イタリア写真草子 ペルージャ在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

夏のラヴェルナ、ラベッチャから石畳の参詣路を通って修道院へ

 今回は、ラベッチャからラヴェルナまでの参詣路を行くと、どういう道を歩くことになるかをご紹介します。

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 ラベッチャ・ラヴェルナ間を歩いて、上の写真を撮影したのは、昨年の7月20日の午後6時です。7月には、6時でも、冬と違って、かなり日が高く、また、ペンナ山(Monte Penna)も手前の木々や草原も、緑にあふれていました。

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 ラベッチャ(La Beccia)からラヴェルナ(La Verna)への参詣路は、こちらのレストランの前です。店の周囲も、夏は、たくさんの花と緑に覆われています。写真の撮影時刻は、午後4時44分。

 写真で、BECCIAと地名を書いた標示の左横にある、CAIの案内板を拡大してみます。

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 行き先は、「Santuario della Verna」(聖地ラヴェルナ)で、「ore」(所要時間)は25分、そして、CAIの43番トレッキング・コースだと、書かれています。CAI(Club Alpino Italiano、イタリア山岳クラブ)のコースであることは、右下の赤・白の線で示されています。一方、案内板の右上に描かれているのは、国立カセンティーノ森林自然公園のシンボルです。

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 しばらく歩いて、ベッチャの家々を後にする頃、こちらの聖フランチェスコの壁画が、左手に現れます。

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 集落を通り過ぎると、まっすぐな上り坂を、ずっと歩いていくことになります。大部分が、石畳に覆われた坂道で、ちょうど、日本で寺社の長い階段を上るように、石畳の道を登って行きます。

 先週金曜日には、このお決まりの参詣路を行く代わりに、左手に見える屋根つきの門の手前にあるすき間から、壁を通り抜けて、岩山のすぐふもとを散歩しました。

 上の写真で、夫が立ち止まって、左を眺めているのが、ペンナ山の岩壁の上にそびえる修道院が、最もよく見える場所です。

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 これが、このとき夫の目に映っていた風景です。最初の写真は、帰り道に同じ場所から撮影したものです。行きがけには、ラヴェルナは雲に覆われていたのですが、すき間からさす日の光が、ちょうど野原を彩る黄色い花を照らし出しています。

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 さらに坂道を登ってゆきます。奥の赤丸で囲んだところに、CAIの案内板が立っていて、ここで、ベッチャからの参詣路が、キウーシからのトレッキング・コースと、合流しています。

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 緑の葉の生い茂る上り坂を、歩き続けてゆきます。奥の左手に門が見えるところで、道が二手に分かれます。ラヴェルナへは、道を右に曲がって、さらに坂を登ります。

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 坂道を突き当りまで歩くと、この礼拝堂、Cappella degli Uccelliがあります。聖フランチェスコが、初めてラヴェルナ訪問の際、大きな楢(なら)の木の下で一休みしていると、たくさんの鳥たち(uccelli)が聖人を歓迎しに訪れたという伝説があります。この礼拝堂は、1602年に、その楢の木があった場所に、建てられたということです。

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 坂道は、礼拝堂、Cappella degli Uccelliの前の急カーブを曲がり、さらに上へと続いています。この日は、坂道を上っているとき、ラヴェルナから下りてくる巡礼者の一行とすれ違いました。

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 礼拝堂の前にも、長い上り坂が続いていますが、ここまで来れば、修道院はすぐ近くです。

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 一直線に伸びる坂道を登り、曲がり角まで来ると、もう境内の建物が、視界に入ります。

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 そして、この角を曲がると、ラヴェルナ境内の入り口となるアーチが、左手に見えます。

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 アーチの向こうには、もう教会とその柱廊が見えています。この写真を撮影したのが、午後5時5分ですから、写真をたくさん撮りながら、ゆっくり歩いて、ベッチャからラヴェルナまで、30分ほどかけて、登った勘定になります。

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 アーチをくぐると、まず目に入るのは、広場に立つ大きな十字架。夏の強い日ざしを浴びて、すっくりと青空の下に立っています。

