2012年 02月 01日
アルヴィアーノ湖めぐり

一昨年、2009年の1月末に、歴史ある美しい町、アメーリアを訪ねたとき、近くのアルヴィアーノ村に、湖と古城があると知り、以来、いつか行ってみたいと思っていたのです。しばらく冬眠していたアイゴを運転してみたいし、それには、夫が隣にいてくれた方が安心だとも考えました。(うるさいけれども、安心……)

前日から、大木を訪ね歩こうと心に決めたらしい夫が、アルヴィアーノの北にあるグアルデーア村にも、巨木があることを突きとめて、アルヴィアーノ行きを了承してくれました。

そこで、まずは、グアルデーア村でパニーノを買い、こちらのフユナラ(学名Quercus petraea、イタリア語 rovere)の大木を訪ねました。村で数人に尋ねたものの、この木を知る人がだれもいなかったので、朝インターネット上で見た地図の記憶を頼りに道を進み、なんとか見つけることができました。幹周4.5m、高さは20m。
緑の野山、そして遠くアルヴィアーノ湖を見下ろして、高くそびえる大木を眺めながら、草原に腰を下ろして、昼食のパニーノを食べました。

昼食後はいよいよ、アルヴィアーノ湖にある自然公園、Oasi del Lago di Alviano(訳すと、「アルヴィアーノ湖のオアシス」)を訪ねました。入園できるのは、9月1日から5月31日までの日曜日と祝日で、開園時間は午前10時から日没までとなっています。入園料は、大人5ユーロ、子供・お年寄り・団体客が3ユーロです。夏は、野鳥の繁殖期であるため、閉園となっています。受付では、野鳥観察用の双眼鏡(倍率10倍)を、1ユーロで貸し出しています。
入口(ingresso)から入り、上の図で、赤い線で示された散歩道を歩いて、いくつかあった観察小屋で、バードウォッチングをしました。テヴェレ川と湖にはさまれた小道は、さぞかし美しいことだろうと、散歩ができないかどうか聞いてみたところ、「左右に川と湖が見えて、眺めはすばらしいけれど、あまり手入れされていないので、倒れている木があったり、道が泥だらけだったりする可能性がある上、今日はもう時間が遅いから、また次回に。」とのことでした。

道沿いには、湖・湿地に住む動物や森に生きる動物について、絵や骨、木の実などを使って説明した学習看板が、あちこちに立っています。ちなみに、この掲示板は、イノシシ(cinghiale)について説明しています。

散歩道では、湖の周囲が筵(むしろ)で覆われ、野鳥たちが人間に脅えることなく、安心して暮らせるように、配慮されています。道沿いには、時々、こんなふうに木でできた野鳥観察小屋があります。小屋の中には、鳥の生活を脅かさないために、「静かに」(Silenzio)と掲示があります。

大人用の高い観察台と、子供用の低い観察台があり、観察台からは、湖や遠くの山々がきれいに見えます。肉眼では、遠くに小さく鳥が見えるだけなのですが、

双眼鏡を使うと、鳥たちが思いのままに、くつろいだり、泳いだりしているのが、よく見えて、興味深かったです。(わたしのカメラの性能ではこれが精一杯)

小屋の中には、鳥だけではなく、湖に棲息する魚の説明もありました。右上のtinca(日本語では「テンチ」)という魚は、トラジメーノ湖(下記リンク参照)周辺のレストランで、この魚の卵を使ったパスタやブルスケッタを食べる機会がよくあります。この図入りの説明のおかげで、今回初めて、どんな魚かを知ることができました。

aula(意味は「教室」)と名づけられた2階建ての建物の中には、動物や環境について学べる展示と野鳥観察台があります。写真手前に見えるのは、倍率50倍の望遠鏡で、これを使うと、遠くの鳥たちの様子が、くっきりと見えました。大きな鳥や小さな鳥、色や形も違う鳥が、そんなことに関わらず、ごく近くにいて、互いにくつろいで過ごしている。人間もこんなふうに生きられたらいいのに、と思いました。つい最近見た映画、『E ora dove andiamo?』を思い出しながら。

