2010年 09月 30日
歯医者その3と脱税、差別
・「歯医者でびっくり、日伊の違い」(リンクはこちら)
・「イタリアの歯医者と保険その2」(リンクはこちら)
以前の記事でも書いたように、通院の原因となった虫歯は1本だったのですが、まず、その治療に2週間かかりました。
先週の木曜日は、「今日で歯医者通いも終わり」と喜びながら、バスを乗り継いで歯医者にたどり着き、診療室に案内してくれた女性に、「ふつう歯石の除去にはどのくらいかかるんですか。」と尋ねました。なにせ前の週に、1本の虫歯の治療のために1時間口を開け続けなければいかなかったのが辛かったので、もし妙に時間がかかるのであれば、心の準備をするためです。
「20分くらいですみますよ。」と聞いて、ひと安心。大きな時計が診療台のすぐ前にあるので、診療開始時に大きく口を開きながら、「あと20分の我慢。」としっかり自分に言い聞かせました。
前回日本に帰ったときには、京都の妹を訪ねたり、夫と共に旅行したりで、歯医者には行きませんでした。というわけで、歯石除去も数年ぶりになります。さらに歯並びがひどく悪いので、女医さんが苦労しながら歯石を除去してくれるのですが、やはり時々痛みます。時計を眺めながら、「あと10分間経てば……」と治療の終わりを心待ちにしました。
20分のはずが15分ほどで終わったので、すっかり喜んでいたら、「歯茎から血も出ていて、痛むでしょうから、歯石除去は2回に分けてしましょう。来週また来てください。」と言われてしまい、がっかりしました。まあ、あのまま歯石の除去が続いたらそれはそれで拷問が長引いたようで辛かったと思います。
そして、今日。やはり時々痛みましたが、ようやく2度に分けての歯石除去が終わりました。歯石を取り除いたあとに、何か白い粉のようなものを噴射して、口の中を掃除していたのですが、その主成分は重曹(bicarbonato)だそうです。皿洗いや洗濯に重曹を使うと、きれいに仕上がるし、環境にも健康にも優しいということは知っていたのですが、口の中に入れられるくらいだから、やはり毒や害のないものなのだろうと改めて思いました。
歯医者さんは、「今から重曹で歯を掃除しましょうね。」と言って作業にかかり、掃除が終わったあとで、「重曹で食器や衣類を洗えるのは知っていましたが、歯も洗えるんですか」と聞くと、「ああ、でも重曹だけではなくて、他にもいろいろ入っているんですよ。」と言っていました。
さて、時が流れるのがひどく遅く感じられた歯石除去のあと、いよいよ代金を支払うときがやってきました。「領収書(ricevuta)はいりますか。」と聞かれましたが、ここで領収書つきとなしとで値段の差がないところが、少しは良心的かと思います。最初から領収書の有無で料金に差を設けて、患者に領収書なしの支払いを暗に強制し、収入と税金をごまかす医者も、少なくないようです。
これについては、今日の昼、『Le Storie - Diario italiano』という番組でも、脱税がテーマになっていました。「別に人を殺したわけでも暴力をふるったわけでもないし」と脱税しながら平気でいる脱税者の映像を流したあとで、脱税者たち(evasori)にまったく罪の意識がないことに、司会者と知識人たちが憤慨し、「脱税者は詐欺師(truffatori)だ」と言っていましたが、まさにその通り。脱税の規模の大きさも、脱税者に対する処罰がフランスでは非常に厳しいのにイタリアでは甘いことも詳しく語っていて、興味深い内容でした。
この放送の冒頭部では、昨晩イタリアのニュースで取り上げられていた、自国に働きに来るイタリア人をネズミとして描いたスイスの問題映像が流れていました。スイスにせよイタリアにせよ、移民なしでは経済自体が成り立たないのに、移民を一くくりに差別・侮蔑する傾向があり、自分たちが侮蔑されたことを通して、せめて、「移民や外国人に対する自分たちの態度が問題だった」と思うイタリアの政治家や市民が増えてくれればと思います。
この件については、新聞やそのオンライン版にも取り上げられています。興味のある方は、たとえば次の記事をお読みください。

