2010年 09月 02日
アプアーノ・アルプス2
目抜き通りからは、アプアーノ・アルプス(le Alpi Apuane)の連なる山並みが、よく見えます。
一つひとつの山や峰の名を、絵に書き込んで記した案内板もあります。
そして、村の中心に建つ古い塔と教会の向こうには、コルフィーノの岩壁(Pania di Corfino)がそびえています。
アプアーノ・アルプスの観光案内を見ると、ヴァッリ湖周辺の村のたたずまいが美しかったので、この湖に向かって、南西へと車を進めました。
途中、美しい城壁と塔に取り囲まれた町を、通りかかりました。
そこで、車をとめて、このカスティッリョーネ・ディ・ガルファニャーナ(Castiglione di Garfagnana)の町を散歩しました。
城壁の上に登って、すばらしい眺めを楽しむこともできます。別の方向には、アプアーノ・アルプスもきれいに見えました。
このサン・ミケーレ教会(Chiesa di San Michele)は、8世紀に建てられた、歴史ある教会です。ただし、赤白の大理石を用いた外装は、15世紀初頭に、ゴシック様式に作り直されたものです。
城壁にも町にも、まだまだ訪れたい興味深い場所がたくさんあったのですが、正午も近いので、散歩を切り上げて、先へ進むことにしました。
ヴァッリ湖(Lago di Vagli)周辺まで来ると、アプアーノ・アルプスが間近に、大きく迫ってきます。
緑の山に囲まれ、湖畔にたたずむヴァッリ・ディ・ソット(Vagli di Sotto)の村が、見えてきました。di sottoは、イタリア語で「下の、下にある」という意味です。すぐ近く、この湖を見下ろす山の中腹に、ヴァッリ・ディ・ソープラ(Vagli di Sopra)、「上のヴァッリ」という村もあり、湖と同じ名を持つ二つの村を、その位置で呼び分けています。
ヴァッリ・ディ・ソットは、湖岸から湖に少し突き出し、周囲を湖に囲まれた小さな村です。観光案内で見たこの村の上空写真がそれは美しかったので、訪れてみたいアプアーノ・アルプスの場所として選んで、ここまでやって来ました。
素朴な造りの古い塔と教会が美しく、風情があります。
石造りの家が並ぶその向こうに、アプアーノ・アルプスの峰が見えます。
ちょうどこの辺りをあるいていたときに、ポルチーニ茸でいっぱいの籠を抱えたおじいさんにあいました。
「ずいぶんたくさん採りましたね。」
「いやあ、今朝は収穫がひどく少なくてね。」
こんなふうに、夏でもポルチーニが豊富に採れる場所なので、昼食にと入ったレストランにも、ポルチーニを使ったメニューがたくさんありました。しかも、そういう料理がとても安いのです。毎日たくさん収穫できるので、経費がかからないからでしょうか。
上の写真は、わたしが頼んだポルチーニ・ソースを添えたスカロッピーナ(scaloppina ai porcini) です。ソースも肉も、たっぷりと使ったポルチーニの味が行きわたっていて、それはおいしかったです。
キノコがお好きな方は、記事、「高山は夏もキノコ三昧」(リンクはこちら)もご覧ください。
上の写真の右手、電柱の後ろにある店が、わたしたちが昼食をとったレストランです。名前は、なぜか英語で、Good Eveningなのですが、夜だけでなく、昼食時にも営業しています。
アプアーノ・アルプスの岩肌がすぐそこに迫っています。
昼食後、バールで観光案内の地図をもらったのですが、散歩コースは山を登りたい夫には今ひとつ。湖も美しいのですが、人口湖・ダムの周囲を歩くのには、それほど魅力を覚えないようです。
というわけで、近くのカンポカティーノ(Campocatino)へ向かって、出発しました。羊飼いたちが暮らしていた石造りの家々が特徴的だということで、古来の農耕文化に興味のある夫は朝からぜひ見たいと言っていました。それが、村への入り口に、通行料だか駐車料金だか忘れたのですが、2ユーロと書いてあるのを見て、古い家の集落を見るのに料金を取る姿勢が許せないと、訪問を断念しました。
ここまで数時間かけてわざわざ車で来たのだから、2ユーロくらい、と言ったのですが、聞く耳を持ちません。今、観光案内をもう一度見てみると、カンポカティーノは、ヴァッリ湖を下方に見下ろし、周囲をアプアーノ・アルプスの岩肌に囲まれていて、眺望がそれはすばらしいところであるとのことです。そうと知っていれば、古い家のたたずまいではなく見晴らしを楽しむための料金だ、と説得して、行くこともできたであろうに残念です。
このあと、周囲を車で回り、あちこちにある大理石の採石場を柵の前から眺めました。結局、アプアーノ・アルプスは、遠くから眺める分には美しいけれども、登山を楽しむのは難しいようだと結論を下しました。ヴァッリ・ディ・ソープラの村には、観光案内所もあるようでしたが、閉まっています。
そこで、少しずつペルージャに向けて移動しながら、なおも山を訪れるために、北東にあるラディーチ峠(Passo delle Radici)へと向かいました。
観光案内所でもらったパンフレットだけではなく、アプアーノ・アルプスの旅行ガイドやトレッキング・コースを書いた本でもあれば、もっと訪問が楽しめたかと思います。
「何事も先達はあらまほしきものなり」
これは、兼好法師が、『徒然草』の「仁和寺にある法師」の章で、書いた言葉です。
仁和寺の法師が、老年になって、かねてから念願だった岩清水八幡宮参りを果たしたのですが、山の上に本社があるとは知らず、入り口付近にある寺社だけを訪ねて、本願を果たしたものと満足し、帰京してしまいます。
この章を締めくくるのが、先の、「どんなことであっても、その道の案内者がいてほしいものである。」という兼好法師の言葉です。
せっかく遠くまで出かけるのなら、見るべきものを見落とさないように、旅行ガイドは1冊持って行かなければ、あるいは、インターネットで、情報をしっかり収集しておかなければ、とつくづく思いました。