2011年 01月 19日
桜の花咲く部屋
木全体が一斉に花を咲かせようとする桜の精気と、その美しく優しい色合いに、心が落ち着き、励まされます。
懐かしい日本の春と花盛りの桜が心に浮かび、満開の桜の下に立って、降りかかる花びらを浴びているような、そんな気持ちになれます。
この部屋を、イタリア語ではstudioと呼んでいます。小学館の『伊和中辞典』には、語義として、「書斎、勉強部屋、仕事場」といった言葉が並んでいます。わたしが授業の準備をしたり、翻訳をしたりする仕事場でもあれば、そのために必要な本や資料が並ぶ書斎でもあり、夫とわたしがなにかと学習する勉強部屋でもあります。部屋には、夫とわたしの机が、向かい合わせに並べてあります。机上にはそれぞれのパソコンが並び、インターネットにも接続されています。
このstudioの天井に、防寒・防音用の(antifreddo, antirumore)コルク板(pannelli di sughero)を取りつけようという計画は、かなり以前からあり、秋には夫と共に、部屋を採寸し、コルク板の販売店に、説明を聞きに行ったりもしていました。
それが、11月にはオリーブの収穫に追われたため、実際に材料を購入し、夫が本格的に作業に取りかかれたのは、11月末のことでした。
細長い板を、均等にかつ平行に天井に設置していき、そのつど、コルク板を、土台となる木の板の上に置いていく、という非常に根気のいる作業が、続けられました。
夫の勤めるウンブリア州庁では、土日が休みである上、週に何日かは、午後2時に役場を出て帰宅することができます。とは言っても、やはり日曜大工。作業には日数がかかります。
まずは、ようやくコルク板すべてを、天井に取りつけることができました。ところが、コルク板の中央が、重みのために下がってしまっています。
そこで今度は、長方形のコルク板の中央部分にも、支えの板を、取りつけていくことになりました。上の写真は、まだ作業の途中ですが、ようやくこの支えの板をすべて取りつけたあと、さて、どうしようかという話になりました。
なんだか頭の上にチョコレートの屋根がある、お菓子の家のようだし、木やコルクの色にも味があるから、このままでもいいのではないかと、わたしは、たまった疲れがよく見える夫に提案しました。ただ、コルク板の表面が、予想していたよりも、かなり粗い上に、表面の小片が、天井から床に落ち続けているため、やはり、何かで覆う必要があるということになりました。
そこで、木の板もコルク版も共に、ペンキで塗装しようということになりました。色は、わたしが提案した薄緑色です。ところが、ここで、コルク板の無数の細かい穴が、茶色い点として残る上に、パステルカラーのペンキでは、コルク版のこげ茶色が、透けて見えるという問題が、発生しました。
夫が、コルク板をすべてもう一度引き下ろして、壁紙で覆おうと提案したとき、わたしは、それでは作業があまりにも大変ではないかと心配だったのですが、一緒に壁紙を選びに行ったとき、まるで桜の花びらで覆われたようなこの壁紙に、一目惚れしてしまいました。
色合いが微妙に異なる淡いピンクの小片の集まる様子が、満開に咲く桜の花を思わせて、こんなにすてきな天井の下で、仕事や勉強ができるのかという思いにわくわくしました。ピンクの中に時々淡い緑色も入っているので、天井にさしわたされた板の薄緑色にも、よく合うはずです。幸い、夫もすぐに賛成してくれました。
長く根気のいる作業を、挫折にもめげずに、黙々と続けていき、ようやく桜色の天井が完成したのは、今週の月曜日、1月17日の日暮れときでした。
何とも美しいできに感嘆し、夫をほめてねぎらった、その部屋の窓からは、やはり桜色に染まった美しい空が見えました。
紅色に深まりつつある夕焼けの空に、時々目をやりながら、二人で作業の後片づけをしました。
というわけで、今このブログの記事を書いている間も、時々目を上げると、そこには、繊細な桜色が広がり、満開の桜の下にいるような、すてきな気分にさせてくれます。
ルイージ、本当にお疲れさま。そして、どうもありがとう。
夫も、苦労は多かったものの、美しく仕上げることのできた天井に、とても満足しているようです。
昨日の記事(リンクはこちら)で、京都の桜を取り上げたのは、イタリアの友人に日本の桜の美しさ、そして日本の方に京都の桜のみごとさを、花見旅行をゆっくりと準備できる時期に、お伝えしたかったからでもありますが、実は、今日の記事を導入するためでもあったのでした。
一枚目の写真、ちょっと日本の格子というか、障子のような感じもしますね!
