イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

アッシジへと歩く旅2

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アッシジの聖フランチェスコ大聖堂 / Basilica di San Francesco, Assisi 17/4/2011


 目指すはアッシジ(Assisi)聖フランチェスコの生地で、聖人にゆかりの教会や場所の多い町です。

 La meta è Assisi, città natale di San Francesco.

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16/4/2011


 冷たい風と雨に打たれながら、スバージオ山の高みにある十字架を目指して歩きます。十字架は、赤い矢印で示したところに立っています。

 Colpiti dal vento e dalla pioggia proseguivamo il sentiero verso la croce segnalata nella foto sopra con la freccia rossa.

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 ようやく十字架にたどり着きました。眼下にはアッシジの町が見え、眺めはすばらしいのですが、吹きつける風の冷たさに、一同すぐに、折り返して山を下り始めます。

 Finalmente siamo arrivati alla croce; il vento era così forte e freddo che tutti hanno ripreso subito il cammino.

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そうです。ようやく長い登り道が終わり、あとは、アッシジまで下り道です。

 Ora scendevamo sempre giù verso la città di Assisi.

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 ここまでの道中にも自生の水仙(narciso)の花を時々見かけたのですが、アッシジへと下る途中に、一面に白い水仙の花が咲きほこっている場所がありました。

 Mentre scendevamo, ci siamo imbattuti in un luogo meraviglioso, pieno di narcisi spontanei.

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 長い山道のあちこちに野生のアスパラガスが生えていて、わたしも目にしたアスパラガスは、摘み取って生のまま食べたり歩いたりしていました。山育ちの夫は、おいしそうなアスパラガスがいくつもいくつも目の前に現われる誘惑に勝てなくなったのでしょう、途中から、時々道から逸れて山に踏み入り、アスパラガスの収穫に励み始めました。

 Lungo il sentiero si trovavano moltissimi asparagi selvatici. Mio marito ha cominciato a raccoglierli e anche io e alcuni altri, pur in misura molto inferiore.

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 トレッキング・コースは、やがて道路に行き当たり、しばらく車道を歩くことになりました。道路を歩き始める直前に、フランコと出会いました。フランコは、今朝リミニを出発し、アッシジから、わたしたちと合流するべく、スバージオ山を登っていたのです。一人増えて、総勢9人となり、皆でアッシジを目指します。

 Mentre scendevamo, abbiamo incontrato Franco che ci è venuto incontro partendo a piedi da Assisi.

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 車道の傍らにも、さまざまな野の花が咲いていました。
 Anche lungo la strada si trovavano bei fiori di montagna.

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 こうして、午後3時過ぎに、アッシジの町から離れた山中にある、カルチェリの庵(Eremo delle Carceri)に到着しました。

 Verso le 15.15 siamo arrivati all’Eremo delle Carceri.

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 聖フランチェスコが、世の喧騒から逃れて、瞑想と祈りにふけるために、しばしば訪れていたのが、このカルチェリの庵です。古い庵があったこの地に、15世紀、シエナの聖ベルナルディーノが小さな修道院を建てさせたということです。

 San Francesco si ritirava spesso in questo eremo a contemplare e a pregare. Nel XV secolo sull’antico eremo San Bernardino da Siena fece costruire un convento alla semplicità francescana.

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 カルチェリの庵を訪ねたあとは、再びアッシジを目指して、歩き始めました。十字架が立っていた場所(赤い矢印で示してあります)が、もうこんなに小さく見えます。
 Dopo la visita dell’Eremo, abbiamo ripreso il cammino. Si vedeva già così piccolo e lontano il luogo dove si ergeva la croce.

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 急な下り坂を苦労しながら、下りに下って、ようやくアッシジの町の高みにある城塞、Rocca Minoreの近くまでたどり着きました。

 Era faticosa anche scendere perché la discesa era ripida. Finalmente è comparsa la Rocca Minore di Assisi davanti ai nostri occhi.

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 ようやくアッシジの町の城門、カップッチーニ門(Porta Cappuccini)にたどり着いたのは、午後5時を過ぎた頃でした。

 Verso le 17.00 siamo arrivati alla Porta Cappuccini, ingresso alla città di Assisi.

