2011年 03月 24日
伊マスコミと地震報道1
ツイッターやフェイスブック、ブログなどで、被災者の方に特に重要と思われる情報を回していく一方で、イタリア人で今回地震を経験した人や被災をした方が、もし日本語が分からない場合でも、何とか必要な情報が得られるようにと、大切と思われる情報を、日本語や英語からイタリア語に訳して、伝えてもみました。
地震発生直後は、NHKの地震中継が24時間見られるようになっていて、それが海外でも見られるため、主にNHKのニュースを見ていました。ただ、イタリアのテレビニュースの方が、放映時間が短いだけあって、要点や全貌が分かりやすいかもしれないと思い、最初の3日ほどは、国営放送Rai1、Rai2のテレビニュース(telegiornale)~番組名は、それぞれTG1、TG2~でも、日本の地震が報道されているときは、テレビの前に駆けつけました。
それを途中でやめたのは、TG1やTG2が、津波が家を押し流す場面や原発の事故、放射能汚染の恐れなど、恐怖を煽るような映像や言葉ばかりを中心に繰り返す上に、日本の報道に比べて、危険や悲惨さ、犠牲者の数が誇大に伝えられていたからです。地震発生数日後、Rai2だったかで、明かりの消えた東京の町を映し出しでは、「東京からは、放射能汚染を恐れて、半数がもう都会を後に、南へ向かいました。」と言い、都内でマスクをした人々の映像を映し出しては、「皆、放射能汚染を恐れて……」。福島第一原発で、深刻な事故が続くずっと前から、放射能の危険性を強調し、はや第二のチェルノブイリかのような報道が続いていました。わたしとしては、30分という短いニュース枠の3分の1も、日本の地震報道に充てていながら、義援金についての情報がまったくないことも気になりました。ただ、これはRaiの放映についてであって、Skyのテレビニュースでは、過度に恐怖を煽ることもなく、日本の方々が大きな被害にもくじけぬ様子をたたえ、また義援金の情報も頻繁だということです。イタリアのジャーナリストの方からは、同じRaiのテレビニュースでも、Rai News24の報道には、専門性があり、偏りがないと教えていただきました。
日本で地震にあったイタリア人に、必要な情報を与えられたらと、イタリア外務省の危機対策課(Unità di Crisi)のフェイスブックのページにも、時々目をやっていました。すると、地震発生直後から、地震と放射能汚染の恐怖のあまり、パニックに陥ったイタリア人たちのコメントが、次から次へと続き、エスカレートしていきました。特に、多くのメンバーが震災時に来日していたフィレンツェ歌劇団(Maggio Fiorentino)のメンバーやその家族からは、なぜ外務省はすぐに団員を帰国させないのだ、また、メンバーの何人からかは、なぜ帰国の手段を便宜してくれないのかという非難が、絶叫や脅しに近い言葉で、続々と寄せられていました。
これほど被害の大きい地震には慣れていないので、また地震が来るかもしれないという恐怖もあったでしょう、イタリアのニュースが放射能汚染を過剰に騒ぎ立て、恐怖に陥った家族から急きたてられて、泣きつかれて、団員たち自身も、やはり日本の報道より、自国の報道や家族の訴えを信じたのでしょう。結局、市や国の意向もあって、途中で公演を切り上げて、帰国することになりました。イタリアでの放射能汚染報道がむやみに危険を叫び立てているだけで、東京には脅えるほどの危険はありませんよ、と、英語のニュースのリンクも貼りながら、こうしたイタリア人の恐怖心を抑えようと、わたしもイタリア語で書いてみましたが、彼らが信じるのは、イタリアの報道であり、「日本は事実を隠蔽している」という言葉が返ってくるばかりでした。このフェイスブックのページには、激しい非難のコメントがあまりにも多いので、最初は危機対策課が、「根拠のない誹謗中傷ばかりのメッセージはこちらで判断して削除します」というメッセージを時々入れていたのですが、最終的には、数日後に、「あまりに感情的な発言やいたずらな悪口雑言が多い」という理由で、外部からの書き込みができないようになり、これまで書かれていた発言も、見えないようになってしまいました。
チェルノブイリを身近に体験しているからなのでしょうか?
それにしても現段階での事故の種が違うのは専門家がいたらわかりそうなのに・・・。
という日本も過剰反応気味と言ったらいいのか自己防衛本能なのか水道水報道でのミネラルウォター不足。
“乳幼児”そして厳しい安全基準数値設定を考えるとそれ以外の人々は平常にしていてほしい。
原発30Km圏への輸送拒否、タクシーの乗車拒否などさまざまありますが原発復旧に直接従事している方達を思えばもう少しなんとかならないものでしょうか?
