2011年 11月 19日
駅と電車でハプニング

仕事が終わる時間が分からなかったので、帰りの切符をまだ買っていなかったわたしは、翌日日本へと発つ他のお客さんたちにあいさつをするなり、荷物と共に走り出し、皆さんの前で、思いっきり転んでしまいました。あまり痛くはなかったけれど、少し恥ずかしかったです。
自動販売機で、わたしはペルージャ行き、Yさんはフォリンニョ行きの切符を買いました。販売機を使っていると、移民らしき人が、わたしたちの反対を押し切って、切符を買うのを、かなり強引に手伝ってくれました。購入後は、何となく予想していたとおり、お駄賃の請求がありました。ただ、切符をよく見ると、わたしはエウロスター(Eurostar)でフォリンニョまで行って、乗り換える切符を買ったのに、Yさんの切符は、普通列車利用となっています。
電車の出発まで、約20分。Yさんを送ることは、仕事には含まれていなかったのですが、日本に発つお客さんから、「石井さんと一緒なら、安心だから。」と、できたら同じ電車でフォリンニョまで行くように頼まれていました。そこで、電車に乗り遅れない範囲で、できるだけ同じ電車で帰れるように、自動販売機の横にあった、対人販売の窓口前の長い列の後ろに並びました。
わたしの電車の出発が17時27分だったので、Yさんには、こう言いました。「追加料金を払って、同じエウロスターに乗れるように、切符を変えてもらいましょう。10分前までは、ご一緒しますが、もし間に合わなければ、今お持ちの切符で、17時43分発のフォリンニョ行きの普通列車には乗れますから。」
それが、悪いときには悪いことが重なるもので、もう少しでわたしたちの番だというときになって、窓口に向かって歩いていた高齢の紳士が、突然床に倒れてしまいました。すぐに窓口の人たちが紳士に駆け寄り、呼び出しを受けた救急班も駆けつけたものの、幸い紳士はまもなく息を吹き返し、しばらくは人々が心配そうに見守る中、椅子に座って、息を整えていました。
何事もなくすんだので、一同ほっとしたのですが、紳士が倒れてから5分ほどの間は、五つほどある窓口の係員が、全員立ち上がって、紳士の様子を不安げに見守っていて、窓口での作業は一旦停止の状態となりました。
紳士の健康に問題がないと分かってから、再びすべての窓口で切符販売が始まり、Yさんの切符の変更が終わったのは、7分前。Yさんは、慌てるわたしを見て、「まだ、時間があるから、そんなに急ぐ必要はないんじゃありませんか。」と言うのですが、いえ、急ぐ必要があったのです。

イタリアでは日本と違って、電車が予定よりかなり遅れて到着することもあり、そのため、到着・出発するホームが決まっていないのです。空港で、乗車予定の飛行機が出発するゲートを、モニターを見て確認するように、イタリアの駅では、構内にある電光掲示板を見て、乗車予定の電車が、どのホームから出るかを、確認する必要があるのです。ちなみに、上の写真は、8月にピサを訪ねたとき(下記リンク参照)、電車を乗り換えたフィレンツェS.M.N.駅で撮影したものです。横に長い大きな電光掲示板の左右の列の一番上には、それぞれ、Arrivi/Arrivals、Partenza/Departuresと書かれています。左側に、到着(arrivo/i)予定の電車、右側には、出発(partenza/e)の電車について、それぞれ情報が書かれています。