- la Repubblica MILANO.it - Campagna razzista in Canton Ticino. “I frontalieri italiani sono come ratti”
大臣でもあり、与党で勢力もあるLega Nordの党首ボッシが、日頃から移民や南部の人を目の敵にしている上に、最近「ローマ市民は豚だ」(Sono porci questi romani)という爆弾発言をして、顰蹙と怒りを買っていたのですが、どうやらようやく謝罪をしたようです。ただし、その謝罪も、「冗談だったのだけれども、もし市民が気分を害していたら謝罪します。」ですから、あまり反省の色が見えません。(この件についてのオンライン記事へのリンクはこちら)
弱い立場にある人が幸せに暮らせて、初めて本当に幸せで平和な社会だとはいうのに、移民も身体の不自由な方も、同性愛の方や子供、老人も、イタリア社会では生きていく上で大きく問題を抱え、子供と老人を除いては、差別の対象になりがちかという気がします。まずは、だれもがお互いを大切に思い合い、相手の立場や気持ちを尊重することから始めなければいけないのですが、上に立つべき首相が「ジャーナリストは皆共産党員だ」(最もひどい侮蔑のつもり)とか「裁判官は精神的に病んでいる」とか言っているくらいですから、先が思いやられます。
話がずいぶん逸れてしまいました。歯医者の話に戻ります。
領収書がほしいと言うと、なんと歯医者は、そこで初めて、診療カードを作らなければと言って、いわゆる問診表の質問をわたしに投げかけ始めました。「アレルギーがありますか、既往症はありますか……」
法的に必要だからではなく、患者に適切な治療を選ぶために必要なのだから、治療前にするべきだろう、と思いながら、質問に答えました。
虫歯の治療代80ユーロと歯石除去の60ユーロ。計140ユーロを、本日現金で一括払い。幸い円高で、ユーロで出て行くお金は同じなのですが、円に換算すると、一時期に比べて同じ金額に対する円での料金がかなり安いので、妙にありがたく思ったりします。
これからは1年に1度、歯石の除去をして、ついでに虫歯のチェックもしてもらおう、毎日しっかり歯を磨いて虫歯がないようにしよう、というこの今の気持ちを、いつまでも忘れずにいたいものです。



とにかく無事に終わって良かったですね。
重曹ですが、日本ではだいぶ前から何にでも使えると話題でした。
私は入浴剤代わりに浴槽にたっぷり入れるのですが、お湯が柔らかくなる上、浴槽掃除も楽チンで一石二鳥です。
市販されてる入浴剤は、重曹が主成分だそうです。
また、重曹をペースト状にして歯磨き粉代わりにするというのも以前やったことがあります。
結局、本物の歯磨き粉に比べて勝るほどのものを感じなかったので早々に取りやめましたが(笑)
他にもびっくりするほど色んなことが出来ます。
興味をもたれたら、日本語で重曹を検索なされば色んなサイトが出てくると思います。
それにしても、領収書を欲すると、治療後なのに問診してくる医者というのも日本では考えられませんね。領収書の有無で金額が違うのはもっとひどいですが。
素直に問診を受けるなおこさん、すっかりイタリアに馴染んでる証拠でしょうね^^
実は、重曹はイタリアでもかなり前からスーパーの片隅に置かれていて、我が家にもあり、時々掃除や洗濯には使っていました。洗剤を製造する会社が広告主でもあるためか、メディアで大々的に重曹を取り上げることはないものの、箱に効用がいろいろ書いてあり、重曹を使った効果的な洗濯や掃除の仕方を説明する小冊子もついています。
問診表を診察後というのには、ひどくあきれました。治療中も何も言わずに麻酔をしたりしているので、何かあったらどうするんだという気がしました。ただ、治療の腕はこれまで聞いているほかの歯医者に比べるとましなようなので、これで満足することにします。最初に問診表の記入がなかった原因は、わたしが初診時にすでに個人情報が分かっている夫と共に行ったからのようで、普通はこの歯科医でも問診表は記入するようです。
ただし保険が利いても、トスカーナほど安くないかもしれません。ウンブリア州で保険を利用した一層利用しやすい料金体系を定めたのに、歯科医師会および歯科技工士会の反対に遭い、結局まだ実施に至っていないという記事がありました。やはりトスカーナは海あり芸術ありの有名な観光地で観光収入が多く、市民へのサービスも充実しているようです。

良心的なのではなく、領収書さえ出さなければ
逆に税込の料金を全てポケットに入れている訳なので
領収書無しならその分、割引するという方が
脱税とはいえ、お金を払う側からすれば
良心的だと言えますね。領収書を請求されたので
後から仕方なくカルテを作ったって事です。
G.Finanzaの検査が入った時、患者のカルテがないと
やばいですからね。