イタリア写真草子 ペルージャ在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

ヴィテルボ町歩き

 温泉、Terme dei Papiに近いという理由で、訪れることになったヴィテルボ(Viterbo)の町は、とても美しい町で、街角に、さまざまな時代の面影が残っていました。 

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 駐車場を探して、城壁の周囲を車で回りながら、まずは、高く張り巡らされた、中世のみごとな城壁に驚きました。わたしたちは、こちらのPorta Fiorentina(フィオレンティーナ門)近くの駐車場に車を置き、この門から、町の中に入りました。

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 中に入ると、大きな広場があり、中世の城塞、Rocca Albornozが門の近くに建っています。長い歴史の間に何度も取り壊され、再建されたこの城塞は、教皇パウルス3世(1468-1549)の住居にもなりました。この教皇は、ペルージャとの政争に打ち勝ち、当時ペルージャで権勢を誇ったバッリョーニ家のものであった町の一角を破壊して、パオリーナ城塞(Rocca Paolina)を建築するように命じた人物であり、また、ミケランジェロに、ローマのサン・ピエートロ大聖堂の建築を依頼した教皇でもあります。

 現在、この城塞は、国立エトルリア博物館(Museo nazionale etrusco)となっています。

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 幸い、この広場、Piazza della Rocca(訳すと、「城塞の広場」)には、観光案内看板がありました。主な観光地をくまなく回れるように、おすすめの散歩コースが、黄色い線で記されています。観光名所は、地図には番号で示され、下に、写真と説明が書かれています。

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 おすすめコースに従って歩き、最初に行き当たったのは、こちらの教会、Chiesa di San Faustinoです。この教会は、1266年にすでに存在しており、古いロマネスク様式の教会だったのが、18世紀に改築されました。

 ヴィテルボの町には、街角のあちこちに、みごとな噴水があるので、驚いたのですが、町で最も大きい噴水は、Piazza della Roccaの噴水(2枚目の写真)だということです。

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 手元に地図がないので、記憶を頼りに、おすすめコースと思われる道を歩いて行きました。途中で観光案内所も見かけたのですが、残念ながら閉まっていて、地図を手に入れることができませんでした。

 店の立ち並ぶ下り坂を下りていると、前方に高い塔と鐘楼の上部らしきものが見えたので、今度は、この塔を目指して歩くことにしました。

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 そうして、1487年に再建された時計塔(Torre dell’Orologio)の建つ広場、Piazza del Prebiscitoに、たどり着きました。時計塔の右手には、11世紀末に建てられた教会、Chiesa di S. Angeloが見えています。この広場は、中心街の中央部で、こうしてカメラを構えていたわたしの左手には、13世紀に建造されたプリオーリ宮殿が建っていました。宮殿の内部がそれはみごとだということは、残念ながら、今ヴィテルボ県のサイトのページ(リンクはこちら)を見て、初めて知りました。

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 奥に大聖堂の見える道を歩いて行くと、左下に、昔の公共の洗濯場がありました。右手前の美しい建物は、Palazzo Farnese(ファルネーセ宮殿)。こう呼ばれるのは、アレッサンドロ・ファルネーセ枢機卿が、パウルス3世として教皇となる以前に、住んでいた家だからですが、館自体は、13世紀にすでに存在していました。

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 大聖堂、Cattedrale di San Lorenzoは、12世紀に建てられたもので、左にそびえるゴシック様式の鐘楼(campanile)は、13世紀末に築かれました。ただし、後に幾度も改築が繰り返され、教会正面は、ルネサンス期のものです。

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 こちらのPalazzo dei Papi(教皇の宮殿)も、大聖堂が面するのと同じ広場、Piazza San Lorenzoにあります。ゴシック様式のこの宮殿は、13世紀後半に建てられたもので、ヴィテルボの名所として知られています。

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 サン・ペッレグリーノ地区(quartiere S. Pellegrino)には、今なお中世の趣が、至るところに残っています。夫が歩いていく道の左手の壁には、Via S. Pellegrinoと、通りの名前が書かれています。

