イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

2006年はポルトガル語

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 ポルトガルを旅行したのは、2006年の秋のことです。もともとは、友人たちと、ポルトガルからサンティアーゴを目指して巡礼をするつもりで、飛行機を予約していました。

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 それが、夫のひざ裏に嚢胞ができて、ひどく痛むようになり、3週間も毎日30km歩き続けるのは無理だということが分かりました。そこで、わたしたちは、10月13日から11月7日にかけて、ポルトガルを観光旅行することにしました。

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 もう5年以上も前のことなので、結局、二人で旅行することに決めたのがいつだったか、さっぱり覚えていません。でも、このポルトガル語の入門書、『Impara rapidamente il tuo portoghese』(リンクはこちら)の裏表紙を開くと、当時の学習メモがあって、この本を使ってポルトガル語を勉強し始めたのは、
旅行約1か月前の9月11日だったということが分かります。

 第1課は発音、第2課は名詞と冠詞の説明と練習問題があるのですが、以後は、第3課から第15課まで、すべて、日常生活や旅行で繰り広げられる会話を中心として、構成されています。各課とも、まず初めに、比較的長い会話があり、次に、その会話に出てくる文法事項や語彙・表現が整理され、最後に、練習問題がついています。ペルージャ・シエナの両外国人大学の、外国人へのイタリア語教育の課程で、「現在、最も望ましく、効果的とされている外国語教育法・学習法は、コミュニケーションを主軸に置き、かつ文法や練習問題もおなざりにしないものだ」と繰り返し学び、自分でもそのとおりだと確信していたので、それを、自分の外国語学習にも、応用してみました。(詳しくは下記リンク参照)

 よくできた学習書であれば、まず1冊をみっちり終えることの方が大切と思ったし、実際、複数の学習書で勉強するだけの時間もありませんでした。辞書も特に買わず、この本の巻末にある45ページほどの、葡伊・伊葡辞典で間に合わせました。参考書を選んだ基準は、ある程度まとまった長さのある会話を中心として構成されていること、かつ、その会話を収録した音声CDがあること、その二つです。ポルトガル語は、イタリア語同様、俗ラテン語から発展・変容を遂げてできた言語なので、文法や語彙に共通項も多く、そのため、学習書も、入門書とは言え、最初から内容が盛りだくさんだったのですが、イタリア語話者を対象にした参考書であるおかげで、重要な語句や文法を、すっきりとまとめていて、勉強していても、比較的すんなり頭に入ってきました。(というか、そうであったように覚えています、と言うのが正確なところです。)たとえば、条件法、接続法などは、日本語には存在しないため、日本の学習書で学ぶと、かなり詳しい、あるいは、ややこしい説明もあったのでしょうが、イタリア語には存在するため、特に込み入った説明もなく、イタリア語に対して、ポルトガル語では、こうなんだと、あっさりと説明がされていました。実際、ヨーロッパ連合では、フランス語・イタリア語・スペイン語・ルーマニア語など、共に俗ラテン語から発展してできた言語を、その類似性に着目して、学習しやすいように工夫した学習プログラムや教材の作成もさかんに行われています。

 スペイン語を知っている夫や友人によると、ポルトガル語は読むと分かるけれど、発音が違うので、聞くと理解しにくいとのことでした。わたしも、ポルトガル語を、学習書で勉強する傍ら、繰り返しCDを聞き、発音練習も何度もしたのですが、ポルトガルに到着した頃は、相手の言うことを理解して、聞き取るのに苦労しました。それでも、10日、2週間経った頃には、バスの中で、現地の人と話ができるほどまで、耳が慣れてきて、うれしかったです。バスの運転手さんと、しばらくポルトガル語で、英語も交えながら話をして、ルーマニア出身の方だと知って、びっくりしたこともあります。