それでいて天井というのが、私のツボです。
天井画というと、ミケランジェロが頭に浮かぶので
さすがイタリア!(単純ですみません^^;)と思いました。
何でも手作りされてしまうルイージさん♪
凄すぎます!素敵です^^
こんな美しい部屋で毎日を過ごされてるなおこさんが羨ましい~
確かに障子に似ていますね。ただ、当初の予定ではうまく行かなかったため、一度せっかく入れたコルク板をすべて出して、壁紙を貼ってから再度入れることになり、この作業が大変だったようです。
当初の予定では、すべての天井を同じ色で染めて、木の板のところに、わたしが花の絵などを描いていくことになっていたので、わたしもミケランジェロを思い浮かべながら、天井にうまく絵をかく方法を模索していました。でも、壁紙がこれだけ美しければ、これで完成、ということで、和伊折衷のすてきな天井ができあがりました。
ルイージも、思った通りに事が運ばず、やり直しを迫られることが多かったのですが、結果的には、単に、防音・防寒のため、というより、装飾としても美しい部屋ができて、満足しています。
ありがたいな、と感謝しています。天井を見るたび、うれしくなる今日この頃です。
イメージした通りのものが作れるだなんてルイージさん、すごいです。
業者にお願いするとびっくりな額を請求されそうなものですが、DIYできるパートナーがいるといいですね^^
私は組立家具でやっとです。汗
嵐山の写真が素敵過ぎて、今から春の訪れが楽しみでなりません。
わぁ、桜の天井!
天井に、これほどまでに愛情を注ぐということを、そういえば私は、したことがないなぁ...なんて、ぼんやりと自分の部屋の天井を見上げながら思ってしまいました。私の部屋の天井は、柚子肌(柚子の皮のようなボコボコ感のある塗装の仕方のことです)の白で、ごくシンプルなのですが、これが、桜のようであったり、はたまた星空のようであったりしたら、まったく印象が変わりそうです。
それにしても、それが手作りだということが最大の驚きです!
もう、こんなに愛情のこもった天井に見守られていたら...、なんだか毎日のお仕事の時間が幸せでいっぱいですね。
最後の写真も素敵です。桜の時期、満開時だけでなく、さまざまな瞬間に、美しい景色があるものですが、こんな花筏も、私は大好きな桜の風景のひとつです。
やはり素人で、どの材料からどんなものかというのが分からなかったので、当初の予定とはかなり違ったものになったのですが、幸い計算違いがすてきな壁紙の発見につながり、すてきな天井が仕上がりました。業者に頼むと料金が非常に高い、というのが、そもそも、夫が自分でやってみようと考えた動機なのですが、結果的には、業者がしたであろう場合より、ずっと独創的で美しい天井になって、うれしいです。
桜の時期の嵐山、ぜひ訪ねてみてください。水辺に映る桜、水面に散った花びらには、とても風情がありますよね。イタリアの友人にも好評なので、これからも時々、京都周辺の桜の写真を、ご紹介していくつもりです。
ルイージさん、器用にこなしますね。感心しちゃいます。
きっと日頃から何でもヤルんでしょうね?
写真のコルクは柿渋のような色ですがワインのコルク栓のような一般的な色ではないんですね。
木肌をみせるのだと思っていたら、思わぬ展開に・・・。
引き出しをたくさん持ってますね!
前回のいきなりの京都にこんな伏線が待っていたとはやられました!
