イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

出会いのきっかけ

 いつかきっと自分の手で、運命の相手を見つけられるはずだ。

 幼い頃から本が好きで、読んできた本の数々。そして、小学校高学年の頃から手に取り始めた少女漫画たち。『赤毛のアン』、『キャンディキャンディ』、『はいからさんが通る』(世代が分かりますね)-こういう本の影響か、ずっと長い間、そう信じて生きてきました。

 社会人になった頃から、友人や職場の先輩の結婚式に、次々に招かれるようになりました。学生時代に知り合ってつきあい始めたという人もいれば、お見合いや紹介を通じて出会ったという人もかなりいました。転勤のために下宿を探していた先輩が訪れた大家さんが、「この女性なら、あの心優しい若者にお似合いだ。」と縁結びをして、結婚したという例もあります。当時わたしが参加した結婚式では、お見合いから3か月、半年後の結婚というのが多かったように覚えているのですが、中には、急に海外の長期勤務が決まった男性との結婚を、見合い後1週間で決め、さらに1週間後には式を挙げた友人もいました。皆でかなり心配したのですが、一般の新婚夫婦よりもむしろずっとうまくやっているようで、安心しました。

 通勤中に歩いてすれ違う女性に魅かれながら、ずっと直接声をかけることができずに、機会をとらえて、上司を通じて、交際を申し込み、結婚したという男性もいます。わたしの先輩であったこの女性の上司が、たまたまその後異動で、男性の上司になり、「君、いい人を見つけて、結婚しなければ」と声をかけたときに、男性側が、「実は意中の人がいて、先生もご存じの人なんです。」と、上司に告白したことから、取りもたれた縁でした。

 わたしは童顔で、幼い頃から年齢よりも若く見えたせいか、おっちょこちょいで頼りなく見えたからか、どうも若い頃から、お相手となりそうな男性自身よりも、親御さんたちの世代にもてる傾向がありました。

 初めて教員として勤めた学校で、大先輩の先生の退職記念会に参加したあとで、職場のわたしよりずっと年配の先生から、「○○高校の○○先生が、石井さんのことをとても気に入って、ぜひ息子の嫁にって言うんだけど、会ってみるかい」と言われたことがあります。二次会のスナックのママさんから、「うちの息子、つきあってるんだけど、どうも相手が気に入らなくてねえ、あんたの方がずっといいんだけど」と言われたり。

 若い盛りから、いわゆる適齢期を過ぎてしまうまで日本で過ごしている間には、こうして打診してくる年配の方が時々いらっしゃいました。そのたびに、「花嫁探しを親に任せるような人、親に勧められて結婚する人はどうかな」と、丁重にお断りしていました。

 ただ、「いつか訪れる運命の出会い」を夢に見すぎて、今はそれでよかったと思うのですが、逃した出会いの機会というのもあるかと思います。昼食のサンドイッチを買いに行ったパン屋のおばさんが、「今家を建てたばかりのいい息子さんがいてね。」とか、上司が「40歳の警察官で、とてもまじめないい男性がいるんだけれど。」とか、そういう月下氷人の役割を申し出てくれたときには、少女漫画的憧れにとらわれずに、会っておいてもよかった気がします。

 こんなことを書く理由の一つは、わたしと同じ理由で、出会いのきっかけを逃している女性がいるのではないかと思うからです。自分で偶然に出会っても、だれかに仲介してもらって出会っても、縁は縁であって、それで、生涯を共に歩める人が見つかれば、それでいいのではないか、と今は考えを改めました。

 それは、わたしも夫も互いに自分たちで巡り会って、恋に落ちたように思っていたのに、後から、実は裏で糸を引いていた人がいたということを知ったからです。

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 2003年12月に、わたしが夫に出会ったのは、ウンブリア州庁に勤めていた女性の友人から、「友人に外国旅行のスライドを見に来るように誘われているけれど、わたしは行けないから、代わりに。」と頼まれて、この友人の家を訪ねたからです。実はその頃、大学の応用言語学の授業で、会話の慣習やメカニズムを学んでいるところであり、イタリア人同士の自由な会話を録音し、それを言葉の抑揚も含めて正確に記録して、会話のメカニズムや話者の心理を分析し、レポートを書くという課題が出ていました。わたしがこのとき友人の代わりにスライドの上映会に行くことにした理由の第一は、この自由会話の録音ができることでした。そして、スライドを上映した友人が、夫の旧友であったために、ここで夫と知り合うことになったわけです。

 中国の老荘思想を語った古典、『荘子』。出会ったその日に、何となくおしゃべりをしていて、後に夫となるそのイタリア人男性が、『荘子』をすべて読んで、内容も記憶していることを聞いて、驚きました。わたしも、高校で漢文を教える際に教材としてよく登場したので、文庫本や解釈本、漫画版など何冊も持ってはいたのですが、「最初から最後まで通して読むもの」という意識を持ったことがなかったので、感心しました。もちろん、それだけではなくて、穏やかで瞳が美しい人だと思いました。

 数日後に、夫がこの『荘子』のイタリア語版を持って、アパートのベルを鳴らし、それから、共通の友人たちと共に出かける機会が増え、そうやって出会う回数が増えて、互いにだんだん魅かれていきました。

 この縁結びをした友人のすごいと思うところは、本人たちにはそういう意図はまったく告げずに、いろいろと事の進行を促していたところです。二人が正式につき合い出したことが分かってから、こう言いました。

「ルイージには、なおこは料理がうまいから、と言い、なおこの前では、ルイージはいい人だ、自然を心から愛する男性だ、とルイージをほめるようにしていたのよ。」と。

 なるほど。わたしたち二人が長いこと独身でいたのは、やはり最初から恋人や結婚相手の候補として勧められると尻込みしていたせいもある、ということをきちんと見抜いていたのかもしれません。

 というわけで、恋人や結婚相手に出会うのに、運命の出会いを夢見るのもいいのですが、人の誘いに乗って、とりあえず会ってみるというのも大切なことだ、と今は思うのでありました。

 今はとにかく、夫とめぐり会え、一緒に毎日を過ごせることに感謝しています。

 写真は、昨年に義父母の金婚式の会場で撮影したものです。義父母にあやかって、いつまでも仲良く、お互いを大切に思い合って暮らしていけたらと祈っています。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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by milletti_naoko | 2010-10-13 16:54 | Altro