2012年 03月 04日
奇跡の国、ニッポン
表紙のデザインは、日の丸を基調とし、とりわけ大きく描かれた紅の円に、「奇跡の日本、以前よりもさらに強く」(Giappone dei miracoli. Più forti di prima)と見出しが書かれ、その下に、小さな活字で、「地震と、津波、原子力災害に打たれ、長期の危機そ強いられたかに見えた日本。ところが、たった1年後、再び立ち上がり、回復が始まった。決してくじけることなく(、くよくよと涙にくれてばかりいない)国民のおかげで」とあります。(「 」内は石井訳。)
赤丸の下には、大きく両腕を広げ、掲げた力士の写真があります。困難にくじけずに、両足をしっかりと地面につけて、国を支える日本国民を、象徴しているのでしょうか。
東北自動車道をわずか6日間で復旧し、福島から約80kmの距離にある仙台空港で、30日後には一部運航が再開など、驚くべきはやさで、大災害後の復興や経済の持ち直しが行われていることを讃え、「困難な状況にも耐えることができ、我が身が逃げることではなく、同胞のために何ができるかを考える国民性のおかげ」、「政治家は頼りにならなくても、国民が自分たちで指針を見つけて進んでいけること、経済力の強さの賜物」としています。
震災による被害状況をまとめ、不安定な政治や国民の政治不信、東京電力発表データの信憑性の薄さにも触れつつ、国際的な学際調査団の長期にわたる調査結果を踏まえて、現在の日本における放射能における汚染状況を、簡潔に説明しています。
記事には、沖の深海では、もう放射能汚染の心配はないものの、沿岸地域の魚や淡水魚、土壌では、まだまだ汚染が著しいと書かれています。
本当は、地震の爪跡がまだ深く、今も自宅に帰れずにいる方や、地震当時、あるいは現在も、放射能汚染の強い地域に住まれて、不安と隣り合わせに暮らされている方も多いのは、十分承知しています。ただ、この特集では、政府や東京電力の対応の問題点にも触れながら、それでも自分たちの力で助け合って立ち上がろうとする、そういう国民の姿に焦点が当てられ、自ら被災地に留まることによって、被災地の経済復興を支えていこうという人々の声も取り上げられています。災害を受けた方の深刻な状況には触れていないものの、日本を励まし、「わたしたちも応援しています、日本の姿勢に見習いたいと思います。」という声援が、どの記事の背後にも響いているように感じました。
そうして、その日本の地震後の復興のはやさに驚き、敬服する様子が、心からのものであることが、昨夕たまたま、ノチェーラ・ウンブラの町を訪ねてよく分かりました。昨日、ペンニーノ山へと散歩に出かけたとき、行きがけに見かけた町並みが美しかったので、登山の帰りに、立ち寄ってみたのです。1997年に、イタリア中部のウンブリアとマルケを大震災が襲ったとき、この町は建物が崩れ落ち、ほぼ壊滅状態となったそうで、夫の弟は、一時期、ノチェーラ・ウンブラ再建のために、ここに移り住んで働いたそうです。
もう地震以来、14年半建っているので、もう再建も済んだことだろうと夫が言うので、訪ねてみたノチェーラの町。それが、復旧作業はいまもまだ終わっておらず、
再建された美しい家も、まだ電気や水道が通っていないためか、いろいろな配線がむきだしで、ほとんどが空き家になっています。
町の一番高い位置にあるこちらの教会も、まだ復旧が終わらず、入ることができません。門の外のバールで一息ついて話を聞くと、今中心街に住むのは4家族だけで、知人の多くが地震で恐い思いをしたために、「たとえ町が元の姿を取り戻しても、もう帰るつもりはない。」と言っているそうです。そういうバールの主人も、やはり町から1km離れたところに暮らしているとか。地震で壊滅状態になったとは言え、放射能の恐れはないのに、こうして復旧作業が依然として進まず、町民が戻らない。先の『Panorama』の記事は、そういうイタリア各地の状況を踏まえて書かれているのだと思います。