わたしが見ているとも知らず、あっちへ行ったりこっちへ行ったり、くるくる回ったり、身づくろいをしたりと、のんびりしているこの白いダイサギ(イタリア語、airone bianco maggiore)が、とてもかわいらしかったです。
アルヴィアーノの湖と湿地帯は、テヴェレ川の水を人工的に堰き止めた結果、生まれたものです。以来、湖を何千羽もの鳥たちが訪れるようになったものの、同時に狩猟もさかんに行われたため、自然環境保護運動が高まり、1977年にウンブリア州が全域で狩猟を禁止しました。以後、テルニ県がWWF、ENELなどと協力しながら、渡り鳥を始め、多くの動植物が棲息できる環境を整え、野鳥観察ができる散歩道や小屋を設置し、動植物について学べる場所として、オアシスを造り上げてきました。

バールで温かい紅茶を飲んで、いよいよ古城に着いたのは、午後5時過ぎのことでした。アルヴィアーノ城は、995年頃に、軍事要塞として建造され、15世紀末に改築されて、典型的なルネサンスの城として生まれ変わりました。現在では、城の上階は町役場として使われ、1階と半地階は、博物館となっています。10月から3月にかけては、この古城に入場できるのは、日曜・祝日だけで、開館時間は10:30-12:30、 15:00-18:00。本来、入場料は2.5ユーロのところ、オアシスの入園券を持つわたしたちは1.5ユーロで入れるとのことでした。ちょうどガイド付きの古城案内が始まるところだったのですが、日が暮れる時間帯だったために、屋内よりも、夕日に染まる湖を見ようと、今回は訪問しませんでした。オアシス入園による割引は、1か月間有効とのことです。

茜色に染まる湖を見に行こうと急いでいると、上から夫の声が聞こえます。上階が町役場となっているため、自由に階段を上って、窓から景色を眺めることができるのでした。

それで、わたしも、後について上ってみました。眺めはなかなかいいのですが、湖はあまりよく見えません。

夕焼けに染まる空と湖の眺めを楽しみながら、古城の周囲を散歩し、それから、帰途につきました。帰りは、日が暮れて暗くなってきた上、カーナビが、なぜか押し黙っている上に、来るときに通ったのとは違う、カーブの多い細い道を示すので、途中から、夫に運転を代わってもらいました。うんともすんとも言わずに、わたしを不安のまま運転させ、夫をいらだたせたこのカーナビ、ペルージャに入って、我が家がもう近いというときになって、突然、ようやく道案内を始めたのでありました。ここまで来たら、もう案内の必要はないというときになって……
参考リンク / Riferimenti web
- amazon.it - E Ora Dove Andiamo? [film DVD]
関連記事へのリンク / Link per gli articoli correlati
- アメーリアとプレゼーペ1 / Amelia ed i Presepi 1
- アメーリアとプレゼーペ2 / Amelia ed i Presepi 2
- 巨木にあいさつ / Incontro con la Grande Querca a Nottoria di Norcia (28/1/2012)
- 初夏のポルヴェーセ島2 / Lago Trasimeno in estate(トラジメーノ湖とその魚料理)
Articolo scritto da Naoko Ishii
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現代的には機能性は???といったトコでしょうか。
カーナビ困ったチャンになっちゃいましたね。
2週間くらい走らなかったりすると車の現在地が道路とはかけ離れた所を指しているといったコトは何回かあります。
私のだけかもしれませんが。
コレはGPSのズレかなと思ってますが黙ってしまったのはナゼでしょう?
雪道は危険も伴いますがチョイチョイ愛車は走ってあげてください。
湖の静かな風景、古城の風景も良いですね。
新車で行かれたんですね。カーナビ付きですか。うらやましい。
日本には、電車の切符とレンタカーの予約を合わせてやると切符代が安くなる「トレン太くん」というのがあって、遠くに電車で行く時に利用することがあるんですが、レンタカーにはわりと性能の良いカーナビが付いているので助かります。
でも、やっぱり操作を覚えたり、そのカーナビのクセみたいのを覚えるのには時間がかかりますね。慣れた頃にはレンタカーなのでさようならですし(笑)
凸d(^ー^)応援のpochi!!
カーナビ、時々いきなり駄々をこねるというか、言うことを聞かなくなるので困ってしまいます。道は図示していたのに、なぜか音声がありませんでした。カーナビも車も、まだまだ使いこんでいないので、使い方を知らない点がたくさんあります。アドバイス、ありがとうございます。これから10日ほどは、おもてが冷凍庫と化すので、運転は控えますが、雪や凍結の恐れがなくなったら、もっと走ってあげたいとわたしも思います!
応援のポチをありがとうございます!!

