2010年 10月 11日
ミケランジェロの生家を訪ねて
場所は、トスカーナ州アレッツォ県のカプレーセ・ミケランジェロ(Caprese Michelangelo)という村です。カプレーセ村は、今は故郷が誇る偉大な芸術家の名と共に、このように呼ばれています。
警察署前の駐車場に車を置き、写真の右手に見える階段を登って、ミケランジェロの生家を訪れました。
夫が見ているこちらの看板には、ミケランジェロが生まれたこのカプレーセ村およびすぐ近くにあるキウーシ・デッラヴェルナ(Chiusi della Verna)村が、芸術家とその家族にとってどれだけ縁の深いものであったか、そして、ミケランジェロの作品のいくつかには、その背景としてキウーシから見たペンナ山およびラヴェルナ(La Verna)が描かれていることが、最近の研究で明らかにされた旨が説明されています。
階段、そして舗装された長い坂道を登って、ようやくミケランジェロの生家に近づきました。
風情ある鐘楼の下の扉をくぐって、中に入ります。
これが、現在はミケランジェロ博物館となっている巨匠の生家です。
最初の写真で左手に見える建物で、入場料の4ユーロを払います。屋内では、ミケランジェロや他のイタリアの芸術家に関連する本や絵はがき、周辺地域の景色の版画や絵はがきも展示・販売されています。
生家の1階には、ミケランジェロの彫刻作品の複製が並んでいます。
2階の奥には、ミケランジェロが生まれた部屋があります。生家の家具は、当時室内にあったものを詳細に記述した1507年の資料に基づいて、当時の様子を忠実に再現したものです。ミケランジェロが生きた時代の家具もいくつかありますが、本来この家にあったものではありません。また、上の写真に見えるベッドのように、20世紀初頭にルネサンス様式の家具を模倣して作られた家具もあります。
興味深いのはまた、2階の入り口にある部屋です。壁一面に、ミケランジェロの人生を描いた絵画、23枚の複製写真が飾られています。原画は、ミケランジェロのひ孫の依頼によって、1613年から1620年にかけて、フィレンツェの画家によって描かれたものだということです。
これらの絵画は、ミケランジェロの生涯で主要な出来事を表したものであり、たとえば、上の写真では、ミケランジェロが教皇に、サン・ピエトロの模型を見せている場面が描かれています。
生家のすぐそばに別棟の美術館があって、同じ入場券で訪れることができます。写真の右手はミケランジェロの生家正面の壁で、左手に見えるのが美術館です。
これは美術館へと坂を登る途中に、撮影した写真です。
美術館の一部屋には、ミケランジェロの彫刻の複製作品が並び、巨匠の作品史を振り返ることができます。
他の広間には、様々な現代彫刻家たちの作品が並んでいます。
ミケランジェロの生家は、高い峰の上にあるため、四方の山々を見晴らすことができます。現代彫刻家の作品は、野外にもあちこちに設置されています。
わたしたちがここを訪れたのは、10月9日土曜日。秋の空と変わりゆく木の葉の色が美しい今日この頃です。
生家を訪れた後、その前にはだかる高い石壁の前にあるベンチに腰を下ろして、この美しい風景を楽しみながら、昼食のパニーノをほおばりました。
置かれているミケランジェロゆかりの芸術作品はすべて複製なので、日本からはるばる来られる方が、そのためにだけ足を運ぶほどの場所ではないかと思います。ただ、聖フランチェスコにゆかりの深い聖地、ラヴェルナ(La Verna)(下の写真)のすぐ近くですから、もし旅行でラヴェルナを訪れる機会があって、日程に余裕があるようであれば、カプレーセ・ミケランジェロにも、足を伸ばしてみてください。
わたしたちも、この日はラヴェルナに向かう途中で、カプレーセに寄り道をしました。生家から駐車場へと下っていく途中にも、美しい山並みと変わりゆく木の葉の色を楽しむことができました。
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- ミケランジェロとラヴェルナ / Michelangelo e la Verna (27/10/2012)
素敵な写真たちに釘づけになってしまいました!
私の彼の親戚はイタリアに住んでいて、よく「イタリア本当に好き」と言っているのですが、納得です。
来年あたり行けたらよいなあ。
ミケランジェロの生まれた村!
美しいところなんですねぇ。。。
このようにルネサンス期の人の生家が今もなおきちんと残っている、ということに、深い感慨を覚えます。
私はツーリストとしてしかイタリアを知りませんが、それでもこういう風景に出会うと、やはりイタリア、大好きよ!と声に出して叫びたくなるのですよね。
昔の芸術家の史跡が大切にされるのは、すばらしいことだと思います。わたしも京都で、紫式部や与謝蕪村がしげく足を運んだ寺を訪れたときには、感慨深いものがありました。
木造建築の日本には、お城もお寺も本当の意味で昔のまま残る建物なんてありませんもの。。。
家具にしても、状態さえよければ現在でも使用可能ですよね。
当時の日本の家具・・・思い出せません(笑)
そうして考えると、近代の日本の発展は驚異的であるとも言えますね^^
ミケランジェロというと、ベタな観光客の私が真っ先に思い出すのはダビデ像とシスティナ礼拝堂で、彫刻を最も愛したミケランジェロが、ずっと上向きの辛い状態でしたたる絵具にまみれながら、あの天井画を描いたという逸話です。
こんな話を遠い日本人も見聞きしていることも、ミケランジェロたる所以でしょうか。
ミケランジェロの生家については、実は、右手にもう一棟、家屋がつながっていたものが、現在は失われているとのことです。わたしもやはり真っ先に頭に浮かぶのはシスティーナ礼拝堂です。
美術の好きな方には興味深いところだと思います。訪れるのが不便なところではありますが、ミケランジェロが絵画の背景として使ったであろう場所も、この近くに二つあります。
こちらこそ、訪問とコメントをありがとうございました。