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 というわけで、イタリア語をすでに身につけていて、さらにポルトガル語も勉強したいという方には、この本は、かなりおすすめです。(商品詳細は下記リンク参照)ただ、注意していただきたいのは、同じシリーズでも、「日本語」を扱った本は、まったく体裁が違っていて、文法の品詞別説明と簡単な旅行会話、日伊・伊日辞典から構成されています。すでに日本語を若干かじった人が、参考書として使えないことはないのですが、入門書としては、まったく使えませんので、ご注意ください。イタリア人向けの日本語の入門書で、今のところ、最もよくできているとわたしが思うのは、Hoepli社の『Corso di lingua giapponese 1 』(リンクはこちら)で、それは、上で書いた「理想の外国語の入門書」にかなり近いからです。独学にも、授業で使うにも、構成に少し難があるのですが、イタリア語での文法説明や漢字を説明した表があり、演習問題も豊富で、わたしは大学でも、語学学校でも、この本を教科書として採用しています。(詳しくは下記リンク参照)音声CDはついていないものの、この本に書かれている日本語の音声は、インターネット上で、無料で聞くことができます。

 ポルトガル旅行については、今でも、親切な人々や美しい町、魚料理のおいしさなどを、よく覚えています。記事冒頭のガイドは、写真が豊富で、町の地図が詳しく、わたしたちのお気に入りです。(2020年現在の最新版へのリンクはこちら

 いつかブログで、このポルトガル旅行を、詳しくご紹介できたらと思うのですが、実は、苦い思い出もいくつかあります。旅行中、夫とけんかした直後に、うっかりカメラを公園のベンチに置き忘れ、後で気づいて戻った上、現地の警察にも届け出たけれど、結局見つからなかったこと。わたし自身に起こったことではありませんが、旅の最後にリスボンで合流した友人が、年代物のポルトを購入したのに、ちょうどわたしたちがイタリアに帰国する前日に、テロ対策として、飛行機に液体物持込制限が導入され、そうとも知らずに、手荷物でポルトを持ち込もうとして、高価なポルトをリスボン空港で没収されてしまったこと、などなど。カメラ本体もですが、せっかくの記念の旅行写真までなくしてしまったのが、とても残念です。夫のカメラは無事だったので、夫が撮影した旅行写真はあるのですが、さて、今その写真がどこにあるか、本人も知らないと思います。

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ポルトガルで買った、この旅行会話集もとても役に立ちました。

 短期間につめこんだことは、忘れるのも早いもので、5年前の旅行中には、大いに役立ってくれたポルトガル語も、今はあいさつや、よく使ったいくつかの文を、かろうじて覚えているだけです。obligado/aという感謝の言葉も、日本語の「ありがとう」によく似て、おもしろいので、頭に残っています。「ライスを運んでいただけますか。」という表現は、今でも丸覚えしています。ポルトガルでは、魚料理を頼むと、フライドポテトがついてくることが多かったのですが、こうして頼むと、代わりに白いごはんを運んでくれて、ずいぶん重宝しました。でも、「フライドポテトの代わりに」をどう言うかは、もう覚えていません。

LINK – Ottimi Manuali di Giapponese & Portoghese, Guida
- "Corso di lingua giapponese 1"(Hoepli)
- "Impara rapidamente il tuo portoghese" (De Vecchi)
- "Portogallo"(Le guide Mondadori)

関連記事へのリンク
- メルマガ第4号「イタリア語の効果的な学習法 - 音声の大切さ(2) (外国語のリズムを身につける)
- メルマガ第8号「イタリア語学習におすすめの教材(入門者編)」 (ポルトガル語、ギリシャ語の学習体験談)
- ブログ記事、「久しぶりの授業」(日本語の授業で使用する教科書や教え方について)