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 十字架から、入り口の方を振り返って、撮影した写真です。写真中央で、リュックを背負った若者たちが向かっている建物内に、興味深い博物館と小さな教会、そして、トイレがあります。トイレは無料で清潔です。水洗は自動で、トイレを出るために、ドアを開けないと、水が流れません。

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 こちらはラベッチャに立つ、Parco Nazionale delle Foreste Casentinesi、国立カセンティーノ森林自然公園の案内看板です。Casentinoは、アレッツォ北部とアルノ川上流域を含む、トスカーナ州の地域で、公園名にあるcasentinesiは、このCasentinoの形容詞、casentineseの複数形です。聖地ラヴェルナ(La Verna)に行く主な散歩コースは、二つあります。

 一つは、今回ご紹介したラベッチャ(La Beccia)からラヴェルナ(La Verna)へと歩く道のりで、地図には赤い線で記してあります。この道は参詣路で、聖人にちなんだ壁画や彫刻が路傍にあります。

 もう一つは、青で記された、Chuisi della Vernaからラヴェルナへと向かう道のりです。

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 青で囲まれた、自然公園の観光案内所(Centro Visita)(上の写真)から、美しい森林の中を、自然を楽しみながら、ラヴェルナを訪れる道で、Sentiero Natura(自然を楽しむトレッキング・コース)と名づけられています。

 この日、7月20日には、観光案内所は、美しい花に覆われていました。夏は午後6時まで開いていて、興味深い展示物を見たり、役に立つ旅行情報がいっぱいのパンフレットを手に入れたりすることができました。自然公園の公式サイトを見ると、残念ながら、毎日開いているのは夏だけで、昨年の場合は、9・10月は開館が1日のみ、11月から6月にかけては閉館です。今年については書かれていませんが、予算が大幅に削減されたこともあり、開館日時は、昨年と同じか、さらに少なく、短くなるものと予想されます。

 キウーシからラヴェルナへの散歩コースに興味のある方は、記事、「ラヴェルナの秋1」(リンクはこちら)、「ラヴェルナの秋2」(リンクはこちら)をどうぞ。ベッチャからラヴェルナへの参詣路と共通の道が、秋には美しい紅葉で飾られている様子も、ご覧になれます。

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 7月20日は、ラベッチャのレストランで夕食中、午後8時45分に日が沈みました。7月は、夏時間のためもありますが、1月に比べて、約4時間も日照時間が長いのです。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by Acui at 2011-01-17 10:20
なんだか天空のラピュタを思いだしました。
石造りの建物に自然の緑がマッチして、本当にあたたかい雰囲気ですね。
日本ではあまり石造りの建物に遭遇することがないので、羨ましいです。
Commented by ゆん at 2011-01-17 12:35
前記事の夕焼けに見とれていましたが、昼間の緑も深く濃く、私も森林浴をしたくなりました。

ドアを開かないとトイレの水を流せないというのは初めて聞きました。面白いですね。

それにしてもヨーロッパの夏時間は本当に長いですね。
日本は四季がはっきりしているとよく言われますが、欧州の夏と冬の違いの方がもっと明確な気がします。

うちはどうしても長旅は冬になってしまうので、日が早く落ちてしまい残念ですが、夏ならもっと行動時間が増えるのにと思っています。冬の旅も、良さは沢山ありますけどね^^

Commented by ムームー at 2011-01-17 17:44
なおこさん
参詣路ってお国が違っても敬虔な道ですねぇ、坂道も楽しみながら歩けそうに思いました。

建物も趣があり、歴史が感じられて素敵~
十字架は夕陽でシルエットになっていた所ですかぁ~
夏には陽が沈むのがそんなに遅いのですね。
最後の写真も素晴らしいですねぇ~
Commented by milletti_naoko at 2011-01-17 18:20
Acuiさんへ

確かに緑と石造りの建物の取り合わせは、天空のラピュタを思わせるものがありますね。久しぶりに映画を見たくなりました。うちの夫は、日本庭園の美しい石の群れを見て、触発され、イタリアの山を歩いて、趣のある石や岩を見つけると、名残惜しそうに見ています。日本の建物で石造りというと、わたしの頭には姫路城などのお城が思い浮かびます。スウェーデンにも、石造りの建物が多いのでしょうか?
Commented by milletti_naoko at 2011-01-17 18:35
ゆんさんへ

