2010年 07月 30日
チンクエ・テッレを歩く3 愛の小道
7月11日日曜日、早朝に最西端のモンテロッソ村を出発して、マナローラ村まで歩いてきたわたしたちは、昼食のあと、この名高い愛の小道を散歩しました。
マナローラ(Manarola)村の目抜き通りから、歩行者用のトンネル(上の写真はその入り口です)をくぐって、鉄道駅を通り抜けると、愛の小道(Via dell’Amore)の入り口があります。
景観の美しい愛の小道が始まるのは、この短い坂を登ったところなのですが、この入り口の脇で、係員が入場券の提示を求めていました。わたしたちは、愛の小道への入場もできるチンクエ・テッレ観光一日乗車券を提示しました。左上に見えるブーゲンビリアの花が、色も美しく見事です。
この愛の小道は、海に臨む断崖の岩を削り取って作ったもので、海と岸壁の眺めがことさらに美しく、また、平坦で歩道の幅が広い上に、手すりもあって、五村を結ぶ青い散歩道のうち、最も歩きやすいコースでもあります。
道を歩いてしばらくすると、要塞らしき大きな建造物に行き当たります。ちなみに、愛の小道は、この建造物の最上階、アーチのある部分を通り抜けます。
建造物の中に入ると、かつてこの道を歩いたであろう恋人たちの愛の誓いが、たとえば落書きの言葉、そして、南京錠(lucchetto)という形で、壁や柱を飾っています。
愛の誓いの南京錠は、フェデリーコ・モッチャの小説、『Ho voglia di te』(2006年)、そして、翌年に公開された同名の映画を通して、イタリアの若い恋人たちの間に一気に広まったものです。
映画の中で、ヒロインは、主人公をローマのミルヴィオ橋に連れて行って、たくさんの南京錠に覆われた街灯を見せます。これは何だと尋ねる主人公に、ヒロインは、これはla catena degli innamorati(訳すと、「恋人たちの絆、鎖」)で、恋人たちが南京錠を取りつけ、鍵をテベレ川に投げ込み、それからは別れることなく、いつまでも一緒にいるのだと語ります。それを聞いて、主人公も、大きな南京錠を街灯に取りつけて、ヒロインと目を見合わせ、「per sempre」(意味は、「永遠に、いつまでも」)Iと言って、口づけと抱擁を交わすというのが、この恋人たちの南京錠ブームの発端となった場面です。
恥ずかしがるわたしたちを、ぜひここで写真を撮らなければと説得して、撮影してくれたのは、友人たちです。背景には無数の南京錠と、口づけを交わす模型が見えます。通りかかった若い恋人たちに、マウリッツィオが写真を撮りましょうかと呼びかけると、喜んで誘いに応じた二人は、カメラの前で熱い口づけを交わしていました。「若いなあ。これが、ここであるべき写真撮影なのよね。」と、マヌエーラが妙に納得しています。
壁にも一面に、ハートマークと共に、恋人たちの名前・イニシャル、そして愛の言葉が書かれています。
青い海と岸壁の眺めが本当に美しい散歩道です。
この愛の小道が生まれたきっかけは、鉄道の複線工事です。1920年代にマナローラとリオマッジョーレを結ぶ鉄道を複線にした際に、二村を危険にさらさないために、鉄道工事に必要な大量の爆薬を置く倉庫を、二村の中間地点にあたる海沿いの岸壁に設けたのですが、その際に、マナローラ村から倉庫まで、そしてリオマッジョーレ村から倉庫までたどり着くための小道も開かれました
その当時、マナローラ村とマッジョーレ村の間には、非常に長く、歩くのが困難な内陸部を通る道しかありませんでした。そのため、このこの二村は隣村どうしであるにも関わらず交流は皆無に近かったということです。鉄道工事が終了し、爆薬が取り除かれたあと、村人たちが、この小道を二村間の往復に利用することを思いつき、1930年代に入って、村が村人たちの支援を受けて、二村を結ぶ海沿いの小道を完成させました。
やがて、この小道が、恋人たちがよく訪れる場所になったために、誰かが道の両端の入り口に、石灰で、Via dell’Amore、「愛の小道」と記したのが、この名称の由来だそうです。ちなみに、実は、愛の小道完成前に、二村を結んでいた歩くのが難しい道も、リグーリア方言で、Viaeu de l'Amùu、つまり「愛の小道」と呼ばれていたそうです。以上の説明は、イタリア語版Wikipediaの「Via dell’Amore」の項を参考にしました。(ウェブページへのリンクはこちらです。)
小道の下方には、まぶしいほどに青い海が見えます。岩の上で日光浴をする人、岩間の青い海を泳いでいる人がいます。
やがて、小道は海を離れて内陸部へと向かい、リオマッジョーレ(Riomaggiore)駅が見えてきました。美しい眺めを楽しみながら、歩くこと、約30分。愛の小道の出口が近づいています。
愛の小道は、わたしたちが歩いたのとは逆向き、リオマッジョーレからマナローラまで歩くことも、もちろん可能です。写真の矢印は、リオマッジョーレ側からの入り口を示しています。帰りは電車を利用して、リオマッジョーレ駅から、レヴァント駅に戻りました。
同じsentiero azzurro、「青い散歩道」の中でも、愛の小道と呼ばれるこの区間は、整備された平坦な1kmの道を30分ほどで、それは美しい景観を楽しみながら、楽に歩くことができます。他の区間では必要な登山靴(scarponi)も、この愛の小道を歩くには、不要です。チンクエ・テッレは、船の旅を利用して、海から五村の景観を楽しむこともできるのですが、特にご夫婦や恋人どうしで訪れる方は、この愛の小道だけでも、ぜひ歩いてみてください。
足と体力に自信があり、日程に余裕がある方には、五村すべてを歩き通す(あるいは一部電車を利用する)ことも、おすすめで、電車や船で訪れただけでは見えない、美しい景色を目に焼きつけることができます。五村を歩いて訪れたいという方は、「チンクエ・テッレを歩く2」(リンクはこちら)を参考にしてください。
コメントをありがとうございます。これからも、よろしくお願いします。
やっとこさのコメントで恐縮です。
愛の小道の像と鍵はよくガイドブックでみますが、下にこんなきれいな海があるんですね。知りませんでした。
アメリカ人の友達♂が一人でチンクエテッレに行った事があるんですけど、きっとこの場所は寂しく通過したことでしょう。
そういえば、景色の事ばかり言ってたなぁ。。。
なおこさん、せっかくの愛の像の前なのに、笑ってない所が笑えました(笑)
逆光で顔があまり見えないのでいいか、と思ったのですが、観察力が鋭いですね……
愛の小道はわたしも、何と言っても、風景の美しさが印象に残りました。わたしも、『赤毛のアン』の舞台となったカナダ、プリンス・エドワード島の「恋人の小径」を女友達と歩いたことが2度ありますが、いつか恋する人と訪れてみたい場所と考えて歩いて、うれしかったのを覚えています。コメントをありがとうございます。