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by momo_capricci at 2012-01-28 07:35
こんばんは、お久しぶりです。
『サンティアーゴ』という言葉を目にして飛んできました!
お会いした時に少しお話ししましたが、2006年というと私たちが歩いた年です!ポルトガルから出発される予定だったのですね。残念でしたね・・・でも3週間じっくり観光できてよかったですね!
私もカミーノへ出発する前に独学で少しだけスペイン語をかじったのですが、現地ではほとんどチンプンカンプンでした(苦笑)
やっぱり、話せるのと話せないのとでは楽しさが全然違いますよね。直子さんぐらいしっかり勉強していたら、もっと友達できていたかも??
主人も私もポルトガルが好きなので、いつか旅行するのが夢です。旅行記楽しみにしています!
Commented by koba at 2012-01-28 13:36 x
発露  リンク先も含めて、浮かんだ言葉です。長年の切磋琢磨が堰を切ったように伝わってきます。
Commented by かや at 2012-01-28 23:20 x
こんばんは☆
確か、漫画版の「キャプテン翼」の世界編(?)で「ポルトガル語とスペイン語は方言ぐらいの違いしかない」っていうのがあって、最近のテレビ番組でちょこっと話に出てました。
ブラジルがポルトガル語なんでしたっけ。ポルトガル語がしゃべれるようになるとポルトガル語圏とスペイン語圏で話せて便利ですね。
あ~、僕は英語もほとんどしゃべれないですけど・・。
凸d(^ー^)応援pochi!
Commented by ぷー at 2012-01-29 01:13 x
なおこさん、こんにちは。
ポルトガル語、密かに憧れています。。。
例えばスペイン語は、こっちはイタリア語のままで現地の人と会話が出来るからいいんだけど、ポルトガル語は聞いていても、わかるようなわからないようなもどかしい感じ。わからないからか、ポルトガル語って聞いていると何だか甘い響きに感じます。素敵です。
しかしまだ手を出しませーン。仕事でポルトガルに行くことがあれば勉強するつもりですが、今は新たにイタリア語を勉強(また!)しだしたので、変に近い言語に手を出すと混乱しそうなので^^
ただいまの私の目標は、「もっとintellettualeな表現で喋る」です(無い物ねだりだー)。夫に尻を叩かれながら(表現でございますよ)頑張っておる次第であります。
Commented by milletti_naoko at 2012-01-29 17:30
momo_capricciさん、お久しぶりです。お二人がサンティアーゴまで歩かれたのは、2006年だったんですね。出会いと運命の不思議を思います。同行するはずだった友人たちが、すでにフランスからの巡礼を終えていて、この年はポルトガルから出発する予定だったので、それに便乗することになっていました。ポルトガルは、風景も町もきれいだし、人が素朴で親切で、すてきなところです。機会があれば、ぜひ訪ねてみてくださいね。
Commented by milletti_naoko at 2012-01-29 17:40
kobaさん、おはようございます。土地の言葉を少し勉強していくだけで、便利な上に、地元の人と交流もできて、旅がずっと楽しくなる、そういう魅力に目覚めたんです。「時間をかけて勉強すれば絶対にできる」と信じているから、気合いも入るのでしょう。
Commented by milletti_naoko at 2012-01-29 17:45
かやさん、おはようございます。『キャプテン翼』、なつかしいです。ブラジルの友人はペルージャにいるのですが、アメリカとイギリスの英語が違うように、ブラジルとポルトガルのポルトガルも発音や文法、言葉がいろいろ違っているようで、おもしろいなと思います。

応援のポチをありがとうございます!
Commented at 2012-01-29 22:19 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by milletti_naoko at 2012-01-30 04:59
ぷーさん、こんばんは。ポルトガルの方って、どうも支配者であったスペインの人にはまだ抵抗があるみたいで、バスでおしゃべりした、ごく温厚な老紳士も、「イタリア人はみんな親切だからね、でもスペイン人は…」と言っていたのを、今も覚えています。友人の一人は特に、スペイン語がネイティブ並みに話せるのですが、それでも、何も勉強せずに出かけて、ポルトガルで言葉が分からず、通じずに、かなり苦労したそうです。スペイン語とイタリア語の間では、単語も発音法もイントネーションも似ているので、何となく分かることが多いのですが……(義弟の奥さんの母国語がスペイン語なので、時々彼女が自分の家族や友人とにスペイン語で話しているのを耳にする機会があります。)

確かに、下手に複数の言語、特に互いに似た言語に手を出すと、混乱する可能性がありますよね。英語は、イタリア語とはかなりと違うのに、それでも、イタリア語を勉強し始めた頃に、英語でメールを書いたら、Englishがinglishになったり、andの代わりにeを書いてしまったりしているのに、自分で気づいて慌てた覚えがあります。(つづく)
Commented by milletti_naoko at 2012-01-30 05:00
ぷーさんへ2 (上からの続き)