上の写真では、前の写真の掲示板のうち、出発電車の案内が並ぶ右側を、拡大しています。たとえば、8月12日、わたしはこのあと、ピサ行きの電車に乗り換えなければならなかったのですが、出発案内には、電車の種類と番号、終着駅と出発予定時刻、ホームだけが書かれています。わたしは、前日に、Trenitaliaのホームページで、電車の時刻を確認したとき、乗車予定の電車すべての番号や出発時刻を調べて、印刷していたので、リヴォルノC.L.E.行きのRV3123番の電車に乗り換えなければいけないことを知っていて、この電車が3番ホームから出発することを確認しました。
電車に乗るときに、電光掲示板を確認する必要があるのは、ローマのテルミニ駅でも同様です。駅が大きいので、発着する電車も多く、自分が印刷しておいた乗車予定の電車の詳細情報と見比べて、出発ホームを確認するだけでも、かなり時間がかかります。この日は、仕事の終了時刻が分からなかったので、17時以降にペルージャ方面に向かう電車を、あらかじめすべて調べておきました。ちなみに、電車が出発する予定のホームは、一度すでに掲示されていても、あとから変更されることも、たまにありますから、乗り換えのために、駅の構内でしばらく待たれる場合には、出発の10分ほど前に、再度出発予定のホームを確認しておいた方が無難だと思います。
さらに、テルミニ駅のように、大きい駅の場合には、目指すホームが遠いため、かなり歩かなければいけない場合があります。この日、電光掲示板で、乗るべき電車が2番ホームから出ると知ったわたしたちは、まず2番ホームへと急いだのですが、荷物を持って、かなり長いこと歩かなければいけませんでした。ホームへ着いたあと、切符で指定された座席を見ると、7号車なので、再び荷物を抱えたまま、今度は走りながら、ホームを長いこと走って、7号車へと向かいました。こうして、何とか発車予定時刻の1分ほど前に、ようやく電車へと乗り込むことができ、ほっとしました。
ほっとしたのも束の間、電車が出発してしばらくしてから、わたしは急に青くなりました。慌てていて、切符に刻印を押す(下記リンク参照)のを、すっかり忘れてしまったのです。切符の刻印など、日本では必要なかったので、ぎりぎりに駅に駆け込むと、うっかり忘れてしまうことがたまにあります。実は、この前日も、フォリンニョ(Foligno)から電車で帰宅したとき、あらかじめ仕事の終了時刻が分からなかったため、出発間際の電車の切符を慌てて買うことになり、刻印するのを忘れて、電車に乗ってしまったのです。電車に入って一息ついてから、車内の掲示に、「切符を購入しないで、あるいは切符に刻印をしないで乗車したことが、発覚した場合は、最低50ユーロの罰金を払うこと」とあるのを見て、刻印していなかったことに気づいて、長い長い電車の中を、第一車両まで歩き、車掌さんに事情を説明して、刻印代わりに、署名と検札をしてもらいました。「あ~あ、これでは罰金を払わないとね。」と、からかわれながら。
ただ、このローマ発の電車の場合は、わたしが近くに座っていた女性に、「切符の刻印を忘れたんですけれど、車内にも刻印機があるでしょうか。」と尋ねたら、「フォリンニョに着くまでは、エウロスターで、切符は座席指定だから、刻印の必要はありませんよ。」と、返事が返ってきて、安心しました。
電車がローマを出発する間際に、大柄の老紳士が乗り込んできて、わたしの隣の席に腰を下ろしました。車内では、Yさんや、先の女性などと、時々おしゃべりをしながら、過ごしました。途中、Yさんが、「イタリアの電車では、日本と違って、これから着く駅の案内がないんですね。」と言ったので、イタリアでは、次に着く駅を案内する車内放送がないことが多く、逆に、日本を旅行する外国人旅行者の多くが、頻繁にありすぎる車内放送(次に到着する駅、乗り換え情報、忘れ物・足元に注意、電車利用への感謝など)に、言葉が分からないこともあって、不安になることも多いのだと、お話ししました。わたしの隣の老紳士は、席についてすぐ、ずっと眠りについていたのですが、この会話を聞いて目を覚まし、興味深そうだったので、イタリア語で説明をしました。「ああ、でも、この電車はフレッチャロッサ(Frecciarossa)だから、次に着く駅の案内はあるよ。それにしても、もう次の駅か。もうフィレンツェ? 何だか早すぎるような。」
まもなく電車が駅に入ってスピードを落とし、駅の名が読めるようになりました。結局、車内放送はないままです。着いたのがテルニ駅だと知った老紳士は、フィレンツェ行きのフレッチャロッサに乗る予定だったのに、電車を間違えたことに気づき、慌てて下車しました。残ったわたしが、きょとんとしている他の乗客に事情を説明すると、「ひょっとしたら、このままフォリンニョまで行って、フォリンニョからフィレンツェ行きに乗り換えた方がよかったかもしれない。」、「いや、やっぱりここで降りてよかったのでは。」と、しばらくおしゃべりが続きました。イタリア人で、電車に乗り慣れている人でも、電車に乗り間違えることは、あるのです。慣れないうちも、慣れてからも、やはり注意が必要だなと思いました。
電車は18時54分に、フォリンニョに到着予定で、Yさんはフォリンニョで下車するのですが、わたしは、ペルージャ行きの電車に乗り換えなければいけません。乗り換えの電車が出発するのは、19時3分で、乗り換え時間が10分もなく、フォリンニョ到着が予定より遅れる可能性もあります。幸い、先の女性の向かいに座った男性が、「よくこの電車を利用するけれど、時刻には正確で、フォリンニョ駅での乗り換えには、支障はありませんよ。」と教えてくれました。ただ、話を聞くと、この電車が着くホームから次の電車が出るホームまでは、階段を下りて上らないと行くことができない上、出発ホームについての車内放送はなく、駅のホームで案内表示を見て確認しなければいけないということです。
そこで、電車がフォリンニョに着く15分ほど前に、Yさんにあいさつして、すぐに電車を降りられるよう、ドアの前に待機しました。電車が駅に着くときには、降りる乗客が、自分でドアを開けなければいけません。電車によって開け方が違うので、通りかかった車掌さんに、開け方を尋ねると、「わたしがここにいて、ドアを開けますから大丈夫。」と親切に言ってくれました。
おかげで、愛想のいい車掌さんとしばらくおしゃべりをしたあと、問題なく電車を降りて、フォリンニョ駅で、無事に乗り換えを済ませることができました。このあとの電車の中でも、興味深い出会いが待っていたのですが、またの機会にお話しするつもりです。
こういうわけですから、皆さん、イタリアで電車に乗るときは、できるだけあらかじめ、切符を購入しておくように、そして、駅には余裕を持って到着するようにしておきましょう。
関連記事へのリンク
- 「電車でお出かけ」(イタリアで電車に乗る際の注意とペルージャ・スポレート間の車窓風景)
- 「ピサの斜塔に挑戦」
- 「ペルージャ・ローマ間はバスが便利」


