にも、まだいくつも上り坂が潜んでいました。
ようやく、青い海に囲まれた美しいヴェルナッツァ(Vernazza)の村が見えてきました。
観光地図には、モンテロッソから徒歩で1時間45分と書いてあるのですが、足の遅いわたしが暑さと上り坂に苦しみながら、そして足を休めては写真を撮りながら歩いて来たために、ヴェルナッツァに着いたのは、午前9時頃。モンテロッソを出発してから、もう2時間以上も歩いていることになります。(追記:あとから、「徒歩2時間」と書いてあるガイドブックも見つけました。)
ヴェルナッツァは、色とりどりの家が並ぶ町並みと青い海の美しさが印象に残りました。ちょっとした街角の家の造りがすてきなところが多く、壁に施したさりげない絵の装飾が、美しいところもありました。
ブドウ畑を背後に建つこの教会は、14世紀のものです。
内部は、荘厳な石造りとなっています。村には、修道院や11世紀以前建立と言われる塔もあって、時間があれば、もっとゆっくりと訪れたかったのですが、フランコたち友人は、早々に次のコルニッリャ村に向かって歩き始めています。
わたしがすでに疲れ果ててしまっている上、五村間をずっと歩き通しては、友人たちを待たせ続けることになることから、次の村、コルニッリャでだけは、わたしと夫は、電車で行くことにしました。
海に面したコルニッリャ(Corniglia)駅に、電車で到着したのは、午前10時半。駅舎は、色鮮やかなブーゲンビリアの花で覆われています。
実は、コルニッリャの村は高い丘の上にあり、電車はその丘のトンネルをくぐってから、コルニッリャ駅に到着しました。友人たちはまだ丘の上のコルニッリャ村の上にいるようですが、観光案内を見ると、村にはそれほど見所もなさそうです。引き返して丘へと登るのは骨が折れる上に、友人たちを再び待たせることにもなります。そことで、わたしたちは、コルニッリャ村は見ずに、このまま次のマナローラ村へと、一足先に出発することにしました。
断崖の上に設けられた小道を歩いて行くと、足を進めるたびに、少しずつ違う角度から、美しい青い海と岸壁を眺めることができました。岩の上に大きくすくっと伸びる緑のアガベ(agave)を見ると、厳しい自然の中を生き抜くこのアガベに自らを重ねて詩を詠んだ、リグーリア出身の詩人、モンターレ(Montale)を思い起こします。
ちょうどこの辺りを歩いている頃に、友人たちがわたしたちに追い着きました。写真のアガベの左側に見える入り江に、海水浴のできるところがあって、夫と友人たちは、海辺へと降りる小道を下って、しばらく美しい青い海の中で泳ぎました。わたしは、ここで泳いでしまうと疲れが増して、この先歩くのがますますつらくなりそうなので、日陰を見つけ、腰を下ろしてゆっくりと休みました。
上の写真の奥に見える岬の突端を曲がると、すぐに次の村、マナローラ(Manarola)が姿を現しました。
岩を降りて、青色のまぶしい海の中で泳いでいる人が大勢います。色とりどりの家々が整然と並ぶマナローラ村の美しさが、ブドウ畑の緑と海の青との対照で、いっそう際立っています。
ちょうど昼食時だったので、村の中心街にあるレストランに入りました。
店の名前は、ワインボトルにもあるように、トラットリーア、ラ・スコッリェーラ(Trattoria La Scogliera)。トマトとカタクチイワシ、ジャガイモを三層に、サラダの上に並べたこのセコンドが、それはおいしかったです。残念ながら、料理の名前は覚えていません。
さて、おいしい昼食に満足した後、これからどうするかを話し合いました。午後は暑くなるので、最後の区間、マナローラからリオマッジョーレまでは、歩くのを断念して、電車でレヴァントまで引き返すか、それとも、Via dell'Amore「愛の小道」として名高いこの区間は、他より短そうなので、最後まで散歩を続けるか。
せっかくここまで来たのだから、景観の美しいという愛の小道を歩くことに決定して、まずは、その入り口に向かいました。この愛の小道については、眺めの美しさ以外にも興味深いことがいろいろあったので、次回の「チンクエ・テッレを歩く3」(リンクはこちら)で、ご紹介します。