YouTubeに、2009年3月のノチェーラを取材したニュース映像があります。(2018年注: 現在は見ることができないため、記事に添えていたリンクを削除しました。)題名には「ゴーストタウン(città fantasma)」とあり、わたしたちも、町を訪ねてそういう印象を受けました。3年後の今ではかなり修復が進んでいますが(映像に登場する教会は、けれど、1998年に再建完了予定でした)、中部イタリアでさえ、地震後の再建にこれだけ苦労している現実があるのです。
東日本大震災後も、放射能汚染の恐れがあると知りつつ、地元に残る方のために、そして、復興支援のためにと、訪れる人々のためにも、政府は、汚染の実態の公表や放射能除去に、積極的に取り組んでもらいたいものです。一番弱い立場にある人、困っている人が幸せに暮らせるように図れば、皆にとってよりよい社会になると読んだことがあり、そのとおりだと思います。地震だけではなく、日本の経済成長の、豊かさの犠牲となった東北地方の人々が、再び安心して暮らせるようになって初めて、日本という国がきちんと機能し始めるのだと思います。『Panorama』の記事には、「政治への不信がこのまま募れば、リーダー不在では、日本社会に深刻な危機が訪れる可能性がある」とありますが、わたしは今回の地震をきっかけに、逆に、国民の一人ひとりが、政治家に任せていてはいけないことや、政府やマスコミの情報に偏重・隠蔽の傾向があることに気づき、真の民主主義の兆しが見え始めたのではないかと思い、そういう意味では、希望を持っています。
『Panorama』の記事には、今年2月17日現在、犠牲者は15870人、行方不明者は3287人とあります。多くの方の大切な命を、そして大切な家族を、家を、ふるさとを奪った地震と津波、今も押しかかる放射能汚染の危険と不安。天災と呼べる被害と、十分に対処していれば、経済よりも国民の健康や環境を優先していれば防げたはずの人災。命を落とされた方々のご冥福を、そして、被災地の方が一刻も早く、元通りとは言わないまでも、それに近い暮らしを取り戻せるように、心からお祈りしています。そうして、日本という国が、これからも奇跡を生み出し続けていけますように。
日本に住まいしていても知らされていない放射能のことなどであきれています、隠されていることがどれだけ多い事でしょう。
そんな中でも地元で仕事をされたり漁業を再開されてる姿をみました、魚への影響に心が痛みます。
東電には開いた口がふさがりません、長年の癒着があるのですね。
こんな風に励まして見守っていただいて感謝です、ありがとうございます。
新しいお家も着々と進んでいるようで楽しみが
ありますねぇ~私までわくわくします~♪
そんな中、こんな風に異国の人達がこうやって私達の国のことを取り上げてくれるのは本当にうれしい事ですよね。そして、同じ日本人としてがんばって復興にとりかかっている東北の方々を心から誇りと思ってしまいます。もちろん、そんなきれいごとでは片付かない大変な日々をいまだ過ごされていると思うのですが・・・。なんて、色々と書いてしまってすみません。またお邪魔させて頂きます。海外での暮らし、大変な事もお互い色々とあると思いますが、がんばりましょうね☆
日本の家族と話をするとき、原発被害の実際を知らなさ過ぎる彼らに(それは彼らの責任ではない)、呆れています。相変わらず臭いものには蓋をして、市民に本当の事を知らせないマスコミや政府には怒りを通り越したものがあります。弟は福島で防護服を着て処理活動をしていますが(東電関係でも自衛隊でもありません)、健康への影響も考えると、本当に気が揉めて仕方がありません。
ところでイタリアでの震災被害は、ラクイラのものだけではなく、何と81年(あれ、80年でしたっけ?)に起きたナポリの地震の事後処理もまだまだ滞っているものがあるはずです。