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 通りの下に伸びるこうした何気ない路地にも、何とも言えない風情があります。

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 塔や家の前に伸びる石の階段が、中世に迷い込んだような気分にさせてくれます。

 美しい街角や建造物に目をみはりながら、散歩を楽しんでいたのですが、この地区を訪れたあとは、できるだけ最短距離を通って、駐車場まで戻ることにしました。午後3時に有料駐車場に車を置き、日が暮れる頃に温泉に戻ろうと、2時間分の料金を払っていたので、時間内に引き返す必要があった上、二人とも、すっかり歩き疲れていたからです。

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 と言っても、地図がないので、道を人に尋ねながら、こうだと思われる方角を目指して進んで行きました。

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 ようやく駐車場にもフィオレンティーナ門にも近い広場、Piazza della Roccaまで戻って来ました。まだ少し時間があったので、左手に見える建物内のバールで、ホット・チョコレートを飲みました。このホット・チョコレートが思いがけずおいしくて、すっかり夫の気に入ったようです。イチゴの載った、小さなシュークリームも、二人で食べました。

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 それから、城壁前にある駐車場に戻り、再び温泉、Terme dei Papiへと向いました。中世に築かれた高い城壁は、夕日を浴びて、茜色に染まり、その上には、まだ白い月が見えていました。

関連記事へのリンク
- バレンタイン小旅行
- バレンタインの夕餉

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by ゆん at 2011-02-18 13:07
なおこさん、こんにちは!
バレンタイン旅行だなんて、素敵ですね。
ピザもタマゴ焼きも可愛いハート型で感激しちゃいました。
芸が細かい!

しかしまあ、歴史の中で作られた建造物が至る所に現存する国なんですね~
なおこさんのブログを拝見してると、しみじみと感じます。
歴史好きの私としては、ファルネーゼ枢機卿が住んでた家が実際にあるということにも感激しちゃいます。
木造建築の日本ではあり得ないことですからね。
Commented by Yuka at 2011-02-18 14:47
古く美しい街並みですね。本当に風情があって素敵。
京都の古い寺社と同じ種類の美しさだと思います。古い建物ならではの雰囲気ってとても魅力的ですね。
たくさん散歩した後の休憩はなんともいえないものがあります!カフェでほっと一息ついて「今日は楽しかったね」と話すのが好きなのです。一緒に甘いものを食べる人がいるとなればなおさら!
Commented by milletti_naoko at 2011-02-18 17:24
ゆんさん、こんにちは!

前菜のハート型、店のさりげない演出が、とてもうれしかったんですよ。特にバレンタインデー用のメニューというわけではなく、いつものメニューに手を加えてあっただけに、なおさらのこと。

イタリアには、町そのものが歴史博物館であるところが多いような気がします。ここにはエトルリア時代の壁、そこには中世の建物がある、といった感じで。おっしゃるように、石で築かれているおかげで、昔の面影が残りやすいのでしょうね。ゆんさん、すごい! 「ファルネーセ枢機卿」ですぐにピンと来るんですね。ただ、この教皇、ペルージャにとっては敵的存在なんですよ。
Commented by milletti_naoko at 2011-02-18 17:33
ゆかさんへ

確かに古い歴史のある町独特の美しさというものが、ありますよね。京都の寺社は建物に風情があるし、イタリアに比べて、庭が非常に広く、かつ美しいところが多いような気がします。自然あふれる庭園が境内で大切な位置を占めているのが、すてきだと思います。

石畳の町は、美しくて歩くのが楽しいのですが、野山と違って、長い間歩くと足の裏が痛み、脚も疲れてくるんですよね。というわけで、座ってほっと息をつき、おいしいものを食べ、飲める瞬間にはほっとします。わたしはイチゴが好きなのですが、イタリアでは、旬を大切にするからか、年中イチゴを使ったデザートが売っているわけではないので、イチゴのシュークリームが、うれしかったです。
Commented by ムームー at 2011-02-18 18:45
なおこさん
素晴らしい建物にため息がでます。