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 門の前で、皆で記念撮影。わたしが歩いたのは土曜日だけですが。マヌエーラたち4人は、日曜日にリエーティ県のポッジョ・ブストーネを出発し、毎日20km近くもの距離を、1週間歩き通して、アッシジに到着したので、感慨もいっそう深いものがあったことと思います。わたしの夫も皆と共に日曜から木曜まで巡礼を続けたのですが、金曜に合唱団で歌わなければいけなかったため、1日だけペルージャに戻り、土曜の朝に再び、巡礼に合流したのです。

 Foto insieme davanti alla porta. Ho camminato solo sabato, ma la metà del gruppo è arrivata ad Assisi dopo una settimana di camminata, partendo da Poggio Bustone (RI) domenica 10 aprile. Anche mio marito aveva camminato insieme da domenica a venerdì, ma era dovuto tornare a Perugia venerdì per un impegno ed è ripartito di nuovo sabato mattina con me. Sarebbero stati molto emozionati quelli che hanno camminato da Poggio Bustone per arrivare fin qui.

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 と言っても、宿はまだまだ遠く、アッシジの町を縦断した、さらにその下方にあります。美しい町並みを楽しみながら、最後の力をふりしぼって、歩き続けます。

 Tuttavia, l’alloggio era ancora lontana e dovevamo camminare attraversando la bella città di Assisi.

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歩きに歩いて、ようやく町はずれにあるこちらの宿、 Ostello della Paceに到着したのは、午後6時直前のことです。宿の庭に咲く藤の花を眺めながら、思わず芭蕉の句が頭に浮かび、この俳句を、初めて真の意味で、理解できたような気がしました。

  草臥(くたび)れて宿かる頃や藤の花  

 Finalmente siamo arrivati al nostro alloggio, l’Ostello della Pace. Erano quasi le 18.00 e nel suo giardino ci salutavano i fiori di glicine. Mi è venuta in mente subito una poesia haiku di Basho e forse solo in quel momento ho capito l’essenza della poesia.

  草臥(くたび)れて宿かる頃や藤の花
  Affaticato,
  mentre cerco albergo,
  mi scopro sotto i fiori di glicine.

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 この日の夕食は、ペルージャやエミリア・ロマーニャ州から他の友人たちも駆けつけ、子供連れの友人も多かったため、それはにぎやかなものになりました。前菜は、夫が中心になって収穫したアスパラガスの卵焼き。とてもおいしかったです。

 Per cena sono arrivati altri amici da Perugia e dall’Emilia Romagna, molti con i figli. Dopo un agrande camminata, era molto piacevole la cena insieme; è iniziata con la frittata di asparagi raccolti da noi ed era buonissima!

関連記事へのリンク / Link agli articoli correlati
- アッシジへと歩く旅1 / Passeggiata da Spello ad Assisi – Parte1
- アッシジを歩く1 ~ポルツィウンコラ / Passeggiata ad Assisi1 – Porziuncola
- アッシジを歩く2 ~お食事編 / Passeggiata ad Assisi2 - pranzo
- アッシジを歩く3 / Passeggiata ad Assisi3

参考図書 / Riferimenti bibliografici
- A.M.Seracchioli, “Di qui passò Francesco. 350 chilometri a piedi o in bicicletta tra La Verna, Gubbio, Assisi… fino a Rieti”, Terre di mezzo, 1994.
- S. Maiarelli, “Guida storico-artistica Assisi. Itinerario francescano”, Edizioni Porziuncola, 2006.
- Matsuo Basho, “Poesie. Haiku e scritti poetici”, La Vita Felice.