もし行く機会があれば、時間に余裕をいっぱいもった計画を立てたいと思います(笑)
日本国内の電車旅なら、結構、あんまり余裕のないスケジュールを組んでしまいがちです。外国ではそうはいきませんね。
でも、やっぱり慣れない土地では車を運転するより電車のほうがラクですよね。
凸d(^ー^)pochi
なお子さんがおっしゃるようにイタリアの電車はイタリア人でも間違えるくらい用心が居るのですね。
ちょっと安心しました。
私たちでもドキドキなのに初めての言葉のわからない旅行者の方の事を思うと。。。
これからきちんと丁寧に説明させてもらおうと思いました。
今日は良いお天気になりました、気温も高めです。
やはり時間には余裕を持って行かないとだめなんですね。
こちらでもそうですね、知ってる所まで行くにも何度も
確認しています。
こうしてお話をして貰ってるとこれから行かれる方には
わかりやすくていいですねぇ。

私もめったに電車には乗りませんが先日、新宿の初台という所に行く時に京王線新宿駅から数駅だけ回りこんでる京王新線に乗るのに改札-京王線ホームに降り端にある連絡通路-エレベーター2本上るというちょっと複雑な乗り方でした。初めての駅で案内の矢印も難しい記号に見えてきました。
何だか勢いに乗って、ついつい長々と書いてしまいました。おつきあいして読んでくださった、優しいムームーさん、ありがとうございました。
日本の電車の路線や自動販売機の図の説明の複雑さには、わたしも頭がくらくらしてきます。東京など、一つの駅にいくつもいくつも出口があって、しかもそれぞれがかなり離れていたりして……
何事も慣れないと難しいというか、慣れた人を対象にして、矢印をつけているのでしょうか。