イタリア写真草子 ペルージャ在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

後味の悪いB&B

 話が少し前に戻りますが、7月13日火曜日から2日間滞在したのが、こちらのB&Bです。

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 ラグデイを朝10時に出て、コルニッリョで旅行情報を入手したのですが、夫は一目で、カサローラ村を起点とする散歩コースが気に入りました。

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 その散歩コースの一つ、農業の小道の見所は、かつて周辺地域の農民にとって大切な食料源となっていた栗の林です。栗林の中には、かつて農民たちが拾い集めた栗を乾燥させるのに使っていた小屋がいくつかあります。上の写真の小屋は、修復されておらず、今も、昔のままの姿を見せています。

 一方、栗林の中には修復(restauro)されて、宿泊もできる山小屋(bivacco)として、旅行者や住民に提供されている小屋(下の写真)も四つあって、人々が自然の中で過ごし、昔の生活に思いを馳せることができるようになっています。

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 夫は、ぜひこの小屋に滞在して、栗林の中で夜を明かしたいと考えていたのですが、人気の高い宿のようで、電話をかけると、7月いっぱいは空室がないとのことでした。山小屋に興味のある方は、以下の自然公園のホームページをご覧ください。宿泊情報や連絡先と共に、周囲の景色や内部の写真もあります。

・I Bivacchi del Parco in Val Bratica
(訳すと、「ブラーティカ渓谷にある自然公園の山小屋))
LINK ⇒ イタリア語のページ英語のページ

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地図は、観光案内、『Destinazione Appennino Parma Est』から借用

 コルニッリョ(Corniglio)付近にも宿はいろいろあったのですが、散歩したいのがカサローラ(Casarola)周辺だということで、コルニッリョで昼食をとったあと、車で南へと向かいました。道沿いに宿の案内もあるだろうし、最悪の場合でも、地図での文字表示の大きさから言って、モンキオ・デッレ・コルティ(Monchio delle Corti)は大きな村だから、宿があるはずで、この村の方がコルニッリョよりもカサローラに近いからです。

 ちなみに、赤で囲んであるのが今回の記事に関連する場所で、緑で囲んであるのは、過去の記事で触れたことがある場所です。そして、地図の下部に茶色のアステリスクを付したところが、馬がわたしたちの車の前に立ちはだかった場所(記事はこちら)です。

 ちょうど暑い日が続いていた頃のことで、この日も、昼食後、コルニッリョから、カサローラへと進む車の中は、容赦なく照りつける日光のために、ひどく暑くなりました。自然志向の夫の車には、エアコンがありません。(今は後悔しているので、次の車はエアコンつきになるでしょう。)カサローラ村近くには宿が見当たらず、モンキオ・デッレ・コルティでは、道路沿いのホテルと見晴らしの望めないB&Bしか見つかりませんでした。そこで、栗林の中の山小屋の管理人に電話をしましたが、こちらは満室です。

 午後2時を過ぎると暑さのために車内でも汗だくになるし、散歩をするにも暑すぎるので、どこか宿を見つけて、最も暑い時間帯は室内で休む必要があります。道路沿いは嫌だと夫が言うので、乗り気ではない夫とB&Bまでの長い坂道を下っていきました。

 宿の主人と話した夫が戻ってきて言うのは、「ダブル・ルーム(camera matrimoniale)は二つあって、朝食付き1泊の部屋の料金が、小さい部屋だと60ユーロで、他にもベッドが一つある広い部屋だと75ユーロ」ということです。

 トスカーナやラッツィオの魅力的なB&Bでも、高くて一部屋70ユーロと記憶しているわたしたちは、この60ユーロの部屋を見せてもらいました。すると、

・ベッドがいわゆるセミ・ダブルサイズで、二人で眠るには小さい上に、ベッドの両端と、その両脇にある部屋の壁の間が1センチほどしかなく、そのため、就寝するためには、ベッドの上を歩いて、枕元まで行かなければならない、

・衣類を置けるタンスがまったくない、

・このベッドがある寝室の横には、きちんとした専用のトイレ・シャワーもあるし、宿泊客専用という6畳ほどの大きさの台所もあるけれども、宿泊客用のはずの部屋になぜか洗濯機があって、ちょうど大きな音を立てて洗濯をしている最中である、

という状況です。

 ベッドが置いてある部屋の狭さとタンスがないことを見て、まずは夫が難色を示しました。わたしもこんな部屋で60ユーロとは高いと思いつつも、一晩くらいなら我慢できるし、何より暑さのために二人とも疲れ果てていたため、夫を説得して、この部屋に泊まることにしました。

 農業の小道の散歩を終えた翌朝、朝食のときに、初めて宿の主人の奥さんに会いました。

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 親切な老婦人で、朝食にと出してくれた手作りのパイ(crostata)が、とてもおいしいのです。昨日出会った主人の方も、散歩や旅についていろいろな情報を教えてくれました。そして、主人が自分の人生を語った著書も記念に1冊くれるということでした。(本が売れなかったのか、台所の棚の中に大量に積まれているのを、夫が発見しました。)

 部屋にはいい印象を持っていないものの、老夫婦の親切や朝食のおいしさ、連泊だと1泊あたり50ユーロと安くなることもあって、結局は、このB&Bにもう一泊することにしました。ただし、その一番の理由は、夫が歩きたがっていた自然の小道の散歩をするのに都合がいいからです。ここなら散歩の出発点に近いし、新たに宿を探しては時間と体力を浪費してしまいます。