チンクエ・テッレの五村を歩き通す海沿いの道筋は、 sentiero azzurro(訳すと、「青い散歩道、青いトレッキング・コース」)と呼ばれています。空の青と海の間を行く海沿いの道なので、こう呼ばれるようです。ちなみに、すべて歩き通したフランコは、眺めが最も美しくて、散歩していて楽しかったのは、最初の区間、モンテロッソ・アル・マーレからヴェrナッツァまでの散歩道だと言っていました。わたしたちが電車で移動し、友人たちは歩いたヴェルナッツァからコルニッリャの区間は、あまり見晴らしがよくなく、コルニッリャ村にも見るべきものが少なかったということです。
こちらが、今回わたしたちが、鉄道駅で購入したチンクエ・テッレ観光一日乗車券です。チンクエ・テッレの五村を含む、レヴァントとラ・スペッツィア(La Spezia)間の電車が乗り放題で、上記のsentiero azzurroを歩き通すためのトレッキング・コースへの入場料金や電車代を個別に払うよりもお得だということで、今回はこちらを利用しました。わたしたちは、今回は散歩に専念したので行きませんでしたが、博物館などにも無料で入場できるという特典があります。二日乗車券や三日乗車券もあって、一日乗車券に比べると、若干ですが割安になっています。
最初に鉄道を利用する際に、駅の刻印機でカードに刻印するのをお忘れなく。刻印なしで利用すると、多額の罰金を払うことになりかねません。上の写真のカードでは、一番下に、逆向きにですが、11-7-2010 06.06(2010年7月11日、午前6時6分)と、利用開始日時の刻印があります。
それでは、続き、「チンクエ・テッレを歩く3 愛の小道」(リンクはこちら)をお楽しみに。
素敵なトレッキングをされたのですね!また美しい写真の数々に感動しました。尚、Il sentiero azzurroとはこの五村の散歩道の道筋全てのことを指しているのですね!勉強になりました。
トレッキングに際し、時間が掛かったと書かれていましたが、実際、所々足場の悪い道だったり、急な上り坂だったりもしますので、とても分かります。私もこの前歩いた時には、モデルプラン以上の時間がかかりました。。それにリグーリアは海があるからなのか?基本的に湿度が大変高いのです、歩くと汗が止まらないですよね。。。
なおこさんもご存知だと思いますが、2011年10月末、大雨から洪水・連鎖的に土砂崩れが起き、特にVernazzaが壊滅的な状況になり、未だに完全修復には至っていません。。私は、土砂崩れが起きる前にVernazzaを訪れたことが無いため (結婚前で日本にいました) なおこさんが撮影されたVernazzaの美しい写真にとても胸打たれました。
チンクエテッレは本当に美しいところにも関わらず、日本ではそこまで有名では無いのが非常に残念なところです。
チンクエテッレのことを丁寧に書いて頂き、自分のことのように嬉しく想います!
この夏のこの日は異常に暑くて、長いながい坂道を登るとき、汗をかいて大変だったんですが、そうすると、これは暑さだけではなく、リグーリアの湿度が高いからなんですね! 海が近いですものね。
あの大雨と土砂崩れのときは、チンクエ・テッレを始め、テレビで、わたしたちが宿泊した山あいの村が川の水があふれ、すっかり土砂に覆われているのを見て、驚きました、もう修復が行われたのかと思ったら、まだ災害の爪跡がかなり残っているんですね。ウンブリアでも、1997年の地震のあと、15年目の今になっても、まだ修復中の村や家もあり、イタリアでの災害の後の修復の遅さに、被災者の方がさらに苦労をされるのを思うと、やるせないのですが、どうか早急に、大雨に耐え得る構造を持った村、家として、修復がされることを願っています。(つづく)
チンクエ・テッレは本当に、自然も景観も美しく、食もおいしいところですよね。チンクエ・テッレもウンブリアも、日本で俗に考えるイタリアの旅行コースから外れてしまっているために、その魅力が日本の方に知られていないのが残念です。愛の小道ばかりがことさらに有名なような…… でも、個人旅行で日本から訪ねる方も時々いらして、そういう方が、わたしのブログ友だちの中にもいるんですよ。こちらこそ、うれしいコメントをありがとうございます。
イタリアならではの景色でしょう。
ヴェルナッツァの村を見通すポイントや、見下ろす断崖の上の一枚もイイねと思いました。
アップダウンが有るのに長い距離を良く歩きましたね!!