義父の実家はベネヴェントの片田舎にありますが、震災で崩れた家を修理するのも、今から10年ほど前にやっと終わったくらいですから(国か市がお金を出してくれるのがストップしたり、とにかくいろいろと話が真っ直ぐに進まなかったようです)。
どちらの国も政府の対応が悪いので、本当に腹が立ちますが、実体験から言いますと、結局私たち一人一人がガムシャラに前だけを見て進むことが、一番の復興への道のように思います。
まとまりなくてすみません。
「政治家は頼りにならなくても、国民が自分たちで指針を見つけて進んでいけること、経済力の強さの賜物」って、分かってますね~(笑)
良い記事ですね。確かに、あの大地震のショックから、わずか数ヶ月で持ち直しているんですから、芯の強い国なんだなと思います。
また、国の中でたくさんの助け合い・支援の動きがあり、「同胞のために何ができるかを考える国民性のおかげ」というのも確かにそうですね。
放射能に関しては、福島県でも近県でも、まだまだこれからも悩まされそうです。心配なのは、これからの山岳地帯からの雪解け水にどれだけ含まれているか…。
風評被害はいけないと思いますが、実害が心配なのは近県の人でも同じです。本当に食べて大丈夫なのか、いろいろ蓄積して健康に影響が出るのではないか、と不安になります。
凸d(^ー^)pochi
皆さんが書かれている通り、国も行政もあてには出来ません。自分達の身は自分達で守らないとって思います。放射能は心配ですがでも東北も必ず復興します。私は今会津のお米を食べていますがせめてもの応援です。日本人全員が東北を見守っています。そうそう、犬を助けるボランティアにイタリアの女性が福島に入って下さいました。世界中から支援を頂いて感謝です。ノーチェラも教会もトラットリアも劇場もあって綺麗な町だったでしょうに。何とか元通りになればと願います。
ラクイラでも作業が滞り、地元の方がやるかたない思いでいることを伝える報道をよく見聞きしますよね。今回ご紹介したのは、1997年のウンブリア・マルケ大地震の被災地なのですが、それでは1980年のナポリの地震でも、まだ事後処理が滞っているんですね。政府の対応の悪さで、いつまでも再建が終わらず、長年避難生活が続くのは、りっぱな二次被害、人災のような気がします。自分たち一人ひとりがガムシャラに進むことの大切さ、そのとおりだと思います。
政府が、経済や体裁だけではなく、本当に国民のためを思って、動くように、声高に訴え続けていく必要がありそうですね。応援のポチをありがとうございます。
わたしも東北は必ず復興すると信じています。ただ、地元の人やボランティアに日本各地・世界各地から駆けつける方が、せめて放射能汚染の心配をせずに、作業に取り組めるように、放射能除去を進めると同時に、一般家庭でもできる除染方法を紹介し、汚染の現状を隠すことなく伝えてくれればと思います。世界中から支援を受け、復興の早かったアッシジに比べ、ノチェーラは被害もひどかったのでしょうが、やはり国や市の怠慢で復旧が遅れ、ただでさえ地震を恐れる地元の人の気持ちと足がますます遠のいているのでは心配です。
イタリア誌で日本の震災のことを掲載してとても気にかけてくださっていることを知ることが出来、日本に住むひとりとしてとても温かい気持ちになりました。
あの日から、日本に住む皆の意識も、世界の方々の意識も、なにかが変わったように感じています。
(小声:政府の方々はちょっと意識が違う方向に行ってしまっているのが残念でなりませんが(--;)
復興へ向けて一歩一歩進んでいく東北の方々を応援しながら、自分に出来る小さな小さなことを見つけて過ごしていきたいなぁと、記事を読み終えて思いました。
なおこさん、温かい記事を書いてくださりありがとうございました(^人^)
経済や生活の表面的な豊かさだけを追い求めていてはいけないのだ、本当に大切なものは何かに、国民は、世界の人々は、改めて気がついたのに、政府の方にその意識がなかなか芽生えてこないのが歯がゆいです。こちらこそ、うれしいコメントをありがとうございます。