今年もミラノに降り立ちたいと思っています。
近ければ、行けるのですが。
調べてみたいと思います。
私のお唄の先生は、イスラム教徒で、日本でただ一人のアラブ楽器カーヌーンの演奏者です。
平和活動家でもあり、音楽を通して、平和を呼びかけています。
映画のご紹介も合わせて、楽しませて頂きました。
野鳥さんも大切にされていますね、こうして保護されるのは幸せですわ。
お城も色々なことに使われてるのはいいですね。
夕景の写真素敵です~
茜色の空にときめきますわ。
娘のカーナビは古くて昔の道を案内しますの、回り道ばかりしますわ。
アルヴィアーノはミラノからはとても遠く、はるか南方、ローマとペルージャの間にあります。またいつかローマを拠点とされるときがあれば、アメーリア地方にも足を運んでみてください。ご旅行、楽しみですね。
ムームーさんのお嬢さんの車にもカーナビがあるんですね! 昔の道を案内されると困りますよね。
たぶんイタリア語の学習というと、形容詞や冠詞、動詞の変化に、皆さん、息をのんで足踏みされるのだと思います。確かに文法を知り、正しく使えることは大切ですが、外国の方が、たとえば「わたしをチョコレートが食べる」と、「てにをは」を多少間違えても言わんとすることはきちんと伝わるように、多少語尾変化を間違えても、意味はきちんと伝わります。いくら文法練習を繰り返しても、やはり聞いたり読んだり話したり書いたりを重ねなければ、正しくすらすら口から出るようにはならないので、「まだこれができていないから」とあまり立ち止まらず、(つづく)
とりあえず一通り一冊入門書を終えて、あとは触れるイタリア語を増やしていくことが大切かと思います。イタリアでは、イタリア語を勉強しないまま移民としてイタリアに来た人のイタリア語の発達研究がさかんなのですが、こういう移民は、初期の段階では、動詞をまったく活用させずに、同じ形だけで、何とかコミュニケーションをすませてしまうんですよ。きちんと学ぶのは大切ですが、完璧主義になりすぎて、先に進めないと逆効果ですし、わたしも夫とのんびり話しているときやケンカして頭に血が上っているときは、自分が口にしたイタリア語に、文法の初歩的な間違いがあると気づくこともあります。(気づかないときも多いと思います。)
アマゾンに限らず、オンラインでは、商品を買う前、映画を見る前に、あらかじめ他の人による感想・評価が分かるのがとても便利だと思います。ただ、評価にはあくまで個人差があるので、あまり頼ってはいけないと思いつつ、事前調査をしすぎるきらいのあるわたしです。極端な当たりはずれが少なくなるというのがありがたいです。
すっかりご無沙汰してしまいごめんなさい!!!
ペルージャでは本当にお世話になりました。
naokoさんの記事を拝見して、ああ、そうだった!と自分が記事を書きながら記憶がどんどんとよみがえってきました。
帰ってきてから風邪をひいたりで、なかなか旅行の記事がかけなかったのですが、ようやくペルージャとスポレートの記事をUPしました。
本当にあちこちをご丁寧に案内していただき、感謝、感謝です。
アイゴも私たちを乗せて忙しかったですね。
イタリア、寒そうです。
かくいう東京も寒いの。
naokoさん、お風邪などお召になられませんように!!!
またお目にかかれる日を楽しみに!
もう風邪は大丈夫ですか? 東京での日常生活に戻られて、お忙しいこととは思いますが、日本・イタリアともひどく寒い日が続くようでもありますし、どうかお体を大切に。わたしも、またお会いできる日を楽しみにしています。
ところで、この映画知りませんでした。面白そう〜。
こういう映画って日本でも上映されたりしてるのでしょうか?映画館に入るのが苦手だったから、イマイチ日本の映画事情に疎いんですけど、映画馬鹿の夫のお陰で(殆どオタクです)、イタリアではいろんなものを見に行き、楽しめるようになりました。とはいえ、仕事が大変だったので(夫の。私は不況のせいで暇…泣)、ここ1年大して鑑賞出来ていませんでしたが、またいろいろ観に行こうと思っています。
イタリアでは日本に比べて映画料金が安く、余暇の時間が多いためもあるのでしょうが、日本人のわたしたちの感覚からすると、びっくりするくらい、しばしば映画館に行くという人が多いですよね。うちの夫もその一人で、あまり回数が多いので(月に2度でいいとわたしは思うのですが、譲歩して週に1回はつきあっています)、スリラーや血の飛びすぎるアクションは、友人と行ってもらっています。ただ、おかげで時々本当にいい映画を見られるのでうれしいです。この映画、本当によかったですよ。機会があれば、ぜひご覧ください。