イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

贈り主いまむかし

 年末年始には、日本はお正月でお年玉が贈られ、日本も含めた世界各地で、クリスマス、12月25日に、子供たちが贈り物を受け取ることを楽しみにしています。イタリアでも、近年はすっかりサンタクロース(Babbo Natale)が定着し、幼稚園・学校や各家庭に、サンタクロースがやって来て、直接子供たちに贈り物を手渡すこともあれば、テレビ広告や家々のクリスマス飾りにも、サンタクロースが登場しています。

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スペッロで見かけたサンタクロース  2011/01/09


 歴史的にカトリック教の影響が強く、信者も多いイタリアでは、もちろん古くから、クリスマス(Natale)を祝い、プレゼントを贈る習慣もありました。けれども、イタリアの子供たちが、贈り主がサンタクロースだと信じるようになってきたのは、それほど遠い昔ではありません。

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クリスマスツリーの下には贈り物の山 2010/12/25


 たとえば、ウンブリア州で生まれ育った義父母は、自分たちが幼い頃に両親から教わったように、息子たちに、クリスマスに贈り物を運んでくれるのは、幼子イエス(Gesù bambino)だと、言っていました。今年のクリスマスには、わたしたちがミサから帰ったときに、自宅のクリスマスツリーの下に、義弟たちからのプレゼントが置かれていたのですが、それを目にした夫が、とっさに言った一言は、「幼子イエスが来られたよ。」(E’ arrivato Gesù bambino!)でした。

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アッシジ、 サンタ・マリーア・デッリ・アンジェリ教会のプレゼーペ 2010/12/25


 姪たちが保育園に通い始めるまで、義父母は、「幼子イエスからの贈り物」と姪たちに言っていたのですが、入園してからは、先生からも、そしてテレビでも、「贈り物を運ぶのは、サンタクロース」と教えられ、今では、姪たちはそう信じています。姉娘のアレッシアの方は、どうやら本当は親や親戚が贈ってくれるのだと気づいてきたようだ、と義弟は言います。それはさておき、お義父さんもお義母さんも、クリスマスの本来の主役であり、かつウンブリアでは、伝統的にクリスマスに贈り物を運ぶと言われてきた幼子イエスが、その役割の一部を、サンタクロースに取って代わられたことを、とても残念に思っています。やはりペルージャ出身のルーカにとっても、幼い頃の贈り主は、サンタクロースではなく、幼子イエスだったそうです。

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アッシジ、S.M.A.教会 世界のプレゼーペ展、イタリアのプレゼーペ 2010/12/25


 ところが、数年前、このことをリッチョーネ出身のマヌエーラに話したところ、彼女が幼い頃には、贈り物を運んでくれたのは、クリスマスのときも、やはりベファーナ(Befana)だったというのです。

 そこで、以前から、イタリア各地域で、クリスマスに贈り物をするとされていたのが、だれだったかに、興味があったわたしは、今回、新年の訪れを共に祝った、30歳から50歳の友人たちに、インタビューをしてみました。質問は、「子供の頃、だれがクリスマスにプレゼントを贈ってくれると信じていましたか。」です。

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今年の主顕節に姪が受け取った、ベファーナのお菓子入り靴下を拡大


 すると、リッチョーネとイジェア・マリーナのようなアドリア海岸、リミニ県出身の友人たちだけではなく、マルケ州の山中に生まれ育った友人も、やはり、子供の頃は、「クリスマスにも、主顕節にも、贈り物を運んでくれるのは、ベファーナだ」と信じていたということが、分かりました。

 ただし、当時はまだ貧しかったので、クリスマスの贈り物も、お菓子のような、ささやかなものだったと、スピーディが語ってくれました。

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アドリア海沿岸ミニクルーズ   2010/06/19

 さらに、リミニと同じエミリア・ロマーニャ州でも、フェッラーラ出身の友人は、「主顕節のベファーナとは別に、1月15日に、 ベファノーネ(Befanone)が、贈り物を運んでいた。」と言います。

 そして、北部のブレーシャ出身の友人は、クリスマスの贈り物は、12月13日に、聖ルチーア(Santa Lucia)が運んでくれると信じていたし、ヴェローナを中心に、今でも子供が12月13日に贈り物を受け取る慣習があると言います。そう言えば、わたしもそういうニュースを、昨年テレビで見た記憶があります。

 イタリア各地で料理や慣習、人々の気質、そして方言が異なるのは、476年の西ローマ帝国滅亡から1861年のイタリア統一まで、イタリアが政治的・行政的に分断されていたからなのですが、こうした地域による違いが、クリスマスのプレゼントの贈り主にも見られるということに、驚くと同時に、イタリア国内における文化の多様性を、改めて感じました。

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 それが最近は、アメリカ文化、そして、地球規模化(globalizzazione)の影響を受けて、幼子イエスも聖ルチーアも、サンタクロースに取って代わられつつあります。たとえば、元旦に演じたお芝居(上の写真)では、まだ「贈り物をするのが幼子イエスである」ことを前提として、物語が進行していましたが、たとえば現代の大学生の世代には、「贈り主はサンタクロース」と聞いて育った若者が多いようです。

 聖ルチーアやベファーナの贈り物も、12月13日、1月6日と、それぞれ、クリスマスとは別の日に行われる催しとして、残っていくこととは思いますが、それにしても、クリスマスのように、人々の信じる宗教にとって大切な祝祭日に関わる慣習が、他国の、そして商業主義の影響を受けて、変わりつつあること、そして、変わってしまったことが、義父母同様、わたしにも、残念に思われるのでした。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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by milletti_naoko | 2011-01-20 23:19 | Feste & eventi