イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

灰の水曜日と四旬節中の肉断ち

 昨日の懺悔の火曜日をもって、謝肉祭の期間も終わり、今日、2月22日から、四旬節(Quaresima)に入ります。四旬節の初日である今日は、灰の水曜日(Mercoledì delle Ceneri)。以後、復活祭までは、心身を共に清め、精進に努める期間となります。

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Santuario della Verna 26/2/2011

 40日間にわたるイエス・キリストの受難を分かち合うために、この期間だけは、カトリック教徒には、金曜日に肉を食べるのはご法度だ(詳しくは下記リンク参照)とは覚えていたのですが、「四旬節初日の灰の水曜日、つまり今日も、肉を食べてはいけない」ということは、昨晩お義母さんに聞くまで忘れていました。

 昨夜夫に話すと、「そうだよ。四旬節は、金曜日だけでなく、初日も肉は食べてはいけないんだ。」とのことです。それだけならいいのですが、「でも卵やチーズは食べていいのだろう」と思っていたら、なんと「卵や魚、チーズも、動物からできたものは避けなけばいけないんだよ。」と言うではありませんか。そうとも知らず、代わりにタンパク質源となってくれるレンズマメは、月曜の夜に料理したばかりで、豆腐は切らしてしまっているわたしは、どうしようかと焦りました。

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La Verna 26/2/2011

 ひどく心配そうな顔をするわたしに、「明日、母さんに聞いてみれば。」と夫が言ったので、今朝さっそくお義母さんに尋ねてみました。返ってきた答えが、「戦争中は、肉だけではなくて、魚や卵、チーズなど、動物に由来する食品はすべて食べてはいけないと言われていたけれど、今は食べてはいけないと言われているのは鳥や獣の肉だけで、魚も卵もチーズも、食べていいのよ。」だったので、安心しました。

 ペルージャでは、この数日気温が上がり、積もっていた雪を、雨や太陽がすっかり解かしてしまいました。今日は晴れているものの、雪から地面に浸透した水分が抜けないため、野菜畑は泥だらけで、寒さに傷んだ野菜も多く、野菜の収穫は期待できないと、お義母さんから聞いています。

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  というわけで、今夜の夕食は、タラとポテトの香り焼き(レシピは下記リンク参照)に決定しました。

 今日、灰の水曜日には、教会でミサがあり、信者が一人ひとり司祭の前に並び、灰を頭に受ける灰の式が行われます。(詳しくは下記リンク参照)水曜日は平日で、仕事のためにミサに参加できない人も多いため、灰の式は、四旬節の最初の日曜日のミサでも行われます。我が家では例年、義父母は灰の水曜日当日に、夫とわたしは四旬節最初の日曜日に、ミサで灰の式に参加しています。わたしはカトリック教徒ではないので、聖体拝領の列には並ばないのですが、カトリック教の神父を伯父に持っていた夫が、信者でなくても、灰の式には参加できるのだと言うものですから……

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 わたしは、枕元に本を置いて、就寝前に少しずつ読むようにしています。2月15日水曜日の晩に、この本、『Nostro fratello di Assisi』を読み始めました。うちにはもともと、聖フランチェスコの自伝は何冊もあったのですが、この1冊は、アッシジで修道士を務める友人が、「聖人の魂に触れるなら、この1冊」と勧めてくれたものです。昨年4月に、リミニの友人たちとスペッロからアッシジまで歩いた翌日、この友人がサンタ・マリーア・デッリ・アンジェリ教会で、聖フランチェスコの人生について語ってくれたのですが、その話がそれは感動的だったので(詳しくは下記リンク参照)、他の友人が、「聖人の数ある自伝の中で、これはといい1冊を勧めてほしい。」と尋ねたときに、「ならばこの本」と、教えてくれたのが、この1冊です。

 買ったのはわたしですが、読むのは夫に先を越されました。まだ最初の30ページほどを読んだばかりですが、まずは当時の歴史背景から入り、次に、聖フランチェスコ自身が残した言葉や規則から、母親が聖人に与えた影響と愛の深さを洞察しています。これまで読んだ伝記とは、切り口の角度もその深さも違うので、新鮮で興味深いです。

関連記事へのリンク / Link per gli articoli correlati
- イタリア語学習メルマガ第37号 「お祭り騒ぎから精進の日々へ」
- 祈りを日本に(灰の水曜日、灰の式について)
- タラとポテトの香り焼き、イタリア風(レシピの紹介)
- アッシジを歩く1 ~ポルツィウンコラ / Passeggiata ad Assisi1 – Porziuncola (anche in italiano)
↑ 修道士の友人が語ってくれた、聖フランチェスコの人生
- Amazon.it - Ignacio Larranaga, "Nostro fratello di Assisi"
↑ 修道士の友人が勧めてくれた聖人の伝記、私からもおすすめ!/ Biografia di San Francesco, bellissima
- 雪のラヴェルナ1 / La Verna con neve 1 (26/2/2011)
- 雪のラヴェルナ2 / La Verna con neve 2 (26/2/2011)

