2012年 04月 06日
近づく復活祭、聖金曜日とペトラルカ『カンツォニエーレ』
昨年の聖金曜日は、ラヴェルナで、主の受難を思い起こす典礼に参列しました。(下記リンク参照)
今日の午後は、夫と義弟と共に、ミジャーナの改築中の家を見に行きました。家の前のテラスと階段が、着々とできあがっています。
屋内も、前回、セメントを流し込む予定であった場所には、すでにセメントの床ができあがり、今は、別の部屋にセメントを流し込む準備が整っています。
連日の雨風で、散った桜の花も多く、周囲の地面は、花びらに覆われていました。
最後の晩餐のときに、イエス・キリストが十二使徒の足を洗い、弟子たちに、「あなたがたも互いに足を洗わなければならない」と告げたことから、聖木曜日(Giovedì Santo)の教会のミサでは、洗足式(Lavanda dei piedi)が行われます。聖木曜日であった昨日、わたしたちの教区教会では、12人の子供たちの足を洗ったのですが、義弟の住むトーディの教会では、十二使途を装い、白い布をまとった大人たちの足を洗ったそうです。
ちなみに上の写真は、この聖木曜日の洗足式ではなく、わたしたちが昨年10月に、リエーティからローマのサン・ピエートロ大聖堂までの巡礼を達成(下記リンク参照)した晩に、ローマの巡礼宿で行われた洗足式です。宿を運営するボランティアの人たちが、その日ローマに到着した巡礼者全員の足を、順に洗ってくれました。
ひどく天気が悪いのですが、夫は、こういう天気こそ、イエスが受難の死を遂げた日にふさわしいと言います。今日は、聖金曜日であり、かつ4月6日。わたしは、ペトラルカの詩を思い起こしました。
Era il giorno ch’al sol si scoloraro
per la pietà del suo Factore i rai,
quando i’ fui preso, et non me ne guardai,
ché i be’ vostr’occhi, donna, mi legaro. (Canzoniere III)
あれは、日の光さえ、
創造主の苦しみのために、色を失った日。
ちょうどその日のことだ。無防備だったわたしが、
あなたの美しい瞳に魅せられ、恋の虜となったのは。(石井訳)
これは、イタリアの14世紀の詩人、ペトラルカの代表作、『Canzoniere』の中でも、特に有名な詩の冒頭です。恋する女性との出会いを語るにしては、暗澹とした空気に満ちているのは、この日がちょうど聖金曜日であったいう設定になっているからです。そして、3行目に「無防備だった」(non me ne guardai)とあるのは、主の受難で心がいっぱいで、恋に対する防備にすきがあったということです。以後、詩は、「この日に、わたしの苦しみ、恋の病が始まったのだ」と続いています。苦しみを引き起こすことが多い恋であったとは言え、その対象である女性との出会い、恋に落ちた瞬間を、イエス・キリストの受難と死、聖金曜日に重ねて詠んだ詩であることが、授業で習ったときから、とても印象に残っていました。ペトラルカは、ダンテ、ボッカッチョと並んで、イタリア語の3人の父(tre padri della lingua italiana)の一人と称される文人です。
ミジャーナから帰宅すると、家中に、復活祭のパン(Torta di Pasqua)をオーブンで焼く独特の香りが満ちていました。わたしたちの留守中に、お義母さんが材料を準備し、義弟がパンをこねたようです。
わたしたちの教区教会では、明日土曜日の午後3時から7時まで、食べ物の祝福が行われます。今日焼き上がった復活祭のパンは、ゆで卵、ヴィンサントと共に、明日教会に運ばれて、祝福を受け、復活祭の当日の朝食となるのです。
参考資料 / Riferimenti bibliografici
- Francesco Petrarca, “Canzoniere” (I Meridianani, a cura di M. Santagata), Mondadori, 2004.
- C. Segre & C. Martignoni, Testi nella storia. La letteratura italiana dalle origini al Novecento 1. Dalle origini al Quattrocento, Scolastiche Bruno Mondadori, 2000.
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- イタリア語学習メルマガ第18号⑴「ダンテ『神曲』の冒頭を読む⑴」 (14/8/2009)
重厚な感じのお家が素敵です。
なおこさんの所でこうして教えていただいて私も少し色々な意味がわかりますわぁ。
単に復活祭~って思っていただけでした。
嬉しいです~ありがとうございます。
夫の昼ごはんの準備をします、野菜の煮込みにしょうかなぁ。
お母様が作られたパン美味しそう~
応援のポチをありがとうございます!
ところでイタリアにも桜の木があるんですね、今のところ旧市街では見当たりません。3月末に日本を発ったので今年は見逃しました・・・。