「知性あふれるイタリア語を目指される」ということでしょうか。わたしも本当は昨年末にフランス語を勉強しようと思ったのですが、11月に重要な会談などで通訳をすることになったので、カチッとした、難しい構文もきちんと話せるようにイタリア語を再訓練しようと思って、フランス語よりも、イタリア語の強化訓練にあてました。大学などで教えたり、授業を受けたりすると、わりかし複雑な構文の話を聞いたり、口にしたり、読んだりする機会が多いので、意外とすらすら話せるのですが、授業のない月が続くと、日常会話のレベルのイタリア語はかなり文も単純、重文の利用になりやすいので…… お互いに、目標に向かって、頑張りましょう。わたしも、今年勉強したいフランス語が、イタリア語がごっちゃにならないように気をつけます。サンティアーゴへの巡礼には行きたいので、いずれスペイン語も勉強したいけれど、スペイン語については、イタリア語と混じっての混乱が、わたしも気になります。
Commented by milletti_naoko at 2012-01-30 05:08
鍵コメントの方へ
スペイン語圏に旅行されるんですね。どうかすてきな旅になりますように! あいさつやお礼の言葉一つでもだいぶ違います。数字も覚えておいた方が、地方の小さい店で買い物をするときには、楽だと思います。
Commented by kazu at 2012-01-30 23:48 x
こんばんは。ポルトガルのお話、興味深く読みました。私も2005年にツアーでポルトガルに行きましたが、「オブリガータ」の連発でした(笑)直子さんは、ポルトガル語もあっという間にマスターされるのですね。凄いなぁ。イタリア語で四苦八苦している私にはもう尊敬以外の何者でもありません。

そうそうお友達が没収されたのは、あのポルトの街のワインですか。何でも発酵の途中でブランデーを加えて発酵を止めるのだそうですね。だから甘くて美味なのだとか。ポルトの港町の美しい景色も思い出しました。私は「ファド」に使われるポルトガルギターを買ってきましたが、直子さんのお話を読んで、そういえば、このギターのお陰で税関で随分調べられて、ツアーの皆さんにご迷惑をおかけしたことを思い出しました。なんか懐かしいです。ポルトガルのお話、又UPして下さい。楽しみにしています。それとイタリアは寒波が来ているのですね。一昨年、年末にフィレンツェで寒波に遭いましたが、ほんとに寒かったです。日本も寒波襲来です。お風邪など召しませんようにお過ごしください。
Commented by milletti_naoko at 2012-01-31 16:59
kazuさんもポルトガルに行かれたんですね! ポルトガル語、かなり時間をかけて勉強しては行ったんですがそれでも、最初はコミュニケーションに四苦八苦しました。いいホテルなら英語も通じたのですが、着いた晩は、バイクの国際大会か何かがあって、どこの宿もいっぱいで、タクシーの運転手さんの知る宿を片っ端から回って見つかった安宿に泊まったため、宿の主人はポルトガル語しか話しませんでした。イタリア語が分かると、ポルトガル語とは、単語や文法構造に似た点が多いので、習得がしやすくなるのです。ちなみに、リスボンでは、イベリア航空の遅延のため、夜遅くに予約したホテルに着くと、すでに閉まっていたため、夜中に宿探しをすることになったのでした。

ポルトの港町、本当にすてきですよね。魚料理もとてもおいしいですし。ファドに使われるギターを買われるなんて、すてきですね。今朝も天気予報を確認したら、木曜日から気温がさらに下がって、最高気温が∸5℃とか―7℃とかいう日が1週間近く続くようです!! ありがとうございます。kazuさんもどうかお元気でお過ごしくださいね。
Commented by ゆん at 2012-02-01 00:26 x
ポルトガル語も勉強されてたんですね~
しかも、現地でそこそこ会話出来るほどに!
さすがなおこさん、大したものだなあ~

今年のフランス語も、なおこさんならあっという間に習熟されるのでしょうね^^

Commented by milletti_naoko at 2012-02-01 02:20
ゆんさん、1か月しか勉強しなかったので、忘れるのも早かったのですが、フランス語を勉強し始める前に、かつての学習経験を書いてみようと思って、記してみました。1年以上経ったのに、まだ読みかけの本を片づけてから、いよいよフランス語と思うのに、これがなかなか終わらないのでした~
by milletti_naoko | 2012-01-27 19:19 | ImparareL2 | Comments(15)