イタリアの歴史ある建築物には、見上げた天井に美しい絵が描かれたり、教会だと格子や飾りがあったり、青を背景に無数の星が散りばめられていたりするものがあります。木の格子の上の濃淡のある桜色を眺めながら、満開の桜の木と、その枝を支えて張りわたした竹や木を思い浮かべて、想像の世界で楽しんでいます。もともとは、防寒・防音のためで、装飾効果は二人とも頭になく、コルク板を覆い隠す必要に迫られたがゆえに、こういう結果になったのですが、夫も、単にコルク板隠しの日曜大工的仕事に終わらず、わたしも喜び、自分でも満足できる芸術的天井ができあがったことに、うれしそうです。
桜がさまざまな瞬間に美しい景色を見せてくれる、わたしも同感です。そういういろんな桜の表情を楽しめると、花見もより感慨の深いものになりますよね。
実はわたしたちも、コルク板としては、ワインのコルク栓のような色合いで、目がしっかり詰まり、かつ、粉末が落ちてきたりしないものを想像していたのですが、店で4cmの厚みのコルク板を注文したら、届いたのがこういった品で、まずはそこから、計算がはずれてしまいました。
思いがけず、美しい和風の天井ができて、二人とも喜んでいます。うまく行かず、悩んだ挙句に、逆に予想以上にすてきなものができたので、よけいにうれしいのです。ルイージはいろんなものを自分で作り上げるのが好きで、以前から家の中に、何か和風のものを取り入れようと考え、話してはいました。
この天井がどれだけうれしいか、天井を見上げたときに、どんな桜をわたしが思い浮かべるかを、より分かっていただこうと思って、昨日の記事には、桜の写真を載せてみたんです。
職人芸ですね~☆
派手さはなくても綺麗な、本当に桜のようですね。こんな天井の部屋に住みたいです。
僕の部屋の唯一のオシャレは、テディベアのカーテンです。
凸d(^ー^)応援pochi!
天井を見る度に、桜の花に囲まれているような気分になれますね。ルイージさんもなおこさんも、本当にお疲れさまでした。素晴らしい出来映えに、にこにこされているお二人の様子が目に浮かぶようです。:)
なんて美しいさくらの天井!
ご主人様、素晴らしいですね!
日本の桜は本当にきれいですよね・・・
海外に暮らすお友達たちは、みなさん、桜の季節に日本へ帰りたいって言います。
だけど、その時期に合わせてってなかなか難しいようで・・・
我が家に樹齢60年のソメイヨシノがあるんですよ!
次回、桜の季節に帰国されるときは、絶対にいらしてね!
ありがとうございます。実はこの壁紙には似たようなデザインが三つほどあって、ピンクの代わりに色が白いもの、オレンジ色がかったものがあったんです。というわけで、デザインをした人の頭に、桜の花があったかどうかは謎なのですが(イタリアの桜には純白の花が多いですし)、わたしは人目見たとたんに、これは満開の桜の花だと思いました。
テディベアのカーテンですか! かわいいですね。いつも応援をありがとうございます!
すできな天井でしょう! 計画や作業が紆余曲折し、祝祭日も重なって、完成が遅くなりましたが、二人とも本当にうれしくて、にこにこしています。夫もとても誇らしげで、せっかくの苦労のしがいがあってよかったと、わたしもうれしいです。ありがとうございます。
数えると、もう6回も桜の開花を見ない春を過ごしていたのですが、やはり日本人なのでしょうか、桜の花を見ない春、お花見のできない年というのは、そういう年が重なるごとに、何か大切なものが欠けてしまっているような気がしていました。
ありがとうございます! いつかぜひ、お庭の桜の美しい花を観賞させていただきたいと思います。
とっても美しくできましたねぇ~
御室や嵐山、醍醐の桜を思い出させる素晴らしい壁画のようですわぁ。
京都に住いする私にとって京都の桜を愛して下さるなんて嬉しすぎます~
大沢の池に浮かぶ桜、土手の桜、微笑むなおこさん素敵~
そうなんです! 本当に美しく仕上がりました♪ 壁紙をデザインした人の意図は知らないのですが(そのうち探し当てて、できれば連絡を取るつもりです)、ちょうど花いっぱいの桜を織り上げた錦の衣のような襖絵のような、すてきな空間を頭上に持つことができて、とてもうれしいです。
ありがとうございます。京都は「花の都だな」とつくづく思いました。和歌に歌われた桜もやはり、京都のものが多いですよね。いつかきっと京都のみごとな紅葉も、夫と二人で見に行きたいと思っています。