2011年 01月 28日
占い修道士のカレンダー Calendario di Frate Indovino
先週は夫が体調を崩したものの、わたしはまだ元気だったとき、お義父さんから、「今日は畑を耕したよ。」と、会うたびに、仕事の進捗状況を聞いていました。この数日は、窓の中から、お義父さんが、オリーブやブドウの木を次々に剪定していく様子が見えます。(ただし、写真は昨年1月22日に撮影したものです。)
1年の間にどう農作業を進めていくといいか、という暦は、夫が購入するいろんな本や雑誌にも書いてあるのですが、お義父さんが、畑仕事をする上で、参考にしているのは、どうも長年の勘とカレンダー、Calendario di Frate Indovinoのようです。
このカレンダー、とても便利にできていて、毎月の要となる日の天気の予想から、今月するべき畑仕事、笑い話、レシピ、おもしろ豆知識などなどが、小さい文字で、ところ狭しと、びっしり書き込まれています。
読み物としてもおもしろいので、わたしも夫も、あと少しでスープが煮えるけれども、まだ少し待たなければというときなどに、カレンダーのその月のページに書いてあることを、一人で黙って読んだり、どちらかが声を出して読んで、内容を二人で共有したりしています。
たとえば、最近読んで、わたしがうなったのが、赤で記したこちらの言葉。2月のページに書かれているのですが、わたしの方で日本語に訳すと、「民主主義をさらに信じ続けましょう。ただ、民は羊の群れと同じで、指導者についていく傾向があります。それも、しばしば間違った方向に向かって。」
最近のイタリア首相のふるまいを思うと、そんなことには、なりませんようにと祈るばかりです。自分の非を指摘されると、相手を暴言でののしる、恐ろしい自己中心主義。テレビ出演者どころか、議員も大臣も、女性をまずは外見で選んでいるのではないかと思われるこういう在り方を、イタリア国民、特に若い人たちが真似ることが、決してありませんように。
こちらは、1月のページから抜粋しました。「ご存じでしたか?」(Lo Sapevate?)という言葉に続いて、暮らしに役立つ豆知識が書かれています。後半の、赤で印した部分に注目。「ガソリンスタンドで給油をするときには、携帯電話を消すのが、賢明です。可能性はごくわずかですが、万一ガソリンが流出した瞬間に、電話が鳴り出すと、ガソリンが炎上するかもしれないからです。」(石井訳) わたしは、これは知りませんでした。皆さんは、ご存じでしたか?
一方、日にちや曜日(頭文字で記載)が書いてあるところを見ると、月の満ち欠けと、その日がどの聖人を記念する日であるかが記され、さらに聖人の名前の下に小さく、ことわざや天気予報などが書かれています。たとえば、今日(イタリア時間)は、1月28日です。28という数字の横には、Vと、Venerdì「金曜日」の頭文字を使って曜日が記され、横にはこの日が記念日となる聖人の名前が並んでいます。
下に書かれたことわざは、”Chi più ne ha… più ne vorrebbe”。訳すと、「人は持てば持つほど、よりほしくなるものである。」要するに、人間の欲望には際限がない、ということです。お互い、「足ることを知る」ように努めたいものです。
一方、こちらが各月に、必要な農作業などを説明してある部分です。お義父さんが、畑仕事や木々の剪定の参考にしているのは、こちらの「耕作者」(Coltivatori)と題された部分、そして、天気予報です。天気予報と言っても、1年が始まる前に出されるカレンダーに、天気予報が載せられるはずがない……と思われる方がおいでかもしれません。
もちろん、毎日に詳しい天気が書かれているわけではないのですが、毎月、数日を選んで、天気予報が記されています。たとえば、2月11日の項には、「一時的に、気温が上がり、晴天が続く」と書かれています。農作業を準備し、進めなければいけない農民のために、17世紀の研究に倣って、気象観測を行い、目安となる年間天気予報を提供しているのです。このカレンダーを発案したFrate Indovinoに先見の明があったのは、気象衛星など存在しなかった1945年に、この年間の天気予報を提供することを思いついたことです。Frate Indovinoは日本語に訳しにくいので、それぞれの言葉を説明すると、Frateは「修道士、そして、修道士への呼びかけの言葉」。indovinoは「占い師、予言者」、何らかの方法で、将来を予測することができる人のことです。ペルージャ近郊の小さな村に生まれた修道士、Padre Mariangeloが、このニックネームを持つようになったのは、そのカレンダーの中で、みごとに年間の天気を言い当てていたからだということです。
最初は定期刊行物の付録として発行されたこのカレンダーは、大成功を収め、以来毎年発行され、内容は年々充実し、今では、ペルージャだけではなく、イタリア全国、そして、海外にも、毎年のカレンダーの発行を楽しみに待つ人々がいるそうです。カレンダーを考案したFrate Indovinoは、すでに亡き人となっています。神父であった夫の亡き伯父と親交があったそうで、義父母は、故人と何度か出会ったことがあるそうです。けれども、Calendario di Frate Indovinoは、今も志を継ぐ人々が、毎年、カレンダーを発行し続けている上に、暮らしに役立つ情報をいろいろまとめた書籍も販売しています。
