2012年 04月 18日
いのちの歌、エディット・ピアフ

深く激しく愛するほど、受ける心の痛みも大きくなります。母の愛に恵まれなかった少女時代に、愛情でいっぱいに満たしてくれた優しい娼婦たちとの、突然の別れ。

生涯の恋人は自分だけの人ではなく妻子があり、しかも、飛行機事故で死亡。激しく愛した分だけ、傷つくことも、苦しむことも、きっと多かったはずの彼女が、そう厳として言い切る姿勢に、心を打たれました。

昨晩、Rai5で放映されていた映画、『La vie en rose』(邦題は、『エディット・ピアフ~愛の賛歌~』)を見ました。主人公であるフランスの大歌手、エディット・ピアフ(Edhith Piaf)が、運命の荒波に翻弄され、自らの激しい気性や繊細な感受性に足元を見失いながらも、しっかりと舵を握って、人生の航海を続けた姿に、感動しました。
ピアフが力強く歌う歌に、バックミュージック。映画を見ながら、ピアフの人生のドラマに立ち会うと共に、美しい音楽を存分に楽しむことができました。

そして、ピアフのように豊かな素質と才能に恵まれた歌手でも、その原石を磨き上げるためには、師匠との出会いと涙ぐましい努力があり、初めて劇場の舞台に立つ前には、おののくような不安を感じていたのだと分かって、勇気づけられました。
同時に、太宰治やオスカー・ワイルドもそうなのですが、人の心を打つ美しい、すばらしい作品を数多く残した芸術家が、不器用に、苦しみながら数奇な人生を送るのは、やはり、卓越した感受性と才能が、両刃のやいばとなったためだろうかと思いました。
そうして生き抜いてきた彼女が出会い、「ああ、まさにこれがわたしの人生」と言って歌った歌、『Non, je ne regrette rien』。(邦題は『水に流して』で、何だか違うような気がします。)
つらいことも苦しいこともあったけれど、後悔はしていない。喜びも悲しみも、それが今のわたしを育ててくれたのだもの。
ピアフが、「ああ、この歌は、わたしの人生そのものだ。」と、歌に飛びついた気持ちに、心から共感し、この美しい歌を、深い感慨と共に、味わうことができました。
昨夜の放送では、イタリア語字幕のついた歌はごくわずかだったので、特に、ピアフの人生と重なりそうな歌については、歌の内容が気になりました。フランス語を勉強して、歌詞が分かれば、映画の鑑賞が深まりそうで、DVDもぜひ購入したいなと思いました。日本で販売されているDVDなら、すべての歌に日本語字幕があるかもしれないと思ったのですが、値段がひどく高いので、10ユーロ以下で買えるイタリア向けのDVDを購入するつもりです。幸いイタリア語とフランス語の二重音声で、イタリア語字幕つきでフランス語で鑑賞することもできるので、もっともっとフランス語を勉強したあとなら、とてもいいフランス語の学習教材になるし、原語で映画をよりよく鑑賞できるはずです。

今年初めに、フランス語学習のために、入門書やCDを購入した際に(記事はこちら)、実はエディット・ピアフのヒットアルバムも買っていました。ただ、最近は、力強い歌声のZazや軽快なリズムのFrance Gallばかり聞いていて、ピアフのアルバムは、届いた頃に、最初の数曲を聞いただけで、お蔵入りになっていました。
もちろん今朝は、家事を片づけるのに、ピアフの歌を聞きました。映画に出てきた歌がたくさん収録されています。同じ歌なのに、CDがうちに届いたばかりの2月と、今、彼女の人生を語る映画を見たあとでは、一つひとつの歌が心に呼びかける感動も、自分が感じる歌の美しさも、まったく違います。今は、どの歌も、ピアフの人生や映画と重なって、はるかに大きな感動と共に、心に迫ってきます。そうして、ますます、何と歌っているのかが気になります。
外国語学習の成功要因や、やる気を継続させる原動力の一つに、その外国語が話されている国とその文化への興味や憧れがあります。昨晩の映画をきっかけに、フランス語を勉強する動機とフランス文化への興味に、さらにはずみがつきました。
今回、この映画を見ることになったのは、以前にコメント欄で、Yuzukoさんが、ぜひこの映画を見るようにと、勧めてくださったおかげです。(記事はこちら)Yuzukoさん、本当にどうもありがとうございました。
LINK
- Amazon.co.jp - 映画、『エディット・ピアフ~愛の賛歌~』(DVD2枚組み)
- Amazon.it – film, “La Vie En Rose” (DVD)
- Amazon.it - Edith Piaf, “20 Chansons D’Or: La Vie En Rose…” (CD)
↑ フランス版であるためか、歌詞カードはないのですが、よく知られた名曲20曲が収録されています。料金、9.10ユーロで、まず最初に聞いてみるには、値段も曲数も手頃だと思います。