ベッチャからラヴェルナへの参詣路をご紹介しようと思って、7月の写真をひっぱり出したのですが、同じ場所が夏は緑と花、そして、太陽の光にあふれているので、わたし自身も、季節による違いに驚きました。夏は緑いっぱいで生命力にあふれていますね。

ラヴェルナのトイレは、行くたびに他に流し方があるのかと思って観察するのですが、どうも他に方法がないようです。どなたか他に水を流す方法をご存じの方がいたら、ぜひ教えてください。

夏は午後9時頃まで、日が暮れないので、散歩も長い間楽しむことができます。イタリアでは、晴れた日が多く日の長い夏に対し、秋や冬は日照時間がひどく短い上に、天気もぐずついて、雨の日が多くなります。イタリアの人が夏をことさらに愛するのは、そのためかもしれませんね。

旅行は、お仕事の都合もあって、なかなかこれと思うときに行くのは難しいと思います。逆に、今回のエジプト行きはちょうどよい気候だったのではないでしょうか? 一度エジプト人学生を教えたことがあり、夏はいつも45度以上あるので、暑くて食欲もなく、じっとしていると言っていました。
Commented by milletti_naoko at 2011-01-17 18:56
ムームーさんへ

日本の参詣路も高い杉の木などに囲まれた緑の道が続いていて、美しいですよね。日本の寺社もイタリアの教会も、高い場所に建てられたものが多く、坂を登りながら、精進をし、心が清まるような印象を受けます。

自然に囲まれた切り立った岩山が瞑想にふさわしいと、聖フランチェスコに贈られ、聖人に愛されたこの場所には、最初は、粗末な庵だけが建てられ、聖人たちが厳しい岩山で祈りを捧げたのですが、やがて聖人を慕って、みごとな教会が建てられました。

いろんな場所で、美しい風景を楽しませてくれる夕陽が、わたしも大好きです。
Commented by bianchi_saitoh at 2011-01-17 23:43
なおこさん
写真と文字まで色分けしてわかり易い説明、ありがたいです。

みなさんのコメントにもありましたが、季節の違いや時間によってみせる“顔”が面白いですね。
一度写真に撮ると、2度目は避けてしまいがちですが、自然は二度同じ景色は無いことを教えてくれますね。

ちなみにチップを渡さなくてもトイレ使えるところあるんですねェ~。変なトコばかり気になっちゃいます(笑)。
Commented by milletti_naoko at 2011-01-18 00:25
bianchi_saitohさんへ

色分けの技術(?)は、たぶん高校の初任者研修で、チョークの効果的な使い方を学び、授業を教えながら、改善しつつ、身につけたのだと思います。自分が日本で高校生・大学生だった頃のノートに比べると、学校で教え始めてからの教材研究のノートやイタリアの大学でのノートや教科書が、いろんな色に満ちていて、自分で言うのもなんですが、内容を分かりやすく上手にまとめてあるからです。これはイタリア人の先生や同級生にも、感心されました。こちらの人は、大学の授業でも、要旨を箇条書きで矢印などを使ってまとめるのではなく、言われたことすべてを書き写そうとする傾向があるからでもあるのですが。

人と同じで、自然や場所もやはり「一期一会」で、会うたびに異なる顔を見せ、違った感動を与えてくれるのだなと、わたしも感じました。

トイレにはイタリアでは苦労しますよね。いずれその件についても、記事を書いてみたいと思います。
Commented by haru at 2011-01-18 22:00
濃い緑の中をずっと歩いていくのは爽快な気分ですね。まさに森林浴です。心が洗われるようですね。きれいな写真を見る度に、行ってみたい気持ちが、どんどん強くなってきます。どうしましょう。♪
Commented by milletti_naoko at 2011-01-18 22:17
haruさんへ

夏には緑、秋には紅葉、冬にはプレセーぺとそれぞれの時期の楽しみがあります。やっぱりこれは夢の実現に向かって、動き出すのがいいのでは?
by milletti_naoko | 2011-01-16 23:45 | Toscana | Comments(10)