2011年 11月 20日
電車でおしゃべり1
すぐに大勢の人が、次々に同じ車両に入ってきました。先ほどわたしに、「フォリンニョでは、問題なく乗り換えができますよ。」と言ってくれた男性も、同じ車両に乗り込みます。「この人たち、みんな、同じ電車で今ローマから着いたばかりなんでしょうか。」と尋ねるわたしに、通りかかる人々が、笑いながらうなずきました。
わたしからは、通路を挟んだ向こうの席に座っていた金髪の女性が、不平をこぼします。
「まったく、ローマから来て、フォリンニョで乗り換えると、いつもこうなんだから。乗り換える時間はほとんどないし、乗り継ぎの電車がどこから出るかわからないから、毎回こうして、焦って慌てるはめになるんですよね。」
わたしが、
「まあ、無事にみな乗り換えることができたから、よかったということで……。」
と言うと、少し外国人アクセントのあるその女性は、
「イタリアの鉄道って、いつも問題があるんだけど、このフォリンニョの駅では、決まってこんなふうに混乱していて、皆が心配しながら、急がなければいけないのよね。」
と答えます。
女性の向かいに座っていた、イタリア人の老紳士が、それに対して、
「二人とも、十数年前のテルミニ駅が、どんなに混乱した状態だったかをご存じですか。当時に比べたら、駅の状況が格段に改善されて、電車を利用しやすくなったんですよ。」
と返事をし、それからペルージャに着くまでの30分あまり、ずっと3人で話し続けることになりました。
まずは最初に自己紹介。金髪の女性はロシア人で、わたしは日本人。老紳士は、今は退職前は、大学で哲学を教えていたとのことです。わたしたちがなぜイタリアに来たのか、ロシアや日本では、電車はイタリアのような遅延やストライキは少ないこと、など、いろんなことについて話しました。
3月以来、わたしが日本人だと知ると、面識がなくても、地震後の日本はどうかと、尋ねてくる人がよくいます。。このときもやはり、老紳士にそう問われ、今もまだ被災に苦しむ方がいる上に、放射能汚染の問題も深刻なのだと答えると、これもやはりいつものことですが、そうした困難を力を合わせて、乗り越えようとしている被災者の方や日本はすばらしいと、女性も老紳士も、日本を称え、応援してくれました。

実は、この日の午後、ローマではイタリア産業界の要人も交えた会談があり、その席でわたしは通訳を務めたのですが、そのときも、日本からのお客さんたちが、なぜイタリアに来たかを説明して、貴国から多くのことを学びたいと言ったとき、その要人の一人が、思いがけず、こんなふうに答えたのです。
「わたしたちは、今、日本に対して、できる限りの協力をしていきたいと考えています。先の地震で、被災者の方が、日本の皆さんが、想像を絶するような苦境に遭いながら、それでも、前に進もうとされている姿に、わたしたちは感銘を受け、また心から敬意を抱いておりますので。」
心づくしの温かい言葉に感激し、目に涙を浮かべながら、すぐに言われた言葉を訳しました。これはほんの一例で、こんなふうに日本を応援してくださる方が、イタリアにもたくさんいるのです。(つづく)


日本に住まいするものとして感謝いたしますわ、最近外国の旅行者が戻って来られて嬉しく思っていますの。
放射能汚染は限りなく恐ろしいことだし、蔓延してると思いますが、みなさん生きる力をふりしぼり頑張って居られます。
なおこさんがこういう風にお仕事を通じてお話下さることにも
感謝です~
ようやく自分のペースで生きればいいと思うようになりました、何をしてても申し訳ない…って思いすぎる事は復興につながらないと。
素晴らしいお話をありがとうございました。
放射能汚染の問題も深刻である上、被災地ではまだまだ通常の生活を送るにはほど遠い状態の方が数多くいらっしゃるようですね。日本政府が、外国人の日本旅行を奨励するために、航空券を無料で贈ろうというニュースを数か月前に読んだのですが、そこまで多額の公金を使うなら、それよりも、まずは放射能の除去や被災地の復興に努め、まずは日本で日本の人が安心して暮らせるようにすれば、外国人観光客も、自然と戻ってくるのではないかと思いました。
わたしの知っているイタリア人学生の中には、地震の直前からすでに日本への留学を決めていて、悩んだあげく、予定通り日本に旅立った若者も数名います。
こちらこそありがとうございます。辛く苦しい歳月を通り抜けて、今毎日の中のささやかな幸せを喜びいっぱいにつづる、そういうムームーさんの記事に励まされる人、思わずほほえむ人もきっと多いはずです。わたしもその一人です。
遠く離れた国の人からあたたかい言葉を聞くと感動です。
日本国内の偉い人より気を使っていただいているように感じます。
一日も早く、復興した平和な元気な日本の姿を見ていただきたいですね。(^^)/
電車の中で初めて会う方とのおしゃべり、良いものですね。
日本人同士でも相席になれば、相手が気さくな人ならしゃべることはありますけど、たいていは何もしゃべらずじまいだったりします…。
震災から8ヶ月が経ち、被災地には過酷な冬が再び訪れようとしています。
原発依存反対と思っても、現状では電気によるエアコンやコタツに頼らざるを得なかったり……理想は理想で、現実は難しいですね。
異国の地で、被災地のことを思ってくれている異国の方の生の声。被災地の近県・隣県民としてもすごく嬉しく思います。
凸d(^ー^)pochi
被災地の方の冬が少しでもしのぎやすいものになりますように。応援のポチをありがとうございます。