2010年 08月 19日
野イチゴあふれる山の小道


こちらは、1240年に建てられたコルニッリョ城(Castello di Corniglio)です。城の内部には当時を偲ばせるものはなく、現在では、村役場の所在地になっています。城の一部には、ホステル・コルニッリョ(Ostello di Corniglio)もあり、安く宿泊できます。コルニッリョ城の裏手は広い庭になっていて、遠くの山並みが美しく見えました。

この裏庭側に、ホステル・コルニッリョの入り口があったように覚えています。
百の湖自然公園(記事はこちら)の北方にあるこの村をわたしたちが訪れたのは、実は、現金を調達するためです。というのは、ラグデイの山小屋ではクレジット・カードが使えず、「ATMがある一番近い場所はコルニッリョだ」と聞いたからです。ラグデイからは車でも遠いのですが、村の観光案内所にも村はずれにある百の湖自然公園の観光案内所にも、有益な旅行情報が豊富で、パンフレットや小冊子をたくさんもらいました。

この中に、コルニッリョの南方にあるカサローラ(Casarola)の村を起点とする興味深い散歩コースを三つ示した地図があり、この日の夕方、早速その一つ、農業の小道(Sentiero Agricoltura)を歩きました。写真は、出発してすぐに前を通ったカサローラの教会です。
この散歩道の見所は、農民たちが、かつて重要な食料として大切に育てていた栗林なのですが、わたしを最も驚かせ、そして一番印象に残っているのは、道沿いにしばしば見かけた野イチゴ(fragola di bosco)です。

これまでも、野山を散歩して、野イチゴを見つけたことはあったのですが、ごくたまに他の草に紛れて見つかるくらいです。
それが、このカサローラ村では、歩いた小道の4分の1ほどが、野イチゴに覆われ、おいしそうな赤い実がたくさんなっていた気がします。店で見かけるイチゴよりはかなり小さいのですが、よく熟れた赤い野イチゴを摘んで口に入れると、甘くおいしくて、果肉も、口の中でとろけるように柔らかいのです。

農業の小道は、最初はカサローラ村の家々の間を通り、やがて、村はずれの眺めのすばらしい場所を進んでいきます。写真の右手に見えるのは、ブラーティカ川を取り囲むブラーティカ渓谷(Val Bratica)です。農業の小道を含む三つの散歩道は、このブラーティカ渓谷の魅力を発見できるようにと、設けられたものです。

こうした石造りのマエスタ(maestà)が、村の近辺にいくつもありました。マエスタは、村人や旅人を災難から守ってもらおうと、聖像の彫刻を石塔に設置したものです。パルマ地方東部のアッペンニーニ山脈では、16世紀から20世紀にかけて、聖像をアプアーノ・アルプスで採掘された大理石の薄板に彫刻して、家や石塔、給水場などに配置していました。

ようやく栗林にたどり着きました。こちらは、かつて栗を乾燥させるために建てられた小屋の一つで、こうした石造りの小屋が、農業の小道沿いに、いくつもありました。使う人のいないまま放置された小屋もありますが、そのうち数軒は、地域の自然・文化遺産を大切にしようとの目的で、きちんと修復され、自然の中で過ごしたい人のための宿泊施設となっています。夫も栗林の小屋に宿泊したがって、宿の管理人に電話をしたのですが、7月いっぱいは空室がまったくないとのことでした。小屋の周囲にテントを張っている人も何人かいました。
小屋の前には、かつて農民たちが栗林をどれだけ大切に手入れし、そして栗を収穫した後にどうやって乾燥させたかなどが、説明してあります。自然や農業を愛する夫は、今では栗林があまり手入れされていないのを見て、とても残念がっていました。

中には、こんなふうに大きな栗の木もありました。小道のあちこちに、栗の木やかつての生活を物語る学習看板が立っています。

栗林を出ると、ひたすら登り道が続きました。道の脇に、美しい野の花が咲いています。写真の右には、野イチゴもぼんやり見えます。花を眺めたり、イチゴを摘んで食べたり、写真を撮ったりして、休憩しながら、山道を登っていきました。

7月だというのに、一風変わった美しいスミレの花が咲いていました。

下り道になってから、さらに歩くと、小道が森を出て、遠くの山々まで見晴らすことができました。

こちらの学習看板は、牧草地(pascoli)について説明しています。百の湖自然公園内にも、あちこちに牧草地があり、牛や馬、羊などが放牧されているからです。
この農業の小道(Sentiero Agricoltura)の所要時間は、地図には「約2時間」とあるのですが、わたしたちは3時間後に、ようやく出発地点かつ到着地点のカサローラ村にたどり着きました。

何度も立ち止まっては、野イチゴを摘んで、食べていたからかもしれません。



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