上の写真にある本は、題を訳すと、「もし~したら、どうすればいいか。うらない修道士の秘訣、忠告、解決法」となります。去年、本屋で見つけて、化学薬品を使わない、伝統的な染み抜きの仕方や掃除の秘訣などが書かれているのを見て、購入しました。外にもいろんな毎日役立つ実用的な知恵が書かれているのですが、こういうことは、実はカレンダーにも、毎月少しずつ説明があります。
イタリア語を学習中の皆さんは、ぜひ、一度機会があれば、このカレンダーを購入してみてください。毎月時々、興味を引く言葉や文章を、辞書を調べながら、勉強するだけでも、力がつくこと間違いなしです。さらに、昔からの生活の知恵や人生の知恵を学び、笑って楽しむこともできますよ。
参考にした資料・リンク
- Calendario, ” 2011 - Nostra Signora della Fortuna di Frate Indovino”
- Frate Indovino – La nostra storia
- amazon.it - "Come fare se… Segreti, consigli, rimedi di Frate Indovino"
お風邪も良くなられたようで安心しました。
カレンダーも色々なのがあるのですね、役に立ちますね。
農作業のことも書かれてるなんて素晴らしいですわぁ。
>実用的な知恵
こんなのが欲しいです~
カレンダーをメモ代わりにしていますが、書き込む欄が少なくて自分のカレンダーを作りたいですわ。
ありがとうございます。ようやく熱が下がってきて、のどの痛みも楽になってきました。1年前に作ったのに、何でこんなに政治的状況をうまく言い当てられるんだろう、と思うような叙述も多いのですが、逆に言うと、イタリアの政治がこの数十年足踏みしていて、進歩がないのかもしれません。
ムームーさん、ふだん撮られている美しい写真を使って、ご自分が好きなだけ、書き込める欄のあるカレンダーをぜひ作ってみてください。楽しいと思いますよ。わたしは授業の計画を書き込んだりするメモ用には、いつも自分で、たくさん書き込めるカレンダーを作っています。書き込みたいことが多いので、写真は入れるスペースがないのですが……
私はどういうわけか、カレンダーに書き込むのが好きでなくて、一年が終わっても家中のカレンダーは全てまっさらな状態です。(いずれにしても、今は大した予定はありませんが、働いていた頃も全く書き込むことはありませんでした)
なので、こんなカレンダーがあったら読み物として是非キッチンの脇にでも掛けておきたいです。
今年のインフルエンザは高熱が出るそうですが、良くなってきたようで本当に良かったです。普段元気ななおこさんがダウンされたら、ルイージさんもさぞご心配でしたでしょう。
まだまだ寒さも厳しい季節が続きます。どうぞお大事になさって下さいね。
そう言えば、わたしも、壁にかけるカレンダーには、まず書き込みをしません。イタリアでは、ガスや電気料金などを、利用者が毎月利用した量を、指定期日までに報告しないと、業者の方から、前年度までの使用量を目安にしたかなりおおざっぱな料金を請求されるため、夫がこの「報告締切日」をカレンダーに記しているくらいです。(↑)書き込みをするカレンダーはむしろ、手帳代わりと言った方がいいかもしれません。イタリアの手帳だと書き込めるスペースが小さいので、自分で欄の大きいものを作ってしまうわけです。
ありがとうございます。日本でもインフルエンザが流行っているようですので、ゆんさんもインフルエンザにはご注意くださいね。
このカレンダー、おもしろいですね。
そういえば昔、留学時代、ホームステイ先にこんなカレンダーがあったような気がします。なんだかいろんなことがたくさん書かれていて、意味があまりわからないながらも、たまに読んでいました。
今家にはカレンダーといえるものは、年末会社でもらった卓上のものだけです。カレンダーはないと不便だなと思うときがあるので、買おうとおもうんですが、なかなかこれというのがないんで、そのまま買わずじまいになっています。
私もイタリア語の勉強も兼ねて、こんなカレンダーを探してみようと思います。
初めて見たときは、「こんなに小さい字でいっぱいに埋め尽くされていても、一体だれが全部読むのだろう」と思ったのですが、書いていること一つが、おもしろかったり役に立ったり、それに、1か月も壁にかかっていると、目に入って読むことも多くて、楽しみながら活用しています。義父母宅には、夫が幼い頃から、そして今でも、毎年このカレンダーが掛かっていて、お義父さんは、テレビの天気予報よりも、Frate Indovinoの予報の方を信頼しているようです。というわけで、二人で暮らし始めてからは、夫も毎年、このカレンダーを購入しています。
まだ1月ですし、アレッツォはペルージャから近いので、ひょっとしたら、edicolaで置いてあるところがあるかもしれませんね。