はじめまして。うれしいコメントをありがとうございます。フランス語は、とにかく表記と発音の差が甚だしいので、読んだら何となく分かるのに、耳で聞くとさっぱり分からないことが、以前から時々ありました。『Non, je ne regrette rien』は、たぶんピアフの人生を知らなくても、言葉と歌に魅かれたと思うのですが、映画を見たあとでは、一言一言に、重みと深さが感じられ、心に迫ってきます。ご紹介いただいた歌、ぜひ聞いてみたいと思います。失礼だなんて、とんでもない。すでにフランス語やフランス文化をよくご存じの方に、こうしていろいろ教えていただけると助かります。励ましのお優しいお言葉、ありがとうございます。これからも、どうかよろしくお願いしますね。
おととい、ようやく日本語の入門書2冊の「発音」の章を終え、昨晩は、悪戦苦闘しながら、イタリア語の入門書の第一課の会話の文字を目で追いながら、発音を確認し、言ってみました。日本語で書かれた入門書の歩みは、のんびりカタツムリなのですが、イタリア語のものは、いきなり大量の会話に突入して進度がロケット並みで、予想してはいたものの、その差にとまどっています。頑張ります!


簡単な仏伊旅行会話の本で私もイタリア語を少し知りました。直子さんのレッスンのメールマガジンもこれから時間の許す限り拝読させていただきたいと思っています、どうぞ宜しくお願いします。
先日の語学学習過程での化石化の記事は身につまされる感がありました。一時的なものであれ当該国やその国の人々への心理的な嫌悪感から語学学習の意欲が阻止されるという経験がありますが、これは心の持ち様の問題、好転させてゆかねばなりません。その意味でも、ブログで拝見します積極的な姿勢に見倣いたいと思うところです。頑張りましょう。
聖金曜日の記事、今年のも昨年のも、とても良いです、どうもありがとうございます。直子さんの実力を発揮できますようご活躍をお祈りしています。
鍵コメントの方へ
ありがとうございます。やっぱりフランス語は、公用語として話されている国も学習者も多いし、フランスの歴史も長いので、インターネット上にも書店にも本当にいろんな教材がありますね!
移民が自分が移住した国の外国語をどれだけ身につけられるかは、その移民がその国で居心地よく暮らし、その文化に興味や憧れを持てば、かなりのレベルまで上達しうるけれど、もしその国の国民や文化に嫌悪感を感じ、心を閉ざすと、低いレベルで語学力が固定してしまうという研究結果が出ています。化石化は、特に実際にその言葉が話されている国に暮らしている場合に、できれば避けたい現象だと思うのですが、母国で習う、習った外国語の場合には、使わないと、外国語学習から遠ざかると、一気に錆びついてしまったり、忘れたりということもありますよね。(つづく)

語学との関わり方は各人の動機や目的等により異なるので、様々なかたちがあることでしょう。外国語の習得と共にその国の国民性や文化、其れらを形成してきた歴史への理解なども含めると、一生かけても足りないくらいかもしれません。
ところでフランス語は例えば一ヶ月でもコースを受講なさると効果的ではありませんか。その後は楽に上達されることでしょう。既にイタリア語を正確に修得されておられるのですから読むことは問題ないにしても、旅行で使うための発話と聞き取りは独学だと効率が良くないのでは。。。尤も、仰るとおりインターネット上には音声情報も沢山有るので、独学の方が或いは落ち着いて繰返し練習できる利点があるかもしれません。私は今のところ間歇的にイタリア語に接することを楽しんでいるところなのですが、直子さんのメールマガジンは学習のための上等な案内となるに違いありません。
復活祭の休暇も今日までで、暫くコメント欄への投稿が適いませんが、ブログもフランス語も、そしてお仕事も心から応援しています。感謝の気持ちとともに。