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 実は、この7月14日水曜日の翌朝は、結局、かなり時間を無駄にしてしまったのではありますが。というのは、散歩の出発地点であるカサローラ(上の写真)のバールあるいは食料品店で、昼食用のパニーノを作ってもらおうと思い、モンキオから車でカサローラに行ったのですが、村にある三つのバールで、「パンがないので、パニーノは作れない」と言われてしまったのです。これは、カサローラ村にはパン屋がなく、モンキオまで買出しに行く必要があるからで、そのため、わたしたちはパニーノを買うために、来た道を再びモンキオへと引き返すことになりました。

 朝10時に宿を出たのに、そういうわけで、結局、リアーナ(Riana)村から散歩に出発したのは、11時半でした。小さな村では時々こんなふうに、あると思い込んでいるものがないことがあります。たとえば、カサローラにもリアーナにもとてもおいしいレストランがあるそうなのに、どちらも平日は閉店で、わたしたちは訪れることができませんでした。

 自然の小道の散歩では、すばらしい眺めを楽しみ、野イチゴを味わえて、とにかくわたしたちは、夜、満足して宿に帰りました。

 翌朝の朝食では、奥さんが、わたしたちのために、わざわざパイを新しく焼いてくれていました。これからの旅行先についても、主人がいろいろ教えてくれて、このアドバイスもとても役に立ちました。

 部屋は今ひとつだったけれども、結局いい宿だったかなと思っていたそのとき、奥さんがこう言いました。

「狭い部屋に泊まってもらって、申しわけない。次回はできれば、前もって連絡してね。そうすれば、もっと広い部屋を準備できるから。」

「でも、その広い部屋は、もう一つベッドがあるから値段が高くなるのでは?」

「あなたたちが泊まった部屋は、シングル・ルームで、ダブル・ルームは子供がいれば3人なので、料金は高くなるけれども、二人なら値段は同じ。」

 この時、宿の主人はどこかに出かけていていませんでした。

 ということは、宿の主人は、わたしたちが同じ値段を払って利用できるダブル・ルームがあるにも関わらず、高い値段をふっかけて、シングル・ルームに押し込んだのでしょうか。奥さんの言い方からすると、部屋が準備できていない、ということですが、夫が2日前に主人と話したときの会話からすると、ダブル・ルームも泊まれる用意が整っていたはずです。

 ちゃんとした広い部屋があるのに狭苦しい部屋に詰め込んで、しかも同じ料金を取って……という疑惑が胸をよぎります。いい人そうな顔をしておいて、実はちゃっかり本来より高い料金を巻き上げようとしていたのか、それとも、後から来る可能性のある3人連れの客用に、部屋を空けておきたかったのか、いずれにしても、ひどい話です。

 けれども、そんな主人の申し出を知るはずもない奥さんに、問いただすこともできず、また、そんなはずはないけれども、本当にダブル・ルームが準備できていなかったのかもしれないという可能性も皆無ではありません。

 というわけで、何とも後味の悪い滞在経験となってしまったのでありました。旅行前には、ある程度、宿の情報をあらかじめ調べておいて、自己防衛できるようにしておかなければ、とつくづく思いました。

 否定的なことはあまり記事にしたくないのですが、こういうこともありますので注意しましょう、ということで、書いてみました。

LINK ~ カサローラ村を起点とする散歩コース
・農業の小道(Sentiero Agricoltura)
 ⇒ ブログの記事はこちら
 ⇒ 自然公園ホームページの説明はこちら
・自然の小道(Sentiero Natura)
 ⇒ ブログの記事はこちら
 ⇒ 自然公園ホームページの説明はこちら

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by 加藤ミント at 2010-08-25 13:51
先日はご訪問、コメントありがとうございました。
ブログ拝見いたしました。

イタリア在住なんですね。なるほど納得です。
自然あふれる写真の数々、楽しませていただきました。

ここなら、確かにメイクなんて必要最低限で、OKですね。
東京都心に住んで長いので、その環境の違いに唖然としました。

とはいえ、私も緑深いところ、自然が好きで、バイクに乗っては,
あちこち出かけています。東京は仕事をする街。いずれは南の
島へとおもいます。

Commented by milletti_naoko at 2010-08-25 16:10
緑の大切さや、緑が心を安らげることはよく言われるのですが、東京都心では、やはり自然に触れるのが難しいのでしょう。でも逆に、自然を求めて、いろいろな場所を旅されるのも、すてきだと思います。

15歳まで東京のはずれ、保谷市に住んでいて、その頃にはあった空き地や緑が、大学生の頃に訪れたときには、すっかりなくなっていて、悲しく思ったのを覚えています。

大学生の頃、授業中に、ある小説の自然描写が細かすぎ、長すぎるのではないかと意見を言ったとき、先生から、「それは石井さんが都会育ちだからでしょう」と言われたことがあります。おそらくは、知らない動植物の名前や描写が多くて、頭にイメージが浮かばず、そういうものに対する筆者の感性が分からず、作品の進行と無関係に思えたのでしょう。

その後、自然に囲まれて暮らす歳月が長くなり、気がつくと、自分自身がその自然を取り上げ、よく文章の中心に位置づけているわけですから、人生は不思議なものです。

こちらこそ、ご訪問、そして、コメントをありがとうございます。ふと、立ち止まって、振り返って考えさせてくれるような文章が心に響きます。また時々立ち寄らせていただくつもりです。
by milletti_naoko | 2010-08-24 13:07 | Emilia-Romagna | Comments(2)