昔ながらの建物が今も使われ大切にされていますね。
洗濯場も昔を思わせるものですね。
青い空に浮かぶシルエットの建物も素敵~
ホット・チョコレート美味しかったでしょうねぇ~
やはり甘いものと温かいものはいいですね、疲れがとれますわぁ。

Commented by milletti_naoko at 2011-02-18 18:57
ムームーさんへ

温泉がきっかけで訪ねたのですが、すてきな町で、散歩が楽しかったです。イタリアの古い町を歩くと、あちこちにいろんな形の洗濯場があって、興味深いです。お義母さんも、昔は水道がなかったので、公共の洗濯場まで、両手で息子たちの手を引き、頭の上に洗濯物を載せて歩いて行って、村の女性たちとおしゃべりをしながら、洗濯をしていたそうです。

甘いもの、温かいものは、疲れがとれますよね。寒いせいもあって、最近は、ついつい手が伸びてしまっていけません。
Commented by bianchi_saitoh at 2011-02-18 22:22
初から歴史背景を知っていると面白いですよね。
なおこさんの解説にいつも感心しています。
イタリアって違う時代が混在しているというか歴史の上に歴史が積み重なっている所って沢山ありますね。
すごく面白いと思います。

なおこさん、ホットチョコレート好きなんですか?
ホットミルクにチョコをとかしてってヤツですよね。
ヨーロッパでは日本よりも好まれているんですか?
Commented by milletti_naoko at 2011-02-18 23:17
bianchi_saitohさんへ

感心なんて、ありがとうございます! 数年前に中世美術史やイタリア史の授業で習いはしたのですが、記憶が不確かで、実は、この記事は、撮影した案内看板の説明を拡大して読んだり、下に貼ってあるリンクを参考したりしながら、苦労して書いたんです。

ホットチョコレート好きなんです。イタリアでは、ホットチョコレートを作るための専用のチョコレートの粉が、小さい紙袋入りで売られているんですよ。お菓子作り用のカカオの粉でも作れるので、時々それを使うこともありますが、やっぱり専用の粉の方が、とろみのあるおいしい仕上がりになるような気がします。

イギリスを舞台にした『マイ・フェア・レディ』の歌の中にも、ホット・チョコレートがでてきていましたし、日本よりは飲む習慣が根づいているのではないかと思います。イタリアで、冬にバールに入ると、ホット・チョコレートを頼むことが多いのですが、たいていどこのバールにもありますよ。
Commented by ビーボラ at 2011-02-19 17:57
はじめまして!
私、ヴィテルボに住んでいるビーボラと申します。ヴィテルボの町をこんなに素敵に紹介いただいて、町の美しさに改めて気づかされました。

もう2年も住んでいるのに名前すら覚えていない建物もたくさんあって、お恥ずかしい限りです。この機にきちんと勉強したいと思います!心温まるバレンタイン小旅行のお話ありがとうございました。
Commented by milletti_naoko at 2011-02-19 19:04
ビーボラさんへ

こんにちは。「素敵に」だなんて、ありがとうございます。素材であるヴィテルボの町自体がすてきだからですよ! ヴィテルボの町、美しい建物や通りが、本当にあちこちにありますね。周辺にも小さな趣のある村が多くて、またぜひ、今度は地図やガイドブックを片手に、じっくり訪れてみたいと思います。いいところにお住まいですね。ヴィテルボの町も、そして周辺の村でも、とにかく人がとてもきさくで温かいという印象を受けました。

実は、「はじめまして」ではなくて、「お久しぶりです」なんですよ。以前に、ナポリの方のピザ屋で嫌な思いをされたという記事に、コメントを書いたことがあるんです。(↓)
http://kiimofactory.blogspot.com/2010/06/blog-post_08.html

住んでいるとかえって、旅行者なら必ず訪れる当地の名所を訪ねじまいということは、よくありますよね。わたしも帰宅してから、記事を書くために、看板の写真の説明を拡大して読んだり、インターネットで情報を調べて、建物の名前や歴史を調べました。こちらこそ、うれしいコメントと訪問をありがとうございます。
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by milletti_naoko | 2011-02-17 18:10 | Lazio | Comments(10)