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by ムームー at 2011-04-22 06:25 x
なおこさんおはようございます。
皆さん達と歩かれた道のり、感慨深いものが
ありますねぇ~
美しく咲くお花たち、素晴らしい建築群、どれを見ても
感激しますね。
自生の水仙やご主人さまがお好きなアスパラガスもあるなんて
楽しさもいっぱいなんですね。
なおこさん、思わず出た芭蕉の句、素敵ですねぇ~実感なんですねぇ~
Commented by milletti_naoko at 2011-04-22 07:06
ムームーさん、おはようございます♪

仲間がいるから、長い距離でも歩けるのだなとつくづく思いました。実は前日熱があって、心配した夫に参加を反対されて、少々ケンカになったのですが、歩いて本当によかったと感動しました。

うちの夫は、アスパラガスは食べるのも好きですが、やっぱり目にすると黙って通り過ぎられないという性分なのだと思います。すてきだなんて、ありがとうございます♪ 芭蕉も長旅で疲れたことが多かっただろうな、藤の花は疲れた目にどんなふうに映ったかなと、宿の前の藤の花を見ながら思いました。
Commented by bianchi_saitoh at 2011-04-22 22:16 x
ついに、あのアッシジですね。
思っている以上に人がおおいですね。さすが世界遺産だけあります。
ここで質問ですが十字架のある場所に何か意味はあるんですか?
ヨーロッパなどでは山で見かけますね。TVだけですが・・・。
石に紅白のペイントに60とありますがコース案内かな?

野生のアスパラってあるんですね。ビックリです。
私の頭にはイコール北海道のイメージしかありませんでした。

カルチェリの庵、素敵ですね。
教会じゃなければ一度住んでみたいデザインの建築です。
そして町並みも最高!

Commented by かや at 2011-04-23 00:56 x
こんばんは☆
かなり高いところまで登ったみたいですね。眺めが良さそうです。
高い分だけ寒かったでしょうか。
山の上で花が見れると心が安らぎますね。

長い道のり、お疲れ様です。
凸d(^ー^)pochi
Commented by milletti_naoko at 2011-04-23 06:35
bianchi_saitohさんへ

アッシジはウンブリア州で最も観光客の多い町です。これは世界遺産であるだけではなく、イタリアの守護聖人であり、イタリア人の敬愛する聖フランチェスコが生まれ、また聖人にゆかりの深い地だからという理由でもあります。翌日訪れた教会では、多くの敬虔な信者が祈りを捧げていました。

ちょうど山からアッシジの町を見下ろせる位置に十字架が立っているのですが、夫に言わせると、町を神に守っていただこうという意図と、キリストが人々のために自分の命と苦しみを捧げたことを人々が忘れぬようにという意図からではないかということです。

紅白の線はCAI(イタリア山岳クラブ)がトレッキング・コースを示すのに使っているもので、木や岩に記されたこの線を頼りに詩ながら、道を進んでいきます。60はこのCAIのトレッキング・コース番号です。

野生のアスパラガスは、ペルージャの郊外のテッツィオ山にもたくさん生えているんですよ。わたしたちも時々収穫しますが、お義父さんは秘密の場所を知っていて、両手に抱えきれないほど持ち帰ることもしばしばなんです。
Commented by milletti_naoko at 2011-04-23 06:38
かやさん、こんばんは☆

山の頂上までは行かなかったものの、1100メートル以上の高さまでは登りました。この週はだんだん気温が下がって、何だか寒い日も多かったのです。山頂では風を遮る木もなく、風が冷たいので大変でした。

優しいお言葉と応援のポチをありがとうございます!
Commented by snowdrop-momo at 2019-05-15 07:08
過去記事にお邪魔いたします。スルーしてくださってOKです。^^

おそらく口紅水仙の仲間でしょうね。
今年の写真よりこちらの方がはっきり写っています。
芭蕉をイタリア語で読めて幸せです。グラツィエ!
Commented by milletti_naoko at 2019-05-15 15:47
snowdrop-momoさん、こんにちは。

この野生のスイセン(narciso selvatico)は、学名がNarcissus poeticus、ヨーロッパ原産で、日本には明治末期に渡来し、「観賞用に広く栽培されて、多数の園芸品種が知られている」そうで、それが口紅水仙という名で呼ばれるようになったようなので(引用元: コトバンク https://kotobank.jp/word/口紅水仙-1758098)、日本で栽培されている口紅水仙の原種ではないかと思います。句の心がある日突然、自分の経験からつくづくと感じられるということがあるのだなと思いました。
by milletti_naoko | 2011-04-21 16:35 | Umbria | Comments(8)