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by bianchi_saitoh at 2012-02-22 22:27 x
なおこさん、細かな習わしごとを忠実に行うのは大変ですね。

ウチも茶飯にけんちん汁、大根とにんじんの酢の物、ゴマメを神棚に供える日があったりするのですが、私は毎度ノータッチなので何の日だったか覚えてません。
お恥ずかしい。

今は省略してしまったモノもあります。
もっと記憶しておけば良かったなと思うことがこうして思い起こすとありますね。
Commented by milletti_naoko at 2012-02-22 23:56
bianchi_saitohさん、神道でも、そういうふうに、きちんとお供えしなければいけない日があるんですね。日本では、宗教は、母の親戚が神道(亡き祖父が神主)で父の親戚は仏教だったため、うちには仏壇がありましたが、やはり、イタリアの夫の家の方が、生活のすみずみにまで、ずっと宗教が浸透しているなとつくづく思います。
Commented by kazu at 2012-02-23 00:15 x
なおこさん、先ほどはコメントをありがとうございました。記念のお食事は、大変ですね。一年に何度も食べ物に関するこうした規制のような慣習があるのですか。肉類が食べられないのはちょっと辛いですね。

聖フランチェスコの伝記、アッシジを見てきたばかりなので興味があります。文章は難しいでしょうか。初心者でも読めそうですか。それとメルマガの童歌はおもしろかっです。イタリアでも韻を踏むのですね。これは曲がついているのでしょうか。歌うとすればやはりカンツォーネなのかな
Commented by milletti_naoko at 2012-02-23 07:07
kazuさん、どういたしまして。だめなのは肉だけで、魚や卵はいいということで助かりました。今日も、まだ残っている謝肉祭の甘くおいしいストゥルーフォリを、夫もわたしも食べました。肉を使っていないからいいんだそうですが、あまり節食になっていないような……

この伝記の文章は、一般の読み物に比べると、特に難しいわけではなく、むしろ読みやすい方ですが、初心者の方にはやはりかなり難しいと思います。メルマガのわらべうた、楽しんでいただけてうれしいです。オンラインでいろいろ探してみたのですが、曲につけて歌ったものも、朗読したものも、残念ながら見つけられませんでした。これは現代イタリアの詩ですが、中世イタリアの詩と中国の漢詩の脚韻の使い語って、妙に似通っているので、それを知ったときに、おもしろいなと思いました。
Commented by ムームー at 2012-02-23 10:14 x
なおこさん
こういうお話を聞かせて貰うと知らない世界なのに身近に感じます。
京都の家に嫁ぎましたがあまり格式ばったことを好まなかった姑さんで助かったような、もっと習えば良かったと最近思います、子供たちに受け継がせるものはやはり大切ですねぇ。
Commented by milletti_naoko at 2012-02-23 16:19
ムームーさん、ということは、京都はやはり歴史と伝統のある町だけあって、格式や決まりごとのあるお宅も多いんですね。イスラム教など、他の宗教に比べると、カトリック教ではふだんの食事には制限がなく、限られた期間中や日だけなので助かります。奈良・平安時代には、日本でも、仏教の影響で、動物の殺生や肉食がタブー視されることが多かったそうです。調べていたら、味噌や豆腐、しょうゆなどの大豆食品は、もともと、精進料理・菜食主義で不足しがちなタンパク質を補うために生み出された(Wikipedia日本語版「精進料理」の項から)と分かり、興味深かったです。
Commented by yuzuko at 2012-02-23 17:29 x
なおこさん、こんにちは。
イタリアは、カソリックの国。
「灰の水曜日」というのは、初めて知りました。
私は、幼稚園はカソリック、
高校、大学はプロテスタントでした。
今、お唄の先生は、イスラーム。
宗教文化(と言っていいのかわかりませんが)
断食に似たものを想像してしまいました。
物理的に有り余る日本にいると。
何が大切か、いつも意識することを考えてしまいます。
いつも示唆のあるブログ。
楽しんで拝読しています。
Commented by milletti_naoko at 2012-02-23 21:41
yuzukoさん、こんにちは。幼稚園や学校、そして趣味を通して、いろんな宗教に触れる機会があったんですね。イタリアも物は豊かではありますが、それでも宗教上のこういう慣例を、今も守っている人も多いようです。イスラム教も、宗派や国によって違うのでしょうが、ペルージャで知り合ったイスラム教徒の友人からは、豚肉が食べられない上に、お酒も飲めないと聞きました。楽しみにしてくださって、ありがとうございます。
by milletti_naoko | 2012-02-22 12:53 | Feste & eventi | Comments(8)