イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

ラグデイで自然を学ぶ

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 エミリア・ロマーニャ州立百の湖自然公園にあるラグデイの山小屋(Rifugio Lagdei)(詳しくはこちら)の周辺は、湿地帯で、さまざまな動植物が生息している上に、湿地帯から森林へと発達していく過程も観察することができるために、子供や大人が自然を学べる学習公園となっています。

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 山小屋のすぐ前に、五感を通じて湿地帯の自然を学べる散歩道(La Torbiera attraverso i sensi)があります。400mの小道が小川沿いに、森や野原を進んでいて、道の傍らに、時々自然について学ぶための学習看板が立っています。案内パンフレットに書いてあるとおり、まさに「誰でも楽に歩くことのできる自然を学ぶ散歩道」(Percorso naturalistico accessibili a tutti)となっています。

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 野原には、7月も半ばだというのに、まだラン(orchidea)の花が、そこかしこに美しく咲いていました。

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 このランの花についても、説明の看板がありました。

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 看板の右上には、イタリア語でこう書いてあります。「ランは熱帯の花だと、思い違いをしている人が多いけれども、実際には世界中に分布しています。自然公園にも、森の中から尾根まで、さまざまな品種のランが生えています。」

 花の絵の横に大文字で書いてあるのは、花の学名で、学名の下に小さい文字で、それぞれの品種が分布する場所が書かれています。

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 自然公園の森を覆うモミの木(abete)についても、モミの林の中に、学習看板がありました。説明によると、ラグデイの森に生える常緑樹は、ヨーロッパトウヒ(abete rosso)とヨーロッパモミ(abete bianco)であり、いずれも20世紀の初めに、森林の乱伐によって裸山になってしまった地域の森を再生するために、植えられたものだということです。この2種の木のイタリア語名、abete rossoとabete biancoは、直訳すると、「赤いモミの木」、「白いモミの木」であり、それぞれの木の幹の色を、言い表しています。

 自然公園の奥では、自生のヨーロッパトウヒとヨーロッパモミが、年数を経たブナ(faggio)に入り混じって、数世紀にわたって、豊かな森を形成しているとも、書かれています。

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 こうした針葉樹(conifere)の繁殖を助けるのが、リス(scoiattolo)だというのは、ご存じの方も多いことでしょう。リスが木の実をすべて食べてしまわずに、いくつかは地面に埋めて後で食べようと思うものの、埋めた場所を忘れるため、実が育って、ゆくゆくは大木になっていくわけです。看板のL’ignaro giardiniereという言葉は、リスが自分でも「気づかぬ」(ignaro)うちに果たしている「植木屋、庭師」(giardiniere)の役割を、言い表したものです。

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 ラグデイ(Lagdei)の平地は大昔、大きな湖に覆われていて、今はその湖が小さな池になってしまったものの、今でもその時の水分が土壌に残る湿地、泥炭地(torbiera)となっています。「五感を通じて湿地帯の自然を学べる散歩道」と名にもあるように、この散歩道の学習の目玉は、数多くの動植物が生息する泥炭地とその森林への変容であり、上の看板には、そうした学習のポイントが、分かりやすく図と共に解説してあります。

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 この池が、かつてラグデイの平地全体を覆っていた大きな湖の名残です。

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 ラグデイの山小屋の前には、小川がいくつも流れているのですが、上の学習看板は、この小川が、「盆地の表面にたまった水を、300km以上も離れたアドリア海まで運んでいくのです」と、説明しています。

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 美しい色の蝶もたくさんいて、その1羽が夫の左腕で、羽を休めたりもしました。

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 こんなふうに、泥炭地に生息する動植物や、泉・小川・湖という自然界における水の様々な在り方についても、説明があります。

 写真でもお分かりのように、平坦な歩きやすい道を行きながら、動物や植物について学べる場所ですので、お子さんが自然に親しむには絶好の場所です。花を眺め、鳥の鳴き声を聞きながら、散歩ができるので、高齢者の方にも、過ごしやすいかと思います。

 機会があれば、ぜひ訪ねてみてください。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by ゆん at 2010-08-17 09:36 x
なんとなく日本の尾瀬を思い出しましたが
自然に溢れた素晴らしく美しい場所ですね。
それにイタリア語を交えた丁寧な解説&説明文で
いちブログとして読ませて頂くには勿体ないほどです。

写真は、やはり一眼レフをお使いですか?
いつもとっても綺麗です。



Commented by milletti_naoko at 2010-08-20 05:00
夫が山を歩くのが好きなので、出不精で運動が好きではないわたしも自然の中を、長いこと歩くことが多くなりました。日本だけではなくイタリアでもあまり知られていない自然の美しい場所も多いので、イタリアのいろいろな側面を知っていただきたいと思い、かつ、自分の旅の記録にもしながら、書いています。

イタリアの友人に登山仲間も多いので、「こんなところに行ったよ」と、日本語は分からないので、写真で旅行した場所を紹介するのにも役立っています。記事として書くために調べて初めて分かることもいろいろあるので、わたしにも勉強になります。

カメラは一眼レフではなく、普通のデジカメで、数年前のものです。(CANON PowerShot A570 IS)写真の出来は、日光の加減と景色や被写体の花などの美しさのおかげだと思います。かつ夫にあきられるほど何枚も何枚も撮った中から厳選しているため、下手な鉄砲も数を打つので当たるのではないかと…… 結婚祝いに友人が贈ってくれたカメラなので、これからも大切に使っていくつもりです。
by milletti_naoko | 2010-08-17 17:54 | Emilia-Romagna | Comments(2)