みんなにジレンマがあるんですよね・・・。
私も翻弄され、海外のリアクションに不安を抱え、日本政府は情報を公開していないと思っていました。(今も思っているんですが。笑)
ネット上での専門家たちの言葉を読んで、信じられるものを信じようと決めています。
じたばたしてもできることは限られていますから。汗
海外の方で地震をあまり体験したことがない人ならパニックになるのも分かります。地震、津波、原発ときたら、悲観的になるなと言う方が難しいですものね。
ただ、日本人のほとんどはこの土地で生きていかなきゃならないのだから不用意な報道は国内外するべきではないと思っています。
無責任な外国人のコメント等に心を痛めている日本人は少なくないですしね。。
今、こちらでも放射能のことが大きく取り上げられています、学者は安全な数値だと言います。
原発も津波による被害が甚大なんでしょうが、地震国であるのに、もっとこういう事態を想定されてもいいですよね。
連日の報道を見ていても偏りもあるでしょうし、どれが正しいのかわからなくなりそうです。
むやみに騒がずいつものように正しい情報を知って暮らして欲しいですわ。
なおこさん、心配がないようにと色々として下さってありがとうございます。
騒ぎ立てた方が記事が売れるからでしょうか。根拠のないいいかげんな記事を書くのは、専門性に欠けるからだというメッセージをくれたイタリアのジャーナリストもいます。
わたしも、もっと実際に原発で働かれている方や近辺に住んでいる方のことを考えて、状況を極端に脚色するのはやめてほしいと、心底そう思います。
無責任なイタリア人のコメントに腹を立てることは、こちらでも多くあります。ただ、集会で被災者の方を思い、日本のために黙祷をささげる機会を持ってくれたり、義援金を贈ろう、またその情報を伝えようとしてくれたり、また、日本の状況やわたしの家族を心配して、毎日やむことなく連絡をくれるイタリア人、そうやって、日本のことを真剣に考えてくれるイタリア人の方が、ずっと多いと思います。
安全だという日本の報道と危険を訴えるヨーロッパの情報の間で、刻一刻と変わっていく放射能汚染の情報を読んで、わたしも日本の発表・見解を信じたいと思いつつ、すべて信じられるものでもないかとやきもきしていたのですが、次の記事に書いた米雑誌、『TIME』にある説明が本当で、よほど急に状況が転換を見せることさえなければ、実際に汚染がどの程度まで進むか、またはそれほど進まずに収まるかは分からないのではないかと思います。何か隠されている情報があるのではないか、という点についても、状況判断が難しい上に順次変わっていく状況を、逐一伝えないのはやむを得ないと読んで、妙に納得しました。
原発で命を賭して働いてくださっている方の力、そして、日本の科学技術力の高さで、なんとか汚染が最小限に食い止められると、わたしは信じています。
わたしも最初は腹立たしくて、この憤りをどこに持っていいのか、やり場に困り、友人へのメールやブログのコメント、イタリア語でのツイートなどに書いたり、日本の友人と話をしたりして、なんとかその気持ちを抑えていました。
ただ、そういう怒りを、そのときそのままブログに書かなかったのは、感情が高まっている最中に書いてはいけないという声が自分の中にあったから、そして、もともとイタリア語やイタリア文化を愛する人に向けて書き出したこのブログで、イタリアの報道のそういう実情を知らせたら、イタリアを愛する被災者の方が悲しまれるかもしれないと思って、書くのを控えていたのです。
今回は、いろいろなコメントを通して、イタリアに暮らしている日本の方でも、イタリアの過剰な扇情的報道によって、不必要に不安や憤りを感じられている方が他にいるかもしれないと思い、また、イタリア人やイタリアのマスメディアからも、ようやくこれに反する声も次々に上がってきたので、記事として取り上げてみました。日本のわたしたちの声、自分たちが書いた記事を、取り上げてくれたイタリアの編集長がいたということも知っていただきたかったですし。
イタリアのマスコミの問題点については、最近ジャーナリズムに関わる立場の人々からもいろいろと指摘されていますよね。特に今回の地震報道に関しては、非難する声が、イタリアのマスコミから、イタリア人のブログからも、ようやく上がってきました。(この記事の続きとして書いた記事に、リンクを貼ってご紹介してます。)これを機に、また、わたしたちの書いたイタリア語での訴えを機に、こうした地震報道が在るべき方向に変わっていくようにと願っています。
イタリア人でも、日本語が分かる人、分からない人に限らず、こうした報道の在り方はおかしいと、共鳴してくれて、わたしがより正確な情報を伝えようとすると、幸い、協力してくれるイタリア人も、大勢います。
もうずいぶん長い間、イタリアにお住まいなんですね。訪問とコメントを、どうもありがとうございました。